――――― 半刻後 ―――――
要請を受けた、四番隊、六番隊、八番隊、十番隊の隊士たちはあまりの惨劇の現場に息を呑んだ。既に虚の姿はなく現場には零番隊の隊士達だけが倒れている。
「…皆さん…すぐ手当に取り掛かってください。勇音は重傷者からお願いします」
「はいっ!!」
卯ノ花の言葉とともに隊士達も慌てて動き出す。
「松本っ!!俺たちもだ四番隊の手伝いに当たれ」
「…はい!!」
「こりゃ…ひどいねぇ…」
あまりの悲惨な現状に京楽はため息交じりに呟いた。
すぐ隣では朽木が辺りを調べるよう隊士達に指示を出していた。
「あの零番隊が虚相手に手も足も出なかったのか」
日番谷隊長の言葉に朽木は複雑そうな様子をみせた。
「それはないだろうねぇ。あの子達強いから…他に何かあったと考えるのが妥当だろうね」
「…あの子達?」
京楽の言葉に日番谷が疑問を持った時がそれ以上は問わなかった。
「京楽隊長!!ちょっと来てください!!」
現場の奥の方から慌てて戻ってきた隊士の様子に3人は顔を見合わせ案内されるがまま最奥へと進んで行った。
そこに着くとより一層、悲惨な現場が広がっていた。
戦場の最前線であったであろうそこは、木々はなぎ倒され、人のものか虚のものかわからない赤いそれがあたり一面を染めている。先に入った四番隊が慌ただしく隊士達の手当に当たっている。
「ひどいな…死人が出てないだけ良かったものだろ…」
日番谷隊長がそう言いかけた時だった。
「…美鈴ッッッ!!」
朽木はいきなりそう叫ぶと地面に座り込む黒髪の女性の元へと駆け寄って行った。
あまりの慌てた様子に日番谷は少し驚いた様子を見せる。
彼女は朽木の存在に気がつくと、隣で西園寺の手当てをする卯ノ花から朽木へと視線を移し、小さく微笑み安堵の表情をみせた。
「…白哉…京楽隊長…お久しぶりですね」
力なく笑う彼女のすぐ横に朽木はしゃがみこんだ。
櫻井の頭には包帯が巻かれており、袖から出る細い腕にはいくつもの傷が見え隠れしている。
「美鈴…何があった!?」
朽木の問いかけに彼女は答えようとしない。
「西園寺君も大丈夫そうだね。皆無事でなによりだよ」
京楽は手当を受ける西園寺三席に視線を送りながら櫻井の元へと歩いてきた。
日番谷も無言のまま京楽の後に続く。
「…美鈴ちゃん…それは…」
視線を櫻井に移した京楽は、櫻井の肩に掛けられた零の文字が入った隊長羽織を指差した。
指をさされたそれは櫻井のものではない血で赤く染まっている。
京楽の問いかけに櫻井は答えることなく、肩にかかった羽織をきゅっと掴んだ。
「美鈴、湊はどうした?」
朽木の言葉に彼女は答える事なく俯いた。
あまりにもつらそうな表情に朽木と京楽は言葉を失った。
「重傷の方から搬送します。こちらへ…」
卯ノ花の指示の元、応急処置を終えたものから瀞霊廷へと搬送が始まる。
現場はなんとか収拾へと向かっていた。
「(…あれは…)」
先ほど櫻井達がいた場所より少し奥に入った所にそれは落ちていた。
金色のブレスレットと紺色の柄の斬魄刀―――。
「…京楽…それは?」
「そうか日番谷隊長は見るの初めてかい?これは零番隊用の霊圧制御装置だよ。付けているのは席官以上のメンバーだけだけどね。と、たぶんこの斬魄刀は零番隊の隊長さんのものだね…」
少し悲しげに斬魄刀を見つめる京楽を日番谷は黙って見ていた。
搬送場所に戻ると、負傷者の搬送は既に終え、ほとんどの作業は終わっていた。
六番隊は現場の調査に当たっているため朽木隊長の姿はなく、卯ノ花と未だ方に隊長羽織を掛けた櫻井の姿だけがあった。
「卯ノ花隊長、世話をかけてしまってごめんなさい。助かったわ…本当、零番隊のくせに…情けないわね」
「いいえ、困った時はお互い様ですよ。私も久しぶりに貴方の顔が見れて嬉しいです」
時折笑顔を浮かべながら話す2人に引き目を感じながらも京楽は二人の元へ近づき、櫻井に先ほど拾った斬魄刀を手渡した。
櫻井は一度京楽に視線を送った後、恐るおそる差し出された斬魄党を受け取る。
斬魄刀の柄が血で汚れているのに気付き、一瞬目を見開いたがすぐに冷静を取り戻し、小さく呟いた。
「…朝比奈隊長の物です。間違いありません…」
静かに斬魄刀を見つめる櫻井に笑顔はなかった―――。