従者現代録   作:銀の鰹節

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~前回のあらすじ~
桂井と戦っていたが、彼の謎の能力によりピンチに陥る。
 ↓
幻想郷から皆が駆け付けて、何とか事態は収まった(今ココ!)



#20 葵に隠された生命の本能、です!!

 

 

――――お前は人を殺したんだよ、この殺人鬼ィ!!

 

 

…違う、私は殺人鬼なんかじゃない…!!

 

 

――――お前の弟も…殺してやるよォ…!!死ねェェ、草壁健汰ァァァ!!!

 

 

…い、いやっ?!止めてーーー?!!

 

 

――――フハハハーーッ!!!見ろォ、木端微塵だ…!!これでチャラさ、草壁葵ィ…!!

 

 

…―――――【コロス】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「――――ハァッ?!ハァ… ハァ…?!」

 

 

葵は飛び起きた。そして辺りをキョロキョロと確認する。

 

 

葵「ハァ…?!ハァ…?!…。…ハァ…。」

 

 

『ボフッ!』

 

 

和室の部屋で寝ている事を葵は確認すると、硬直させていた筋肉も力が抜ける。

 

葵「ゆ、夢…?(なにか、何かが違う…。私が、私じゃない…?)」

 

 

『ガララッ!』

 

 

葵「ッ?!」

 

襖が開き、考え事をしていた葵は驚く。襖の前には藍がいた。

 

藍「―――葵っ?!」

 

葵「ら、藍さ――――」

 

藍「ッ!!」

 

 

『ガバッ!!』

 

 

葵「 …? …?! 」

 

いきなり目が合ったと思えば藍さんが、飛び込んできた。どうしたんだろう…。

 

葵「ら、藍さん…?どうしたの?」

 

藍「良かった…目覚めて、本当に良かった…!!」

 

葵「(藍さんが泣いている…?!もしかして私、死にかけてたの…?)ら、藍さん、私ってどうしたの?」

 

藍「あ、ああすまん…。葵はまず、桂井と戦った日の事を覚えているか?」

 

葵「それは覚えているよ…。つい最近だからね…。」

 

藍「実はあれから3週間がたってたんだ…!!」

 

葵「さ、3週間?!私、そんなに寝てたんだ…。―――うわっ?!手がガリガリ?!」

 

葵は自分の手を見て驚く。肉という肉が痩せ、ほぼ皮膚と骨が残っているようなものだったのだ。

 

葵「ら、藍さん?!私何か食べないと死んじゃう?!」

 

藍「ちょ、ちょっと待っててくれ!」

 

藍は部屋から駆け足で出て行った。

葵はもう一度部屋を見渡してみる。

外からの陽ざしは強く、中庭へ続くと思われる襖は閉じられていたが、隙間から眩い光が差し込む。

 

??「葵さん、もう大丈夫かしら?」

 

葵「えっ?」

 

葵は声をかけられた方を振り返ると、長髪の女性が目にはいる。

 

永琳「あっ、まずは自己紹介よね。私は『八意 永琳』。薬を扱う事から幻想郷では仮の医者をやってるわ。」

 

葵「く、草壁葵と申します…。体調はもう戻っているように感じますけど…この痩せ具合には命の危機を感じます…。」

 

永琳「(顔色もいいし大丈夫かしらね…。)じゃあおかゆ、持ってくるわね。ちょっと待ってて頂戴。」

 

永琳は襖の奥から、用意していたお粥を葵に差し出す。

 

永琳「食べる時なのだけど、ゆっくり食べてくださいね?胃腸が慣れるまでは我慢してください。」

 

葵「い、いただきます…!!」

 

葵はお粥を蓮華ですくい、口へと運ぶ。

 

葵「…―――!!お、おいしい!!」

 

永琳「そう、良かったわ!さっきも言ったようにゆっくりと食べて頂戴。」

 

葵「はい!―――ってあれ?お粥が…ない?!」

 

永琳「…えっ?」

 

葵は元気よく返事して、再びお粥と向き合うも、目の前にはお粥が無かった。

 

永琳「えっ…?!ど、どういう事…?!」

 

