トウホウ・クロウサギ   作:ダラ毛虫

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すわっち!


良く言われる話ですが、頭良いキャラの限界とは「作者が長時間考えた内容を短時間で導くこと」です
つまり、何が言いたいかというと、ですね……これがわたしのぜんりょくぜんかい…… (´・ω・`)<しゅたーらいとぶれーかー



トウホウ・タタリガミ

 天狗の長の屋敷にて、会談場所である部屋に通され待たされる。もてなしは茶が湯飲みに1杯。それだけ。

 全く以て、不敬千万って奴である。茶菓子を要求する。あとお茶のお代わり。

「……気に入らないわね」

「そんなピリピリするなって」

 ピリピリというかビリビリというか。

 とりあえず殺気を仕舞いなよ、神奈子。

「ここは敵地。警戒してし過ぎることはないでしょう」

「敵意を露にして、あっちの警戒を強める必要もないでしょ。ていうか、無駄な誤魔化ししなくて良いよ。

 この扱いより何より、比べられてるのが気に食わないんだろ?」

 私の指摘に一層眉間の皺を深くする。

 図星か。

 昔っから、あいつ絡みとなると、いつも以上に分かりやすいこと。

「厄災の黒兎に比べれば脅威度は落ちる。

 そんな軽視が、透けて見えるわ、天狗の連中」

 他者と比較されて侮られる、しかも相手はあのコクト。

 要するに神奈子は、特に後者に対して苛立っているのだ。

 可愛い顔しちゃってまったく、組伏せて啼かせてやろうか。

「諏訪子。今、余計なこと考えてなかった?」

「そんなことないよー」

「……帰ったら殴るから」

 やっぱ可愛くないわこいつ。

 

 

 

「お待たせいたしました。

 天魔様と因幡コクト様がお越しです」

 それからまた、暫くして、先触れの鴉天狗が襖を開けた後ろから、天狗の長とやらが入ってくる。

 第一印象は、浮遊する巨岩。

 なるほど、強い。自負に相応、といったところか。

 んで、その更に後ろに、心底面倒臭そうなコクトの姿。

 絵面だけなら、巨体の天狗と並ぶせいで、いつもより小さく見える。

 ただし、それは妖気を別にした話。

 祟り神である私をしても、背筋がゾクゾクするくらいに不吉。

 これがいざ喧嘩の時になったら、妖力と混ざり合い更に色濃く薫るというのだから……ああ、堪らない。

 戦っている姿は見たことがないけれど、初対面で内心を透かし見た私にぶつけられた苛立ちは、思い返してもーーあ、ちょっとやばい。自重自重。今日はお仕事。

 

「とりあえず、挨拶だの何だのの前に乾杯だな」

 そして空気読まないねコクト。

 どこからどう話を切り出すか図っていた神奈子が、ぽかんとしてるよ。

 ああ、天魔は慣れてるみたいだね。またか、やはり、って顔だ。

 しかし、ここで動けないのはマズイ。

 今回の天狗と私達の会談にコクトまで呼ばれた理由は、私達とコクトの関係性の見極めだ。

 場合によっては、天狗にとって、そちらが主目的の可能性もある。

 要するに、私達も空気読まず、ある意味読んで、仲良しアピールする場なのだ。神奈子には無理かも知れないけど。

「それじゃ、お言葉に甘えて」

 なんて思考を刹那の間に転がしつつ、コクトが並べた枡を1つ取って、酒を注いでもらう。

 注ぎ返そうとしたが、先に天魔の出した枡へ注がれてしまった。

 コクトに枡を向けるその所作も、威厳を保ちつつ敬意を表す絶妙なもの。お見事。

 そしてようやく状況が読めたのか、我に返って枡を突き出した神奈子にも酒が注がれる。

 ……マズイなぁ……こんな早い段階で、私はコクトと親しくても、神奈子は関係が薄いことを確信された。

 間抜け、と隣に視線を向けると、先に言ってよ、と恨みがましい気配。そのくらい予測しておけ戦馬鹿。

 まあ、あたふたする神奈子が見られたから、とんとんかな。別に私、山の覇権が欲しい訳じゃ無いし。

 どうせ神奈子には、コクトと親しい演技なんかできないから、露見するのが早いか遅いかだよね。

 

 

「ではコクト様、失礼いたしますね」

「ああ、ありがとう」

 神奈子に注ぎ終えたところで、横に控えていた鴉天狗がコクトから酒瓶を受け取る。

 

 しかし、ここで私の予想が少しズレた。

 

「……注ぎ過ぎじゃないか?」

「ご安心ください。風を操り溢れないようにしています」

「能力の無駄遣いだな……」

 やりやがった、この天狗共め。

 コクトの性格からして、相手によって量に差は付けない。誰だろうとなみなみ注ぐ。

 それ以上は無いと、気を緩めていた。

 あっさり「風を操り」と言ったが、どんだけ繊細な使い方だよ。大気圧を支配できると想定しておくべきか。規模の上限は不明。

 能力を使わせてまで、そんな器用な手札(ヤツ)をこんな初手で晒してまで、『天狗が誰を最上位に置いているか』を示しやがるとは、やってくれる。

 そんな思惑をコクトが察するとは思えないし、あちらも考えていないだろう。示す相手は、私達。

 これに対する動きによって、こちらの手の内も晒さざるを得ない。しかも既に後手だ。

『こちらが最大級の敬意を向ける御方に、そちらはどんな立場なのだ』と問われた訳である。

 先手は譲ったが……このくらいならまだ……まだ主導権を取られた訳じゃない。

 

「ほら、射命丸、お前も呑め」

「うぇえぇっ!?! え!? えっと……。

 ……はい、いただきます……」

 って思った矢先にコクトあんたぁぁぁぁぁっっ!?!?!

