遊☆戯☆王DS(デュアル・ソウル)   作:Taga

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まずは書いていた部分まで。文章長くても、気にしないのがTagoクォリティ。つまりは自己中心的な心境から生まれる、斬新なアイディア。
つまりそれは、ダメじゃんそれ!?

っつー訳で、第1章の始まり始まり~。


第1章「二つの魂と、次なる転生者」前編

そこは、何もない空間だった。

上も下も分からず、自分が右を見ているのか、もしかしたら左を向いているのかも知れない。いや、どの方向さえも見ていないかも。と言う疑問さえも生まれた。

見る限り、無限と続く真っ白な空間。手を伸ばしても、掴み取るモノなど何もない。

一体自分の身に何が起きたのかと振り返る。

しかし、何も思い出せない。必死に頭の中で検索するも、まるでファイアーウォールに引っかかったように激痛が走り思考を止めてしまうのだ。

それが故意であるかのように、誰かが記憶を操作しているのか? と疑問を抱くが、世の中にそこまで脳科学が発展しているとは思えないのでその考えを捨てる。

しかしオカルトから言わせてみれば、現代科学に隠された「超科学」と呼ばれるモノが存在する(らしい)ので完全には捨てきれなかった。

(・・・・一体、俺はいつまでここにいるんだ?)

ある種の不安が過ぎる。

もしこのまま一生謎の空間をさまようハメになったら、それはとんでもない恐怖だ。

楽しくもなければ窮屈でもない、しかしとにかく「暇」が日常的に永遠と起こり、面白みもない生活が待ち構えている。

そうなれば彼にとって、死んでいるのと同じである。

彼はとにかく暇を嫌う。曰く「面白みのない世界など、死んでいるのと同じだ」との事だ。

しかし、と彼は思う。

最近、自分に降り注いだ不幸は自分自身の存在意義を失わせていると感じた。

まず第1、高校生活が始まる前。自分の悪友とも言える人を失った。

事故でその原因はトラックの居眠り運転だったらしく、遺体は四肢をバラバラにされていたらしい。

まずそれで退屈となった。アイツのいない世界など、存在しない世界と同じだと言うように。

「・・・・つまんねぇ。だが、今が一番つまんねぇ」

彼のつぶやきが、空間へと消える。

「・・・・面白くねぇ。暇だ。俺は今、退屈を味わっているのか?」

誰もいないのに、尋ねる。

しかし返ってくるとは思わないので、そのまま考えるのをやめようとした。

ところが、その数秒後に声が届いた。

―退屈どころじゃない、屈辱を味わっている。

「あぁ、屈辱?」

―貴方が一番嫌う、何もせずにただ時が過ぎるこの時。これを屈辱以外に何と表記するべきなのか。思いつかなかった。

「・・・・それって、嫌がらせと表現しても良いんじゃないか?」

―・・・・そうとも、言える。

「大丈夫かお前。顔を赤らめている様子が想像できるぞ」

―・・・・気にしないで、いつもの事だから。

「それがいつもなら、相当恥をかいてばかりの人生だと認識するが?

―・・・・っ! 貴方、遊んでいない?

「ありゃ、バレたか。お前がついつい弄りがいがありそうだからつい」

―・・・・ついの問題? 私、怒るけど?

「スマンスマン。俺、優しさと外道で生きているようなモンだから」

―軽く矛盾が起きているような気がするのが気のせいにするわ。そうじゃなければ、疲れが溜まる一方だと思うから。

「そうか。だったらこの話はやめにしよう。で、お前は誰だ?」

やっとの思いで話を切らせ、彼は本来最初に言うべき発言をする。

声からの応答は少し時間を要するも、ちゃんと答えは返ってきた。

―異次元界を操る神。とでも名乗っておくわ。

思ってもいなかった痛い答えに、もちろん彼は言葉を失う。

「・・・・頭、本当に大丈夫か?」

―ここにいながらそれを信じないとはね。普通なら多少信じても良いと思うけど。

「残念ながら俺は、完全現実主義かつ怪奇現象大好きっ子だから信じない」

―だから矛盾が起きているから。いい加減信じないと、貴方の魂ここに置き去りにするよ?

