超融合! 次元を越えたベジータ 作:無敵のカイロ・レン(シス見習い)
「はああっ!」
翠色の超戦士となった少女が、人とも神とも違う特有の気を発しながらウーブに向かって飛び掛かっていく。
超サイヤ人フォレストの力に覚醒し、武道家として再起を果たしたパンとの組稽古であった。
通常の状態とは比較にもならない驚異的なパワーアップを前に、彼女の拳や蹴りを受け流しながらもウーブは舌を巻く。
「くっ……、いい感じです!」
今はまだ力に慣れていないからか、その潜在能力を生かし切れていない節はある。
しかしこれがあと数年もすれば間違いなく、自分に匹敵するだけの実力を身に着けることになるだろうとウーブは感じていた。
こう言っては何だが、思わぬところからライバルが誕生したことに、彼は一人の武道家として嬉しく思った。
「パンちゃん、昼ご飯が出来たわよ。ウーブ君も一緒にどう?」
そんな、時間も忘れて組手に勤しむ二人の元に、パンの母ビーデルが彼らを呼びつけに来る。
彼女の傍らには、ビーデルの夫にしてパンの父親である孫悟飯の姿もあった。
わざわざこうして夫婦が揃って迎えに来たのは、二人とも娘の戦士としての成長に興味があるからであろう。ウーブの目には彼女を見据える二人の目が穏やかで、心から安心しているように見えた。
「……だって」
「ふふ……じゃあ、俺もご一緒させていただきます」
組稽古の途中で横槍を入れられる形になったウーブとパンだが、時刻は既に昼の十二時であり空腹は隠せなかった。元々、この組稽古は昼飯前までに切り上げる予定であった為、二人は発散していた気を体内に収めるなり素直に舞空術を解除していった。
「パンもなんだか、一気に強くなったね。もう、僕より強いんじゃないかな?」
「まだまだ、超サイヤ人フォレストの力はこんなもんじゃないわ。もっと修行して、この力を引き出せるようにならないと」
これまでの次元を一気に凌駕してみせた娘の進化を目の当たりに、悟飯が驚嘆の表情で賞賛する。
そんな父の言葉に対するパンは謙遜しつつも、彼女らしい悪戯な笑みを浮かべながら冗談めかした。
「パパみたいにサボってたら、あっという間に弱くなっちゃうものね」
「ありゃ……それを言われるときついなぁ」
「時間があったら、パンちゃんと一緒にウーブ君に付き合ってもらえばいいんじゃない?」
「いや、それはウーブ君に悪いよ」
「いえ、俺は構いませんよ?」
「うーん……じゃあ、その時はよろしく頼むよ」
まだ見ぬ未来にはあらゆる可能性が秘められているように、人間には当人すら知り得ない無限の可能性が眠っている。
その可能性の一つが、先日の事件によって目覚めた超サイヤ人フォレストという新たな希望だ。
パンにその希望を与えた龍世界の姫君は昨日改めてこの世界の人々に礼を言い、龍世界へと帰った。
パンもまたその時は彼女に感謝の気持ちを伝えて、いつでも遊びに来てほしいと名残惜しく見送ったものである。龍姫神という立場上難しいとは言っていたが、彼女もまたまんざらでもなさそうな表情を浮かべていたのは記憶に新しい。
思えば彼女の来訪から始まって、色々なことが起こった。あの日が来るまでは、パンがこうして武道に戻って来るなどとは……実を言うとウーブには、以前からそうなる気はしていた。
他人事であるからこそ、落ち着くべきところに落ち着いたと言うべきか。
今日のように彼女が戦っている姿を見れば見るほどに、ウーブからしてみればやはりパンという少女は、勉学よりも武の道の方が似合っていると感じるのだ。
幼い頃のようにハツラツとした彼女の姿を眺めながら、彼女の父親である悟飯が率直な思いを訊ねた。
「パンは……今、楽しんでいるかい?」
自分にサイヤ人としての才能は、可能性は無いのだと決めつけていたかつての少女。
しかしそんな彼女にもまだ、この世界と同じように無限の可能性が溢れていた。
それに気づくことが出来た幸運と、支えてくれる人々に感謝しながら、パンが満面の笑みで答えた。
