超融合! 次元を越えたベジータ   作:無敵のカイロ・レン(シス見習い)

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進化の光! 超サイヤ人フォレスト覚醒

 全王宮が存在してい()、十二の宇宙いずれにも属さない特殊領域。

 宇宙空間にも似たその場所では、二人のサイヤ人と一人の邪神による激しい攻防が繰り広げられていた。

 

「はああっ!」

 

 時空さえ揺るがすほどの「神の気」を一気に引き上げていくと、悟空が青色の尾を引く超加速から蹴りを仕掛ける。

 しかしメタフィクスの右腕により阻まれ、その一撃は胴部まで届かなかった。

 

「む……」

 

 だが、そこで攻撃の手を止める悟空ではない。蹴りを受け止められたと見ればすぐさま至近距離から左手をかざし、光の槍のような気功波を速射する。

 メタフィクスは咄嗟に上体を逸らしてその攻撃を回避するが、僅かでも態勢を崩したその瞬間を戦闘の天才は逃さない。

 

「ビッグバンアターック!」

 

 間髪入れず、後方にて力を溜めていたベジータが右手から必殺技を発射する。メタフィクスの近くに居る悟空諸共巻き込もうとする一撃には微塵の容赦もなく、直撃を受ければ神であろうとダメージは免れないだろう。

 しかしメタフィクスはその場から掻き消えるような超高速の動きでそれをかわすと、同じく直撃コースに入っていた悟空も瞬間移動を使って事もなげに回避してみせた。

 そしてその瞬間移動は、ベジータのビッグバンアタックから逃れる為だけに使ったものではない。

 

「だりゃあっ!」

「……!」

 

 彼は持ち前の第六感でメタフィクスの動きを予測し、先回りした上でその拳を正面から叩き込んだのである。

 一発目の拳は命中し、激しい衝撃音を上げてメタフィクスの頬を打ち付ける。しかし二度目以降の連打は全て紙一重でかわされ、お返しとばかりに繰り出された回し蹴りに悟空は吹っ飛ばされていった。

 

「でやああああっ!」

 

 だが、それと同時にメタフィクスの背後から回り込んできたのがベジータだ。片方を対処しても、もう片方の存在がメタフィクスに息つく隙を与えない。

 超サイヤ人ブルーと超サイヤ人ブルー。

 孫悟空とベジータ。

 二人のサイヤ人の戦闘経験や格闘センスは全宇宙でも屈指のものであり、二人ともライバル同士である為に互いの戦い方を熟知している。そんな彼らだからこそ共闘経験こそ少ないが、連携した攻撃はメタフィクスにも通じていた。

 

「流石に手強い。ゴクウブラックと対峙した時も、そうやって最初から二人で戦えば済んだものを」

「馬鹿が、カカロットと一緒に戦うことなど出来るかっ! 今回だって、奴が勝手に割り込んできただけだ!」

「貴方はそんな身勝手な拘りが、ご自身の息子の世界を滅ぼしたのだとわかっているのですか?」

「黙れ! 貴様の御託になど付き合っていられるかああっ!!」

 

 怒りに燃えるベジータが左右から拳を乱れ打ち、メタフィクスがそれをいなす。

 音速を超えて放たれる五十発のパンチが空振りに終わった直後、五十一発目のパンチをメタフィクスが右手で受け止め、握り返しながら口を開いた。

 

「貴方ともあろうものが、攻撃に迷いが見えますね。心のどこかでは気付いているのではないですか? 本当に正しい者が誰なのか」

「ッ──! 貴様……!」

 

 この世界をゼロに巻き戻すと宣言したのは、あくまでもそれが人々の為になると思ってのことだとメタフィクスが言い切る。そう言った、自分こそが正義だと信じて疑わない物言いはかつてのザマスと変わらない筈だ。しかしその声は、その言葉は……今のベジータの胸に重く突き刺さった。

