トウホウ・クロウサギ   作:ダラ毛虫

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ザ・噛ませ犬なオリ妖怪が兎耳幼女に虐殺されるお話

幕間と言いつつ、三千字ありますが


オリキャラをやられ役にするためだけに出したり、オリ主TSUEEE全開だったり
あと、オリジナル妖怪がキモかったり
何か色々アレなんで御蔵入り予定でしたが、半ギレコクトを書きたかったので天日干し
残酷な描写タグが初めて働いたかもです



普段より暗いというか黒いというかエグいというかアレなアレです
読み飛ばしても影響は多分無いので、苦手な方はスルーしてくださると幸いです

ちなみに時系列は、紅霧異変のちょっと前
スペルカードルール発布直前です


トウホウ・クロカラス 幕間

 妖怪の山の麓上空。

 空中でピタリと止まり、後続の鴉天狗及び白狼天狗にも停止を指示。

「……しくじりました」

「申し訳ありません、射命丸様」

「元々、哨戒範囲からは外れた場所です。

 貴女が責任を負ったところで何にもなりません」

 謝罪する椛に、冷たく言い放つ。

 どうせ、自分がもっと早く察知していれば、だとか、見当違いなことを悔やんでいるのでしょう。

「私が先行して足止めか可能なら討伐するべきところを、部隊を纏めることを優先した。

 判断を誤ったのは私です。

 貴女は自分に与えられた職分を全うしていたのでしょう。余計なことを悩むのは無駄です」

 そんなことより、と、改めて視線を眼下の光景へ。

 どこからか妖怪の山に侵入した、結構な妖気を放つ、おそらく大百足。

 おそらく、と付けたのは、その姿が、通常の大百足とはかけ離れているから。

 人間の上半身を幾つも幾つも滅茶苦茶に継ぎ接ぎしたような、おぞましい形状。

 一抱えほどもある頭部は醜く歪み、体表で血管やら筋肉やらがビクビクと蠢いています。

 見た目だけで、生理的嫌悪感を覚えずにはいられませんね、気持ち悪い。

「やっと見付けたぞぉ……厄災の黒兎とやらぁ……!」

「ん?」

 そんな化物が今、黒兎様と相対しているのです。

「……本当に、しくじりました」

 頼みますから、怒らせるのなら、貴方だけ殺されて収まる範囲にしてくださいよ、名も知らぬ百足さん。

 

「…………初めまして?」

 やめて! そんな緩い対応しないでください!

 妖怪の山の者は貴女のことをある程度は分かっていますが、余所者相手は駄目です!

「呵呵、呵呵呵呵ぁ! 聞きしに勝る弱腰じゃのぉ! 厄災よぉ!」

 こうやって調子に乗るに決まっているんですからっ!!

「纏う妖気だけは大層な物じゃがぁ、儂には分かっておるぞぉ!

 貴様の能力はぁ、『自らを強大に見せる』程度に過ぎぬぅ!

 そのような張り子に欺かれる儂ではないぃ!」

 あ、あいつ阿呆ですね。

 見たところ、大妖怪1歩手前の実力はありそうですが、頭が残念です。

 何やら、黒兎様を馬鹿にしたり、黒兎様を畏怖する妖怪の山を馬鹿にしたりしていますが、喋るほど阿呆が浮き彫りになります。

 黒兎様も、あの顔は完全に聞き流していますね。今夜の晩酌について考えている表情です。

 こんな調子であれば、百足が黒兎様に襲い掛からない限り、状況は動かないでしょう。

 今のうちに、阿呆百足を部隊で囲んで一気にーーーー

「箔をつける為か知らんがぁ、姑息にも人間を操りぃ、ちんけな流し雛を厄神に奉り上げるなどぉ」

 ーーーーマズイッ!?!