「うん、とっても!」
今この瞬間から続く明日への道が、彼女は楽しくて仕方が無いと言う。
そしてそんな彼女を見ている方もまた、楽しかった。
──貴方のお孫さんは、元気にしていますよ。
ふと感慨に浸ったウーブが、そう心に思いながらおもむろに空を見上げる。
澄み渡るような青い空は、この世界の未来を暗示しているかのように快晴だった。
──戦いは終わった。
龍の世界から現れた赤猿の超戦士によって、邪神龍は葬られたのだ。
その結末を超次元の者達に伝えてくれたのは、異質な雰囲気を放つ異界の神龍であった。
悟空がそのことを知り、ホッと胸を撫で下ろしたのがその時のことである。
邪神は滅び、世界は平和を取り戻したのだ。たった一日のことが、数十年間戦い続けた気分であった。
しかし邪神龍の死を教えてくれた神龍であったが、邪神メタフィクス──何処かへ消えたトランクスの行方は語らなかった。
ただ、彼は語った。
邪神龍はトランクスがこの世界から消えた自身の散る間際に、かつて全王によって失われた未来の世界を蘇らせたのだと。
今回の事件の主犯である邪神龍──名も無き界王神の魂が、トランクスの居た未来を救う形となったのだ。
尤も彼が自身の最期に何を見ていたのかを知る唯一の人物は、既にこの次元には存在しない。
『何から何まで、すまなかったな……そっちに居る別の世界のオラにも言っておいてくれ。おかげで助かったって』
『……承知した』
神龍は宇宙を外れた遥か彼方で起こった出来事を語り終えると、悟空の頼みを聞き入れた上で龍の世界へと飛び去っていった。
そしてその際に、彼は『お前達に一度だけチャンスをやる』と告げて、一つの置き土産をこの世界に残していったのである。
──今回の件で失われた命と宇宙を、ほんの一部を除いて生き返らせてくれたのだ。
メタフィクスに殺された多くの人々と神々──そして、ベジータ。
命を落とす前の記憶をそのままに、彼らは再びこの世に蘇ったのである。
しかし、これは邪神メタフィクスの仕業であろう。
生き返った神々は、既に
「しっかし驚いたなぁ。ビルス様もウイスさんも、人間になっちまったんだもんなー」
事件から後日のことである。
現在二人の男が行っている組稽古をパラソルの下から眺めながらしみじみと語る悟空の言葉に対して、一人の猫
心底腹立たしそうに、猫人間──
「……ああ、おかげで破壊神として持っていた力は全部失ってしまったよ。これじゃあ、この宇宙の破壊だって出来やしない。寿命だって、もう百年も無いだろう。とんだ神殺しだったよ、奴は」
「命があるだけ儲けものですよ、ビルス様。全王様のことは残念でしたが」
元破壊神の横に立っているのは、こちらも元天使のウイスである。
彼らの見た目に関してはあの事件が起こる前と何ら変わっていない。ただ知る者が見れば、彼らが内側に保有している力が著しく低下しているのがわかるだろう。
ビルスもウイスもここには居ない多くの神々も、既に神としての機能を備えていない。
ウイスの話によればあの時、邪神メタフィクスはこの宇宙から神の存在を物質的にだけではなく、概念的な意味でも殺していたのだと言う。
故に神龍の力で生き返った彼らは、見た目こそ生前のままではあったが神として本来持っていた筈の体機能を全て失っていた。具体的な一例を上げればビルスは破壊の力を使うことが出来ず、ウイスも時を巻き戻すことが出来なくなっている。
完全に人間になったというわけではないが、今の彼らの存在はかつて神々が下していた定義から言えば人間と比べて何ら変わりなかった。
例外としてメタフィクスに直接手を下されなかった第七宇宙の界王神と老界王神だけは生前と同じ力を持っていたが、それは高位の神と呼べる存在が彼ら二人だけになってしまったことに他ならず、今頃彼らは界王神界にて大忙しなことであろう。
