~裏切りの剣~   作:MIKOTO.H

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第9話

―――浦原商店―――

 

「具合…どうすか?」

 

薄暗い室内の中、布団の上にあぐらをかいて座る朝比奈に浦原は声をかけた。

 

「…だいぶ落ち着ついたし、もう大丈夫だよ…ご心配をおかけしました」

 

微笑みながら会釈をしてみせる彼に浦原は笑顔を返すことなく、布団の隣へと腰を下ろした。

 

「大丈夫には見えなかったっすよ?」

 

心配そうな顔をする浦原を見て、朝比奈は「実は…」と口を開く。

 

「…零番隊、入ってからかな。もう持病みたいになっててね、度々あるんだ。まぁ、あんなに強い発作は初めてだったけど…」

 

「…美鈴さんは知ってるんすか?」

 

「…知らないよ。…言う訳ないだろ。大げさな奴だからね…緋真の時も、浦原さん達が居なくなった時だって大変だっんだ…」

 

朝比奈は俯きがちにそう告げた。

 

「それは悪い事を…ってそれはそうと湊さん…あなたのその発作と修羅天海の斬魄刀の能力…何か関係があるんじゃないっすか?」

 

「…なぜそう思う?」

 

「零番隊の斬殺事件…本当に副隊長さん達を操っての犯行なら、貴方も例外じゃないはずだ。それに先程、天海は美鈴さんの名を口にしていました。湊さん…何か隠してませんか?」

 

朝比奈は一度、溜息をつくと視線を床に落としながらゆっくりと口を開いた。

 

「それと俺の発作が関係があるかどうかは知らない。でも奴がまだ美鈴を狙ってくるのなら、俺は奴を殺るだけだ」

 

 

 

 

 

 

「…それはどういうことだ?」

 

いきなり現れた人物の声に朝比奈と浦原は驚き、入り口へと視線を向けた。

 

「…び、白哉!?」

 

後ろには一護やルキア達の姿もあった。

仁王立ちのまま黙っている白哉に変わり、ルキアが弁解に入る。

 

「すみません!盗み聞きをするつもりは無かったのですが…兄様がいらしたので…お声掛けにと思ったら、つい聞こえてしまって…」

 

「別に聞かれてまずい話をしている訳ではないし構わないよ。久しぶりだね、白哉」

 

慌てるルキアに朝比奈は微笑みかける。

安堵の溜息を漏らすルキアの横で白哉は表情を変えることなく先ほどの質問を繰り返した。

 

「して…修羅天海が美鈴を狙っているというのは、どうゆうことだ」

 

「…そのまま、言葉通りの意味さ」

 

朝比奈は白哉達に座るよう促す。

 

「俺らが零番隊に入る前、美鈴がストーカー被害に遭った事があってね。変な手紙やらプレゼントやら連日送られてきて…その犯人が修羅天海だった」

 

「その話…私は聞いていない」

 

「俺も知らなかったさ…美鈴は誰にも言ってなかった。俺は偶然奴からの手紙を見つけて首を突っ込んだだけ」

 

「どうして、誰にも話さなかったのですか?」

 

途中、小声で一護が美鈴とは誰かと問いかけたが、それにはルキアが零番隊副隊長だと小声で告げ、ルキアが朝比奈に質問を投げかけた。

 

 

「…単純に心配掛けたくなかったんだろう。俺も口止めされたし…」

 

 

「それが今回のことと何か関係があるのか?」

 

 

「…ああ。零番隊の斬殺事件の時の副隊長達、みんな美鈴に好意を持っていた奴らみたいでね、副隊長を決めていたのも天海だったし、あながち邪魔な奴ら排除するのに零番隊を利用したんだろ」

 

あまりにも素っ頓狂な事実に、その場にいた全員が言葉を失ってしまった。

数秒の沈黙の後、何かに気づいたように一護が口を開いた。

 

「ってことは湊も美鈴って奴のことが好きなのか?」

 

その発言にその場は凍りついたかのような沈黙が流れる。

朝比奈は困ったように笑うと、「まさか」と手をヒラヒラとさせながら答えた。

 

「…もともと天海は6人目の副隊長に美鈴を指名していた。ちょうど俺にも他の隊の副隊長の話が来てた時だったから、少しいじって異動先を変えたんだ…天海はカンカンだったけどね」

 

ため息交じりに答える朝比奈に、今度はルキアが恐るおそる質問を投げかけた。

 

「まさか…今回また修羅天海が現れたのは…」

 

「あながち、まだ美鈴の事を狙ってるんだろ。あれから100年も経ってるのに…本当ハタ迷惑な話さ」

 

朝比奈は質問に答えながら、再び困ったように笑って見せた。

そこに、一護は確信をつくような質問を投げかける。

 

「でも、なんでそんなストーカー野郎が零番隊になんか入れるんだよ。零番隊ってそんな簡単に入れるものなのか?」

 

一護の言葉に口を開いたのは浦原だった。

 

「そこが謎なんす。隠密機動にいた時は実力としては下の方だったと思うんすよ。さすがに私だって優秀な隊士は覚えてますから…」

 

 

「それは俺も調べたんだが、わからないんだ。隊長の時の天海の霊圧は確かに他の隊長達と同格のものだった。あれほどの力を一体どうやって手に入れたのか…」

 

「…崩玉を使えば可能ではないですか?」

 

ルキアの言葉に一同は納得したかのような反応をみせたが、すぐに浦原が異を唱えた。

 

「それはありません。あの頃は藍染が持っていた未完成の物だけですから…」

 

「隠密機動の中でも下っ端だった、天海に藍染が声を掛けるとも思えないしね。今回の事は無関係と考えていいだろうね」

 

朝比奈はそう言いながら、見解を外し落ち込むルキアの頭をポンポンと撫で、良い線ではあったと慰めた。

 

「…それもこれも、本人に聞けば全てわかることだ」

 

ずっと黙って話を聞いていた白哉がやっと口を開いた。

彼は先ほどよりも眉間を寄せ、険しい顔をしている。

 

 

“霊圧”

 

 

途端に朝比奈と浦原も緊張の糸を張り巡らせた。

一護達は何事かとまだ不思議そうな顔をしている。

 

その霊圧はかなり遠くのもので集中しても僅かにしか感じ取ることは出来ない。

一護達がすぐに感じ取ることが出来なかったのも無理はないだろう。

しかし間違いなくその霊圧は修羅天海のものである。

 

その霊圧はゆっくりと上がり、一護達もすぐに感じ取ることが出来た。

そして、天海の霊圧と共に身に覚えのある複数の霊圧―――。

 

「…美鈴ッ」

 

そう感じた瞬間には朝比奈は瞬歩で部屋を飛び出していた。

 

 

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