トウホウ・クロウサギ   作:ダラ毛虫

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唐突に湧きました
一気に書きました
やっちまいました
眠い

狂化の影響で、本編より思考が物騒な黒兎
と思いましたが、あれ? あんま変わってない?


なお、狂兎の狂化ランクはE+++++++++(条件付きA+相当)です



フェイト・クロウサギ:第4次聖杯戦争編①

 ふむ、と、足元に広がる蟲共の死骸を避けつつ、現状を確認する。

 

 私の分霊を『殻』にした、アンリマユ、『この世すべての悪』を担う悪神としての召喚。

 最も狂気に囚われていた頃の再現。

 加えて、狂戦士という『枠』に当て嵌められた霊基。

 

 随分と劣化させられた模造品だ。

 召喚に応じる際に聖杯から得た知識で、概ね把握はしていたことだが。

 

 

 まあ、この状態でも、神秘が幻想と化した世界で細々と長らえている魔術師程度なら、問題は無い。

 同じく召喚されているらしい英霊達は、会ってみないことには分からないが。

 私と同様、模造品である以上、私を『殺せる』規格外など早々居ないと思うが。

 

 

 さて、これからどうするか。

 

 事情を理解していそうな蟲は、出会い頭に、衝動的に殺ってしまった。

 他者を食い物にした延命なんて同類が視界に入ったので、瞬時に魂まで魔力として喰らい尽くしてしまった。

 ついうっかり、思わず。

 

 

 そうすると、後は私の契約者らしい青年くらいしか居ないのだが、推定契約者は現在、血反吐を吐いて蹲っている。

 

 大丈夫。

 ただ少し、魔力回路の代替をしていた蟲まで『不運にも』一斉に寿命を迎えた為に、過負荷で死にかけているだけだ。

 私の魔力は先程の蟲を魂喰いしたおかげで余裕があるので、こちらから魔力の消費を絞っているし、使っておらず錆び付いた魔力回路が久し振りの稼働に驚いているだけだろう。

 結論、特に慌てることもない。

 即死でなければどうとでもなるし、少々様子を見てみよう。

 

 

「が……! な……なに、が……!?」

 

 面構えは悪くはない。

 生きることにしがみつこうと、自らの拳を握ることができる、良い目だ。

 ただし、些か無理をし過ぎたらしく、義憤を履き違えた私怨で濁っているのが難点だ。

 

 要するに、見飽きた手合い。

 敵対するなら殺すし、しないなら興味は無い。

 

 

 だが、契約者無しには存在できない儚い身としては、ここで彼に死なれても困る。

 消滅までに次の契約相手を探すのが面倒だ。

 

 仕方がない。

 

「……これ、は……酒、か……?」

 諸々の理由で劣化しているとは謂えど、酒造の業は狂気程度で失われはしない。

 僅かばかりの魔力を使えば、『苦痛を和らげる酒』くらい、一瞬だ。

 ついでに自分用も1杯。うむ。美味い。

 

 

 私が呑んでいるのを見て、毒ではないと判断したのか、契約者の青年も恐る恐る差し出した杯に口をつけた。

 

「……うまい……こんな酒、初めてだ……」

「……」

 当然、と返そうとしたが、どうやら言葉が話せないらしい。

 狂化の影響か。面倒な。

 

 

「バーサーカー。お前が俺のサーヴァントで、間違いないな?」

 話せないので首肯で返答。

 念話であれば、と思ったのだが、どうやら私の表層心理は「死にたくない」の連呼で埋め尽くされているようだ。

 試しに繋いでみたら、契約者は頭痛で吐いてしまった。

 いかんな。

 思考を分割して理性を切り分けているが、念話まで分割はできない。

 

 いきなりの障害。

 私、契約者と身振り手振りでしか意思疏通ができない。何故に狂化しやがった。不具合しか無い。

 

 

 

 その後、桜ちゃんとやらを助けたいだの時臣とやらを許せないだの云々語っていたが、興味が無いので聞き流す。

 長生きすると、その類いの出来事には、飽き飽きするほど付き合わされている。

 家族か友か私自身が巻き込まれたなら殲滅するが、そうでなければ関わる理由も無し。どう転んでも結末は詰まらんだろうし。

 

 

 

 とは言え、ここでこうして話し込んでいる間に、件の桜が死んでは、今後に差し支える。

 一応、私はこの聖杯戦争で殺されるなど、分霊であっても御免なのだ。

 参加した以上は生き残る。できれば受肉して『私』として生きたい。

 

 なので仕方なく、働くとしよう。

 

