どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 欠陥住宅という言葉がある。設計段階の構造、あるいは建造時のミスや無理のある構造をした結果、長期間、人間が快適に居住するには不適切な住居という意味でよく使われる単語だ。

この欠陥住宅の原因としてよくあげられる要素と言葉として「手抜き工事」というのがあるが、まさにそれだなと周りを見渡した翔はつぶやいた。

地下通路が瓦解したあと、広がる謎の空洞に落ちた彼だったが、周りを見て納得半分、あきれ半分である。

というのも、むき出しの土壁、ろくに補強がされてないと思われる天井など、そんな状態の新たな『地下通路』であったからだ。

ただし、自分たちが侵入と進むのに使ったそれと比べてはるかに広い。戦車の群れでも通るのではないかと思うくらいだ。

いや、実際そのための道かもしれない。

地面に残るわずかな『履帯跡(カタピラ模様)』。

だが、そんな大事な通路なら補強されていないのはそれはそれで、おかしいとも思う。

まぁ、なんにせよ――――

 

「……誰だよ、手抜き工事しまくったバカ。埋めとけよ」

そううんざりしてしまう風景であることはまず、間違いない。何しろ、自分はこの空間のせいで落ちた……と半分思っているからだ。残りの半分は――

 

『――翔、どこだ? 送れ』  「分隊全員バラバラとか、シャレになんねーよ? えっ? まじで? 以上」

『――だから、きいてるんだっての。一応お互いの信号はキャッチしてるから、それをもとに合流しよう。どうも高度が違うみたいなんだよなぁ……みんなほとんど同じ地点に落ちてるんだけど』

高度……という単語に反応し、もう一度天井を見る翔は、実は自分が落ちた穴の向こうにもいろいろと空間が広がるのを確認した。

 

「あー、そういう事か。OK、わかった。とりあえず……誰を起点にする?」  『――中川だな、ちょうど中間地点あたりの高度だ』

「OK、了解した」

そして、歩き出す。彼は歩きながら懐のPDAを取り出し何かを操作する。

そうやって表示される画面上に自分の位置情報と仲間の位置情報が流れて、最後には中川の居場所とそこへ向かうにはというルート検索が行われて表記されていた。

ただし、このルート検索が厄介者だ。本来、翔が落ちたエリアは想定されていなかったエリアらしく、情報がほとんどない。それゆえに衛星からのスペクトル分析などの手法をもとに、想像されたエリアにおいて、最短と思わしきルートをAIが勝手に表示しているだけだったりする。

つまり、あてにならない。

翔は結局自分が落ちてきた天井を見るだけだった。要するに……

 

「俺様が思いつく限りの最短ルートって、まじでこれしかねーよなぁ……」

彼はアンカーガンの引き金を引いた。火薬の力で飛び出すワイヤーアンカー。それは、天井にあいた大穴の向こう側へと。

 

「よし、かかった」

何かに引っかかった。上出来だ。アンカーガンを腰のベルト状のそれに固定し、スイッチを入れる。

そして、モーターがまわり、翔の体が重力に反する方向へと移動し始める。

上がった先は、先ほどと同じ金網の床が普通のエリア。ただし、天井と地面にでかい穴が開いてる点は普通じゃないが。

そして、再び地面に足を踏み住める。アンカーのワイヤーは使い捨てだ。切り捨てる。再びほどいて、元に戻す手間と、切り捨てて新しいものを交換するでは後者のほうが楽……という事であった。

切り捨てたワイヤーを投げたところで、彼はワイヤーが投げ切る前に、ワイヤーの端を再度握りなおして、そのまま、大穴の中に自分から落ちて――――刹那――銃声。

ワイヤーを握る腕の力で強引に、ぶら下がり、もう片方の腕を穴の外へ、つまり上へ伸ばす。

その腕には、拳銃が――。

銃撃戦。

その戦いの事を古今東西、こう称する。

 

