黒いコートの男はアーシアへと近づく。
「くっ…アーシアには…手を出すな…」
一誠はアーシアの神器のおかげで意識を取り戻したようだが、まだ全快ではなく、体は動かせない。
「私と共に来い、アーシア・アルジェント」
あろうことか、コートの男はそう言ったのであった。
「私…ですか…」
「そうだ。お前は重要な『鍵』の欠片だ。もし、私と共に来るのならば、これ以上ここにいる奴らに攻撃をしないと約束しよう」
「ダメだ、アーシア…そいつの言うことを聞いちゃ…」
一誠はアーシアに声をかけるが、その声も弱い。それがアーシアの決断を固くしてしまった。
「本当に、もう手を出さないんですね?」
「ああ、君が決断さえしてくれれば」
「ダメよ、アーシア!」
小さな影のようなモノと戦っていたリアスと朱乃が、アーシアとコートの男の話を聞き、止めようとやってくる。
「アーシアは渡さないわ!」
リアスの滅びの魔力と、朱乃の雷の魔力がコートの男へ襲い掛かる。
「邪魔だ」
しかし、男は変な形の剣を再び取り出し、それを振るう。それだけで大きな衝撃波のようなものが起こり、二人の魔力を消すだけでなく、周りの者達全員を吹き飛ばした。
「アーシア、君が悩めば悩むだけ、多くの人が傷つくぞ?」
コートの男がアーシアへ追い打ちをかける。
「分かりました。一緒に行きますから、他の人達には」
「ああ、これ以上手は出さないよ」
それを聞いたアーシアはコートの男へ向かう。
「アーシア…ダメだ…」
完全に回復しきれなかった一誠は、アーシアへと手を伸ばす。
「イッセーさん。私、待ってますから。だから…また、助けに来てくださいね」
「アーシア…」
アーシアは一誠の方に振り返りながら、そう言葉をかける。一誠に向けるその顔は信頼からか、笑顔であった。
「眠れ」
何かの魔法を使い、アーシアを眠らせたコートの男は、自分と同じコートをどこからともなく取り出し、アーシアに着せる。
「アーシア…待っててくれ…必ず…必ず、迎えに行くから!」
「それは叶わぬ願いだ」
一誠の決断にコートの男はそう声をかける。
「それはどういうことだ!」
一誠は怒りの声をあげる。
「あれを見ろ」
コートの男が指さす方を見ると、鍵穴のような穴に黒い影のようなモノが入り込むところだった。
すると穴の中からガラスのような何かが砕ける音がすると同時に、穴が消え、地震のような大きな揺れが起こった。
「この世界は終わる。お前と共に」
「どういうことだ!」
何とか体勢を整えたアザゼルがコートの男に問う。
「今破壊したものは、この世界の核のようなものだ」
「核だと?」
「そうだ。一冊の本があるとしよう。その中には物語がある、登場人物がいる。では、その本の核、話の中心のようなものがなくなれば、物語はどうなると思う?」
「まさか…」
「その通り、貴様たちは消える。私自身が手を出すまでもなくな」
「そんなバカな…」
「見ろ。世界の崩壊が始まる」
コートの男がそう言うと地面は裂け、頭上にブラックホールのような球体が現れ、避けた地面がそこに吸われ始める。
「俺達が消えるなら、その嬢ちゃんも消えるんじゃないか?」
アザゼルは何とかしようとして、コートの男にそう問う。
「このコートは特別製でね。そういった世界の影響、修正力などを受け付けないんだ」
「なんだと…!?」
だが、結局は無駄なようだった。
「おしゃべりはここまでだ。最後の時を過ごして消えるがいい」
そう言ってコートの男は黒い穴のようなモノを出し、そこを通ってどこかへと行く。
コートの男が通ると黒い穴は消えてしまう。
「くそっ、こいつはマズいな…」
アザゼルは現状を打破するため、頭をフル回転させ始める。