 こんな場面で! 世話役に対して! 酒を勧める奴があるかぁっ!?!

 変わってないね! まっっったく変わってないねっ!!

 しかも他の面子と同じ量かい! やっぱりね! だと思ったよ!

 これでこの場に、「コクトから形式上同列に扱われている者」の数が、三から四に増えたわ!

 私達と天狗で二対一だったのが二対二になったわ!

 てゆうか天魔! あんたここまで読んで、その射命丸とかいうの連れて来たな!?

 コクトに勧められた時に、ビビって顔色うかがってきたのに対して、即座に頷いたし!

 宴会で親しげにしていた時点で、注意するべきだった! 予測できても回避できない状況だけど!

 このあんぽん兎が、親しみを感じた相手にベタ甘なことくらい、とっくの昔に知っていたのに!

 

 

 あーうー……こっから先の展開……どう持っていこう……。

 

 

 

 とりあえず現状確認。

 天狗は、コクトを自分達より上位に置き、それをわざわざ私達に示してきた。

 コクトは、天狗という種族に対してか、あの鴉天狗個人に対してかはともかく、少なくとも友誼以上の感情を持っている。

 まあ、つまり、権力争いには不干渉としても、私達が天狗を『潰そう』としたら、コクトが敵に回る訳だ。

 同じことが、天狗から見た私とコクトの関係にも言えるだろうから、過剰な危害をくわえられないのはお互い様か。

 敵勢力を相手取りながらコクトと敵対するなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。やってらんない。

 個の妖怪でありながら抑止力になるって、あんた本当に相変わらずだね。何も考えてないんだろうけど。なんにも考えてないんだろうけど!

 

 良し、方針変更。

 今回の会談で、天狗の譲歩を引き出すのは、見送ろう。

 代わりの手なんか、いくらでもあるんだから。

 

 

 それはそれとしておいて、すぐ横で事態の推移が読めなくなった挙げ句、酒に夢中な神奈子は、後でシメる。

 あんたうちの主神でしょうが表向き!

 

 

 

 

「んでさー、コクトの娘の雛ちゃんって子、人里で信仰集めてて、秋の姉妹神と併せて祀られてるんでしょ?

 私らも噛ませてほしーなー、なんて」

「その辺りのことは、紫が主に動いていたな。私は良く分からんぞ」

「いやいやー。コクトからの口利きがあるとないとじゃ大違いだって!

 八雲紫にちょっと一言! ね?」

 視線と仕草で天狗を牽制しながら、コクトと交渉、というかおねだり。

 鍵山雛や秋姉妹に関することは、天狗は関与したがらない。これまでの観察でそこは読めた。

 なら、今のうちに突いておくべき箇所はここだ。

 天狗の目の前で、守矢神社と鍵山雛達の間に伝手を構築する。

 口は挟ませないし、挟めないだろう。後になって、知らなかった、とは言わせない。

 連中は、コクトの地雷が何かを測りあぐねている様子。愛娘のことに口出しして、爆発に巻き込まれては堪らない、と考えているはずだ。

 舐めるなよ。こっちは、コクトが『厄に影響されない娘』に対して、どこまでの感情を傾けているか、ほぼ誤差無く推量できるんだ。

「私らが信者を増やしたら、雛ちゃん達の知名度も上がるし、良い関係が築けると思うんだよね」

「……詳しい話は、雛達を交えて、だ。

 私が勝手に決めることではないだろう」

「それなら、早苗も連れていって良いかな?

 あの子、外の世界じゃ心を許せる友達なんていなかったから、雛ちゃん達と仲良くなれたら嬉しいな」

「ああ……それは良いな。私からもよろしく頼む」

 思った通り! 利害云々ごちゃごちゃした話よりも、あんたが食い付くのは、『娘に友達が増える』こと!

 あっはっはっはっはっは! ざまあみろ天狗! 悔しい? 悔しい?

 ねえ今どんな気持ち? 自分達に不都合な話が進むのを指くわえて眺めて、ねえ今どんな気持ち?