「誰でもいい、はよ、こい! 送れっ!!」

翔は援軍よ来いと祈るが、その気配はない。隠れる場所が思いつかずとっさに自分が落ちたと思われる大穴にわざと落ちるしかなかった。

しかし、これはこれできつい。片腕の力で強引にしがみついているのだ。それも細いワイヤーを掴むという形で。

おまけに敵の位置がわからない。適当に敵の銃声がする方向に拳銃を向けているだけだ。拳銃の弾倉を交換する作業だっていずれ必要になるだろう。つまり、ピンチである。

いずれ体力か弾か、どちらかの限界が来るだろう。ワイヤーを絡めて必死に握る左腕。

 

(やべっ、麻痺してきた……)

そして、16発目、次が最後。ベレッタPx4拳銃の総弾数は17発。

そして、17発目。アサルトライフルは紐で肩からつるしているからいいものの、こういう場面では使い物にならない。何しろぶら下がっている立場なのだから。

だから――――拳銃を投げ捨て、代わりに手榴弾を大穴の向こう側に投げた。爆轟の音とともに、彼はしびれる左腕の力を振り絞り、大穴から這い上がる。

そして、そのまま、伏せた状態からライフルを構えて――

 

(――敵はどこだ?)

直後、目の前の金網床の金網に穴が開いた。銃撃だ。その方向に銃口を向けて、引き金を引く。

叩き出される5.56mmの銃弾。敵は――通路のその先の十字路らしき場所より撃ってきている。

あっちは隠れる場所があるが、こっちには無い。不利だ。後ろを一瞬だけ振り返り見る。後ろにも続く通路。それはどこまでも続いていて、終わりが見えない。

ならば――グレネードランチャーを使い、煙幕をばら撒くグレネードをぶっ放す。そして、取り出すのはアンカーガン。再びそれを天井めがけて引き金を引いた。そして、アンカーガンをベルトに固定して巻き取り開始。

再び重力に逆らう方向に体が動きだし、その階層を飛び越えた。

持ち上がる肉体。その肉体のすぐわきを走る火戦。銃弾が飛んだその熱い空気と衝撃の一瞬のライン。そして、新たな階層の金網床に足を下す。後ろの大穴。飛び出してきた穴を背中に走りだ――し――t

 

「翔! 後ろ!」

目の前に現れたのは、日和。彼女の声。彼はあえて、地面に向かって倒れこむ。後ろなんて見る余裕はない。

逆に日和がライフルを構え、翔の後方に向かい、引き金を引く。地面に倒れこんだ翔は、そのまま転がり、仰向けになってライフルを構える。

まるで自分だった。アンカーガンを使って、階層をひとつ、飛び越える風景は。しかし、違う点はいくつもある。

まずは、性別だろう。相手は女の子だった。

次に、扱う銃であろう。自分たちはM4カービンをはじめに連合西側やアジア枢軸に属するエリアの武器ばかりを扱っている。

だが、相手が使っているのはAK-47という、オーソドックスなカラシニコフ小銃。連合東側の武器だ。

次に、翔の様にアンカーガンを駆使して、大穴から這い上がってきた少女は――翔たちの敵だという事だ。

2丁のAK。アサルトライフルを2丁、左右に構えるように持つ。

アシストがあるとはいえ、ある種の無茶をしている。ライフルを2丁もちで扱うなど、反動でとてもじゃないが、まともに撃てやしない。

少女は、足を地面に着けると、長い髪を振り乱しながら2丁のAKを構えてそのまま引き金を引く。はっきり言えばそれは乱射だった。

反動を制御する気が全くない――――いや、正確には狙いをつけて打つ気がない。これはただの、銃弾の暴風雨だ!

精々、どこに向かって打つ。そこから外れないように注意する。その程度しかない!

バナナマガジン、AK-47の特徴的なそのマガジン。だが、それは明らかに改造され、拡張されている!

つまり、通常の総弾数30発を――超えている。もし、通常道理ならとっくに撃ち尽くしている――。

そんな銃弾の暴風雨に――――向けられるはM4の銃口。

AK-47が解き放つ7.62mmの銃弾と、M4が解き放つ5.56mmの銃弾。

銃弾が飛ぶ火線の数はともに2つ――! 然れども、狙いの正確さは全く違う!

敵の少女の乱射! 翔と日和の斉射! 狙うべき目標は2点と1点!

先に劣勢に陥るのは?