「界王神が二人だけになり、破壊神は十二の宇宙から誰も居なくなってしまいました。この私も天使ではなくなってしまいましたが……界王様と大界王様は依然健在です。彼らに任せておけば、当面の問題は宇宙の寿命が縮まってしまう程度のことで済むでしょう」
「宇宙の寿命って……それってヤバい話じゃねぇのか?」
「ええ、人類が居なくなった後の数千億年後は大変でしょうねぇ。人間になってしまった今の私達には、気の遠くなるほど先の問題です。トホホ」
自分達が神でなくなったことに対して、やはりと言うべきか多くの元神達はアイデンティティーを失い途方に暮れているらしい。しかし地球に居るこの二人に関しては、それほど応えている様子は見えない。
ビルスは苛立ってこそいるが落胆しているわけではなく、ウイスに関しては心なしか嬉しそうな様子にも見える。そんな彼らの身上が気に掛かったのか、少々
「ねえ! 得意の破壊ができなくなってビルスさんどんな気持ち? 破壊神が破壊できなくなったら何が残るのよ? ねえ? ねえ!?」
「やかましい! 破壊神じゃなくなってもお前一人破壊することは余裕でできるんだぞ俺は!」
「じょ、冗談よ冗談……妊婦には優しくしなさいよ。それで? もう神様じゃなくなったんなら、あんた達はこの先どうやって生きていくの?」
「それなんですよねぇ……私はこの際ですから、美味しいものでも食べながら人間ライフをゆっくり過ごしていくつもりです。因みにゴワス様は宇宙一の神チューバーを目指すのだとか。しかしそんな私達とは違って、ビルス様はご覧の通り、破壊だけが心の拠り所の悲しいお方なので……」
「お前も天使じゃなくなったせいか遠慮が無くなったな! ……まあ、僕もウイスと同じようなもんだ。たった数十年しか生きれなくなった身体で、前のように破壊を続けても仕方がない。今の僕じゃ悟空にすら勝てないだろうしね。……そういうわけだから、なんか食い物寄越せ。それでさっきの煽りは聞かなかったことにしてやる」
「あら寛大。っていうかそれじゃ二人とも、今までとあんまり変わらないわね」
「だな! まあ平和でいいじゃねぇか」
元破壊神と元天使は、この世界のバランスを保つ為に必要とされていた破壊活動を無期限停止とし、人間と同じような暮らしを満喫していく予定のようだ。
それならば、悟空にも言うことは特に無い。仮に破壊を続けると言うのなら、彼らが初めて地球に来た時のように全力で止めに入るところであったが、彼らがこれまでの生き方を改めたのなら積極的に断罪することもないという判断だ。
神龍は「チャンスをやる」と言っていた。これもまた彼らが神や破壊だとか関係の無い、ただのビルスとウイスとして生きていくチャンスだということなのだろう。
そんな二人の今後はさておき、ブルマが両手で擦っているその腹部に意識が向いた悟空は、彼女にその件について訊ねてみることにした。
「それよりブルマ、こんなところに来て大丈夫なんか?」
「ええ、今日のところは大丈夫だってさ」
「そっか、元気な赤ん坊が産まれると良いな」
「あんたにそんなこと言われるのも二度目か……あの時は何事かと思ったわよ」
「はは、あったなぁそんなことも」
ブルマの膨れた腹の中には、彼女の新しい子供が眠っているのだ。
それが発覚したのはつい最近のことで、彼女の妊娠を知った者達は驚きながらもめでたく祝福したものである。
そして生き返った彼女の夫もまた、薄い表情の裏に喜びを隠せていなかった。
ブルマはこの豪邸の庭で組稽古を行っている無愛想で不器用な夫と、彼の拳を受けて為す術も無く吹っ飛ばされている息子の姿へと目を移した。
「どう? うちの亭主王子は」
「はは……あの通り、その子の兄貴を厳しく鍛えてるぜ?」
亭主関白ならぬ亭主王子とは、言うまでもなく彼女の夫であるベジータを指した造語である。
悟空とブルマ。「我が子相手に容赦ないねぇ……」と気楽な調子でホットドッグを頬張るビルスとウイス。そんな彼らの視線の先で行われている戦いは、壮絶な親子稽古であった。
「はあ……はあ……!」
