1ヶ月以上お待たせした挙げ句に百合ネタです m(__)m<書きたかったので
さなしずを認め得ぬ者、この先進むべからず
大筋には関係無いので読み飛ばしても特に問題無いです
バッチコイカモンハリーハリーハリー! な方とは、是非とも杯を交わしたいです
拝啓
今年もまた、風の中に秋の香りを感じる、心地好い季節となりました。
稲田姫様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
お姉ちゃんに彼女ができました。
彼女ができました。
彼氏じゃなくて彼女でした。
去年引っ越してきた神社の巫女に押し倒されてーー
「って! 何を書いてんの私ぃっ!?!」
自分が見た光景に驚き過ぎて、混乱したまま帰宅して稲田姫様に手紙を書いていた。
何を言っているのか分からないと思うが、私自身も分からない。頭がどうにかなっている確実に。
「よし落ち着こう。とりあえず、まずは落ち着こう」
大きく息を吸って吐いて……。
冷静になって考えてみたら、何かの見間違いだった可能性もある。
草の上に仰向けになったお姉ちゃん。
覆い被さる早苗。
早苗の両手が、お姉ちゃんの真っ赤に染まった両頬に添えられ、段々と縮まる距離に、お姉ちゃんは抵抗もせず、ぎゅっと両目を閉じて……。
「誤解の余地が皆無じゃないの!」
お姉ちゃんはお姉ちゃんで、完全に据え膳だったよ!
緊張と恥じらいはあっても受け入れ準備万端だったよ!
てゆーか何なのあの表情えっちぃ! あれが雌の顔ってやつか!
違う? いいや違わない!
あんな顔されたら、仮に早苗に理性が残ってても一瞬で消し炭でしょ! えろいよお姉ちゃん!
あれを誰かに伝えなければ! 何だかそんな使命感が湧いてきた!
「そうだ! あの時のお姉ちゃんの様子を詳細に書いて稲田姫様に送……ってどうするの私!?」
そんなの送られても稲田姫様も反応に困るよ!
駄目だ頭がこんがらがって訳が分からない!
「落ち着け……落ち着け……大丈夫……冷静になれ私……」
何が大丈夫か分からないけど大丈夫……。
落ち着いて冷静に……あの後、お姉ちゃんと早苗がどうなったか考えれば……。
「冷静になれるかぁっ!?!」
何をやってんのあの二人!?
そもそも! いつからあんな関係になったの!?
「あーもー駄目! ちょっと外に出よう!」
信者達にこんな錯乱した姿は見せられないけれど、少し秋の風を浴びないと。頭冷やさないと。
じゃなきゃ、早苗に全身をまさぐられるお姉ちゃんの姿が脳裏に……。
「って! 最早これ妄想でしょ! 落ち着けっての!」
高く青い秋の空に、私の叫びは、やけに虚しく響いた。
「あら? 一人だけで来るなんて、珍しいわね?」
「うーん、まあ、たまには、ね」
特に行く宛てを決めずに家を飛び出したら、気が付けばコクトさんの家。
ご近所だし、通い慣れてはいるものの、雛が言う通り、ここに来る時はいつもお姉ちゃんと一緒だった。
「……話したいことがあるなら聞くし、気を休めたいならご自由に。
母様のお酒は勝手に出せないから、お茶とお菓子くらいしかないけれど」
「あ、コクトさん留守なんだ」
「賢者の集会ですって。凄く嫌そうにしながら、八雲紫に連れて行かれたわ」
「そういえば、賢者の一角だったね、コクトさん」
全くそんな素振りを見せないから忘れてた。
幻想郷が作られた時に関わったとか何とか聞いた気がする。
いやしかしそれよりも、少々マズイ事態になっている。
これは、ちょっと……いや、かなり機嫌が悪い時の雛だ。
妖怪の賢者を、「紫」では無く「八雲紫」と呼ぶのは、コクトさんの仕事関係ならいつものことだけど、名前を言う時の目が怖かった。
そんな厄はため込まなくて良いから。
溢れさせるのはもっと勘弁してください。
「洩矢の神様といい伊吹さんといい風見幽香といい最近よく来る天人といい、隙あらば母様にちょっかいを出して……!
フランドールさんも、私より年は上なのに、あんなに母様に甘えて……っ!!」
「ひ、雛ー? 厄が漏れてるの抑えてくれたら、う、嬉しい、かなー?」
少し空間が歪んで見えた。怖い。すっごく怖い。
「っと。ごめんなさい」
「ううん。いいのいいの。ありがとうね」
思わず棒読みに。表情が引きつっているのが自覚できる。
いやでも本当、怖かったわ。
コクトさんが絡むと、たまにああなるのよね。普段とのギャップが怖い。
それにしても、考えてみると、コクトさんって結構、色んな相手から言い寄られてるのかしら?
ただし、同性ばかりだけど。
いや待てよ。
お姉ちゃんと早苗も女の子同士だよね?
そもそも、幻想郷の神様や妖怪って、大体が女の子よね?
え? 今まで考えたことなかったけれど、もしかして、女の子同士とか普通なの?
どうなんだろう……?
