どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 ティルトローター航空機が空を飛ぶ。ゲノポスは既にそんな物が飛べるようになる程度には政府軍の航空優勢の元にあった。

そして、その中に1人の少女がいた。

 

「急いで!!」  「分かってる!」

いや、正確には少女が収まっているマニュピレート・セグメンタタが一つ横倒しに搭載されていた。

眼前に広がるのはゲノポスの水溜りや水路からやってきた水が溜まっている風景。すなわち、3機目のサンドクラーケンの撃破跡地。

 

「あの馬鹿はおそらく、あの水の中!! 浮かんでこない!」  

「ゲノポスの水溜りは高濃度の汚染水も混じっている! 後で調整で遺伝子損傷をある程度和らげてやるからとっとと、引き上げてこい!! 死んだら調整もクソもないからな!」

「3……2……1、ドロップ・トゥナウ!」

滑り落ちるようにGN-11Bキャットファイトの工兵仕様が落ちていく。戦火の中で焼けただれた装甲板を身にまとった鋼鉄の人型がそうやって水の中へ。

―― 深度7メートルほど。撥水パッケージは現状問題無く稼働中 ――

戦術支援A.I.の管制の中で、歩くように水の中を移動する。水中スクーターシステムを使えば、視界がさらに悪くなるからこのざまだ。

歩兵レーダーを活用するが、水中で使うことを想定した物では無い。雑音が多すぎる。泥水の大量流入にそこら中が煤と重油で汚れているのだから、本当によく見えない。

―― IFFシグナルを探知 ――

そこかと彼女は走り出す。最も水中は水圧によって少しだけ足が速くなる程度。そして……。

それはクラカジールの残骸のような代物だった。むしろよく人の形を保っている物かと不思議に思う。

ハグするようにそれに、抱きついて、センサー系が中に人が居ることをきちんと突き止めた。その体勢のまま、浮上ユニットを稼働させる。圧縮空気が解放され、ゴムボートを思わせるフロートが広がっていく。

 

「とっとと、起きろ馬鹿! ここまで来てやったぞ!」

そして、浮き上がる。水中スクーターシステム稼働。急いで、岸辺に上がらねば。

空で新たな爆音が轟く。巡航ミサイルの群れが反乱軍と政府軍、双方から交差する。

いくら政府軍が航空優勢を確保していると行っても、激戦その物は続いている。

 

「、、、翔の反応が無い! 生命維持装置との情報共有はそっち出来てる!?」  『――いや、出来ていない! 急げ! 手遅れになる前に!』

やっとの思いで岸へと到着し、緊急強制除装レバーを探す。

 

「何だって、レバーが潰れてんのよ!!」

翔が、ありったけの熱量で殴るような戦い方をした上に、機械の腕で強引にひねったりしたからだ。諦めて、ライフルのストックで叩くようにレバーを何とか動かそうとする。そして、ようやくレバーが引っかかった。

後は力任せに引っ張る。倍力機構の出力を上げていく。金属板がねじ曲がるようについに中が見え始めた。

かろうじて浸水していない。だが、それは空気圧を生命維持装置が維持した結果、上半身だけ何とか守っているような状態だった。

そして、生命維持装置の維持に全電力が使われている。

なるほど、呼びかけに応じないのはそういう事かと判断する。そして、

 

「さすが、俺様、こうして、ちゃんと救助が来た。って、おまえかよひより」  

「うっさい、さっさと帰るよ。つか、なにそのひっどい状態。とっとと治療と調整しないとマジで死ぬよあんた」

戦場で、負傷者を搬送する作業は骨が折れる。逆に言えば、一度負傷者を搬送してしまえばしばらく、その場にいることは無い。

すなわち、彼らは激戦区ゲノポスから離脱するのだ――――。

 

――ティルトローター航空機にのる1人の少女。

いや、学院傭兵軍第3軍団の陸戦総司令官の紅だ。

 

「丘の占領と確保、並びに的の大型戦術ドローンの撃破を確かに達成しました。しかし、これ以上の戦いは不能です。損耗が激しすぎる。それでも戦いを望むのなら次に提示しますリストの補給と補充をお願い致します」

『 ……確かにリストは受け取った。……ぼろぼろだな』

「……見ての通り、指揮官先頭で戦う必要があるほどの戦いでしたので。正直デスクワークが多かった身として足を引っ張ってばかりだったと思います」

画面の向こうに見える政府軍の担当者。

彼は少しの時間をおいて話し出す。

 

『 ……分かった。27連隊と君たちを交換しよう。2時間後に君たちは戦域を撤収したまえ。ただし、あと2時間は現域を死守してもらうぞ。リストすべては無理だが出来る限りの便宜を図ろう』

「それは良かった」

『 それとは別に、撤収後、君たちに与えられる休息時間は3時間だ。仮眠をとりたまえ、君たちにはノースポイントの攻勢に第3梯団の一部として参加してもらう』

「――――!」

『 優秀な兵隊を遊ばせるほど余裕があるわけではないのでな。言っておくが撤収作業のサボタージュは認めない。君らの上が納得する額は既に提示している』

紅としても上を通されては無理だ。

 

「でしたら、断れませんね。せめて負傷兵の搬送をお願いしたいのですが」  『 それなら既に必要な手配をやっている』

結局新たな攻勢作戦に参加する事を幕僚たちに伝えて、準備に取りかかる。

ふと、外を見る。

灰色に染まった大空と大地。世界のどこにでも当たり前に見える風景。

 

「バン!」

手で鉄砲の形を作り、大地に狙いを定めて口で一発。直後、誘導爆弾が落ちて、爆発する。

思わず苦笑する。タイミングが良すぎだ。その爆発してる大地にて

 

「ド畜生! いつ、回収がくるんだ!」  「あんたが、水没してなきゃ、こんな危険地帯を徒歩るかよ!」

馬鹿が走り回っている。

 

「俺様を救出しにきておいて、こんな目に合わせるとか、おまえ俺様のすごさに嫉妬してんの?」

「あんた、後でぶん殴る!」

 

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