葵「ゲフ!あっ…失礼しました…。」

 

永琳「(まさか…まさかだとは思うけど…目視できないスピードでご飯を食べたの…?!)」

 

 

『師匠ー!師匠ー!お昼御飯が出来ましたよー!!』

 

 

永琳が葵に疑いの目をかけた時、部屋の奥から永琳を呼ぶ声が聞こえた。

 

葵「わ、私はこれでいいでどうぞお昼ご飯を食べに行ってください…。」

 

永琳「そう…。何かあったら呼ぶか、この鈴をならしなさい。」

 

永琳は葵の布団の横に、鈴を置いていく。そして部屋から出て行った。

 

 

 

 

永琳「…(本当に食べてしまったというの…?!目で追えなかったわ…。)」

 

永琳が食卓へ移動していると、部屋の前まで来た時に叫び声が聞こえた。

 

 

『ギャーー?!て、てゐ?!アンタなに全部食べちゃってんのよ?!』

 

 

『し、知らないよ?!私だって食べようとしたら急に消えたんだから?!』

 

 

 

永琳「…ハァ。何を騒いでいるの、全く…。」

 

 

『ガララッ!』

 

 

鈴仙「あっ、師匠!聞いてくださいよ、てゐがご飯を1人で全部食べちゃったんですよ?!」

 

てゐ「だから、私じゃないっての!!だいたい、何人分もの料理を一瞬で食べる事なんて出来ないの!!」

 

鈴仙「…(語尾に『ウサ』を付けないって事は嘘じゃないのね…。)だ、だったら一体だれが…?」

 

永琳「で、料理が消えた―――」

 

永琳は消えた、という言葉にひっかかる。

 

永琳「そういえば、葵さんのお粥も消えたようになくなっていたわね…。ちょっと見に行ってみようかしら。」

 

永琳はちょっと葵の事が気になったので、部屋へと向かう。

 

永琳「葵さん、ちょっと様子を見に――――?!」

 

葵「ふぁんふぇふふぁ?(何ですか?)」

 

永琳は葵の口の中に何かが入っているのを確認した。

 

永琳「その口の中に入っている物は何かしら…?」

 

葵「――ゴックン!口の中?別になにも入っていませんよ?」

 

永琳「い、今貴女は何かを飲み込んだわよねっ?!」

 

葵「ふぇ?」

 

葵は気付いていなかった。さっきまで自分の口に何かが入っていた事を。

そしてこの奇妙な現象は永遠亭から幻想郷中へ広がっていくのであった。

 

 

 

 

~妖怪の山~

 

文「仕事後のおにぎりは絶品!!いただきま―――」

 

『パッ!』

 

 

 

文「あや?!あややややっ?!わ、私のおにぎりはいったいどこへ?!」

 

 

 

 

にとり「ふぅ…椛も将棋強くなったねぇ!!」

 

椛「フフフ、少しは勉強したんですよ…!」

 

にとり「さて、丁度お昼時だし昼食にしようじゃないか!」

 

椛「にとりさんはいつも通り、キュウリなんですね…!」

 

にとり「当り前よ!キュウリなら何本でも食べれるわ!」

 

 

『パッ!』

 

 

にとり「よし、じゃあいただ―――って、ええぇっ?!キュ、キュウリが消えたぁ?!」

 

 

 

 

 

 

~博麗神社~

 

霊夢「じゃあ3人そろったし、食べましょう。」

 

優「そうだな、いただきます。」

 

少女「いただきます!」

 

 

『パッ!』

 

 

霊夢「…え?」

 

少女「ご飯…消えちゃった…?!」

 

優「お、おいおい…どうなってんだ?!」

 

 

 

 

~魔法の森~

 

魔理沙「見ろ、アリス!特製のキノコカレーだぜ!」

 

アリス「あら、見た目は言わないとして香りは良いじゃない。」

 

魔理沙「ほら、早速よそって食べようぜ!!」

 

 

『パッ!』

 

 

魔理沙「ん?急に軽く―――ってなくなっちまったぜ?!」

 

アリス「わ、私も見てたわ…?!今、一瞬で消えたわね…?!」

 

 

 

~人里~

 