「はぁ。俺、被害者なのによくぞ態度大きくできるな」

―・・・・もういい。この人と接していると疲れしか出ないと分かった。さて、本題に逃げるけど。

「さりげなく本音をこぼしているぞ?」

―うるさいです、黙りなさい。全次元のリア充など、消し飛べばいいのです。

「おい、嫉妬は見苦しいぞ?」

―口を慎みなさい。誰に向かってそんな口を聞いているのですか? 死にたいのですか?

「・・・・スミマセン」

―分かれば良いのです。さて、貴方は元の世界でとある運命に遭い死にました。

「サラリと現実吹っ掛けられた上に何、このピンと来ない実体感。むしろ今『貴方は生と死の狭間にいます』と言われた方が嬉しい気がするんだが」

―気にしないでください。それで貴方は今、次元と次元の狭間にいます。ここはごくまれに死んだ者の魂が迷い込んで来る場所です。以前、入江康介と言う男がここにやって来ましたが、どうにも貴方からその人と良く似た何かを感じます。

「・・・・ほぅ、あのクソ野郎がここに。んで、そいつは今、どこにいる?」

―どんな関係なのかは大体予測がつきましたので流すとしますが、あの人はデュエルが世の中のルールとなっている世界へと行きました。そこにいる自分を変えるために。

「・・・・んじゃ、俺もそこに行くわ」

―元からそのつもりでした。どうせ無駄死にした身なのです。そこで思う存分鬱憤でも晴らせばどうです?

「・・・・確実にその口。何を企んでいやがる?」

―別に、ただ。目的がないかと言えば、そうではありません。どうにも貴方は察しが良いのですね。

「そんな環境で育ったから仕方ないだろ。つーか、それはどうともして、お前は何が目的で俺をそこへと行かせる気だ?」

―それは、今言えません。しかし、後に分かる事です。

「・・・・まぁ、良いや。退屈さえ凌げれば、俺は何だって良い」

―・・・・交渉成立です。では体感時間で約数十から数百年後に意識がハッキリとすると思いますので突然に備えて覚悟を決めておいてください。

「す、数十から数百!? 待て、その間何をすれば・・・・。って、もう聞こえねぇ! オイ、姿を現しやがれ!!」

 

何もない虚空にて、1人の男は気力がなくなるまで騒ぎ続けた。

その姿に、声の主である彼女は呆れる以外の選択肢はなかったと後に語る。

 

→→→

 

日本国。

数世紀に渡って開発が進められてきたアジア総合国家の1つであり、国際交流の拠点でもあった。

元からあった独自の歴史に他国から入れられた様々な文化や発展により、その姿はやがて世界にまで知られるまでに至る。元は小さな島国だけに下に見られがちだったが、人の良さと大和の志を中心に発展してきた彼らの思想は決して小さなモノではなく、アジアの中心、日本に近い「台湾協和国」に並ぶ技術力で、世界でトップに君臨する「アメリカ平和合衆国」からも一目置かれている。

そんな世界でも、各国々での言葉や人種。宗教は違う訳であり、当然そこから戦争や差別がなくなる訳がなかった。

しかし全世界共通の事があった。それは、デュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームである。

一体誰が、どのような経路で世界に伝えたのかは不明であるが、それが物事を決める手段として用いられていた。

ある時は政治に、ある時は遊びで友人同士と行い。またある時は、スポーツとして。

カードゲームだからスポーツは関係しないんじゃないかと思われるが、実はそうではない。

この世界で独自に発展した、デュエル方式があるからだ。体を動かしながら、戦略を組み立てながらするデュエルが。

 

→→→

 