身をひるがえし、AKを一つ、捨て去る少女。彼女は左足を上げると、そのすぐ側面に取り付けられていたアンカーガンが発動する。左足首のあたりから射出されていく、ワイヤーアンカー。

その先端は翔の構えているM4カービンライフルに取りついた!

 

「――っ!」

そのまま、少女は左足をおろし、そのままアンカーのモーターを稼働させる!

 

「――ッチィ――――」

翔はライフルから手を放す。手放されたライフルはモーターの回転によって巻き取られていくワイヤーと共に、金網床をすべるように少女のもとへ――――

引き金を引く。

引かれた引き金は雷管を作動させ、炸薬を瞬間的に燃焼させていく……。放たれるのは銃弾。5.56mmの銃弾。

5.56mmの銃弾を解き放ったのはひよりの銃口。放たれた銃弾の行き先は翔のライフル。

 

「――っ!?」

アンカーの巻き取りを中止、そして無数の銃弾により、破壊されたライフルはその衝撃と、何よりも〝 〟で飛び上がる! 少女はAKを捨てたもう片方の手にベルトより、水平二連式銃身切り詰め散弾銃(ソードオフ・ショットガン)を取り出す!

そんな中、翔は、一つの折り畳み式の傘の様な機器を取り出す。「アクション」と小さくつぶやく彼の唇。その唇が閉まるより早く――音声認識でそれは起動する。

スペクトラ繊維と形状記憶プラスチック合金からなる即席防弾盾が瞬時に展開する。あくまでも即席。至近距離からのライフル弾なんて防ぐだけのパワーはほぼない。

だがしかし、傘であれば支柱にあたる頂点より流体金属を噴出し、噴水の様に即席の防弾盾が円形の流体金属の守りの中へ――

至近距離からのライフル弾ですら、1、2発程度なら何とかしてしまう粘性! 何よりもこの傘状の形状が傾斜装甲となり、内側に控える人間を守る!

盾を展開するのと同時に、翔は走り出す。前へと。

そして、捨てられた翔のライフルが〝仕組まれた暴発〟を――――。

 

無数の銃弾、破壊と暴発。そうしたいくつもの衝撃から宙を舞いあがるライフル。

敵の少女が取り出す散弾銃と翔が取り出した即席防弾盾。

そして、引かれる散弾銃の引き金。銃口飛び出すのはバードショット。

数百数十の小さな弾丸が一瞬にしてばら撒かれ、暴発する危ないライフルを吹き飛ばす!

そして、そのまま無数の弾丸は即席防弾盾へと――――

 

――弾かれた、防がれた、そのまま即席の防弾盾はただの板切れに変わった。それでも、走り出した勢いは失われない。

慣性の法則を阻止するほどの威力は存在しない!

翔が取り出すのはMP7。片手に使い物にならなくなった即席防弾盾。もう片手にPDWたる、MP7

狙いはただの一つ。

『接近戦』とそれによる敵の射殺。

何故、接近するのか。ぶっちゃけ合理的な理由などない。だって――――

 

(――そっちのほうが、確実に思えるだけ!)

思うだけでの突撃。しかし、それを止めるものは無い。ひよりだって、それを援護するように銃弾をばら撒く。下手をすれば突撃する翔を撃ってしまいかねない中、彼女の狙いは正確に敵を狙う!

敵の少女はその状況下で、引き金を引く。

水平二連式銃身切り詰め散弾銃のその2発目の引き金を。

最初の1発目はバードショット、2発目は――――

 

――かする頬。熱い、皮膚が焼けている。

空気が震えている。衝撃が伝わってくる。

2発目はスラッグ弾。巨大な鉛そのものの塊。そして、後方から聞こえてくる轟音。

敵は外したんじゃない。噴出する流体金属。これによって、弾道軌道をほんの少し、本当にわずかだけ変えられた。

 

いや、ひょっとしたら……

(……こうなることは織り込み済みか?)と、敵の少女は、思ってしまう。どうやら自分の敵は、相当のギャンブラーだ。

いくら、流体金属の守りがあるといっても、その時があれば、死ぬ。

だからこそ、彼女はギャンブラーであるこの突撃者に対し、敬意をもって――――

 

((――ぶっ潰してやる))

精神的な冷や汗を翔は書いてしまう。背筋が凍りそうだ。

それでもなお、彼は走る。2発目がまさかのスラッグ弾だとは思わなかった。そもそも2発目は撃たせないつもりだった。ひよりの銃撃でひるませるつもりだった。

が、ひるまない。敵はひるんでくれない。予想外なくらいのハードなハートの持ち主。

けれども、それは足を止める理由ではない。そうだ、ここで、こいつは潰す。

故に、後1歩で、その少女に手が届く距離! 足を止めず、そのまま突っ走り、銃口を彼女に定め、そのまま引き金を――――

――引けなかった!