「どうした? 前よりなまっているんじゃないのか? 遊びにかまけてこのザマじゃ、未来のお前の足元にも及ばんぞ!」
「くっ……!」
超サイヤ人になった少年トランクスの攻撃を通常の状態でかわし、容赦ないカウンターを浴びせながらベジータが叫ぶ。
舞空術で浮かぶ彼らの下にはブルマ達の他にも固唾を飲んで二人の稽古を見守っている幼きマイ達の姿もあったが……だからこそ、ベジータは意図して息子に厳しく接していた。
じきにトランクスは、初めて過去に来た時の「彼」と同じ年齢になる。そうなれば、彼は自分に守られる存在ではなく、彼女らを守る存在になるのだ。新たな子供が生まれ、兄になるのならば尚のこと──トランクスもまた、そう思って自分から「俺を鍛え直してくれ」と志願してきたのである。
そんな息子の健気な思いに対して、ベジータは全力で応えていた。
もはや組稽古というには一方的な蹂躙であったが、幼き勇者の闘志は揺らがない。
「ま、まだまだぁ!」
「そうだ! 精々足掻いてみせろ! この俺が相手だろうが、いざという時に何も出来ないようじゃ話にもならんからな!」
「うわああっ!」
決して折れない心と、強さを身に着ける為に。
ベジータ親子の未来への道のりはまだ、始まったばかりだ。
そんなたくましい彼ら家族の一幕を見て、帰ったらオラも悟天と組手してみようかなぁと思いながら孫悟空は呟いた。
「……ベジータは良い父ちゃんになっただろ。なあ、トランクス?」
──きっと、今度こそ平和な未来へたどり着いたであろう英雄に向かって。
──これは、数年後のとある親子の一幕である。
さざ波の音が響く静かな浜辺を、一人の男と幼い少女が歩いていた。
男の髪は青みがかった灰色で、少女の髪は彼らの横に広がる海のように青い。
そんな二人はお互いに手を繋ぎながら、この散歩道を歩きながら談笑していた。
「ねぇ! それでおじいちゃんは、せるをたおしたの!?」
「それが……完全体になったセルと戦いたいからって、わざと見逃したんだ」
「おじいちゃん、たおさなかったの? やさしいんだね!」
「えっ、そういう話じゃ……」
「ちがうの?」
「……ううん、優しかったのは本当だよ。ただ、それと同じぐらい、厳しくて強い人だったんだ」
男が語る話に少女が相槌を打ち、一喜一憂して和やかな時間を過ごす。
それはどこの家庭にもあるような、昔話を懐かしそうに語る父親と、それを興味津々に聞く娘の姿であった。
実際、二人は平凡な家庭──とは言い難いが、紛れもなく血の通った親子であり、家族であった。
「レギンスもつよくなるよ! それでパパのこともママのことも、おばあちゃんのこともまもってあげるんだ!」
「ふふ……お前は優しいな。でもパパのことはいいから、二人のことをもっと大事にするんだぞ?」
「やだ! パパもわたしがまもるもん! パパはすぐいなくなっちゃうって、ママいってた!」
「あちゃー……しょうがないなぁ」
祖母譲りの青い髪をした娘の言葉に、見た目若々しい父親が困ったように頭を掻く。しかし手を繋ぎ合った二人の姿は、どちらも穏やかな笑顔だった。
「よいしょ」
「わわっ」
おもむろに足を止めた父親が、小さな娘の身体を抱きかかえて肩に乗せる。
何となくそうしたい気分だったというのがこの時の父親の気持ちであったが、肩に乗せられたことによって視点の高さが一気に変わった少女は、その青い瞳をキラキラと輝かせながら辺りを見渡した。
「たかーい!」
「こうしていると、さっきまで見えなかったものが見えるだろ?」
「うん! とってもきれい!」
夕日に照らされた美しい海の姿。
それを一望しながら、感動に染まった表情で少女が笑う。
小さな子供にとっては世界の何もかもが新鮮で、毎日が大冒険の日々だ。自分が子供の頃はあまりそう言ったものを楽しめた思い出は無かったが……せめて娘には、平穏な今この時間を楽しんでもらいたいというのが彼の親心であった。
「あ……おなかすいてきちゃった」
「うちに帰ろうか、レギンス。続きはまた聞かせてあげるよ」
