御剣三姉妹の剣と双葉の拳がコートの男にせまるが、すべてすり抜けてしまう。
「こいつっ!」
その様子にイラつくものの、どうすることもできない。
「次はこちらの番だ」
男がそういうと同時に、双葉の目の前へ移動する。
「な、速」
「遅い」
防御をする前に腹に蹴りを入れられ、大きく飛ばされる双葉。
「皆の者、しばし時間をかせげ!」
朱音が魔力を溜めながら三人に言う。
だが、男は明らかに見下しているようで、朱音の方に見向きもしない。
「なめたマネを…!」
それに怒りを覚えた光だが、こちらの攻撃は一切通らないので、どうしようもない。
「我が才を見よ!万雷の喝采を聞け!」
朱音が宝具を使おうと詠唱を始める。
普通ならここで詠唱を止めるのだが、黒コートはなにも行動を起こそうとしない。
「座して称えるがよい…… 黄金の劇場を!」
そして今、詠唱が終わり、宝具が発動される。
「『
眩い光があふれ、それが収まるとそこにあったのは、かのネロ皇帝がローマに建設した劇場「ドムス・アウレア」。それを魔力で再現したものだ。
「こちらの番だ、行くぞ!」
朱音が剣を構え、黒いコートの男に斬りかかる。
男はそれをレーザーのような光の剣で受け止める。
「受け止めた?」
先程までなら何もせず、すり抜けていたのに、男はわざわざ受け止めたのである。
「この劇場内では、お前の力も思い通りにいくまい!」
そう、朱音こと「ネロ・クラウディウス」の宝具「
「ふん…丁度いいハンデだ」
対して男はまだそのような事をいう。
「そうやって強がっていられるのも今のうちだけだ!」
朱音はそう言って攻撃するが、全て防がれてしまっている。
「朱音姉さん、無理しないで!」
桜が反対方向から攻撃をし、助太刀するものの、男は両手に光の剣を持ち、片手でそれぞれを相手にする。
「こやつっ…!」
「弱体化しているハズなのに…!」
状況的にはこちらが上のハズなのに、どうにも勝っている気がしない。そのような思いがぬぐえないでいた。
「二人とも、下がってください!」
すると、少し離れた所にいる光から声をかけられ、朱音と桜はその場から離脱する。
「『
かの聖剣の一撃が放たれ、黒いコートの男に当たる。
「どうだ、これで少しは…」
当たった時に出た大量の煙が消えると、そこには傷一つついていない男の姿があった。
「バカな…聖剣の一撃をくらって無傷だと…!」
その光景に目を見開き、息を飲んでしまう。
「一歩音越え」
しかし、「桜セイバー」こと「沖田総司」の人斬りとしての勘からか、まだ仕留めきれていないと察していた桜はすでに動いていた。
「二歩無間」
かの聖剣の一撃、見た目は無事でもダメージはいくらか入っているはずである。
「三歩絶刀!」
故に連続の奥義には耐えられない。
「無明三だ…っ!」
そう思ってしまっていたがために、心に慢心ができていた。
男は桜が突きを放つ一瞬前に刀を掴んだのだ。
「その奥義はあくまで一本の刀で行うものだ。当たる前に掴んでしまえばどうとでもなる」
言うのは簡単だが、実際に行うのは難しい。だが、この男はそれをやってのけたのである。
「凍れ」
男が桜を凍らそうとした瞬間、桜はなんとか正気に戻り、刀を捨てて二人の元まで下がる。
「今のはなかなか面白かったぞ。面白かっただけだがな」
男はあくまで余裕の状態である。
「なら、これならどうだ!」
男の後ろから、ある程度回復できた双葉が襲い掛かる。
「おらおらおらおらおらぁ!」
今まで以上の速さで殴り、蹴りを連続で繰り返すが、男は全てさばききる。
「これで、どうだああぁぁぁ!」
その後の攻撃も全て防がれ、流され、とどめの蹴りまでも防がれるどころかカウンターをくらわされ、三人の元へ飛ばされる。
「くそっ、あいつ化物かよっ!人間技じゃねえぞ!」
四人に嫌な冷汗が流れる。
「終わりか?では次はこちらの番だな」
男は四人に手を向ける。
「
男の周りに巨大な隕石が現れ、四人に降り注ぐ。
「『
光は急いで宝具を発動し、全員を守る。
「ほう、それは厄介だ…使いたくなかったが仕方ない」
そう言うと男は変わった形の剣をどこからか取り出す。
「さあ、今度はどうかな?」
剣から魔法陣が現れ、そこから鎖が飛び出し
すると少しずつ、
「バカな!
「終わりだ」
剣に魔力を纏わせ、斬りかかられると、
「そろそろ時間切れだな」
同時に
「教えてやろうか?お前たちが勝てない理由を」
男は四人に向けて語りだす。
「お前たちの力には欠点があるのだ」
「欠点?」
「そうだ。まず、お前たちの力が贋作の偽物だということだ」
「偽物…だと」
「その通り。お前たちはアーサー王の生まれ変わりでもなければ、ネロ皇帝の生まれ変わりでもない。なのになぜ、その力が扱いきれると思っていた?」
「…言われればその通りだ、しかし…」
「だからこそ、お前たちの宝具は偽物同然なのだ。だからランクが本物よりいくつか下がるのだよ」
「なん…だと…」
「そうだろう。なんせ、神が転生ごときで本物の聖剣を何故無償で与える?詫びとしては高すぎると思うが?」
「それは…」
「それだけではない。お前たちの力は言わばコピー。強さの上限が分かる上に、その上限がかなり下がっているのだよ」
それは自分たちでさえ知らないことだった。
「な、なら…あなたはどうなのですか?」
光が男に尋ね返す。
「まず、お前たちは大きな勘違いをしている」
「なに?」
「私は『この世界の転生者』ではない」
「な…に…」
「私は『この世界とは別の世界の転生者』だ」
「異世界だと!」
それはありえない話であった。他の世界の転生者が、他の世界に来る話など聞いたことがなかった。
「その世界は言わばオリジナルの世界だった。そこで私は力を手に入れたのだよ」
「力を…?」
「そうだ。オリジナルであるがゆえに、上限はない。だからこそ、英霊の力を持つお前たちを超えることができるのだよ。時間だけはあったからな」
「それが…強さの理由ですか…」
「その通り。お前たちは私の手札を知らない。だが、私は君たちの手札を知っている。だから全ての攻撃をさばけたのだよ」
相手に自分の手がばれている。これほど戦いに不利な状況はないだろう。
「最後の理由としては、お前たちが平和慣れしているせいだ」
「平和慣れ、だと…」
「ならば逆に聞くが、前世でお前たちは本物の戦場に立ったか?この世界ではあくまで強すぎる力を持っていただろう?本物の戦場を知らないお前たちに、戦場を知る私には勝てないのだよ」
力の差の理由を語り終えた男は、四人から視線を外し、どこかへと歩き出した。