男子生徒「うわぁーー!!慧音先生のお弁当キレー…!!」

 

慧音「ありがとう、だったらみんなのお弁当と分け合いっこしようか?」

 

 

『パッ!』

 

 

慧音「…?!き、消えた?!」

 

男子生徒「食ったのは誰だァァァァーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

~白玉楼~

 

幽々子「妖夢~妖夢~!!」

 

妖夢「何ですか、幽々子様…餌――ご飯ならさっきだしましたよ?」

 

幽々子「ご飯が消えちゃったのよ~!!食べようとしたらパッ!って…。」

 

妖夢「ハァ…。食べちゃったんですよね、幽々子様?」

 

幽々子「ち、違うもんっ!ホントよ?!箸を伸ばしたら料理が消えたのよ~?!」

 

 

 

 

 

 

~紅魔館~

 

咲夜「(さっきから小刻みに時が止まっている…?!)」

 

レミリア「咲夜、どうしたの?何かあったのかしら?」

 

咲夜「い、いえ何でもありません…。」

 

フラン「わぁー!!サンドイッチ、サンドイッチ!!」

 

美鈴「咲夜さんのサンドイッチはおいしいんですよね!!」

 

咲夜「何を当り前な事を言っているの…。メイド長なんだから、サンドイッチぐらい作れないと失格よ。」

 

レミリア「紅茶の準備も出来たし、いただきま―――」

 

 

『パッ!!』

 

 

美鈴「ふぇっ?!き、消えちゃいましたよっ?!」

 

フラン「さ、サンドイッチぃ~!!」

 

咲夜「い、今また時が止まった…!?そして一瞬でここに来た者がサンドイッチを食べていった…?!」

 

レミリア「時を止めてこの私の昼食を奪うとは…。万死に値するッ!!咲夜、犯人を連れてきなさい、鉄拳制裁を下さなくちゃいけないわ!!」

 

咲夜「そ、それが時を止めた中を超スピードで移動していたため認識できなかったんですよ…。」

 

レミリア「ええーーーー?!!!」

 

 

 

 

~三途の川~

 

小町「あぁ~あぁ~ダメダメ、ほら小銭も置いてって…!」

 

幽霊「!」

 

小町「ちょ、おま…?!これ牛肉じゃん?!牛肉抱いて死んでいったの?!」

 

幽霊「!」

 

小町「ざ、残念だけど〔ジュルリ〕お肉も無理なんだよねー…〔ジュルリ〕。だから私が預かっておくよ!」

 

 

『パッ!』

 

 

小町「あっ?!牛肉消えたァァ~?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~永遠亭~

 

葵「モグモグモグモグ…。」

 

永琳「な、何が起こっているの…?!」

 

葵の口がいっぱいになったり、元に戻ったりを超高速で繰り返していた。するとそこに輝夜がやって来た。

 

永琳「ひ、姫…?どうなされたのです?」

 

輝夜「この葵って子、時を止めまくってるわよ?」

 

永琳「…え?」

 

輝夜「その証拠に…ほら。中庭へ通じる襖がボロボロ。」

 

 

『ボロ~ン…』

 

 

永琳「あ、ああ…。」

 

永琳は、葵が光速を超えた速度で行動するため時間停止が発生していると考え、そこから1つの結果が生み出される。

葵は寝込んでいた間の食事を取り戻そうとしているのだと。

 

3週間→21日間  1日3食×21日間=63食分

 

この幻想郷で、今日だけ昼食が消える、という被害報告が合いついで起きたとか。

 

 

 

 

 

~1時間後…~

 

葵「あれ?いつのまにか、痩せ細った体が元に戻ってる…。」

 

輝夜「アナタ、面白い人ね。」

 

葵「え? …!!」

 

葵は輝夜を見た瞬間に、活動が停止する。

 

輝夜「 ? どうしたの?」

 

葵「ふ、ふつくしい…?!」

 

輝夜「えっ?」

 

葵「と、とうとう私の前にも女神というお方が現れる様に…!!」

 

輝夜「…プッ、アハハハッ!!ひ、久しぶりだわ!私に対してそんな行動をとる人と出会うのは!」

 

