トウホウ・クロウサギ   作:ダラ毛虫

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感想でジョニーJさんからいただいた、『2万年の間にケロちゃんに喰われて子供出来たらなIF』です

つまり本編とは無関係です




思い知れ、武神よ

こ れ が 絶 望 だ






繰り返します
本編とは無関係です



あと、言うまでも無くこの娘さん変態外道鬼畜etc.です

ついでに、はっちゃけて脳が暴れるままに踊っただけなので、短め(二千七百字)です




番外編:トウホウ・ダイマオウ

「馬鹿……な……」

 

 それは悪であった。

 

 それは魔であった。

 

 それは不運であり不吉であり不幸であり厄災であり。

 

「あらあら。どうなさったのかしら? その程度かしら? もう終わりなのかしら?

 鉄を朽ちさせる手品で、貴女の芸は品切れかしら?」

 

 そしてそれは、祟りでもあった。

 

「終わり? 終わりなのね? そうね、それなら、だったらもう」

 

 悪神にして魔王にして厄災にして祟り神。

 

「貴女、終わらせてしまっても、良いわよね?」

 

 地上に顕現した地獄。

 人の形を真似た絶望。

 

 美しき少女の姿をした魔性。

 

 

 黒い太陽が、墜ちてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お か あ さ ま」

「首筋を舐めるなくすぐったい。

 お帰り、怪我は無いか?」

「ええ勿論。わたくしは全く無傷ですよ?

 あちらはまあ、心身共に面白可笑しい愉快痛快抱腹絶倒な御覧の有り様無様ですけれど」

 あー、と、諏訪の国の王妃、因幡乃黒兎は、愛娘の足元に転がされた、黒い塊を見る。

「殺したのか?」

 それは、この諏訪の国を制圧せんとした侵略者。その成れの果てだった。

「いえいえそんなまさかまさか。

 この御方、ダイコク様の御息女でいらっしゃるのでしょう?

 御母様の愛して止まない伯母様の恩人に連なる御方を弑し奉るなんて、そんな恐ろしいこと出来ませんわ」

「……現在進行形で、殺してくれ、と思っているだろうけれどな」

 わたくしの存じ申し上げることでは御座いませんわ、と嘯く娘に対して、母は溜め息一つ。それで済ませた。

 彼女にとっても、ようやく得た安住の地を脅かす輩は、姉の恩人の娘だろうと、敵だ。

 報いとして何をされようが、極論、どうでもいい。

 

「コークーとごぶぉべぃぇらぁっ!!!」

「あら御機嫌よう洩矢神様」

 音を置き去りに突撃した幼女が、少女のアッパーカットで上空へかっ飛んだ。

 四肢が千切れるのでは、と感じる程に激しく高速で錐揉みしながら天高く舞い上がり、体勢を持ち直して急降下。

「ぃ……っ! ぃ、痛いじゃないのさぁっ!?!

 親に対して何してくれとんじゃあっっ!?!?!」

「おや? 親? おやおや?

 御母様に迫り続けて押して押してやっとのことで一夜の過ちを犯させて調子に乗り、それ以来、添い寝もさせてもらえない御方なら存じておりますが?

 他の奥様方にうつつを抜かしていらっしゃれば宜しいのでは?

 嗚呼、それとも、今度は多満留異母姉様辺りとでも近親で致されるのですか?

 どうぞどうぞ止めませんから何なら全国民を集めた催事として為されば如何でしょう?

 見られて盛る、しかも実の娘となんて、畜生にも劣るまさに劣情と呼ぶに相応しいまぐわいですが、貴女様にはお似合いですわよ」

「良い度胸だ表に出ろ」

「やめんか馬鹿共」

 不本意ながら旦那になってしまった洩矢神と、その結果生まれた娘による喧嘩を、黒兎の一声が止める。

 せっかく危機が去ったのに……危機だった侵略者が厄と祟りまみれの半殺しにされたのに、親子二柱のいさかいで国が滅ぶなど、冗談では無い。

 

「……こんちくしょう……!

 見た目だけなら……見た目だけならコクトが成長して乳が張って尻も括れも完璧な理想の美少女だってのに……!

