どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

58 / 63
11.

  11.

 まずはアヴェンジャー。それとは別に2機の支援ドローンによるトライミニガン。

20mmと7.62mm6基の嵐が吹き荒れた。

飛翔装甲を開いて重力異常を引き起こしている。最も広域ではないし、下手に乱しすぎると自分の支援ドローンや銃弾、砲弾が明後日の方向に飛びかねない。

 

「フラワーアレンジメント! マクロ・ワン・ツー!」

パツキンテールもすかさずそれに気が付いたらしい。新たに2機のロケットモジュールが発射される。

アークラムの近くにさえ近づかなければロケットモジュールは問題なく稼働する。何よりも、アークラム専用支援ドローンも飛んでいるように重力異常はある程度の範囲であって怖い物では無いともはや立証されている。

何より、やっぱりたかが、その程度でしか無い。

 

「――!」  「――――おせぇ」

轟音。

政府軍砲兵隊の次のロケットクラスター弾が起爆し、地上に劫火の豪雨を再び降り注がせた。

パツキンテールの彼女は、気が付いた。これで終わりじゃない。次の砲弾がここに向かっている。まるで誘導されているように……

 

「ッ――――!」

気が付いた。これは自爆同然の攻撃だ。あのクソ火力バカはこのあたり一帯を自分事砲撃させるつもりなのだ。そうすることで私を確実に仕留めようとしている。

急がねば、この馬鹿は誘導をしている。爆撃誘導を。なら誘導源であるこいつを始末しないと。

だが、困ったことに、奴は攻撃の性質を変えてきた。単純な銃弾や砲弾の数で押すことは無理だと判断したくそ野郎は熱と衝撃波、つまりは爆轟の熱波で押しつぶす戦略をとり始めた。

 

「ナウ!」

マクロ・ワン、鳥籠の形成から、マクロ・ツーへ。

鳥籠を作る為に動いていたシステムはすぐさま、アークラムを取り囲むようにワイヤーアンカーを周囲に張り巡らせていき、そのままアークラムの手足を縛ろうと活動を始める。

主兵装として使用しているアヴェンジャーを支えるために両手でそれを持っているアークラムは、これに対応できない。なので、アヴェンジャーごと両腕を振り回す。当然アヴェンジャーがたたき出す20mmも周囲にその暴威をまき散らす。

 

「リターン!」

彼女は叫びながら走り出す。フラワーアレンジメントという兵装のロケットモジュールは本来、使い捨てにするにはもったいない代物だ。とはいえ、彼女は気にせずばかすか使っていた。

それだけ、いちいち残量を気にしていたらこういうものは使い物にならないと思っているからだが、それでもこれ以上は無駄になると思えば、飛んでいるそれに帰還の命令を出すこともある。

2機のロケットモジュールが元に戻っていく。鋼鉄の脚部が大地を蹴り上げ、その動きに追従しながら。

 

『――危険度再判定識別中』  「っ」

アレスがなにやらよく分からぬ勝手な事をやってるが、翔にそんな物を気にしている暇は無い。ワイヤーに気取られたせいで、アヴェンジャーの砲身は向かってくるカスタム・クラカジールに対して別方向へと向いている。

翔の体は、染みついたある動きに移ろうとする。いわゆる『軍隊式格闘術(マーシャル・アーツ)』の動き。

カスタム・クラカジールのパツキンテールはそれに合わせて、一瞬で殺戮しようと高振動ブレードを――――

「――なっ!」

翔は、自らの目の前で、鎧用手榴弾を起爆させた。アヴェンジャー機関砲を盾にして。当然、そんな物だけでは対処出来ないので、彼の装甲板には至る所に穴が開いている。

実際、翔の左腕には、小さな穴が開いている。ナリウスの調整された体が痛覚を遮断し、生体式粘着剤を生命維持装置が全力吹きかけてで出血を阻止しようとしているくらいには。

パツキンテールはそんな攻撃の直撃を受けた。とはいえ、ちゃんと防御姿勢はとったらしい。

「……怪物め」

はっきり言って自爆としか言い様がない攻撃を行った翔にとって、コレでもダメージが少ない近接馬鹿の相手は本当に恐怖でしか無かった。

火力で圧倒するやり方を基本とする翔が、高々数多くの訓練種目の一種程度にしか治めていない軍隊式格闘術なんぞ使ったところでカモにされるだけだ。

実際、そのつもりだったようで、その高振動ブレードは見事に、アークラムの飛翔装甲に突き刺さっていた。まさかの自爆から身を守るために投げ捨てた用だが、タダでは投げ捨てず、こちらに向かって。

「……」

最も、それは相手、パツキンテール側も同じだ。手榴弾を見た瞬間、反射的に地面を蹴り飛ばすように跳躍しながら彼女は防御姿勢をとり、攻撃から身を守った。衝撃波により、カスタム・クラカジールは、吹っ飛ばされるように距離をとられた。