永琳「姫様。」

 

輝夜「…コホン。葵さん、体調はどうでしょうか?申し遅れましたが、ここの主である

『蓬莱山 輝夜』という者です。」

 

葵「あっ?!く、草壁葵です!貴女ほど美しい方は見た事がなかったので、見惚れてました…!!」

 

輝夜「いえ、私よりも葵さんの方が美しく、華やかに見えますよ。」

 

葵「び、美人さんからそんな事言われちゃうと、何か錯覚しちゃうなぁ…!!」

 

輝夜「…。ゴメ、やっぱ無理。こんな堅苦しいの耐えられないわ…。」

 

永琳「姫様?!」

 

葵「…え?」

 

急に口調が変わる、というか元に戻るというか…。

葵は輝夜の豹変っぷりに呆然とする。

 

永琳「姫様、あともうちょっと耐えてくれればよかっただけですのに…!!」

 

輝夜「だって疲れちゃうんだもん。それに葵さんだって気軽に話しかけてくれた方が話をしやすいしょ?」

 

葵「まぁ…はい。砕けた感じの方がやっぱり会話しやすいです、ね。」

 

葵は主に対して、さすがに敬語を使わなくてはと、ギクシャクではあるが丁寧に話す。

 

輝夜「無理に敬語を使わなくてもいいわ。お互い楽に話しましょう。」

 

葵「そう…だね。うん、そうだ!輝夜さんはどうして私の所に?」

 

輝夜「興味本位で来たの。だからこれといって理由はないわ。」

 

葵「そっか…。あっ、そういえばゆづっちは?!ノブっちは?!」

 

輝夜「ノブっち?ゆづっち? …あぁ、あの男の子達ね!丁度1週間前に紅魔館、白玉楼に引き取られてたわよ?」

 

葵「紅魔館…白玉楼…(咲夜ちゃんや妖夢ちゃんから聞いた所だ…。えっ、でもそこは幻想郷にあるって言っていたし…)んぅ…?!」

 

輝夜「葵さん何かわからない事があれば言って頂戴。永琳が答えてくれるから!」

 

永琳「ひ、姫様ァ…!!」

 

葵「じゃ、じゃあ質問しますけど…ここって幻想郷なんですか?」

 

輝夜「ええ、幻想郷。…もしかしてわかってなかった…?」

 

葵「ちょ、ちょっと待って…?!」

 

葵はご飯を食べた事により、頭が活性化する。同時に記憶がだんだんと蘇る。

 

葵「(3週間幻想郷で寝てた…?私達が南国へ行ったのは高校が夏休みだったからで…――)あああーーー?!!」

 

永琳・輝夜「!?」

 

葵「どどどーしよー!?高校もう始まっちゃってるよ?!」

 

永琳「高校…いわゆる寺子屋のようなものでしょうか…。でしたら心配ありませんよ。」

 

葵「えっ?」

 

永琳「客船が消えた事により、事故と判断されています。そして救命ボートで免れた人たちは残念ながら高波にさらわれてしまい、行方不明となっています。客船に乗っていた乗員乗客を捜索中、という段階です。」

 

輝夜「成程、つまり葵さん達も捜索中って事ね。」

 

葵「な、成程…!奇跡の生還ーッみたいな感じでいいのかな…?」

 

永琳「多分、八雲紫が教えてくれるでしょう。」

 

葵「紫さん…。あっ!ケン、健汰はどうなったんですか?!」

 

永琳「健汰さんは紫から預かって、今処置を施されていますが、目を覚まさないのですよ…。」

 

葵「じゃ、じゃあケンに会わせてください!!それか見せてください!!」

 

永琳「わかりました。無菌を第一となっております故、ガラス越しでの対面となりますがそれでもよろしいですね?」

 

葵「はっ、はい!!」

 

永琳「ではこちらについて来てください…。」

 

永琳がケンの元へと移動する。葵もそれについて行こうと立ち上がった時、グラッとバランスが崩れた。

 

葵「ッ?!」

 

輝夜「おっとと…。大丈夫?まだ立つのに不安定だろうし、私に捕まって歩いたらいいわ。」

 

