どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
4.
轟音――!
――セグメンタタのかき鳴らすような音じゃない! 明らかに異常すぎるッ!!
そして、音の主は――――
「――な――んっ――てっ…………馬鹿、げ、た、出力だ――!」
『内的行動補正(マインド・アシスト)』が翔の脳内の情報処理に介入して――このざまだ。
『――情けない声を出さないようにお願いします。ソルジャー。貴軍のFAC(航空前線統制)シグナルの学習が終了しました。突撃サポートの砲撃来ます』
直後、空を飛ぶ巨大な弾丸の頭上を2発の巡航ミサイルが飛んでいく。
親子型の2発の巡航ミサイルは、先行していく。アークラムより早い。
が、さすが、防空用の戦術級大型ドローン。巡航ミサイルは撃破されていく。
すでにアークラムも敵の攻撃の対象に入っている。
警報が鳴り響く。ロックオン警報。戦闘機ならば、すかさずチャフとフレアをばらまき、最悪の場合、あえて地上へ向けて墜ちるように瞬間的な落下で速度を稼いで後に上に上がるしかない。
むろん、他の方法もあるが、基本はチャフとフレアをばらまいてその場を離脱するだ。
だが、それでもなお、アークラムは戦闘機では無い!! 重装歩兵だ! 歩兵だ!
『――突撃(チャージ)! 加速規定速度20%』
『――速度調整、パージ』
使われた2本のロケットモーターが排除される。
『――燃料投入拡張』
液体ロケット燃料、アサルト・ロケットアーセナルに使用されてる現18本のロケットモーターに水和ヒドロジンがさらに供給されていく。
大型固体燃料ロケットモーター2基、中型個体燃料ロケットモーター2基、小型の液体燃料ロケットモーター16本。
全部で20基あったが、2本がすでに分離されている。分離された液体燃料ロケットモーターはそのまま形状が変化し、空中で自爆。
引火した燃料とそれを運ぶソニックブーム。火炎の衝撃波が敵陣へと降り注ぐ。が、ソレよりも早いアークラムが先に敵陣へ。
敵方より迎撃ミサイル。だが、速度調整で、燃料が少なくなったロケットモーターを2基捨てた分だけ軽くなったアークラムはさらに加速。
さらに、重量バランスの変化で軌道変化。そこに、アークラムは4つのレーザー発起装置が全力稼働。
迎撃用のレーザー。最も出力が足らず、1筋の光の筋ではミサイルを撃破出来ない。
『――調整終了。目標収束』
4本のレーザーが1点に集中。迎撃ミサイルが起爆する。
対空レーザーをそのまま搭載するだけの能力は無かった。だから、分割した。そして――
『――分離(パージ)』
使い捨てにした。
4基のレーザー発起装置は空中でバラバラになって、最後に無数の光の束を網の目のように放出する。
その風景は辺り一面に広がり、戦場の黒煙の中で、輝く死天使のステンドグラスを見せつける。
サンドクラーケンの一つ、シエラ・ツー(S2)のセンサーはその無数の光を見て、アルゴリズムに乗っ取り判断を下す。
すなわち、規定値を超える迎撃レーザーの存在を感知。無駄撃ち防止で地対空迎撃ミサイルの使用を一時ロック。
サンドクラーケンへの突撃コースへ、アークラム・モード:アサルト・ロケットアーセナルは入っていく。
と、そんなアークラムARAに対して、次々と浴びせかけられるのは12.7mmと20mmの銃砲弾。
それに対して、アークラムの防御システムが放つのは、無数のデコイと迎撃短針、そして自動防御斥力。
12.7mm程度なら、角度と当たり所さえ間違わなければ防げるという『統合戦域勝利支援用群知性型ニューラルネット』、つまりは戦術支援ネットワークA.I.『アレス』の判断。
20mmは危険だが、そもそも高速移動するアークラムに当てさせなければいいという判断。
斥力は小さく、だが、確実に20mmの軌道を変えていく。
そして、最終加速のために、さらに様々な外装部位等々が分離されていく。
分離していく、パーツの中に金属板、いや装甲版があった。それは中空装甲と傾斜装甲を兼ねた装甲版で色々な方向に波打つような表面を持つ。
そして、装甲板が内部から急速に破裂。中空装甲ゆえの空いたスペースに僅かとは言え、隠されていた粉末状の何かが宙を舞って――――
――地上に地獄を作り出す。空気と反応して激しい燃焼反応を発生させた。あくまでもそれは数秒程度。
けれど、その数秒で良かった。
準天頂軌道上、アルコールグループ専属、試作型戦域戦術重装歩兵支援衛星『モラセスNo.3-アテネシステム』。
『――信号受信。マーカー確認。衛星軌道上爆撃開始。『弾道型MRV式極音速飛翔体(サテライト・ストライクアタッカーパッケージ)』を射出。アークラム支援ドローン、タイプEを2機射出。ストライク・アタッカーパッケージ目標まで……4,3,2,1,アタック』
モラセスNo.3のAIシステム、アテネの認識と同時に、地上で劫火が舞い上がった。
たった1発の弾道弾。MRVの3発の弾頭。されど、1発にして3発。搭載弾頭は通常弾頭。されど弾道弾。降り注ぐ大型キャニスターは親子型で小さいながらも内部に少量のナパーム燃料とクラスター弾用のキャニスターが地上を地獄に変えた。
「――ッ!!」
状況ははっきりしている。スピードはおろか、火力大好き男である翔が火力を持て余している!