 ──それはメタフィクスという邪神の声と姿が、紛れもなく彼がその心に……負い目を感じている未来の息子のものだからであろう。

 

「ベジータ!」

 

 ベジータに密着した体勢から、容赦なく気功波を放とうとしていたメタフィクスを妨害し、超スピードで飛び込んできた悟空が体当たりで彼を突き飛ばす。

 図らずもライバルに救われた格好になったことを苛立ちながら、ベジータは横に立つ悟空と共にメタフィクスを睨みつけた。

 

「ちっ……余計なことを!」

「そうは言ってもよ……アイツを一人でやんのはきちぃぞ。スピードもパワーも、超サイヤ人ブルーのオラ達を上回ってやがる」

「まだ俺は、力を出し切っちゃいない!」

 

 生粋の戦士である二人には、戦闘中においてメタフィクスの戯れ言に一々付き合うつもりは無い。彼の──彼の中に居るトランクスの話を聞くのも、共に彼を戦闘不能にしてからにすれば良いと考えているからだ。

 だがそれは当初の想像以上に難しく、メタフィクスという邪神の厄介さが神の力を封じる結界だけではないのだということをしみじみと実感させられていた。

 彼は未だ底を見せている様子では無いが……おそらく素の力でも、破壊神ビルスと同等かそれ以上のものを持っていると見て間違いないだろう。

 勝てないとは思わない。

 しかし、一対一で戦っては相当に厳しい相手だというのが彼を冷静に見極めた上での結論だった。

 既に魔人ブウやザマスの時と同じく、拘っている場合ではない。宇宙を管理していた神々が全滅した今、彼らはかつてそうであったように全く後の無い状況下で宇宙の命運を背負わせれていた。

 

「おめえだって、トランクスを取り返してぇんだろ? オラだって出来れば一人で戦いてぇけど、奴には二人でやんなきゃ勝てねぇ」

「うるさい! どいつもこいつも……俺に指図しやがって!!」

「ベジータ……」

 

 共闘を持ちかける悟空に対して、ベジータが頑なに拒絶の意思を見せる。

 だがその言葉はあくまでも彼がプライドを守る為のものに過ぎず、ゴールデンフリーザの時ほど一対一に拘っているわけでもなかった。

 共闘したければ勝手にしろ。しかし俺の邪魔はするなと言うのが、この状況における一貫したベジータの意思だった。

 

「はああ……! だだだだだだだだだだだだあっ!!」

 

 神の力を限界まで解放させたベジータが、左右の手から目にも留まらぬスピードで高速の気弾を連射していく。

 気弾を制御する技能で言えば、彼は悟空を上回る。豪雨のように降り注ぐ気弾の嵐をメタフィクスは一つずつ搔い潜っていくが、その顔色には少なからず変化があった。

 

「幾度となく見せてきた、貴方の得意技ですか。しかし……」

 

 いとも簡単に繰り出される数千もの壮絶な弾幕を前に、襲い来る百の気弾をかわしたところで全て回避することは困難だと判断したメタフィクスが真正面から対峙すると、「気」を集中させた右腕を左右に払うことで気弾を一発ずつ四方へと弾き飛ばしていった。

 しかしその為に足を止めた一瞬の隙こそが、ベジータと悟空の狙いだった。

 

「界王拳!」

 

 その青い姿に赤いオーラを纏った悟空が瞬間的に跳ね上がったスピードで横合いから回り込んでいくと、メタフィクスの背中に痛烈な蹴りを浴びせる。

 怯んだ隙に追撃を叩き込むと、豪快なハンマーパンチでメタフィクスを下方向へと吹っ飛ばしていった。

 そのまま流れるような動作で悟空は両手を腰の横位置へと持っていき、自らの得意技を放つ構えに入った。

 

「か……め……は……め……!」

 