「……細かいことは良く分からんが、あの子らの付き合いに関して、邪な企みは持ち込むなよ」

「はいはい分かってるよ。そんなことはしないって。あんたを怒らせたくないしね」

 なら良い、と首肯するコクト。

 話に割って入れない天狗。あと神奈子。

 ま、神奈子には、帰り道にでも解説してやろう。

 先手を打ったつもりが、私の返しに、内心で歯軋りしているだろう天狗は、良い気味だ。

 

 

 

 

 

 妖怪の山における布教の自由化や、参道の件は後回しになったけど、総合的に見れば悪くない。

 人里における習合は、コクトの娘が神で、その友達の姉妹神と一緒に信仰を集めていると知った時点で、大まかに考えてはいたけれど、天狗に対する揺さぶりも兼ねられた。

 コクトと娘、その関係者を、丸ごとうちの友好勢力にできれば、この山での権益なんていくらでも引き出せる。

 

 問題になるのは、次の八雲紫との交渉だろう。

 幻想郷の管理者という立場上、無駄な争いは起こさないはずだけど、余計な言質取られない様にしないとね……。

 その準備もしないといけないが、とにかく今は。

 

 いやー。久し振りに楽しい戦だった! 快勝とは行かなくても、一杯食わせてやった!

 

 

 

「因幡コクトについて天狗は、特に武力や能力の面で重きを置いている。

 対して私達は、娘達を介した人里への影響力という、未着手の資源をうちの領土に繋げた。

 っていうところ、かしら?」

「喩えが戦争臭いのがあんたらしいけど、うん、概ねそんな感じ」

 むぅ、と唸り声を漏らす神奈子。

 まどろっこしいとか考えているのだろう。

「殴って奪うのは無理だからね」

「分かっているわよ」

 昔のことを持ち出して茶化したら、ちょっと悔しげな表情。……イイな今の顔。

「天狗の長や、同席した鴉天狗も、かなり手強そうだったけど……因幡コクトは、あれほどの穢れを、自分の妖気として完璧に制御していた。

 そして……それだけでも充分な脅威だというのに、昔、初めて会った時にも感じた、奥にまだナニカ居る感覚……」

 へえ、と、感嘆が零れた。

 戦争馬鹿と思っていたけれど、意外と……ああ、戦争馬鹿だから戦力には敏感なのか。

「ま、良い勘してるよ。

 あいつの本領は、制御じゃなくて無差別だからね。もしも、下手に追い詰めたら、取り返しがつかなくなる」

 せっかくだし、気分も良いので、もう少し掘り下げてやろう。

「厄を弾く、穢れを周囲に押し付ける、災厄を撒き散らす。それこそがあいつの本領。

 死なない為に死に繋がる全てを滅ぼし尽くす延命が、あいつの本質だよ」

 危機察知とかは、あくまでもその本性を晒さない為の予防線。

 死を拒絶した末路の更に行き着く先を突き抜けてしまったモノが、あいつ、厄災の黒兎と呼ばれる怪物だ。

「……どうして諏訪子は、そこまで分かって、彼女に拘るの」

 呆れに満ちた眼差しと声に、笑って応えてやる。

「そんなあいつの蕩けた様子なんて、想像するだけでたぎるじゃない」

 結果は、余計に呆れられるだけだった。

 




神奈子様がどうしてこんなポンコツになったのかコレガワカラナイ
私の勝手なイメージで、複雑な政治は諏訪子様に丸投げの行動派だからでしょうか申し訳無い


特に役職に就いてない文ちゃんが重用され過ぎて、他の天狗に嫉妬されてないかな、なんて思いましたが、なら代わってくださいよ、ってところでしょうねあややかわいいやったー


なお、諏訪子様の黒兎への理解度は、不動の世界1位です
初見でおおよそ見透かし、更に二万年近く同棲すれば、ねえ?







フェイトネタな雑記


「バーサーカーで召喚されたら無差別モードかな」と考えたら、脳内で雁夜おじさんが魔力枯渇して死亡しました
蟲爺は召喚直後、本体含めて『運悪く』死ぬ
『他者を喰い物にした延命』とか、同族嫌悪まっしぐら
桜ちゃんについては、良くある話だな、とスルー
諦めている者に関心は皆無
仮に狂化していなかったとしても同じく
足掻かないのなら朽ちていけ
雁夜おじさんについても、私怨で濁っているので興味薄い

救済? ないよ?

雁夜がその他全てを擲って『桜の味方』になれば、途端に好感度跳ね上がるだろうけど



狂化のステータスは、E+++++++++
通常時は唯の無口幼女だが、宝具解放または『生命の危機』を条件にA+相当(Eの十倍)
『死なない為』なら神々をも殺し壊し滅ぼし尽くす狂気
サーヴァントという『仮初めの命』でも、それは変わらない
宝具名は『悉く殺し壊す五十柱』と書いて『アンラマンユ』とか?


第三次にてアインツベルンが失敗した悪神召喚の術式を、こっそりパクった蟲爺が改良
《アンリマユと同一視され、己の『形』を持つ神》を『殻』とする形式
さすじじ
神だろうと狂気に縛れば良かろう、と要らんことした結果、この様
ざまじじ


魔力不足で死にたくないから、冬木全域の運を下げて、搾り取った厄を魔力に変換、とかやらかしそう
みんな不運になーれ★ミ
黒子は幸運Fになって自害
神嫌いの金ぴか激おこ
第四次も大惨事





カルデアに召喚された場合
「……ん」
「……ん?」
「……んー……」
とかしか喋らない無表情幼女
幕間の物語でキレ顔差分お披露目

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