私立、七色(なないろ)学園。

今から数年前に設立された新しい学校であり、ここでは文化や歴史。更には文系、理系などに分かれて授業を行なっていた。

今まさに学校が終わり、騒がしい時間帯。1人だけ、誰とも接する事もなくただボーッとしている男がいた。

彼の名は綺羅星遊丸(きらぼしゆうまる)。普通の人よりも背が小さく、何よりも気が弱いと言うとても相手にしてもらえなさそうな性格であった。

楽しそうに話している人たちを羨ましそうに見るも、自分にはそんな親しい仲間なんていないと嘆息し、すぐに教室を出る。

廊下を歩きながら、その寂しい人とばかりのオーラを纏いながら目的の場所へと移動した。

しかしその途中で、ささやき声が聞こえる。

「見ろよ、雑魚遊丸だぜ?」

「ははっ、あの女みたいな面。ボコしたくなるよなぁ」

「おう、後でやろうぜ? おっと正当として、デュエルで勝ってからだがなぁ」

「男女だ、気持ち悪いね」

「クススッ、どんな気持ちなんでしょうね。友達がいない、寂しさMAXなんて」

言われたい放題。しかし現実なので、何も言い返せない。

彼は生まれつき、男のDNAと女のDNAが混じって生まれた子なのである。心は根っからの男であるが、顔つきだけが女っぽい。しかも髪質も女性寄りで、体毛も生えてこない。それが原因で昔から虐められ、貶され続けてきた。

おまけに頭が良いのかと言われたらそうでもなく、むしろバカに近い。戦術も立てるのが下手で、毎回デュエルと言う名目の普段では禁止されている賭けデュエルを無理矢理やらされ、レアカードすら持っていない状況である。

「・・・・僕に居場所なんてあるって信じている事自体が間違いなんだよ」

遊丸はそう呟き、階段を登っていた。

向かう先は屋上。別に自殺する訳ではないのだか、しばらく1人でいたい身であるため、意味もなくたまにここにやって来るのである。

ドアノブを開けると、そこには殺風景が広がる。

別に何かがある訳でもなく、ただ空が青い意外に何も取り柄のない場所。しかし落ち着く気持ちがあるのは、彼が独りぼっちに慣れているからであろう。

腰を下ろし、ただゆっくりと動く雲を眺め、考える事さえも忘れてしまう。

いつしかここに来て、50分は経過していた。

遊丸は腕時計を見て、そろそろ帰ろうと立ち上がった。

すると、いきなり背後から。

「もう帰るの?」

と、女子生徒の声が耳に届いた。

体が飛び跳ねるまでびっくりして、すぐ後ろを振り向く。

そこには、興味深そうに遊丸を見つめる女性がいた。身長は約170辺りと、女子にしては高く桃色の綺麗な髪の毛に肩まで届いている。大人しそうな目をしているが、強豪デュエルリストの特徴であるどこか闘志を持つとばかりに目の奥では燃え上がっているよう。(に思える)

彼女の名を知らない人は、この学園にはいない。ここのナンバーワンデュエリストにしてデュエルチームと呼ばれる部活。ここでは『デュエル研究部』と言う名目となっているがそこの部長。

大和佐久絵(やまとさくえ)と言う。

ちなみにデュエルチームとは「デュエルを聖なる儀式としてイサカサマなく、正々堂々と戦う精神を宿した決闘者のチームによる絆を深める」をキャッチフレーズとして毎年行われている「全国デュエル選手権」に出場するための部活であり、それに出るために毎年入部する人が絶えないとも言われている。