 亀仙流の奥義、かめはめ波である。 

 落下の最中にもそんな彼の動きを察知していたメタフィクスは、即座に体勢を整えて上昇し、彼の射線から離脱しようとする。

 しかしそんな彼の退路の先には立ち塞ぐように待ち構えている、サイヤ人の王子の姿があった。

 いつの間にか気弾の嵐を止めた手で、彼もまた自身の得意技を放つ構えに入っていた。

 そして、同時に叫ぶ。

 

「ギャリック砲ー!!」

「波ああああっっ!!」

 

 ベジータはギャリック砲を。

 悟空はかめはめ波を。

 唸りを上げて放たれた閃光の色は、片方が赤で片方が青。二人の超サイヤ人ブルーは互いに得意技を放ち、メタフィクスを挟み撃ちにしていく。

 いずれも銀河系をまとめて消滅させうる凄まじい威力である。直撃を喰らえば、邪神と言えど決して無事では済まないだろう。しかし彼らの戦闘センスから放たれた光以上の速さで迫り来る二つの閃光を前にしては、既に逃げ場は無かった。

 

「……やむを得ません」

 

 冷淡にそう呟き、メタフィクスは足を止める。

 共闘した二人の超サイヤ人ブルーは確かに強く、二人掛かりならあの破壊神ビルスさえも倒せるかもしれない。そしてそのビルスの灰によって神封じの結界の効力から逃れている今、悟空もベジータも万全の状態で戦えていた。

 加えて彼らがある程度(・・・・)の逆境には強いことを理解しているメタフィクスには、彼らと対峙する以上既に油断も慢心も持ち合わせていなかった。

 

「ハアッ!!」

 

 故にこそ、彼は通常の状態(・・・・・)で戦うことをやめる。

 そして新たな姿へと「変身した」彼は、自身の左右から迫り来るギャリック砲とかめはめ波をそれぞれの手から発射した気功波で対応し、彼らの攻撃を文字通り相殺したのである。

 渾身の一撃が二つとも容易くあしらわれたことに──そして何より、変身した彼の姿に悟空とベジータは目を見開いた。

 

「なっ……! 貴様、何故……!?」

「あれは……!」

 

 体内に内包している禍々しい気の量がさらに膨れ上がった姿で、メタフィクスはゆっくりと上昇しながら二人を見下ろす。

 その身体から放たれる闇色のオーラには真紅の色合いも混ざっており、彼の放つ威圧感をさらに強調させていた。

 

「超サイヤ人ゴッドが、貴方がただけの変身と思いましたか? 名も無き界王神は創造の神……自らの理解が及ぶものを作り出すことが出来、かつて存在していた第十八宇宙において多くの生命を生み出した。私はその力によって超サイヤ人ゴッドを再現し、私自身の肉体として創造したのです」

 

 赤く染まった髪を気の嵐になびかせながら、同じく赤く染まった眼差しで悟空達二人を見据える。

 彼の放つ「気」の種類は彼の「再現した」と言う言葉とは裏腹に、「神の気」のそれとは似て非なるおぞましいものだ。

 しかしその姿は紛れもなく、悟空とベジータがたどり着いた境地である超サイヤ人ゴッドだった。

 

「尤も邪神である私の存在は、「超サイヤ人アンチゴッド」と呼んだ方が相応しいのかもしれませんね」

「これは、本当にやべえかもしれねぇな……」

「くそったれが……!」

 

 人間が世界という土壌の上で積み重ねてきた積み重ねを、一瞬にして無に帰す圧倒的な「力」。

 全王や破壊神と言ったものが散々し続けてきたことを自分自身が体現しているその状況に、メタフィクスが冷淡な表情に自嘲の笑みを浮かべて身構える。

 

 

「教えてあげましょう。現実にも未来にも……この世界に希望など無いのだと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (スーパー)サイヤ人ゴッド──それは超次元の歴史に存在するサイヤ人の神である。