葵「あ、有難うございます…!!」

 

葵は輝夜に寄しかかりながら、永琳について行く。

階段を下り、長い廊下を歩き続けると、奥に光が見えた。

 

永琳「あともう少しですので頑張ってください。」

 

葵「だ、だいぶ足がおぼつかないようになってきた…。」

 

輝夜「焦らないで、落ち着いて…。」

 

葵達は奥へと進む。光のすぐそばによると、目の前にはシャッターがあった。

 

永琳「よいしょっと…!!」

 

 

『ガラララララ!!!』

 

 

葵「―――ケン…。」

 

永琳がそのシャッターを開けると、目の前にガラスが現れ、奥には健汰の姿があった。

 

 

『ブクブクブク…。』

 

 

葵「えっ…?!あの、溺れてません?!」

 

健汰はある液体の中にいれられていた。まるでホルマリン漬けのようだ。

 

永琳「大丈夫、あの液体はほぼ窒素と酸素で出来た物だから。水中でも呼吸が可能よ。」

 

輝夜「アナタの言いたい事、私は分かるわ…。もうこれはホルマリン…」

 

永琳「姫様…少し黙っていた方がいいですよ?」

 

輝夜「はい。」

 

葵「で、でもこれで大丈夫なんですよね?!」

 

永琳「人を生き返らせる事は初めてなので…それ程自身は持てません…。」

 

葵「そ、そうですか…。スゥゥ――――」

 

輝夜「?」

 

葵は思いっきり息を吸い込む。そしてその息を一気に放出した!

 

葵「ケーーンッ!!アンタ、しっかりと目覚めなさいよォ!!今度は私がちゃんと守るッ!!だから戻って来なさいよォ!!」

 

永琳「す、凄い声量ね…?!大丈夫よ、目覚めるから。」

 

葵「はい。私、ゆづっち達に会いたいのですがどうしたらいいんでしょう…?紅魔館や白玉楼って遠いんですよね…?」

 

輝夜「紅魔館は遠いで済むけど、白玉楼は遠くて高いわよ?」

 

葵「やっぱりそうなんだ…。…ん?『高い』?」

 

??「葵、困っているようであれば私が手伝おう。」

 

葵「あっ藍さん!いいの?!」

 

後ろから話しかけてきた者、それは藍だった。永琳を呼びにいってから見なかったから存在をすっかり忘れていた葵であった。

 

藍「八意様、葵を連れて行ってもいいでしょうか?」

 

永琳「ええ、なんらかの現象で超回復したから外を出歩く以外、問題ないわ。」

 

藍「そうですか。じゃあ葵、行こうか。」

 

葵「はいっ!」

 

葵は返事をして、先程来た道を走って戻っていった。

 

輝夜「先程まで寄しかかっていないと転びそうだったのよね、葵さんって。」

 

永琳「はい、彼女の再生力にちょっと目を疑います…。」

 

 

 

 

藍「葵、走って大丈夫なのか?!」

 

葵「全然大丈夫!むしろ今まで動いていなかったからこのまま動きたい気分だよ!!」

 

鈴仙「ししょ―――うわっ?!お、屋内では走らないでくださいよー?!」

 

葵「あっすいません!あれ、兎の耳…??」

 

 

『フニッ』

 

 

鈴仙「ひゃっ?!さ、触らないでください?!」

 

葵は立ち止まると、目に留まったウサ耳を迷いなく触りに行った。

ほわっとしてて少し暖かい。

 

葵「あ、ゴメン…。本物なの、それ…?!」

 

鈴仙「ほ、本物です!!」

 

藍「葵、耳をもう一度触ろうとしないで上げてくれ…。」

 

葵「――ハッ?!無意識にまた触ろうとしていた…!?よし、藍さん行くよ!」

 

藍「ああ!」

 

葵達は永遠亭を出る。すると藍は葵を持ち上げ、そのまま宙へと浮いた。

 

葵「わっ、わっ?!」

 

藍「さて、行くぞ!!」

 

 

『ゴオッ!!』

 

 

藍は空を高速で移動し、最初に紅魔館へと向かって行った。

 

 

 

 