しかし制限があり、今年は佐久絵を含めて5人となっている。しかし毎年は補充を含めて6人までとなっていたが、なぜか1人だけ空白の部分がある。

それを気にしても何も起こらないだろうと遊丸は気を取り直す。

「あ、あの。僕に何か用ですか? お金ならさっき取り上げられましたのでありませんが・・・・」

「ちょっと待って。取り上げられたって、それって普通に校則違反じゃない? 先生に言わないの?」

核心的な事を言う佐久絵。しかし遊丸は怯えるように。

「そ、その。相手の人が言ったら殺すと脅して、しかもその人は昔から僕のカードを奪い続けてきた人なので、強いし、敵わないし・・・・」

そう言いながら、目を逸らす。彼女をジッと見るめる事はできず、その美貌に顔が赤くなるのでそれを必死に隠そうとしている。

すると佐久絵は、そんな事も知らずにか、更に遊丸へと接近する。

ズイッと顔を近づけ、しっかりと目を見ながら。

「そんなオドオドしなくても大丈夫よ。私は貴方の味方だし、そこまで思いつめていたのなら、私が貴方を守るから」

ニッコリと、微笑んだ。

そんな姿に、遊丸は言葉を失う程その人に尊敬の意思が芽生えた。

これは異性としてではなく、デュエリストとして。1人の人間として器が大きく、自分をも認めてくれた。たったそれだけで、しかし彼にとってそれが故に惚れ込んでしまったのだ。

軽い人間だと思っても仕方がない。

「そ、その・・・・・」

「うん、もう何も言わなくても良いよ。貴方は自分が悲しい目に遭っていたからずっと落ち込みっぱなしだと思うけど、大丈夫」

ここで、彼女は1つ、提案した。

 

「デュエル研究部に入部すれば、仲間ができるから」

 

一瞬、瞬きをして戸惑った。

確かに残り1枠あるって話は聞いていた。しかしそれはこの学園なら誰もが欲しがる唯一の場所であり、しかもそこに所属しているメンバーは男女問わず全員美形の方々だけである。

余談ではあるが数日前に「その枠をよこせ」と不良男子が攻め寄ったところ、デュエルで敗北し挙句暴力で手に入れようとしたところメンバーの1人によって全治1週間の大怪我を負わせたと言う。

この騒動がきっかけで、誰もデュエル研究部に力ずくでも入ろうとは思わなくなった。

そんな意味で防御力の強い場所に自分が行って、誰からも受け入れられるかどうか? 否。普段から弱気な彼にとって、誰かと親しくすると言う事すら難があると言うのにそれは野獣の檻に入るようなモノだ。

なので、遊丸は。

「・・・・無理です。僕に仲間なんて、できっこありません」

佐久絵は深追いしない。

踵を返し、後ろを向いていながらも、

「時間はたっぷりある。その間に考えてきて。少なくとも私は、貴方にデュエルを単純に楽しんでもらいたいと思っているから」

それだけを残し、立ち去った。

「・・・・僕は、孤独が一番なんだ」

虚しい呟きは、風と共に空へと消えていった。

 

→→→

 

佐久絵に虐めを暴露したのが運の尽きだったらしく、帰ろうとした彼に待ち構えていたのは、いやらしい2人組であった。

彼らこそ、昔から遊丸からカードをデュエルで奪い、さっきも金を巻き上げた人物である。

苛立ちを浮かべ、遊丸を囲む。そして唾を飛ばしながら、

「オイ遊丸! よくも先輩に俺らの事をチクリやがったな! あぁ?」

「雑魚の弱虫は大人しく俺らの命令に従えば良いってモンをよぉ」

最悪だ。と遊丸は思う。

さっき廊下ですれ違う時、自分をこっそり尾行してきていたと考えれば迂闊に虐めを言わずに済んだモノを。

1人が遊丸の襟元を掴み、舌を出し、

「なぁ遊丸ちゃーん? 僕は言ったよねぇー。誰かにチクったら、殺すと」

ビクビクしながら、コクッと頷く。

「んだったら何でチクッたんだぁ? あぁ、こうなる事になって欲しいからかぁ。俺らに殴られたいからかぁ。とんだサドだなぁ、ヒャッハハハハハハハハ!!」

ゲスな笑い声。遊丸は死を覚悟した。

こう言った男のポケットには、大抵コンパクトナイフが仕込まれており力ずくで脅し、時には痛みを味わせたりするモノである。

「・・・・うーん、そうだぁ。こうしようぜぇ」

1人が提案する。

「俺たち2人と、お前1人でデュエルを行う。お前が勝てば今回の事は見逃してやる。だが、俺らが勝てば、お前のその面、切り裂き殴り放題しても良いって権利を貰うぜぇ。おおっと、拒否権はねぇよ。何だってお前は雑魚なんだからなぁ」