 かつて邪悪なサイヤ人達に反旗を翻した六人のサイヤ人達が反逆の手段として生み出し、文字通り神の如き圧倒的な力で邪悪なサイヤ人の軍勢を壊滅寸前にまで追い詰めた。そんなゴッドの変身はあと一歩のところで解けてしまい反逆は失敗に終わったが、邪悪なサイヤ人達は次代においてこの神なる戦士の誕生を恐れ、歴史の中から消し去ったのだと言う。

 そんな超サイヤ人ゴッドは今現世に蘇り、さらに派生して生まれた超サイヤ人ブルーは超次元の孫悟空達における最強の超サイヤ人であると──龍姫神は一同に説明した。

 

 

「五人のサイヤ人と手を繋いで、一人のサイヤ人にパワーを集める……それだけで良いの?」

 

 超サイヤ人ゴッドになる為に必要な条件は、従来の超サイヤ人とは大きく異なる。

 いわく前提として正しい心を持ったサイヤ人が六人必要であり、ベースのサイヤ人に対して他の五人のサイヤ人達が手を繋ぎ合わせ、エネルギーを注ぎ込むことで完成するのだと言う。

 聞く限りでは意外にも簡単そうな条件に、拍子抜けしたような表情を浮かべるのが若いサイヤ人ハーフである孫悟天だ。

 ここに居るサイヤ人はベジータ、悟飯、悟天、トランクス、パン、ブラ、と合わせて丁度六人だ。ゴッドの儀式に必要な人数は既に揃っている為、後は手を繋いでエネルギーを注ぎ込むだけで良い。そう考えれば、変身に多くの前提条件が必要な超サイヤ人4などより遥かに簡単に思えた。

 しかしそれは、彼ら若いハーフ達が善のサイヤ人という存在の希少性を知らないからこそ言える意見でもある。

 

「確かに貴方がた六人は全ての条件を満たしていますが、サイヤ人は本来その……大半の者が悪の心しか持っていない民族でしたので」

「えっ……そんなに酷かったの?」

「……ああ、昔のベジータとか、そりゃもう酷いもんだったよ」

「ちょっとクリリンさん、パパのこと悪く言わないでよね!」

「あっ、ごめんブラちゃん。……そうか、これがジェネレーションギャップって奴か。俺も歳取ったなぁ」

 

 トランクスや悟天から下の世代が抱く純粋なサイヤ人に対するイメージは主にあの孫悟空と、地球で暮らしている中で穏やかになったベジータしか居ない為、既にサイヤ人など善人であろうと当たり前に受け入れている認識である。それは親世代から、子供の頃に昔話として聞いたことがあってもだ。

 しかし本来の純粋サイヤ人は紛れもなく、獰猛極まりない悪の戦闘民族である。だからこそ多数の他民族から恨みを買い、五年前にはベビーのような存在も生まれた。そんな救いがたい民族の中において六人もの善の心が揃うことがいかに異常なことか……実際に悪のサイヤ人と戦ったことのある年長組はしみじみと思いながら、そのような奇跡から生まれる超サイヤ人ゴッドの強大さに納得していた。

 

「パンさんにはこれから、その超サイヤ人ゴッドになっていただきます。そうすることでパンさんの中に眠っている「龍の気」が自身の「神の気」に反応し、二つの気が体内で融合することによって……私と同じ、龍姫神の力が目覚める筈です」

「えっと……」

 

 超サイヤ人ゴッドは彼らの知る四種類の超サイヤ人とは異なり、「気」の種類が「神の気」と呼ばれる特殊な気に変化する。そしてその変化こそが、龍姫神がパンに求めているものであると語る。

 パンの中に眠る「龍の気」が「神の気」と融合することによって「龍姫神の力」に至るのだと──そんな超理論を、まるで自分自身が体験してきたことのように彼女は強く言い切った。

 神と言えども、こちらに提示できる確証も無しに言い切ってみせた龍姫神に、不審とまではいかないまでも不思議に思ったパンが訊ねる。

 