 なのに……なんでそんな性格に……!」

「種が腐っていたのでしょうねきっと」

「クソッタレ! コクトの代わりに相手させるぞお前!」

「不能にして差し上げますわよ?」

「やめろと言うとるだろうが!」

 

 そんなこんなで、諏訪の国に平和が訪れたのであった。

 

 平和なのだ。

 

 

 

 

「……ところで……その……あー、何て名前だったか……」

「たけ何とかですわ」

「なら、タケで良いか」

「この母娘……何というか本当にもう……。

 あんたも災難だったねえ……」

「私は負けた……帰る場所も無い……好きにしろ……」

 厄と祟りを混ぜ合わせた束縛を解かれ、力無く項垂れる建御名方神。

 

 徹底的に痛め付けられた全身の傷は癒えず、鉄を朽ちさせる藤の枝は砕かれ、象徴にして権能である御柱はへし折られた。

 抵抗する気力など残されていない。

 既に彼女は、自身の言葉通り、敗北している。叩き潰されている。

 

「いけませんわあ。この色魔を前にして、貴女の様な女性が、好きにしろ、だなんて」

 

 怪物によって、地獄を見せられているのだから。

 

「これなるは諏訪の国主、洩矢神様。

 女と見れば孕ませずにはいられない、色欲の権化にして祟り神様。

 心折れた美女なんて、この御方にとって、膳に盛り付けられた御馳走ですのよ?」

「否定はしない」

「おいこら馬鹿共。数日酒抜きで良いか?」

「怖がらせて御免なさいませタケさん。貴女はわたくしが守ります。御安心下さい」

「心配しなくて良いよタケ。この嗜虐趣味の外道が何かしても、あんたは私が守るから」

「は?」

「あ?」

「喧嘩をするなと何度言わせるんだお前らは!?」

 

 建御名方神は、この国における力関係を理解した。

 

 

 小さい方の黒い兎が、頂点なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度の御戦勝を、お妃様の友として、お慶び申し上げますわ、諏訪の国を統べる偉大なる王」

「初めまして、隙間の大妖怪殿。……そうだねえ。ずっと、ずぅっと、あんたとは、話がしたいと思っていたよ」

「嬉しく存じますわね。私としても、貴女とは、ええ、是非ともお話ししたいと、願っておりました」

 両者、表情は笑顔である。

 どこにも非の打ち所が無い、完全なる笑顔である。

 芸術家が精魂を刻み創り上げた美の極致たる仮面の様な、笑顔であった。

 

 

「……何だ? 寒気が止まらん」

「それはいけませんわ御母様。今日はもう寝ましょう寝てしまいましょう今すぐに」

「むう……隙間の奴が来ているらしいから、久し振りに呑みたかったのだが……」

「体調を崩していては、御酒も楽しめませんわ。

 お友達も分かって下さいますわよ。

 一眠りする間は、洩矢神様が持て成されることでしょう」

「それもそうか……って、何を布団に入って来ている」

「わたくしも少しだけ眠くて……駄目、でしょうか……御母様……?」

「まったく……仕方の無い子だ……」

 こちらも両者笑顔である。

 ただし、母は慈愛が滲む微笑で、娘は愉悦に満ち嬉々とした笑みだが。

 

 

 

 

 諏訪の国は、今日も、実に平和である。

 

 実に平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて遥かな時の末。

 

 

 諏訪の国は、幻想郷と、名を改めた。

 

 人の世に最早、神が統べる国は不要とし、国そのものを異界とした。

 

 

 玉座に座す洩矢諏訪子。

 隣で杯を傾ける因幡コクト。

 治世を預かる八雲紫。

 その他の、幻想郷の成立に携わり、維持に尽力する賢者達。

 

 

 

 

 そして、もう一柱。

 

 

 

 

 

 

 幻想郷という、祟り神の王国には、最強の姫が居る。

 

 悪神にして魔王にして厄災にして祟り神。

 

 

 あらゆる侵略者にとっての絶望。

 反乱に対する例外を赦さぬ地獄。

 

 守護者にして断罪者にして魔性。

 

 

 

 

 

 かの国に、異変は無い。

 

 そんなもの、まさしく瞬く間も待たず、黒い太陽に呑まれ、押し潰されるだけなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 諏訪の国、幻想郷は、全てを受け入れて、残酷で、平和である。

 

 

 




名前だけ出た子の注釈!




多満留姫

 洩矢神(諏訪子)の娘であり、諏訪明神(神奈子)の息子の嫁、になるはずだった神
 オンバシラがへし折られたこの世界線では、独身かも
 詳細不明
 東方では名前すら出て来ない
 早苗に神奈子の子孫設定が無い以上、先祖では無いと思われる
 絶対可愛い(確信

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