どうにも逃げ道はない。しかも強いカードはこの2人から奪われ、残るカードはあまり強くないカードばかりだ。

ろくに戦えそうにない今、遊丸はこの歳で泣きそうになっていた。

誰にも救われない。自分に味方などいない。しかも不利なデュエルばかりを行われ、否定すらできない。

殴られ蹴られはいつもの事だが、切り裂きは今回が初めてである。

女性っぽい顔に傷がつくと、後が残る。もちろんそれを言ったところで、「は、だから?」で済まされるだろうし、下手をすれば逆ギレで余計な傷を増やす。

しかも相手を見れば、すでにデュエルプレートを構えている。

もうダメだ。と思いながら、遊丸は自分のデュエルプレートを取り出し、デッキをセットしようとした。

その瞬間であった。

目眩が起きた。視線の先が歪み、頭がキン! っと激しい痛みが走った。

「っ!?」

しかし倒れれば不戦勝で自分が負ける。どうにか持ちこたえようとするも、無理だった。

倒れる寸前、脳内から。

『・・・・面白くなりそうだぁ』

と、今の状況を歓楽的に感じているような声が聞こえたような気がした。

 

→→→

 

倒れそうになった遊丸は、身をふらつかせるもすぐに踏みとどまる。

不良2人は心配などせず、笑った。

「オイ見ろよ、ストレスで胃に穴でも開いたぜ!」

「キャッハハハハハハハ! こりゃ立ってられねぇよなぁ。んじゃこの勝負、俺たちの勝ちって事で・・・・」

遊丸は何も反応せず、不良2人を睨む。

「ああ?」と挑発紛いに首を回すが、遊丸は怯えもしない。むしろその行為に対して、鼻で笑った。

「・・・・オイテメェ。さっき鼻で笑ったよなぁ?」

再び苛立ちを含めた声を出す。

が、遊丸は平然とした顔で。

 

「え、悪い? んな数千年前の不良もどきみたいな行為されたら誰だって笑うぞ? え、もしかして今、コント中? ゴメン、腹の底から笑えなかった」

 

素で言われ、不良2人はブチ切れる。

「んだとゴルァ!! 雑魚のクセに、誰に向かって口を聞いているか知ってんのか!!」

「あぁ? 雑魚のクセに大口叩きやがって!!」

叫び声が響く。が、遊丸はビクともしない。

聞き分けのきかない子供を見るみたいな視線を飛ばし、平然とした姿を保つ。

「お前ら、もしかして下の人に対してしか大口を叩けないタイプ? いるよねぇ、んな自分よりも上の奴に対してロクに強がりできないクズ。もしかして自分最強? 迷惑歓迎? 笑わせるねぇ。食物連鎖で言えばゴキブリに等しいぜぇ」

ゴタゴタと言いつつもデッキをセットし、プレートを展開した。

「おぉう、何だか凄いぞ現代科学。これは結構、これまで感じた退屈を凌げそうだ」

そう言って、目の前の不良2人組を見つめる。

凄い形相で遊丸を憎むようにして睨んでいた。

それ程までに馬鹿にされて歯がゆいのだろう。と改めて実感した。

「まっ、このデュエルに勝てば良いだけの話。んなレアカードばかりを寄せ集めて作り上げたようなデッキに負ける要素なんぞ、どこにもねぇしな」

わざと相手に聞こえるように言い放つと、ニヤリと悪意を込めた笑みを、浮かべた。

 

「退屈凌ぎだ。俺を楽しませなきゃ、ただじゃおかねぇからな」

 