「龍姫神様はその……サイヤ人のことに、随分詳しいんですね」

 

 それはやはり、龍の世界に居るという祖父の──孫悟空の影響なのだろうか。しかしパン達の知る彼がこの世界でたどり着いた最強形態は超サイヤ人4であり、その通りの意味で別次元の存在である超サイヤ人ゴッドのことなど何も知らない筈だった。

 

 ならば一体、彼女の──龍姫神のこうまで豊富な情報源はどこにあるのか。

 

 全部が全部「神だから」の一言で言い返されてしまえばそれで終わってしまう疑問であったが、彼女はパンの質問に苦笑を浮かべると、この場に居る全員にとって予想外な答えを返した。

 

「私もかつては、サイヤ人の血を引く人間でした」

 

「えっ?」

 

 龍姫神は確かに、自分は龍世界の神だと言っていた筈だ。

 そんな彼女はサイヤ人でもあったと──矛盾する発言の意味を一同が問い詰めるよりも先に、彼女は証明に動いた。

 

「その証を、今お見せしましょう。パンさん……貴方にも秘められている、その可能性を」

 

 ──そして、一瞬である。

 

 彼女がその身に宿していた「気」が、吹き荒れる「翠色」のオーラと共に爆発的な変貌を遂げたのだ。

 

 

「龍姫神様……?」

 

 長い髪が僅かに逆立つと、鮮やかな青色がその身を覆うオーラに染められていくように翠色へと変化していく。

 変化は髪だけではなく、目の色や体格にも現れている。彼女の海のように青かった瞳はエメラルドグリーンへと変わり、元々華奢だった身体もまた、数少ない無駄が削られているかのように心なしか細く縮んでいるように見えた。

 

「……っ!?」

「ス……スーパーサイヤ人だ……! 翠色の、超サイヤ人だ……っ!」

 

 変貌を遂げた龍姫神の姿に、一同が驚愕の声を上げる。

 龍の世界の神である筈の龍姫神が変化したその姿は、目や髪の色こそ違えど間違いなく、この場に居るサイヤ人達が知っている「超サイヤ人」だったのだ。

 そんな彼らの上げるざわめきを受けながら、彼女はどこか居心地が悪そうな……気まずそうな表情を浮かべて、パンの顔を今一度見据えた。

 

「これが、「龍の気」を持ったサイヤ人の超サイヤ人ゴッド──私は「超サイヤ人フォレスト」と呼んでいますが、超サイヤ人ゴッドの派生形の一つです。尤も私は貴方がたほど身体を鍛えていないので、自慢するほどの戦闘力はありませんが……」

「超サイヤ人フォレスト……?」

 

 彼女が変身した翠色の超サイヤ人の名を、「超サイヤ人フォレスト」と呼んだ。

 森林(フォレスト)の名を冠するその姿から感じられる気質は好戦的なサイヤ人の性質が色濃く反映される従来の超サイヤ人のものとは違い、強大な力をはっきりと感じるもののその佇まいは木々の揺らめきのように静かなものだった。

 

「貴方、何者なんですか? 龍の世界の神様で、元人間で、それでサイヤ人で……えっと、ダメ……混乱してきたわ……」

 

 畳み掛けるような新たな情報の奔流にはパンだけではなく、一同全員が混乱している様子だった。

 龍神界という神龍の世界の神と認識していた彼女の素性が、予想だにしない方向へと向かっていったのだからそれも当然である。

 そんな自身のことを、龍姫神が説明するのが心底難しそうな様子でたどたどしく語った。

 

「私の本名は、レギンスと言います。私もパンさんと同じで……別の世界では、かつてサイヤ人のクオーターとして生まれ落ちた人間でした。神の領域に足を踏み入れたサイヤ人ハーフの父と、わけあって神龍という龍の恩恵を一身に受けた母の元から、私は生まれました。