どうして――――?

理由は、単純。

敵の少女は、容赦なく、走り寄ってきた、翔を蹴り上げた。

予想外――とまではいかない。だが、次の行動は本格的に予想外だった。彼女はそのまま両手のAKと散弾銃を投げ捨てる。

左手は右手襟の仕掛けへと延びて、そこから、ワイヤーアンカーのワイヤーを引き出した。そして、そのワイヤーを構えながら、今度は翔に向かって彼女のほうが走る。

 

「ねらえない!」

ひよりの悲鳴。

距離が、短くなりすぎて、翔を撃ってしまいかねない!

翔はあわてて、引き金を引くが、そもそも蹴り上げられて、ろくに狙いが付けられない状態での引き金など! ろくなテクニックも意図も存在しえない! 脅威足りない!

だから――

彼女は一切恐れず、そのまま翔の懐へと入り、ワイヤーを彼の首へと――――。

――小さな金属音。

硬質なものと金属質のものがぶつかったような音。ぶつかったものの一つはワイヤー。

もう一つのものは、エネメル質と人造合金で構成された物質。そう、人歯。とっさに口を開き、そのままワイヤーにかみついた。

けれども、それにひるんだのは一瞬。敵の少女はそのまま、ワイヤーを使って翔の肩から上を固定し、絞め殺すための準備とも取れる、行動を瞬時にはじめていく。

両腕を交差し、ワイヤーを絞め、そのまま、目の前の男を絞め殺す体制に――――ワイヤーが切れた。

翔の人造犬歯のカッター部位。

セグメンタタを扱うために『調整』を繰り返した肉体。その肉体が、細い小さなワイヤーを噛み切った。

そのまま、翔は相手にその頭部を突き出す。

頭突きだ。けれども、それを食らった少女のほうは、顔色を一切変えず、今度は少女のほうから頭を突き出す。

そして、その反動で後ろ後退する翔の後頭部をそのまま、ワイヤーで絞め殺すために突き出していた両手でつかみ、今度は膝蹴りをそのまま頭蓋骨に繰り出そうとして――ワイヤーカッターを構えたひよりがそのカッターを少女に向けて振り回しながら、その場に駆けつけた。

銃撃で対処できない乱戦状態。ならば、自分も参戦すればいい。

だが、敵の少女はその動きを見て、対応を変えた。右手襟の仕掛けから出したワイヤーアンカー。

その逆手、つまり左手襟の仕掛けから、新たなワイヤーアンカーが放たれた! ただし、狙いは天井。

そのまま、モーターがワイヤーを巻き上げ、敵の少女の体が宙に浮き上がる。

そして、そのまま、両靴を天井にくっつける。彼女の特徴的な金色の髪は重力に従い、床方向へと延びるが、彼女自身は重力に反し、天井を床として、立ち上がる。

どうやら、『靴』が特別性らしい。左手から伸びる自動的に回収され再び襟の中の仕掛けへとおさまっていく。

同じようにかつて、翔のライフルをおしゃかにした足のワイヤーもおさまっていく。

よく見れば、彼女の武装はどうもワイヤー系の武装が多い。少なくとも、彼女が身に着けているむき出しの戦闘補助機構(バトル・アシスター)には、そういう系統の小型兵装が所狭しとついていた。

ワイヤーに電流を流して相手をどうこうする奴や、粘着質のワイヤーネットがゴルフボール大にまで圧縮された弾など。

 

「ワイヤー女かよ!」

翔はそんな感想を叫びながら、銃口を今度こそ相手に向けて――まるで図ったようなそのタイミングで、左右の壁の建材を突き破って、2体の鋼鉄の大蛇が……。

銃口はそんな蛇の1体に向けられた。弾丸に煽られながらも2頭の大蛇は一瞬だけ天井の彼女を見つめ――すぐさま翔やひよりの方向に頭を向ける。

引かれた引き金。翔がぶっぱなすMP7から4.6mmの銃弾が次々と飛び出していく。

だが、ライフルの5.56mmですら、無視して機関部が致命的なダメージを受けるその時まで動き続ける『殺人機械(キラースネーク)』にしてみれば、そんなもの、ちょっとした足止めになればいいほうである。

ましてや、今、キラースネークは2頭いる!