→→→

 

遊丸。しかし彼は綺羅星遊丸ではない。

気以楽遊恪(きいらゆうかく)。それが彼の名だ。

彼はあくまで「退屈」を嫌う。なので相手がクソつまらない戦い方をしようなら、問答無用で叩き潰す。例え子供であろうとも始めたばかりの初心者であろうとも、自分が体感した長い時間を埋めたいが故に「面白み」を探そうとしていた。

彼は体感時間で約100年間、何もない空間で退屈な時間を過ごしていた。

眠りもせず、ただ過ぎ行く時間を限りなく感じ、結果。

 

己の欲望のためなら、例え相手がどうであろうとも関係ない。自己中心的な人格へと変わり果ててしまったのであった。

 

それを物語は、このデュエル。

相手は特に展開もせず、上級モンスターを出そうと奮闘する。

が、遊丸はそう甘くはなかった。

 

→→→

 

佐久絵は、たまたまその近くを歩いていた。

それが偶然なのか、それとも神が仕掛けた運命と言うのかは理解しようがない。しかし部活でのミーティングが終わり、明日の練習試合の内容を伝えて解散とした。

しかも周りには部活の仲間である大倉享(おおくらとおる)と入江(いりえ)ツバメと一緒に歩いていた、

ツバメは中学生だが、その腕前から特別に高校のデュエル研究部に身を置いている。その実力は格段と強く、彼女には兄がいるが、その兄から全ての栄養分を奪ったと言っても過言ではない程である。

享は無口で必要以上、あまり喋らないが心優しき少年である。

しかもその寡黙が女子のウケとなり、彼のファンクラブまであるぐらいだ。

デュエルの腕前は彼女に続いて2番目であり、その瞳の奥から溢れ出る闘志はまさに「強者を咬み殺す野獣」として周辺の人々から恐れられている。

常にボーッとしているものの、たまに言葉を発する。

「先輩。明日の練習試合、相手のハードル上げすぎている気がする・・・・」

「それは私も反省しているわ。けど、だからこそ私はあの強豪、小嵐(こあらし)高校とのデュエルを望んだのよ。考えて見なさい」

佐久絵は溜息をつきながら、

「私が推薦した訳でもないのに、私にベッタリな百合が1人。その持ち前の強さと勝ちにこだわる変態。その事から『変態暴君』とまで言われているバカ1人。そしてマトモな2人に私1人よ。どう見てもあの変態のせいで変態集団と化しているでしょ。どうにか1人だけ部長として推薦できる権利を得たけど、これをどう活用するか。さっき1人に声をかけたけど、乗る気じゃなかったしねぇ・・・・」

「1人? 部長が認める腕の強いデュエリストでもいたって事ですか?」

違う。と佐久絵は首を横に振り。

「全くの逆よ。この学園で最弱と言われている綺羅星遊丸、私が欲しい人材よ」

えぇ!? と2人は驚く。

無理もない。普通なら強者を選ぶべきの部長推薦。しかし実際は弱者である者を選ぼうとしている。これはいかなる事かとツバメは問う。

「部長! 我々は遊びでデュエルを行なっている訳ではありません!! そんな最弱のデュエリストを使ったとしても、ただ足でまといになるだけです!」

「それには同感。何を企んでいる、アンタは」

佐久絵は肩をすくめる。

そして2人の方を振り向くと毅然とした態度を取る。

「貴方たちには分からないでしょう。除け者とされている彼が、どんな気持ちでデュエルを行なっているのか」

うっ。と言葉を詰まらせる2人。

「嫌々されるがままにやられ、大切なモノを失う悲しさ。そして何もできない自分の無力さ。どちらも自分が未熟だから起こる事なのよ。けど、彼の中に秘めている悲しみはもうどうにもできない。さっき会った時にも、常に悲しそうな目をしていた。自分に幸せなどないと言わんばかりに」