 そんな両親達の歩んだ特殊な経験が受け継がれ、突然変異を起こしたのでしょうか……私の身体には、生まれながらにして「龍の気」と「神の気」の両方が備わっていたのです」

 

 半分が人間で、半分が龍だと彼女は言っていた。だが、その人間の部分にサイヤ人の血が入っているのだとは誰が思おうものか。

 しかし彼女の身の上話は矛盾しているようで、そうとは言い切れない説得力があった。

 

 サイヤ人は既にこの場に居る六人しかいない筈だが、それはこの「次元」でのことである。

 

 元々住んでいたという人間の世界が別の「次元」であれば、彼女がサイヤ人の血を引いたとしても納得の行く話ではある。

 一同の動揺が落ち着くまでしばし間を空けると、龍姫神はその変身を解除し、パンに向かって言った。

 

「パンさんのゴッド化が成功した時、パンさんは通常のゴッドとは違う──私と同じ「超サイヤ人フォレスト」になることでしょう」

「なんだかよくわからないけど……その姿になれば、私にも龍姫神様と同じことが出来るようになるのね?」

「……おそらくは」

 

 パンの身に隠されているという新たな超サイヤ人、「超サイヤ人フォレスト」へ至る可能性。

 それは人間である彼女が神の力を得る可能性でもあり、あまりにも壮大な話を前に思考が追いついていないところはもちろんあった。

 しかし、もしも自分が龍姫神と同じ力を得ることが出来るならと──パンには真っ先に思いついたことがある。

 

「その力で、おじいちゃんに会いに行くことは出来る?」

 

 龍姫神の力である「次元渡り」の力で龍神界へと渡れば、そこに居る孫悟空と再会することが出来るかもしれないと。

 もう二度と会えないと思っていた祖父と──もしかしたら会えるかもしれないのだ。

 期待を込めたパンの眼差しを受けて、龍姫神は複雑そうな表情を浮かべる。その様子は出来るとも出来ないとも自分の口では返すことが出来ず、返答を困っているように見えた。

 

「……私の口から、保証することは出来ません」

「そう……わかったわ」

 

 だが神である彼女がはっきり否定しないということは、可能性はあるということだ。

 その時点でもはや、パンに迷う理由など無かった。

 

「やるわよ、みんな」

 

 自分が神に……龍になることを決意したパンが、覚悟の眼差しを向けて一同へと呼び掛ける。

 その胸では、今までずっと秘めていた思いが大きく膨れ上がっていることを感じていた。

 

 ──強くなりたかった。

 

 いつか祖父と再会した時、強くなった自分を見せて「ありがとう」と言いたかったから。

 あの時……いつもわがままを聞いてくれて「ありがとう」と。

 何度も私と、地球のみんなを助けてくれて「ありがとう」と。

 

 祖父への感謝の気持ちと再会への思い──そして何より、パンは一度は諦めた自分自身の可能性をもう一度信じてみたくなったのだ。

 

 

「よし、パパも張り切るぞー!」

 

 娘の決心を後押しするように、悟飯が左手を伸ばして真っ先にパンの手を取る。

 

「パンちゃんも大きくなったなぁ。あー、僕もそろそろ子供欲しくなってきたよ……」

「そろそろ結婚するんだろ? 俺なんか、そんな話欠片も無いんだぞ」

「お兄ちゃん奥手だもんねー、もっと私を見習わないと!」

「うっ……妹に言われると辛いなこれ」

「はは、ドンマイ」

 

 つい最近まで幼かった少女の成長をしみじみと感じる叔父の悟天が悟飯の右手を握れば、意外にもこの歳まで浮いた話が無いカプセルコーポレーション若社長のトランクスがどことなく哀愁を漂わせながら悟天の右手を掴む。そして彼の妹のブラが、そんな彼をからかいながら兄の手を握った。

 これでパン、悟飯、悟天、トランクス、ブラと五人のサイヤ人が揃って手を繋ぎ合わせたことになり、残るは一人。空いたスペースにベジータが腕を組みながら入ろうとするが、そんな彼の入場を青髪の少女が制した。