―――7分後…

 

葵「き、霧が凄いなぁ…?!あっちは凄い晴れていたのに。」

 

藍「ここの湖はよく霧が発生する事から霧の湖と呼ばれている。紅魔館はその湖の奥にある。」

 

葵「―――あ、ホントだ!影がボヤーっと出てきた!」

 

その影に近づくと、霧が薄くなり大きな館が現れる。

 

葵「で、でかぁー…?!しかも全体が赤い…?!」

 

藍「さて、ここからはあそこに立っている人に話しかけるといい。」

 

藍はそう言って、大きな門の隣に立っている女性を指さす。

 

藍「できればこの後も同行したいのだが、生憎仕事があるのでな…。」

 

葵「そうだったの?!何かゴメン藍さん…。」

 

藍「べ、別に謝る事はないぞ…?!私の意志で行動したまでだからな。じゃあ私はこれで。」

 

藍は再び宙へ浮かび、霧の中へと戻っていった。

 

葵「(まずは藍さんに言われた通りあの人に話しかけよう…。)あのぉ~…すいませ~ん…?」

 

門前に立つ女性「…。」

 

葵「あれ?―――ん?何か紙が落ちている…。」

 

女性に話しかけたが反応がなく、不意に下を見た時小さな紙が落ちてあった。

葵はその紙を拾う。

 

葵「ええっと―――【応答ナシ → 叩ケ or 殴レ 。】…。えっ?(まさかこの人を殴れって事?!いや、でもさすがにそれはなぁ…)あのー、すいませーん!!」

 

門前に立つ女性「…。」

 

葵「…。ごめんなさいっ!!」

 

 

『ゴキンッ!!』

 

 

門前に立つ女性「ハムラバッ!?」

 

葵は謝りながら、女性を殴った。

それ程力を入れていた訳ではないのに、女性は館の方へと吹っ飛んで行く。

 

 

『ガシャーン!!』

 

 

そして窓ガラスを破壊して、館へと突っ込んだのだった。

 

葵「―――…!?ふぇえ…??!」

 

葵はその場にただ立ち尽くしていた。今自分が何をしたのか理解できなかったのだ。

しかしその30秒後、門前に立っていた女性が帰って来た。

 

女性「い、一体アナタは何者何ですか?!もう怒るとかの前に驚きですよ、驚き!!」

 

葵「あ、え―――す、すいません!!」

 

女性「謝罪などいりません…!私と、出来れば勝負をしてほしいのですがよろしいでしょうか?!」

 

葵「しょ、勝負ー?!わ、私は人を訪ねに来ただけで…―――」

 

女性「お願いします!!ほんの少しだけでもいいんで!!」

 

葵「あ、う~…!!―――じゃあ腕相撲でいい…?」

 

女性「はい、構いません!では今から肘置きを持ってくるので、待っててください!」

 

女性が門の中へ行こうとした時だった。聞き覚えのある声が葵の耳に入った。

 

 

『リンさーん、ちゃんと起きてっかぁー??』

 

 

葵「!!こっこの声って―――」

 

女性「あっ、露木さん。もしかして昼食を持って来てくれたんですか?!」

 

露木「おう。―――って葵?!おま、起きたのか?!」

 

女性「えっ?!この方が…葵さん?!」

 

葵「の、ノブっち~!!会いたかったよぉぉぉー!!」

 

露木「久しぶりに呼ばれたぜ、そのあだ名!!長すぎるんだよ、お前は…!!」

 

 

『ギシッ!!』

 

 

葵「…あれ?動けない…。」

 

葵は露木に飛びかかろうとジャンプしたのだが、宙でピタッと止まった。

 

露木「お前を受け止める程の力は持ち合わせてないんでね、空中で縛らせてもらったよ。」

 

葵「せっかくの感動の再会なんだから、少しは我慢してよ?!女の子を抱きしめられるんだよ?!」

 

露木「お前は俺をどう見ているんだ…??」

 

 

『ニャー。(主人の友人か、目覚めて良かったぜ。)』

 

 

女性「ちょ、ちょっと待ってください!アナタ、葵さんなんですか?!」

 

