どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
13.
正統軍のその中隊は、敵の熱心な抵抗により、進軍速度を落とさざる得なかった。
サンドクラーケンの
「……撃破されたのか? それとも――」
ラリーサ・カーロリのクラカジール生存のランプがなかなかつかない。敵のECMの影響で、ネットワークリングがなかなか安定がしないが、どちらにせよ優秀とはいえ数合わせの傭兵の一人だ。
だめなら後で……可能なら遺体を回収して葬ろう。それで――十分だ。
「墓なんてどこにもない……1週間もすれば、誰も覚えていない。そもそも覚えてくれる人間がいない。そんな連中よりは――――マシな死に方さ」
ジャッカル大尉。
本名など知らない。おそらくは――誰かのクローン個体。
本来は記憶を与えて特定の個人Aとほぼ同一の別個体とするつもりだったのかもしれない。
「…………」
けれども何かのトラブルか、彼の記憶は――幼少期の一部しか継承されなかった。
代わりに得たのは――強烈な体験。
誰かの……そう、誰かのかりそめの記憶なんかじゃない。
「………………」
青い空に美しい海。どこまでも荒涼と続く黄金の砂漠に、優しい街並み。
幼少期の誰かの記憶と……
その後、体験した彼自身の……誰かのじゃない、本当に彼自身の記憶。
遺伝子上の――それなんて知らない。
記憶上の――それなんて、どうでもいい。
今更、そんなものに誰が気にする?
母親代わりな女性。父親代わりな男性。
兄代わりな男。姉代わりな女。
弟代わりな少年。妹代わりな少女。
祖父祖母代理、叔父叔母ダリ、従兄妹代理に優しい近所の爺婆代理。
――――そして、強烈な『意思』
自分の……思うが通りに『銃』を握り、今、ここにいる。
今こそ、売国奴を排除するべき時。
「中隊長、傭兵が返ってきたようです」 「うん? ……ああ、そうみたいだね」
噴煙をあげ、ロケットモーターの轟音をなびかせながら接近するであろう物体。
その轟音は戦場特有の破壊音やくぐもった排気音にさえぎられ周囲には広まってくれない。
「ミス・カーロリ、スピードを落としたまえ、接触するぞ」
見るからにぼろぼろのクラカジール。よほどの激戦をしてきたのだろう。ところどころ、装甲版が解けたことを示す水滴の様なものがそのままの状態で固まっている。
それどころか、どこから調達してきたのか、ブースターウィングもどきでこちらに接近している。
白いカラーリングのドローンを思わせる……ブースターウィングが……鹵獲兵器?
だが、そんなクラカジールは止まらない。どこまでも――まるで……『自爆テロ』の様に!!
「おい、止まれ、カーロリ!」 「何をやってる! 傭兵!」
感じる違和感――――。
「――大尉! 何を!」 「離れていろッ!」
ジャッカル大尉は部下のアラクレを斥力で吹き飛ばしてでも、クラカジールから距離を取らせる。
そして、手に取る、エーゴル=カラシニコフ。そして、引かれる引き金。
鳴り響くブザーと網膜スクリーンモニター上に浮き上がる表示。
「――IFFロックッ!? ちがう、あれはもう味方ではない!」
そして――クラカジールは銃剣を前へと突出し
「クソッっ!」
ジャッカルは
エーゴルのIFFロックを解除するために
――パスコードを入力したところで
衝撃に見舞われる。
「大尉ッ!」
部下のアラクレがジャッカルのもとにかけよろうとして――クラカジールの燃料タンクが起爆する。
業炎。黒煙。衝撃波。
まるで、最初からそれを狙っているように。
突き刺さるは銃剣。高振動ブレードと同じように振動派を持って金属を貫通する。
串刺しのアラクレ。
「これで、俺様は確かに約束を果たすぞ!!」
クラカジールの中の人、すなわち翔が叫ぶ。そのまま、アラクレを押し倒し、取り出すのは鎧用大型拳銃。
赤外線シーカーが発動、政府軍のネットワークを通じて、そのシーカーが指し示すターゲットが表示されていく。
対象は、サンドクラーケン残る1機。
「ねらえぇええええええええええ!!」
直後、様々な携帯式多目的ミサイルや砲弾がその場に着弾した。