こんな強引な方法で距離をとるこの頭のおかしいクソ野郎は、自分の命が惜しくない、何らかの狂信者かラリってる奴らしい。

翔はパツキンテールを化け物とよび、パツキンテールは薬中(ラリった)狂信者かと思うこの状況で。

「フラワーアレンジメント! モデル・ガーランド!」  「爆撃要請。要請パターンA1、A4、B7っ、とっとと受諾しろぉ!」

双方、切り札を切った。

いや、まだだ。彼らはあらゆるすべてを出し切っている訳では無い。

カスタム・クラカジールの造形に変化が出る。その外骨格には隠された高振動ブレードが備え付けられている。主に脚部に。けれども脚部にしか何も無いというわけでは無い。

「音声認識、全方位展開、BDR」

例えばカスタム・クラカジールにも当然付いている飛翔装甲。その先端部分は果たして単なる装甲板か? 電熱サーベルとして稼働し始める。

肩のワイヤーモジュールにも隠されてきた円錐状の兵装が稼働を始める。そして、戦端に火花が飛び散り始める。何かあれば粘着榴弾のゼロ距離射撃を食らわせるそういう兵装だ。

そして、瞬間加速用ブースターの推力偏向噴進ノズルが次々と隠れていた部分より出てきてアイドリング状態へ。両手両腕、そして腰の部分に一つずつ。大きさから言って1回5分で完全に終了する程度の機能と燃料しかない。

「最終セーフティ終了。倍力駆動安全リミッター解除、白兵戦用稼働補正プログラムを実行。カウント3」

最後に、補助腕がカスタム・クラカジールのEK-65 エーゴル・カラシニコフを捕まえる形で収納。本来の両手が空いてそこに2振りの剣、高振動ブレードが……いや、タダの高振動ブレードでは無い。

ネタ武器として、逆に有名な暗器剣の一つ、現代に復活したフリントロック・ソードだ。中世実在したフリントロック・ソードはいわゆるショートソードに1発使い捨ての銃弾が込められた銃身がこっそりと取り付けられている物だ。

現代のそれは、12.7mmの鉄鋼榴弾を同時に2発叩き込むというものだ。装弾数は6発。つまりは3回。重装歩兵同士の白兵戦戦闘のみを想定した結果、そんな性能となった高振動ブレードの暗器剣。

「ネタ武器を使いこなすクソ野郎か」  「カウント2」

翔は思わずつぶやいた。それを彼女が聞いていたかは分からないが、同時に彼女はカウントを紡ぐ。

「カウント1」

すでに彼女は走り出している。ほぼ一直線、翔のアークラムのもとへ。

それに対して、翔は4連装ロケットポットでお出迎え。アヴェンジャー航空機関砲はもうボロボロだ。もう使えない。

だが、盾や鈍器としては活用できる。敵に向かって投げれば一瞬のスキを作るくらいは期待してもいいだろう。最も通じる相手ではなさそうだが。

「ゼロ」

カウントゼロ。カスタム・クラカジールは完全に本来あるべき倍力や駆動の水準を喪失した。ブースターからは推進剤の奔流が銀色に輝いて瞬間的なソニックブームが大地を切り裂き、空気を割っていく。

が、空気を割っていくのは一つではない。ロケット弾も一つ一つが空気を割って飛び出していく。

近接信管によって空中で起爆していくロケット榴弾。

『――接近警報! 爆撃警報! 危険地帯です!』

アレスの声がうるさい。政府軍の砲撃。くる。それどころじゃない。空中で起爆していくロケット榴弾の衝撃波がアークラムの脚部に負担をかける。

カスタム・クラカジールは跳躍する。右脚部より地面を蹴り上げて、跳躍により時計回りに体を回転させながらその勢いでたたきつけるようにまずは左手に握るフリントロック・ソードをアークラムへ。

そして、両肩のモジュールから直接無数のワイヤーが飛び出した。まるで、カスタム・クラカジールを中心に広がる、花環の王冠。

―― 航空優勢の一時確保に失敗。第3飛行師団よりワイルド・ヴィーゼル専門部隊『マウシム』を抽出。それに合わせて第2火力戦闘群を新たに編成する。S.E.A.D.作戦実施まで残り約720秒 ――

戦況にまつわるお知らせ。邪魔だ。それはとても重要なのだけど、今はそれどころじゃない。

一瞬で決まる。だから翔は、アヴェンジャーを投げる動作も取れない。ただ、アヴェンジャーごと敵にぶつかっていく。

1秒以下の世界の暴虐の中で、音速を超えてソニックブームをまき散らしながらカスタム・クラカジールは左手に握るフリントロック・ソードを突き立てようと――そしてアヴェンジャーの機関部に突き刺さる。

「――ッ!」

翔はそれを狙っていた。引き金を引く。ぶっ壊れたはずのアヴェンジャー航空機関砲が動こうと――――最も防がれることも可能性としてすでに想定済みのパツキンテールからすれば、むしろ、てこの原理で言う支点を用意してくれてありがとうでしかない。