葵「はい?まぁそうですよ??」

 

女性「な、何で言ってくれなかったんですかぁ?!お嬢様が首を長くしてアナタの事を待っていたので、名前を教えてくれれば屋敷へと案内しましたのにぃ?!」

 

露木「あー、じゃあリンさん、俺が葵をリアっちの所に案内しておくよ。」

 

葵「リアっち?」

 

女性「ま、またお嬢様をそんな風に…咲夜さんに怒られますよ?!」

 

露木「怒られようが、これが俺だ。止めるつもりはねぇ。そして葵、俺について来い。」

 

葵「あっうん。どなたか存じませんが有難うございました…。」

 

女性「また今度話ししましょうねー!!」

 

 

葵は露木の後を追う。

館に入って葵は思う、外装だけでなく内装までもが赤く目をチカチカさせる。ここにいたら1週間で視力が落ちそうだ、と。

 

そして2階3階と階段を上り、長い廊下を歩いた末に大きな扉の前で立ち止まった。

 

葵「ねぇノ―――――」

 

露木「シーッ!!3秒後に勢いよく入るからな…?」

 

葵「えっ?あっ、うん…。」

 

露木はにやにやしながら、葵に言う。

そして露木の言う通り3秒後、2人は部屋の中に勢いよく入った。

 

 

『バンッ!!!』

 

 

???「うひゃっ?!」

 

露木「ノックしてもしもぉ~し!この俺、何とスペシャルゲストをお連れしてまいりましたぜ、

リアっち!!」

 

葵「たのもー!!我こそはスペシャルゲストなり―――って何言わせてんの?!」

 

露木「さすが葵、俺とはよく相性が合う…!!」

 

葵「…で、この女の子は?」

 

勢いよく入った所為で、中に居た女の子はびくびくしながら縮こまっている。

何か小声で「うー…」とか聞こえてくる。

 

女の子「あ、アンタねぇ…!!」

 

露木「おやおやぁ??幼い子には刺激が強すぎちゃったかなぁ~??」

 

葵「ねぇ大丈夫…?」

 

女の子「…!!あ、貴女は誰かしら?この紅魔館の主である私に何か用?」

 

露木「ブッフー!!縮こまりながら主モードになってるからそれ程カリスマがでてねぇぞ?!」

 

女の子「ぅ…うー☆」

 

葵「…ッ!!(かっ可愛い…!!)もー、ノブっちったらこんな幼い女の子を虐めちゃダメでしょー!!」

 

葵はそう言って、女の子をキュッと抱きしめる。

 

女の子「アグハッ?!」

 

 

『ギリギリギリ…!!』

 

 

露木「お、おい?!お前の方が酷ぇよ?!圧迫して泡吹きかけてんぞ?!」

 

葵「えっ?!ギャーゴメーン?!!痛い?痛かったよねー?!ゴメーン!!」

 

女の子「――ええいっ、離れろぉ!! ハァ…ハァ…!!」

 

女の子は倒れていた椅子を直し、そして座る。

 

レミリア「わ、私はここの館、紅魔館の主『レミリア・スカーレット』よ。」

 

葵「名乗るほどの者じゃございませんが、名乗らせて頂きます。私は『草壁 葵』、得意な事は運動です。」

 

レミリア「アオイ…。ねぇ信寺、もしかして貴方の幼馴染?」

 

露木「あー…うん、一応そうだ。」

 

葵「純度100%の幼馴染です。まずノブっちが御世話になっております…!!」

 

レミリア「御世話になっているのはコッチの方よ…。まず外の世界では咲夜を有難う。貴女には感謝しきれないわ。」

 

葵「…もしかして君は本当にここの主なの?!」

 

レミリア「そうだけど…信じてなかった?!」

 

葵「いやぁ…だって、ねぇ…?」

 

レミリア「だ、黙りなさい!!――コホン、話は戻すけど―――」

 

露木「――――!!ま、また来たぁ?!蜘蛛(くも)()がき』

 

 

『シュルルルルー!!』

 

 

葵「な、何をやってんの?!」

 

レミリアが話を再開しようとした時、それを遮るように露木が蜘蛛の巣の様に扉を糸で縛り付けた。

 