 

 妖力を風に込め、後続の全員を覆う。

 その刹那、世界が震えた。

 息が、心臓が、止まる。

 悪寒が神経を駆けずり回る。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 黒兎様から溢れた妖気の余波。

 百足へ向けられた殺気の余剰。

 それに気を取られた、僅かな間に、黒兎様は一足で百足の目前に跳ねていた。

 速い。

 私の最高速度に匹敵する、超音速の踏み込み。

 大口を開けて反応すらできない百足の舌の根を鷲掴み。

 同時に、膨大な、不吉を帯びた妖気が、百足の体へ。

「あ……ぎ、ぎぃゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 百足の舌が、根刮ぎ引き抜かれた。

 絶叫を上げ後退りしようするが、無数の足を縺れさせて、のたうつ。

 その足が胴体が、『不運にも』ぶつかり合いへし折れていく。

「嘘を吐くと舌を抜かれる。知らなかったのか?」

 百足の惨状に対する、黒兎様の静かな声。

 何の感情も無い。

 声にも、表情にも、瞳にも、何一つとして、込められていない。

 抜かれた舌は、真っ黒な妖力を浴び、塵も残さず消えていく。

 

「『お前は、逃げられない、抗えない』」

 

 静かな、余りにも静か過ぎる宣告。

 

「『お前は、死ぬまで、意識を失うことも、できない』」

 

 私も、見るのは初めてです。

 これが、不運を操る時の黒兎様。

 敵を意図的に壊す時のやり方ですか。

 言の葉を紡ぐ度に、百足へ流れ込んだ妖気が揺らめき、全身へ染み渡っていきました。

「た、た……たす、助け、て…………助けて……くだ、されぇ……」

 全身の関節が砕け、身動ぎすらできない百足の、命乞い。

「そうだな。私の気は、もう済んだよ」

 霧散する殺気。

 いつもの状態に戻られた黒兎様。

 漸く、私も部隊を覆っていた風を解くことができます。

 咄嗟に守ったから良かったものの、私が対処しなかったら、死者すら出たかもしれません。

 まだ震えていて、飛行も覚束ない者までいる程ですから。

 比較的、実力がある天狗を集めたはずなんですけど。

「私はもう、お前に何もしないさ」

 そう仰って、黒兎様は百足に背中を向け歩き始めます。

 

 そして入れ替わるように、周囲の茂みから現れる、中小妖怪の群れ。

「既に、私から何かする必要は無いからな」

 抵抗する余力も無い、そこそこ強力な大百足。

 群がる妖怪達にとってそれは、人間にも勝るご馳走でしょう。

「や!? やめ! やめろ! やめろぉっ!!」

 黒兎様という脅威が離れた途端に、妖怪の群れが死に体の百足に飛び掛かります。

 牙を突き立てて、その肉を妖力を貪り始めます。

「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ぁぁっっっ!!!!」

 妖怪達を振り払おうと、足を振るいのたうつ度に、百足の体は更に壊れるだけ。

 弾幕を放とうとしたのか、目や口に妖力を込めれば、暴発して更に壊れるだけ。

 そもそも、黒兎様が妖気を解放した直後に、こんな数の妖怪が群がるなど、普通は有り得ません。

 余りに『運が悪い』としか、言えないでしょう。

「厄災のよぉ! 殺せぇ! せめて、お前の手で儂を殺してくれぇ!」

 逃げられず、抗えず、意識を失うこともできない百足の、すがり付くような叫び。

 先程の命乞いとは真逆でありながら、本質は同一の願い。

 肉体的死か、精神的死か。

 最期を迎えるならば、雑魚に喰われて死ぬよりも、強者に葬られたいという、妖怪の矜持。

 百足の懇願に、立ち去ろうとしていた黒兎様は足を止めて、肩越しに返答しました。

「私の気は、もう済んだ。お前に手を下すつもりは無い」

 どこまでも静かな、欠片の感情も籠らない声、表情、瞳。

「お前は、蟻に集られた虫のように死ね」

 そう言ったきり、黒兎様は百足への興味を失い、去っていきました。

 

 慟哭が響き、やがて、消えました。

 