アークラム、ユニットモード、『アサルトロケット・アーセナル』
戦場を縦横無尽に駆け巡る――それ!
戦場を轟音を共に駆け抜け、後には破壊しか残らぬ――それ!
戦場が、戦場を! 戦場に、戦場で!
動体検知センサーが動き出す敵の姿を感知――すぐさまFCSがロックする。
そして翔は――引き金を引いた。ウェポン・ベイより解放されたのは親子誘導弾。
中に2発の小さなミサイルが搭載されたそれが走る。
天空を走る――――。
そして、目標点へと至るその過程の直前に2発の小型ミサイルが分離、さらに分離した親の誘導弾もまた目標へとそのまま飛んでいく――そして。
動き出した敵セグメンタタへとまず小さなミサイルが2発起爆して、
「拡張型膨張粘着弾――! ってことはァァア――――ッ!」
動いた敵のセグメンタタ、その搭乗員の叫び声。彼が見たもの、それは、黒くススんだ色。しかし、それは確かに粘っこい粘着性のそれで――
直後、親のミサイルの弾頭が防御斥力へと……弾頭のHESH(粘着榴弾)は確かに起爆し――防御斥力が決壊。衝撃波が敵を貫いた。
最初の粘着弾で防御斥力全体に負荷をかけ、そこに粘着榴弾をぶつけることで、崩壊させる。自動防御で全周展開された瞬間的な防御斥力。
それはこうした瞬間的かつ、全体に負荷をかけて一点突破の衝撃波をぶつけられるのに弱い。
何しろ、弾丸は一瞬だ。その一瞬の弾丸をちょっとずらすだけでいい。何かの瓦礫だってそうだ。そういったものから守るための仕組みが自動防御。
それを突いた、攻撃手法。
アークラム、アサルトロケット・アーセナルが解き放つウェポン・ベイより解放される親子誘導弾は1発ではない。
2発
3発
4発目
5発目
そして――親子誘導弾とは別に解放される爆弾が
1発、2発、3発…………7、8、9発。
解放された爆弾はIMSパッケージ。空中炸裂型指向性散弾が、空中起爆型自己鋳造弾が、次々と起爆していく。
円盤状のIMSパッケージは次々と回転運動と共に解放され、宙に舞う。重力に従い落ちる過程で――次々と赤外線走査を自立起動して行っていく 。
地上でポンポンと空気が軽くはじける音が響き渡る。そして、直後黒煙と衝撃波が生きている人間を文字通りの意味で粉砕していく。
形がきれいに残るのは指のような肉片で。
歩兵分隊1個を文字通り『消滅』させ、歩兵分隊支援に派遣されてた戦車分隊、2両を撃破――――。
ロケットモーターから流れる噴進の噴流。速度を生み出すそのノズルから吹き出す火炎の奔流が周囲に轟く轟音をかき鳴らし、熱波をまき散らす。
衝撃波の様な轟音は大地を震わせ、空気を振動させ、周囲に異常を知らせる。
わずかに生き残った人間たちの頭蓋骨を――震わせる衝撃!
わずかに生き残った人間たちの頭蓋骨を――響かせる躍動!
わずかに生き残った人間たちの脳を揺さぶる――轟音!
わずかに生き残った人間たちの脳を揺さぶる――熱波!
わずかに生き残った人間たちの肌を走る――打撃!
わずかに生き残った人間たちの肌を走る――振動!
「ば、化け物か!!!」
敵兵の言葉。翔のアークラム:ARAに対して、シエラ・ツー(S2)のAIと後方の制御者がこれを破壊するべく、全力稼働。
無駄撃ち防止アルゴリズムによって、止められていた迎撃ミサイルのロックが解除。
しかし、もう遅い。
シエラ・ツー撃破。
新たな衝撃波が大地を揺さぶり、巨大な轟音が衝撃波の後にゲノポス全域に轟いたのはその直後であった。