「どうしたバーサーカー? どこかに行くのか?」

 

 あの蟲の護りが失われた以上、あんな匂いをさせている娘に、魑魅魍魎が集らない訳が無い。

 

 

 

 

 

 気配を頼りに向かった先は、幼い少女が怪異に食われる直前だった。

 

 間が良いと言うか、『桜が死に絶望した契約者が自殺し私が消滅する』危機を察知して、手遅れにならないようにしただけだが。

 

「桜ちゃんっ!?!」

 

 で、麻痺した半身を引き摺りながら、少女を庇おうと飛び出す契約者。

 

 宜しい。少しばかり、気に入った。

 嫉妬心に歪んだ目よりは、遥かにマシだ。

 少女の方は、色々諦めて目前の死にも動じない無感動で面白くないが、それはそれとして。

 

 彼の、守ろうとした意志を、尊重する。

 

 

 だから、せっかく御馳走にありつこうとしていたところ悪いが、お前達を殺そう、怪異共。

 

 

 

 

 怪異の掃討については、特に語ることも無い。

 非戦闘員2人を守りながらであっても、有象無象に遅れは取らない。

 むしろ魔力が補給できた。運が良い。

 その魔力も少女の部屋を囲う結界に使ったので、収入は微量だが。

 初歩的な結界にもここまで消耗するとは。狂化を外したい、切実に。

 

「……特異な才能は、怪異を引き寄せる……」

 

 消費した分は補給しないとなぁ、とか、肉は好かんが魔力を喰らうのは悪くないなぁ、とか考えていたら、部屋の扉を眺めながら、契約者がぽつりと呟いた。

 視線の先は、扉の向こう、怪異に襲われたにも関わらず、部屋に居ろと言われて大人しく従った少女だろう。

 

 詳細は分からなくとも、彼女が持つ才能は、『私達』には見るまでもなく感じ取れる。

 本能で、引き寄せられる。

 

「確か、そうだったな、バーサーカー」

 喋れないので、頷いて応じる。

 魔力回路の錆びっぷりから、何も知らないと思っていたが、基礎知識くらいはあったか。

「……ああ、思い出した。子供の頃に習ったよ。

 希少な属性や高い魔力を持ち主は、引き寄せた怪異に食われる。

 その前に捕らえて『保存』か『加工』できれば、マキリの再興に役立つかも知れない、ってな」

 そういうことだ。

 

 要するに。

 

「桜ちゃんは、自由になっただけじゃ、救われない」

 その通り。

「力がない俺には、守りきれない」

 それも正解。

「時臣にも任せられない。あいつはもう、桜ちゃんを捨てやがったんだ……!」

 それは知らん。

「他の魔術師なんか、伝手はないし、信用できない」

 良くて胎盤、悪ければ言うまでも無いな。

 

 

「……決めたぞ、バーサーカー」

 

 そして、彼は顔を上げた。

 

「パスから流れてきたお前の願いは、『死にたくない』。受肉して生きることだろう」

 

 なるほど、これはまた、随分と。

 

「聖杯を取って、お前を受肉させる。

 だから、桜ちゃんを守る、力を貸せ。

 この聖杯戦争でも、それから先でもだ」

 

 濁り歪んでいたのが、良い目をするようになった。

 

 

「令呪をもって命ずる。他の何より優先して、間桐桜を守れ」

 

 

 承った。我が仮初めの主人よ。

 

 

 

 此度の『生』も、なかなか楽しめそうだ。

 




桜が救われるには『桜の味方』が不可欠←結論

なので、雁夜君には、『時臣とか葵とかぶん投げて桜最優先』の、黒兎の好感度増し増しルートに入ってもらいました
『大切な者の為に命を燃やす人間』大好き、黒兎

というか、他のルートだと雁夜も桜も確定で死にます
爺が死んだ時点で詰んでます



ぶっちゃけ、魔術師的に見た場合
・身の安全は保証
・胎盤として『間桐の後継者』に血を残せる
・桜の希少な才能も遺伝するかも知れない
と、時臣が桜を養子に出したことに、何の間違いも無かったり

人道? 倫理? それって真理や根源に関係ある?
どうせ養子に出すなら、同じ御三家に血を混ぜた方が、『遠坂の血筋が聖杯を勝ち取る』可能性も2倍になるしね! やったね!
桜の虚数属性が無駄? 間桐の魔術に馴染ませやすくするのが優先だろ常識(魔術師)的に考えて


P.S.
爺倒して時臣改心して~な二次創作も否定はしません
桜ちゃんが幸せならそれでええやん! 改変上等!

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