 

『バァンッ!!』

 

 

そしてその次の瞬間には扉に強い衝撃が走り、砕けかけていた。

 

葵「なっ何?!」

 

レミリア「はぁー…。暴れるなら部屋から出てってよね!!」

 

露木「そ、そりゃないぜ、リアっちさんよぉ?!」

 

 

『バキーンッ!!』

 

 

葵「と、扉が粉砕したー?!」

 

再び強い衝撃が扉を襲い、扉が粉々となって辺りへ吹っ飛ぶ。

そして扉があった所には、レミリアと同身長くらいの金髪の女の子が2人立っていた。

 

女の子1「ウフフフフ…!!今日こそ終わらしてあげるわ、変態さん…!!」

 

女の子2「また少し、力を上げたわ…!!お仕置きの時間だよ、変態さんっ♪」

 

葵「…ふ、双子さんなの??何か容姿とか全て一緒なんだけど…?!」

 

女の子1「私達は双子じゃないわ。元々は1人だったの。」

 

女の子2「そう。狂気の感情が分裂して私が生まれたの!だからフランは私でもあるし、この子だってフランなの。」

 

葵「な、何をいっているのか理解できません…?!」

 

露木「さ、さすがに2対1は無理だなぁ…??そうだ葵、ちょっと取り押さえるのに協力してくれ!!」

 

葵「というかなんでノブっちはこの子達に追われているの?!」

 

露木「んなもん…何でもいいじゃねぇか?!」

 

葵「逆ギレ?!」

 

レミリア「その男はとある失敗をしたのよ。」

 

葵「し、失敗…??」

 

レミリア「ええ、まさか足を引っ掛けて転んだ先にあの子が居て、脚の付け根に顔を突っ込んじゃったなんてねぇ…。」

 

葵「…ノブっち…?」

 

露木「じ、事故だったんだ?!しょうがないだろ?!」

 

葵「テメェ…地獄へ行きなッ!!!

 

葵以外「…へっ??」

 

葵が思いっきり地を踏み込んだと思えば、その場から姿が消えた。

そして同時に露木の世界は回転していた。

 

露木「―――ブフッ?!」

 

葵「オラァッ!!!」

 

露木「ブベゴォォーー?!!!」

 

 

『ズガァァーン!!』

 

 

露木は葵に殴られていたのだ。露木はそのまま勢いよく吹っ飛び、金髪の女の子の後ろの方へ飛んで行った。

 

葵「純情でピュアな少女の心を汚しやがってェェェ!!!」

 

露木「いやちょっとま―――――フダラバッ?!!」

 

 

『ベキャッ!!』

 

 

露木「ちょっと葵さ―――」

 

 

『ゴキッ!!』

 

 

露木「だ、ダメ…これ以上はし――――」

 

 

『ドガッ!!ベキッ!!マギィ!!!』

 

 

露木「…」

 

 

『ズガッ!!ベキャッ!!ドスッ!!』

 

 

葵「…!!」

 

レミリアや金髪の女の子「ヒッ…?!」

 

葵がレミリア達の方へ振り向くと、返り血を浴びた顔がレミリア達の視界に入る。

 

葵「もぉ~う大丈夫だよぉ~、悪い人は私が懲らしめたから~…。」

 

露木「グプ……。(最初から…敵は味方にいた、という事か…。)」

 

 

『ニャウン…。(主人…顔が、落ちた豆腐の様に潰れていますぜ…?!)』

 

 

 

 

 

露木と久しぶりに出会った葵。

待っていたのは感動の再会ではなく、血生臭い再会となってしまった。

はたして露木は大丈夫なのだろうか…。

 

 

葵「(それにしても、何か力が上がっているような気がするんだよなぁ…。まぁ気のせいだと思うけど。)」

 

 

 

 

 

 




この作品をご覧になってくれて有難うございます。銀の鰹節です。
今回は、幻想郷スタートとなりましたね。しかも、あの事故(事件)から3週間も経っています。
やはり葵達は幻想郷でも大暴れ?
それでは今回はここまでにしたいと思います。
次回もゆっくりしていってね!
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