 

「超サイヤ人ゴッドの儀式には、少々気力を……サイヤパワーを消費します。なのでベジータさんはメンバーから外れて、メタフィクスとの戦いに備えてください。儀式には、私が参加します」

「……好きにしろ。どうせ俺には向かん仕事だ」

 

 ブラとパンの間に入るのはベジータではなく、龍姫神という運びになった。

 彼女の申し出にあっさりと引き下がったのは邪神との決戦前に余計な気を消耗したくなかったからか、はては年若い二人の少女の間に挟まれたくなかったからか……それとも儀式に必要な「善の心」が自分に備わっていないからだと思っているからなのかは、その言葉だけでは推し量れない。

 しかし若き戦士達の方からしてみれば、たとえベジータが儀式に混ざろうと何の抵抗も感じていない様子だった。

 

「そうかな? ベジータさんはもうずっと悪いことしてませんし、大丈夫だと思うんですけど」

「五年前なんか、「サイヤの誇りを持った地球人だー!」とか言ってたもんね」

「くだらんことを喋っている暇があったらさっさと準備しやがれ!」

「は、はい!」

 

 ──既に彼らの中では、ベジータに対する悪人のイメージは無くなっていたのだ。

 それはベジータ自身の変化と、時代の流れ、彼らの人の好さがことごとく上手く合わさった結果であろう。まるで照れ隠しのように悟天の背中を蹴り叩く彼の姿にブルマが苦笑し、その横で龍姫神が静かに微笑んでいた。

 そしてその龍姫神に対して、ベジータがあえて目を合わせない位置から問い掛けた。

 

「それと、龍姫神」

「はい」

「お前はクオーターだと言っていたが、お前の父親は……いや、何でもない」

 

 ……問い掛けようとしたところで、ベジータはその質問を取りやめる。

 彼女の青い目と髪と──自分のことを無意識に「おじいさま」と呟いていたその言葉から整理して、既に確信を抱いていたからだ。

 

 

 ──かくして、彼ら混血サイヤ人のみによる超サイヤ人ゴッドの儀式が始まった。

 

 空いたスペースに入った龍姫神がブラとパンの手を握り、円の形を作った六人のサイヤ人達が自らの「気」を放ちながら空へと上昇していく。

 

「パンさん、こんな役回りを押し付けてしまい申し訳ありません。龍になることは、嫌ではありませんか?」

「いえ、全然。あの超サイヤ人フォレスト、スリムになってたし私好みかも。ダイエットに最適ね」

「ダ、ダイエットですか……パンさんには必要無いと思うのですが」

「ふふ、冗談ですって」

 

 サイヤ人特有の「気」を解放した五人が、ベースになるパンに向かって慎重にそのエネルギーを送り込んでいく。

 その瞬間五人の身体から青白い光が揺らめき、パンは自身の身体が温かなものに包まれていく感覚を催した。それは不思議と、心が落ち着いていく気分だった。

 心からモヤモヤしたものが取っ払われ、徐々に悟りを開いていくような気分である。超サイヤ人への変身には軽い興奮状態になるといつか聞いたことがあったが、今のパンの精神状態はまさにその逆であった。

 まるで森林浴をしている最中のような落ち着いた心の中で、パンは今一度、自分自身を見つめ直す。

 

「パパ……本当は私、まだ悔しかったの……。修行をしてもみんなのように強くなれなくて、こんな私じゃおじいちゃんが守ってきた世界を守れないって、ずっと焦って、馬鹿みたいに悩んでた……」

「パン……やっぱりパンは、武道を続けたかったんだね?」

「……うん。勉強もそれなりに面白いって思ったけど、やっぱり私にはこっちの方が合っているみたい」

 