「うん!」
日が落ちてきたことによって、彼は娘を肩に乗せたまま家族が待つ自宅への帰路につく。
このまま歩き続ければ十分ほどで、食卓に妻の作った夕食が並ぶ我が家にたどり着くことであろう。
一歩ずつ地面の感触を確かめるように足を運びながら、肩車をした体勢のまま彼は砂浜を歩き進んでいく。
そんな時、ふと頭の上から何かを見つけたような娘の声が響いた。
「あっ!」
「ん……どうした?」
「あれ! あそこにひかってるあれだよ!」
珍しい貝でも見つけたのかと、娘に指差された方向へと顔を向けてみる。
過ぎ去っていく波の中から、ポトリとそれはこぼれ落ちてきた。
「あそこ! きれいなボールがおちてる!」
「ボール……?」
夕日の光を反射させながら、淡く輝く橙色の球体。
近づいてみれば片手に収まる大きさの、一つの玉であった。
彼は娘に言われるがままにそこへ近づくと、拾い上げて顔の前へと持っていく。
そして、彼は気づいた。
「……!?」
ガラスのように透き通った美しいボール──その中には、赤く煌めく四つの星が浮かび上がっていることに。
それを認めた瞬間、彼はふっと何かを察したように微笑み、せがむ娘の両手へと、その玉を手渡してあげた。
「おほしさまがひとつとふたつと……みっつ?」
「……外れ。全部で四つだね」
たった一つの物語が、全てはそこから始まったことも。
その玉を色んな角度から覗き込んではおお、っと感激の声を上げる無垢な娘の様子に苦笑しながら、彼が遠く忘れた過去を懐かしむように語った。
「世界には、これと同じようなボールがあと六つあってね……俺の師匠や父さん……お前のおじいちゃんも集めていた、大切なものなんだ」
「へぇ~!」
それはおとぎ話のような、夢に溢れた話で──けれど、何よりも大切な現実の話で。
「この玉を七つ全部集めると龍の神様が現れて、好きな願い事をなんでも一つ叶えてくれるんだよ」
「おねがいごとを? すごーい!」
人は誰もが、願い事を持っている。
こうしたい、だとか、こうありたい、だとか、今そこに無いものを求めたがる。
それは決して悪いことではない。自分に無い物を求めるからこそ、それを勝ち取る為に努力することが出来るのだから。
それぞれが夢見る未来の為に、自分の明日を信じて歩むことが出来るその思い──それこそが、「希望」と呼ぶのだ。
「……レギンスは、どんな願いを叶えたい?」
「う~ん……うんとね……」
彼は今、その「希望」をこの世界に抱いていた。
そしてその希望のうちの一つである──愛する娘が自身の肩から飛び降りるなり、眩しい笑顔を見せて言い放った。
「レギンスは、このまえパパがはなしてたパパのおししょーさんと、おじいちゃんにあいたいなっ!」
そして、思い、笑う。
──血は争えないな、と。
やっぱりこの子は自分の子供だな、と──全く同じ願い事を考えていた彼が、そんな娘の笑顔につられたように笑う。
そして、一つの確信を持って言った。
「……会えるよ、きっと」
何故この宝玉が……三十年以上も前に神が居なくなったこの地球に現れたのか──この奇跡が誰によって起こされたものなのか、彼は察していた。
だからこそ、彼は──トランクスはそっと、ずっと言えなかった感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう、ドラゴンボール……」
そんな時。
ふと、彼の目の前に二人の青年の幻影が現れては微笑んでくれた気がした。
一人は彼の大切な師匠、天国に逝った筈の山吹色の道着を着た男。
そして、もう一人は──
「ありがとう……俺の友達」
明日を取り戻し、動き始めた世界の一人の父と娘。
海の彼方からやってきた青い風が、そんな二人の髪を優しく撫でつけていった──。
青い風のHOPE 見えない明日を照らすのさ君が 希望
危険な奴らがほら接近遭遇 僕らの味方はそうさ無鉄砲
歴史なんて信じない だからバッチリ決めてくれよ!