夕焼けの赤い日に照らされながら佐久絵は視線を落とした。

もし、自分たちがきっかけを作りデュエルの楽しさを学べたら。恐らく佐久絵はそんな事を考えているのだろう。

その優しさは理解できる。佐久絵の優しさは、学園での人気の秘訣なのだから。

しかしそれはそれ、これはこれ。取り柄もない者が、ただ邪魔をするだけとなればこっちだって大迷惑だ。

「言いたい事は分かります。ですが!!」

意思を伝えようと声を大きめに発生させる。と、ここで異変が起きた。

周りに雲が現れる。日の光が若干降り注いでいるのが見えたのでこれは恐らく立体映像である事がすぐに理解した。

しかし何かおかしい。雲の質と言うのか? 雨雲みたいに黒っぽい雲。などと生易しい表現ではない。

もっと禍々しい。恨みと憎しみを持ったドロドロとした色の黒なのである。

「な、何なのコレ!?」

「・・・・近くでデュエルが行われている!」

享は辺りを見渡し、丁度体育館裏へと視線を移す。どうやらあのドロドロ雲の発生源はあそこらしい。

その証拠に一番色が濃い、何もかもを飲み込む。まるでブラックホールを思わせる渦が発生しているからだ。

「・・・・行ってみましょう」

佐久絵の意見に、反対する者などいなかった。

即座に走り出し、何が起きているのかを確かめに行く。

息を切らし、最初にたどり着いた佐久絵が目にした光景。それは、言葉を失いかけた。

 

そこには、悪夢と言うべき戦士が2体、相手を切り裂いていた。

 

→→→

 

2対1の変則デュエル。おまけに相手はここの学園でもあまり評価の良くない不良2人組だ。

対する1人の方は、遊丸であった。が、どうにも遊丸の様子がおかしい。

この状況に苛立ちを感じているように、目を尖らせていた。そこにはさっきまで人生を諦めていた死んだ目は消し飛び、代わりに生物を喰らわんとばかりに辺りを徘徊する野獣のようだった。

享とは違う、野生の獣。そしてフィールドを確認する。

相手フィールド上には攻撃力2000と2900のモンスターが2体。双者共にライフポイントは最初と同じ、4000のままだ。

対して遊丸のライフは残り100。このままでは遊丸の負けが確定する。

 

しかしそんな現状を嘲笑うかのように、それはいた。

 