「椛」

「はい」

 冷や汗を拭い、隣に控えていた椛に声をかけると、恐怖心を押し殺した返事。

 全く以て、仕事熱心な奴です。黒兎様の妖気は、私の風で覆われて尚、辛かったでしょうに。

「貴女は、今回の経緯を、ご息女を愚弄した者をコクト様がどのように処したかを、報告に行きなさい。

 他の者については、元の態勢に復帰です」

 率いてきた部隊に指示を出すと、各々が散開していきました。

 だというのに、椛だけは、まだ私の側に残っています。

 まあ、何を聞きたいのかは分かっていますが。

「射命丸様は」

「私はこれから、コクト様の元へ、お手を煩わせた謝罪へ行ってきます。

 貴女はついて来ないように」

 なので、その先についても予め釘を刺しておきましょう。

 前にも同じような、護衛云々の話がありましたし。

「…………了解しました」

 無駄を悟ることができた点に関しては、椛も成長しましたね。

 で、あれば、私も早く用件を済ませてしまいましょう。

 徒歩で帰る黒兎様を見失うことは無いですが、先伸ばしにしても、悪化するだけです。

 迅速な謝罪こそ、この状況では重要なのですから。

 

 

「射命丸か。どうした?」

 ご自宅へ向かう黒兎様の元まで、息を切らす無様を晒さないくらいの速さで到着。

 勿論、着地の砂埃が黒兎様にかからないよう、能力を駆使して調整しています。

「この度は、私達天狗の不手際によりお手を煩わせたこと、謝罪申し上げます」

「……………………………ああ、アレか」

 今の間、本気であの百足の存在を忘れていましたね?

「大した手間でも無し、アレの目的は最初から私だったらしい。気にするな」

「ご厚情に感謝致します」

「こちらこそ、お前が守ってくれたおかげで、余計な被害を出さずに済んだ。手数をかけたな」

「それが私の務めですから」

 黒兎様が放った殺気により、私の部隊が潰れかけたことについて言及される。

 当然と言うべきか、私達が居たことは、お見通しでした。

 ……本当に、この方は敵には回せません。仮に勝てたとしても、被害がどれだけ出るやら。

「私も、できる限りは、今の平穏を楽しみたい。今後も、よろしく頼む」

「はい。これからもどうか、共に山で生きる者として」

 緩やかに、いつも通りの微かな笑みを見せる黒兎様の様子に、つられて私も、少し笑う。

「なんだ? 珍しく機嫌が良いな」

「そうですね。ちょっとだけ、良いことがあったんですよ」

 

 

 

 畏れるべき貴女。

 敬うべき貴女。

 貴女は正に、私達が畏敬するに相応しい。




コクト半ギレを考えた結果、前置き零で蹂躙して放置、となりました
半ギレなので、『能力を制御する』理性は残っています

地雷を踏まない限り爆発しない相手って、リアルでも厄介ですよねデンジャラス



このもみもみはきっと、白狼天狗内の飲み会で、あややのシリアスとノーマルのギャップについて絡み酒します
『真剣な時の射命丸様』の素晴らしさと『幻想ブン屋』の迷惑さを延々語っています
そして、誰かがあややの悪口を言ったら、大暴れします
あと、記者として楽しそうなあややのことも、何やかんや言いつつ好きでしょう
当のあややには微塵も伝わっていませんが!
むしろ嫌われていると思われていますが! ( ・∇・)<愉悦!




オマケとして、お気付きかもしれませんが、百足に『歪曲させた黒兎の情報』を吹き込んだのは、ゆかりんです
あの程度の小者にコクトが本気で怒ることは無い、と確信した上で
データ採取を兼ねた不要品廃棄
百足君、スペルカードルールに反発することが、目に見えていますから
黒兎のブチ殺スイッチもはっきりして、ゆかりん大勝利



【トウホウ・アホムカデ】

 百足君は、そこそこ強いけど大妖怪未満扱いが続き、かれこれ数十年。
 鬱憤が溜まる日々を過ごしていたところに、(紫さん発の)情報が入る。
「妖怪の山で畏れられている黒兎は、能力によって莫大な妖気を纏って見せている」
「流し雛を養子にし、その娘は、厄神として人間に奉られている」
 等々、『嘘ではない』情報の断片が。

 百足君は思った。
 こいつ殺せば儂も大妖怪扱いされるんじゃね?

 百足君は死んだ。
 ダイスロールが全てファンブル、みたいな目に遭って死んだ。

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