 祖父から平和を託されたこの星を守る為ならば、どんな些細な妥協だろうと許したくなかった。

 中途半端な実力で行き詰っている自分にも納得出来なくて、この五年間試行錯誤を重ねてきた。

 そんな自分がこれから先、どんな未来を選べば正しいのか、パンにはわからない。

 だがそれでも、パンは自分の気持ちに対して正直に生きたいと思った。

 この温かさに包まれながら、何となく今まで見えなかったものが見えたような気がしたのだ。

 

「大切な世界を守る力は、おじいちゃんやみんなが私にくれた物で……守ることが大事なことだっていうのは、みんなが私に教えてくれた物だから」

 

 だからもう、迷う理由なんて無い。

 自分は、パンは、自分の意志で大切なものを守る為に最善を尽くす。だがそれは、決して義務感や使命感から来る危うい選択ではない。

 

 ただ単純に──パンは父と同様に、人の幸せに喜びを見出せる人間だったのだ。

 

 ──そしてそんな汚れ無き思いに応えるように、新たな力がこの次元の宇宙に響き渡った。

 

 

「うわっ……?」

「やったか……!」

 

 六人のサイヤ人達が手と心を繋ぎ円を描いた時、純粋なる彼らのエネルギーによってそれは完成した。

 

 少女の身から迸る力に弾き出されていくように悟飯達が彼女の元から離れ、眩く神々しい閃光が世界を照らし出す。

 その光の中に浮かぶ少女の姿が一瞬だけ赤く変化した次の瞬間──彼女の髪は翠色に染まり、小さく跳ね上がった。

 

「成功したか」

「綺麗……」

 

 人間ともサイヤ人とも神とも違う、新たな戦士の誕生を見据えるベジータの胸中は推し量れない。

 どこか幻想的とも言える輝きを放ちながら、心なしか女神然とした容貌でゆっくりと地に降り立つ彼女の姿に──一同は息が詰まるような錯覚を覚える。

 

「これが、超サイヤ人フォレスト……?」

 

 数年前まであんなにも幼かったサイヤ人の末裔が発現させた「可能性」を前に、一同の心は完全に奪われていたのだ。

 

「なんだろう……凄く、心が落ち着く感じがするわ」

「超サイヤ人4や超サイヤ人ブルーが戦闘に進化した姿ならば、超サイヤ人フォレストは龍や神が持つ神秘の方向に進化した姿です。修練を積めば、いずれは神龍のような奇跡を起こすことも出来るかもしれません」

「うん……今の私なら、何でも出来るような気がする」

「ほ、本当に大丈夫なの? なんか急にパンちゃんが遠くに行っちゃった気がするんだけど……!」

「大丈夫よ、ママ」

 

 自分の両手を開いたり閉じたりしながら、パンは自身のものとは思えない何もかもが「違う」力に驚愕の表情を浮かべる。

 しかし従来の超サイヤ人とは違い、龍姫神同様、超サイヤ人フォレストに変身したパンの姿に感情の昂ぶりと言ったものは見受けられない。それどころかまるで悟りを開いたような静かな雰囲気を前にして、母親であるビーデルは大丈夫だとわかっていても心配の声を掛けずには居られなかったほどだ。

 

「では、始めましょう。空間の一部に、小さな歪みがあるのはわかりますか?」

「何となく……だけど、これがその次元の扉って言う奴? 何か不思議な感じ……西の都の景色が、全然違う風に見えるわ」

「それが、かつて神龍が見ていた世界でもあります。では、私も」

 

 龍姫神もまたパンに対抗するように超サイヤ人フォレストへと変身し、彼女の元へと歩み寄り、向かい合う。

 未知の力に積もる話もあろうが、今は新たな力が誕生した感動に酔いしれている場合ではなく、超次元の危機を思えば事は一刻を争う状況だ。

 

 故に向かい合った二人の超サイヤ人フォレストは、早速ベジータを「超次元」に送り込む為の準備に取り掛かった。

 

 

 

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