遊丸のフィールド上には、2体のモンスターが存在していた。

青い甲冑に巨大な剣。それに神々しい光を放つ騎士。

雷を身にまとい、巨大なブレードを片手に敵を切り裂かんと威圧を感じさせる赤い戦士。

しかし恐れるのはここからだ。

赤い戦士のモンスター。その攻撃力は2000であったが、周りに浮遊していた2つの球体が剣に吸収されるが否や、その攻撃力が格段にアップする。

―ATK2000→4000―

「こ、攻撃力4000だと!?」

「嘘だろ。こんな悪夢、初めてだ・・・・」

不良2人、唖然としていた。

赤き戦士を操っている遊丸は、まだまだご満悦する様子でもない。今の状況を楽しんでいる訳でもなければ、圧倒的な力に浮かれもしない。

憤慨していた。手に力を入れ、関節をボキボキと鳴らす。

「・・・・つまんねぇデュエルをしやがって。お前らの面など見飽きた。今ここで、最初に宣言した通り、ただじゃおかねぇぞ」

クックック。と体を揺らし、しかしそこだけ楽しそうに歯をむき出しで笑い出す。

「聞け、そこの2人! 俺は逃げも隠れもしねぇ。復讐したければ弱気な俺でも良い、挑発して来い! 楽しめそうな時だけ、相手をしてやる!!」

2人は恐怖のあまり聞いていないとは分かっているものの、言葉を続ける。

「俺の名は気以楽遊恪! 面白みがなければ、作ってでも楽しむ馬鹿野郎だ!」

そう言うと、手札に残された2枚の魔法カードを発動させる。

その瞬間、赤き戦士の攻撃力が再び上がった。

―ATK4000→8000→16000―

それを見ていた誰もが、言葉を失う。

普通のデュエルでここまで攻撃力を上げたのは、多分この人が初めてだろうと。しかしそれ程までに面白さを求めていたんだろうとも伺える。

「ここでは曖昧な判定なんだろうな。だがそれがお前らにとっての命取りとなったぁ! せいぜい死にかけのゴキブリのごとく足掻いて見せな! 行け、エクスカリバー! カオス・ソルジャー―開闢の使者! そこにいる罪深き罪人を粉砕せよ!」

2体の戦士は、それぞれ違う目標に向かって動き出す。

モンスターの目の前に来たエクスカリバーは、巨大な剣を振りかざし相手モンスターを一刀両断で切り裂いた。

開闢の使者は相手モンスターを持ち前の剣を頭から突き刺すと、滑らせるように下へと剣を動かした。モンスターは真っ二つとなり、直後に爆発が起きる。

「一刀両断! 必殺真剣!! 開闢双破斬(かいびゃくそうはざん)!!」

叫んだ。それと同時に爆発に巻き込まれた2人が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられるが否や1人はピクリとも動かなくなった。

「あ・・・・あぁ・・・・・」―LP4000→0―

「がはっ!?」―LP4000→3000―

ライフが残っている男は倒れるもすぐに立ち上がり、腰を抜かして逃げようとした。

が、遊丸の容赦のない攻撃は止む事はない。

「残念ながら、お前は負けだ。開闢の使者が相手モンスターを破壊した場合、続けてもう1度だけ攻撃を行える。これが力の差だ。せいぜい数百年ぶりのデュエルにしてはクッソつまんねぇデュエルだったよ。果てろ、糧」

再び構える開闢。そして遠慮もなく禍々しい光を放つ剣は、相手を問答無用で突き刺した。

「時空突刃・開闢双破斬!!」

刺された少年は実際に痛みはないが、代わりに衝撃を受ける。衝撃は攻撃力に比例して強まるために、想像を絶する衝撃が体を襲った。

もう1人は今が好奇とばかりに逃げていたが、遊恪が睨みつけると、それに応じる様な形でエクスカリバーが剣を投げる。剣は少年の真上から落下し、立体映像ではあるが串刺しになり、衝撃が襲う。攻撃力8000の威力は衝撃さえも感じさせないまま、その場で気絶させた。

「が・・・・どっ」―LP3000→0-

デュエルが終わる。

遊丸は相手を見下すと、何事もなかったかのように歩き出した。

反対側から何か声が聞こえるも、それを無視。他者の言葉など、耳に届ける意味すらない。そう考える。

しかし足を動かす毎に激しい疲れが生じる。いつしか呼吸は激しくなり、心臓も痛い程の鼓動を伝えるようになった。

(っ! 久々に体を使ったからか? それとも・・・・)

揺らぐ風景。そして頭から聞こえる声。

『・・・・キミは、誰?』

「・・・・俺か。俺は、この世界へと迷い込んだ、退屈を憎むバカだ」

それだけを言う。

体育館倉庫の表へと出たところで、遊恪の意識がプツンと途切れた。

倒れ、朦朧とする意識の中で誰かの声を感じ取った。走ってくる足音。そして揺れる体。微かにだが、3人の人影が見えた。

呼びかけているようだが、何も聞き取れない。

仕方ない。と遊丸は思い、最後の力を振り絞り。

「だ・・・い、丈夫、だ。俺は、眠るなど。退屈な、事を・・・・したく、な・・・・」

スッと肩の力が抜け、深い闇へと堕ちていった。




プロローグの転生者一体どこ行った!?
なんて思っている貴方、正論です。しかしこの物語は、後にいろいろな事をやりたいが故に変なフラグがさりげなく立つ場合があります。
さてと、第1章後半へと続きます。
あと、誤字脱字の指摘もお願いします。
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