左手のフリントロック・ソードを支点力点として、作用点である右脚部が空中を舞う。そして、脚部の高振動ブレードが最大出力で稼働音をかき鳴らしながら飛び出してくる。そのままアークラムの串刺しを狙う。

そして、当然無理やり動かされたアヴェンジャーは暴発。爆発的衝撃をばらまいた。

(それはもう、みた)

けれど、パツキンテールはただ、そんな風に思っただけ。彼女の飛翔装甲はまるで意思を持って動き回るマントのようにはためいて、その衝撃波を受け流し、逆に帆のように衝撃波の熱風を受け止めてカスタム・クラカジールを押し上げる。

なるほど、右脚部の高振動ブレードによる串刺しは止めることに成功した。左手に握るフリントロック・ソードも。だが、右手は? 左脚部は?

そして、補助腕が固定しているEK-65 エーゴル・カラシニコフは?

 

『――――。――』

アレスが何かを叫んでいる。いや、うまく反応できていない。頭がぼんやりしている。

動かないと。次の行動を。

次の行動ってなんだっけ? 翔は自分が危険な状態であることを自覚できないでいる。血濡れの体。50口径がその肉体を吹き飛ばすこと自体は何とか避けることができた。

 

『――生命維持装置、循環機構の出力をレベル9へ!』  「かっふ」

やっと、のどを詰まらせてた血が口から噴き出して、気道が確保されていく。体が勝手に動いている。アレスが無理やり動かしているようだ。

そして、支援ドローンがありったけの弾幕180度、まき散らしている。

状況把握。50口径の銃撃を受けたが、人工筋肉繊維と衝撃拡散用ジェルや電磁硬化流体を用いた駆動系をアークラムは内部の使用者保護になるように設計されていたために、1発だけの50口径はそのまま翔の肉体を吹き飛ばすことは防いだ。

 

『――しかし、衝撃までは完全に殺せません。あなたの肺に明確なダメージを与えました。1発だから保護できましたが、数発なら不可能です』

翔は、使い物にならないアヴェンジャーではなく、カスタム・クラカジールに殺された仲間たちが持ち込んだライフルに手を向けた。引力と斥力がまるで念力のようにライフルに作用し、空中を浮かんでアークラムの手の中に納まる。

カスタム・クラカジールは弾幕の中、ワルツを踊っていた。近くに政府軍装甲車両がいた。なんてバカなことを。

90mmライフル砲が火を放ち、40mmグレネードマシンガンが次々とグレネードを射撃する。その中でたった2秒、踊るように動き回って装甲車両の機動系に無数のワイヤーが入り込み、まずは動けないように。

そして、銃眼にフリントロック・ソードが差し込まれる。高振動ブレードが火花を放ちながら、バターを切り裂くバターナイフのように入り込んで、銃撃。12.7mmの鉄鋼榴弾が炸裂した。

1両の政府軍装甲車両が完全無力化。

 

「アレス! ドローン追加、でき」  『――アークラム専用支援衛星が軌道上に0ありません。政府軍の戦術歩兵支援ドローン・スォームの使用許可を』

「割り当て、全部持ってこい!」  (叱れるのは俺様だけだ!)

体はまだ動く。意識もはっきりしている。まだ戦える。勝つまで。ライフルを2本の腕と補助腕、計3本構えて引き金を引く。

12.7mmの銃弾が3つの火線を空中に作り、翔はその場を走り出す。

それに対応するように、カスタム・クラカジールも翔に向かって動き出す。

 

『――政府軍戦術歩兵支援ドローン・スォーム、グループA3を動員します。到着まで約170秒』

そして、敵のワイヤーアンカーの花束が空に花開き、翔は無数のライフルを撃ちまくりながらアークラム:ARAが持ち込んで、その辺にパーツとして転がっていたロケット砲を次々と強制自爆させた。

爆轟の衝撃波が周囲にばらまかれる中、当然そんなもの意に介さずワイヤーアンカーの花束のいくつかの先端部がスラスターを吹かしながらアークラムへと向かって走る。

花束を咲かせた元凶である、カスタム・クラカジールの肩のモジュールはさらにアンカーを2本増やすべく中に打ち上げる。

 

『――残弾警報!』

そして、カスタム・クラカジールもまたEK-65の銃弾をアークラムへと解き放ちながら2本のフリントロック・ソードを両手に迫る。

アレスの警告道理、ライフル1丁の残弾がゼロとなり、12.7mmの火線が一つ無くなり――――

             ――――フリントロック・ソードがアークラムの首筋へと迫って。

 

「やれ!」  『――Yes ソルジャー』

アークラム:ARAが使用していた火炎放射兵装が稼働してアークラムやカスタム・クラカジールが戦っていた狭い空間ごと焼き払った。

ドローン・スォーム、グループA3の先遣隊というべきドローンが2機到着したのもそれとほぼ同じだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。