今まで誰かとそういう話をしたことがないから、全く分からない……。
「ねえ……雛は女の子同士の恋愛ってどう思……なんで距離を取ったの今」
「身の危険かと思って」
「違うわよ!?」
私がそういう趣味な訳じゃ無いわ!
雛の誤解を、お姉ちゃんと早苗のことを伏せつつ解くのに、結構な時間がかかった。
……別に、私がお姉ちゃん達の件を秘密にする必要も無かった気がする……つい隠しちゃったけど……。
「自分や好きになった相手の性別とか、神や妖怪には、どうでも良いんじゃないかしら?
変えようと思えば、好きに姿を変えられる人も、割りと居るらしいし」
言われてみれば、それもそうね。
「だから、養母と養女だからなんて気にしなくて良いじゃないかって、最近思うのよね」
ちょっと待ってお願い。
「今、いきなり話が飛ばなかった?」
「そう?」
うん大分。
「まあともかく、穣子だって、姉妹だからなんて気にしなくて大丈夫よ、きっと。ちゃんと話せば、静葉も分かってくれるかもしれないわ」
いやもう本当に待って。
「話が飛びすぎてどっか行ったよ!?」
きょとんとする雛。いや、そんな「何を言っているの?」みたいな顔されても。こっちが「何言ってんの!?」だよ!?
「てっきり……静葉のことが好きになってしまって悩んでいるのかと……」
「別の誤解が生まれてた!?」
「何か悩んでいそうな表情で、珍しく一人でうちに来たから、静葉関係で何かあったのかな、って」
「それは合ってた!?」
「あら? そっちは正解なのね」
しまった!? 罠か!?
「……最初に言ったけれど、話したいことがあるなら聞くし、気を休めたいならご自由に。
話したくないことなら、無理に聞き出したりしないわよ」
「罠か!? とか思ってごめんなさい」
「気にしなくて良いわ。私も、ちょっとからかい過ぎたみたいだし」
ごめんね? と謝る雛に、いえいえこちらこそ、とまた謝る私。
この件はおあいこ、ということで、二人並んでお茶を飲んで一息。あー落ち着くぅ。
考えてみると、お姉ちゃんと早苗を見てから混乱しっぱなしだった気がする。ようやく人心地が付いた。
「やっぱり外に出て正解だったわー」
「随分と悩んだ表情をしていたものね」
クスクス笑う雛に、少しムッとした顔を向けて見せるけれど、余計に笑うのみ。
何だか微笑ましげな、幼い子供を見守るような視線。
……可笑しいな……私の方が年上のはずなんだけど……小さい頃の雛に、「神様の心得」とか教えたりしていたんだけど……。
まあ良いわ。妹分が立派になった、ってことで! うん! 私が教えた成果もきっとある! と思う!
年齢の話をしたら、雛や八雲紫から着せ替え人形にされて可愛がられていたコクトさんはどうなる、って話だし!
当のコクトさんは全く気にしていなかったけどね!
あ、八雲紫がやたら布が少ない衣装を持ってきた時は、厄砲撃っていたっけ。
肩やら背中やらお腹やらを露出する服は苦手らしい。
基本的には無頓着だけど。
その後、うっかりコクトさんの服装について話題にしてしまい、大興奮で「母様に着せたい服」を語る雛に、しばらく付き合うはめになった。
「ただいまー」
「おかえりなさい……信者の人達のところに行っていたの?」
「ううん。ちょっと雛とお茶してただけだよ」
そう、と呟いて黙るお姉ちゃん。
元々綺麗でお洒落で、それが羨ましくてついつい信者とのことを自慢したりしていたけれど、何だか、余計に綺麗になった気がする。
端的に言って、やたらと色っぽい。
「…………何かしら?」
「…………何でもない」
やっぱりアレかな。
恋をすると綺麗になるとか愛されると綺麗になるとか、そんなのかな。
そもそも、アレは本当に……えーと……その……アレな感じのアレだったのだろうか?
実は早苗が転んじゃってお姉ちゃんはそれに巻き込まれて、的な勘違い……にしては雰囲気が……なんというか、その……うん……。
お姉ちゃんに聞いてみれば、何かしら答えは出ると思うけど……。
むむむむむ……!
「……穣子? どうかしたの?」
とりあえず保留ってことにしておこう!
「何でもないよ。本当に、何でもない」
お姉ちゃん自身から言われるまでの間は、気付いていない振りで過ごそう!
あややには苦労をかけているので、せめて雛様のパルパル対象からは外してあげました←焼け石に水滴
【ふと思い付いた、黒兎に対するNGワード集】
「死にたい」
「殺してくれ」
「鍵山雛って○○(悪口)だよなww」
「因幡てゐって○○(悪口)だよなww」
「おたくのお子さん、いじめられてるよ?」
「長生きだけを願うなら人は獣と変わりなし」
「誰かを好きになったことさえないくせにッ!」
その他諸々多数etc.
3つ目以降は、ブチ殺スイッチが問答無用でONします
・娘または姉を侮辱する
・黒兎の、『たとえ大事な者達を害したとしても自身の延命を願う』在り方に言及する
この辺りが例外無しの地雷ですかね
あと、「命を懸けて」とか「死んでも云々」とかも、「ほぅ……?」と『死にたくても死ねないくらい不運』にされて放置されます