キラースネークは飛びかかる様に翔とひよりの2人に一気に迫ってくる。

ひよりがとっさに投げるのは信管が適当に刺さったプラスティック爆弾――――

――起爆。

投げられたプラスティック爆弾はキラースネークの1頭に引っ付いて――――ひよりは手元のスイッチを押した。

広がるのは熱風と衝撃波。起爆させられたそれはキラースネークの頭部を破壊するだけの破壊力を確実に発揮した。

――けれども、

         鋼鉄の蛇の動きは止まらない。

だって、センサー系統の集中区画をつぶされた程度で、止まるようには作られていない。

動力が続く限り、暴虐の限りを尽くす。それが、自立殺戮型ドローン。国際条約禁止兵器。

とはいえ、頭部が破壊された衝撃で、鋼鉄の大蛇は軽く後方へと吹き飛ばされた。つまり――時間稼ぎ程度にはなっている。

いや、それだけじゃないようだ!

 

「――ッチィ」

敵の少女の舌打ち。キラースネークのIFFロックを機能させるセンサーをやられたらしく、頭部を破壊され、後方に吹き飛ばされた1機の鋼鉄の大蛇が彼女へと動き出す。

ゴルフボール大の粘着性のワイヤーネットの球体。それを舌でなめまわし、それを大蛇へと投げる。

唾液という水分を吸収し、一気に膨張し、無数の網目を持つネットが開く。本来は粘着性故に広がるとは思えないそれだが、水分を吸収し、ほんの数秒間だけ粘着性が消えて、ただのネットとして、広がっていく。

それが、キラースネークを一気に絡めて包んでいく。そして、粘着性を発揮。

敵の少女はすぐさま、ネットに包まれたそれに、手榴弾を投げ込む。

粘着性だけでなく、爆発性の物質も編みこまれたネットは手榴弾の爆破と同時にキラースネークを全体全面から爆破する。

しかし、これで撃破されたのは1機。もう1機はIFFロックのセンサーも生きた状態で、翔とひよりの方向一直線に突き進む。

一番近くのIFFのない動く赤外線目標に対し、全自動的に攻撃を加え、殺戮を実行する自立殺戮型ドローン、キラースネーク。

翔はそんなキラースネークに向けて、赤外線ストロボを投げつける。地上作戦協力(近接航空支援:CAS)の際によく活用される赤外線の発光体マーカーだ。

学院傭兵軍ではストロボというよりマーカーという単語がよく使われるが、翔はなぜかストロボという単語を優先して使っている。

投げつけられたマーカー(ストロボ)は投げられた分だけ、運動エネルギーを持って動いている。動く赤外線対象物。

だから、キラースネークの優先的攻撃対象が入れ替わったのは必然だった。

その隙にキラースネークから離れる。

すぐさま、ストロボは破壊され、再びキラースネークは攻撃対象を探す。が、再びひよりが投げつけるのはプラスティック爆弾。

 

「――っ!」

敵の少女はここにきて、完全に流れが変わったことを理解した。

すぐさま、懐から取り出す1個の手榴弾。

目の色が変わるひよりと翔はそれぞれが持つ銃でそれが叩き落とせるか一瞬考えて――逃げることと、被弾面積を最小に抑える努力をする方向を選んだ。

と、同時に

 

((しまッ――――っ!))

二人はそんなことを考えてしまう事で一瞬だけ、されど一瞬という貴重な時間を無駄にしたことに気づく。

そして、閃光と大音響が周辺一帯を支配した。

 

(――蛇が! 蛇の場所がみえな――――っ)

『閃光音響手榴弾(スタングレネード)』。

あの敵の少女が投げた手榴弾はそう呼ばれる。そして――――

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