イカす笑顔で ピースサイン!
青い風のHOPE 辛いときこそ胸をはれ 新しい波をおこせ!
青い風のHOPE 見えない明日を照らすのさ君が 希望
青い風のHOPE 走り始めた伝説を その手で刻みつけろ!
青い風のHOPE 信じられない世界が君を 待ってる
見えない明日を照らすのさ 君が 希望
カプセルコーポレーション、研究室。
そこで行われていた次元移動装置の実験は、この日を持って最終段階を迎えていた。
カプセル状の装置の中で眠ったように瞑想をしながら待機しているのは、この日が訪れることを誰よりも待ち望んでいたベジータの姿だ。
そしてその装置の横には、超サイヤ人フォレストに変身し、祈りを込めるような姿勢で龍の力を解放しているパンの姿があった。
「次元の扉……開けたわ、トランクス」
「ありがとう、パンちゃん。と言うことで、いつでも行けますよ、父さん」
パンが超サイヤ人フォレストの力を使って次元の扉を開き、改良を加えた装置を起動させてベジータを撃ち出す。
どれか一つが欠けても、今この時にそれが実現することはあり得なかったことであろう。
ベジータはその肉体が全盛期を迎えているこの期を逃すことなく、遂に悲願を果たすことが出来たのだ。
装置の中でカッと目を開くと、モニターからその様子を窺っているトランクスに対してベジータが口を開いた。
『トランクス』
「はい」
数拍の沈黙。
何らかの感慨に浸っていることがわかるその間を経て、ベジータがただ一言告げた。
『……行ってくる』
改まって礼を言うのも、自分のガラではないなと……自身の中でそう結論付けたような、息子に対する不器用な一言だった。
しかし、それだけの言葉でも彼の息子は彼の意図を十二分に察していた。
──だからこそ。
「行ってらっしゃい、父さん」
快く送り出した息子の声を受けて。
GT次元最強の戦士は新たな世界──龍神界へと旅立っていった。
龍神界──そこは奇跡を司る神の如き龍達の住む、神聖な世界だった。
ベジータが足を踏み入れたその地にはかつて戦ったことのある邪悪龍のような龍の姿を見掛けたが、ベジータは脇目も振らず目的の人物の元へと前進していく。
道中では龍姫神レギンス──別の次元では彼の孫娘に当たる存在と再会し、会釈を受けた。そんな彼女の元からベジータはかつて未来の息子を送り出した時のように何も言わず二本の指を立てて通り過ぎ、さらに奥地へと突き進んだ。
そして青い風が吹き抜ける荒野にて、彼らは巡り合った。
「決着をつけるぞ、カカロット!」
次元を越えた宿命の戦い──それは彼らにとって希望の終着であり、始まりであった。
── 超融合! 次元を越えたベジータ ──
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