モンストが消えたそうですよ。 作:バベルを超えし三冠王
―――爆絶より超絶の闘神共の方が難しくね?
……と。
あ、今回話しは全然進んでいません。
「ごゆっくりどうぞ」
テーブルの上に置かれるオレンジジュースとコーヒー。俺の前にはコーヒーが、そして三嶋さんの前にはオレンジジュースが置かれたが、店員さんが下がるのを確認するとそれを交換する。にしても店員さん若いな。
俺が三嶋さんの分も一緒に注文したから、店員さんが勝手に俺がコーヒーで彼女がオレンジジュースだと判断したのだろうが……実際は逆だ。三嶋さんがコーヒーで、俺がオレンジジュース。そうです、お子様舌の那月君とは私のことです。それにしても君、ブラックで飲むんだね……。
此処は学校から少し離れた、小さな小さな喫茶店。退役軍人かと思ってしまうほど、いかつくて体格の良いマスターが営む純喫茶店だ。
今日一日の授業を乗り切った学生の俺達は、今後について話し合うべくこうして二人で喫茶店まで来ているのだ。ただの作戦会議であって、甘い雰囲気なんて何処にもないのは残念というべきか。
「……取り敢えず、お互いのBOXでも見ますか」
「そうだね、私も那月くんのBOX見てみたいし」
今後モンスターと戦う上で、仲間が所持するモンスターくらいは知っておいたほうが良いと思うが、そんなことは抜きにして、ストライカーと言うのは身近なストライカーのBOXが気になる生き物なのだ。
お互いにモンストを起動してから端末を交換する。待ち受け画面を見られたらやばいのかって?唯の礼儀だよ。
さてさて、三嶋さんのモンスター達を拝見、っと。
パッと見ではあるが、結構BOX内は潤っている様に思う。ルシファーとか、卑弥呼とかもいるし。ペルセポネとか使いこなせれば強いし。後ダルタニャンが3体いるとか超ずるい。ラプンツェルや安倍晴明が被ってるのはお揃い(笑)だ。
三嶋さんは爆絶はエデンしかクリアしていないと言っていたが、他の爆絶の適正だって有しているのだから、マルチで行けきっと大丈夫だと思う。
「那月くんって、結構ガチ勢だったりする?」
「そんなこと無い……って否定しきれないかも」
俺のBOXを見た三嶋さんの表情には、少々呆れの色が浮かんでいる。正直、自分がガチ勢かどうかの判断って困る。
ランクで言えばまだまだ中級くらいだろうし、運極達成数だってまだまだだ。ただ、三嶋さんがガチ勢を疑ったのは、ある3体のモンスターが原因だと思われる。ツクヨミとイザナミ、それからアヴァロンだ。
超絶2体は、言わなくても察しているだろうが運極だ。ツクヨミは自分一人で頑張ったが、イザナミは友人と一緒にラック上げをした。
そんでもってアヴァロンのラックは、現在8。決して高くないというか寧ろ低いけれど、少なくとも普通のストライカーであればラック上げをしようなんて考えないだろう。それがラック8なのだから……ただの雑魚が調子に乗ってると言った方が正しいか。
それでも、超絶2体運極で、しかも他の超絶もラックを上げようとしているんだから、あながちガチ勢というのも間違いではないのかもしれない。超絶と言っても一周目だけども。
そんなことはどうだって良い。
問題はだ、先程のやり取りで会話が止まってしまい、妙に気まずい空気になってしまったことだ。
そりゃあ俺だって男だ、甘酸っぱい青春ラブコメというか、女の子と過ごす時間に憧れだって抱いている。憧れを抱いているだけで実際に経験したこと無いのだから、こんな風に動けなくなってしまうのは当然というべきか。
「いやぁ良いですね、青春ですねぇ。私にもこんな時期が……くッ」
「自滅してんじゃねぇよ」
でも残念というべきか幸いというべきか、今日は二人きりで喫茶店に来ているわけではないのだ。
窓際の席で向かい合う俺と三嶋さん、そして三嶋さんのとなりのサタンと、俺の肩の上に乗っかるガブリエルで……ところでなんで君はそこにいるのかな?ツッコミ役のサタンさんですらツッコミを放棄しちゃってるよ……。
あれだ、サタンとガブリエルを無視して青春っぽい雰囲気を味わうのは此処までにしとくとして、今日の本題である作戦会議の始まりだ。
「えっと、じゃあまずは状況の再確認といこう」
「ガブリエルはその位置で固定なんだね」
「はい。案外乗り心地が良くって……。三嶋様もいかがですか?」
「遠慮しておくよ」
「……こほん」
話が本題に入る前に脱線し始めたので、わざとらしく咳払いをして注意を向ける。
先程口にした通り、まずは状況の再確認だ。
「現状、あるモンスターの所為で、人々からモンストの記憶が失われてしまった。そしてその元凶であるモンスターは、ガブリエルやサタン達から記憶を消すことで姿をくらましている、と」
「あぁ、その認識で合ってる」
サタンの方に視線を向けて確認を取る。ガブリエルが耳を引っ張ってくるが気にしない。ごめんやっぱり痛い。
一先ず手の甲をつねっておき、耳から手を離させてから続きを口にする。
「今回のこの事件を解決するには、俺と三嶋さん、そして残り二人のストライカーの計四人が協力してことに当たらないと行けない……が、残りの二人が何処に居るのか、誰なのか手がかりすら無いと」
「授業中、サタンに探ってもらっていたけど、残念ながら学校にはいないみたい……」
なんで俺はこんな簡単なことが思いつかなかったのか。そうだよ、授業中にガブリエルか誰かをお使いに行かせりゃ良かったじゃん。
けど、そこで気になったのが、
「学校の中ってことは、校外は探してない……探せなかったってこと?」
「モンスターの行動範囲、もしかして聞いてない?」
頭を抱えたくなったが、残念ながらガブリエルが肩に乗ってて無理だった。後でデコピンしておこう。
改めて聞かされたのが、普段顕現しているときのモンスターの行動可能範囲について。これがなかなか厄介で、ストライカーを中心とした半径200m圏内でしか自由に移動できないとのこと。
だから、学内であれば探すことが出来たが、それ以外は探せなかったらしい。
「うちの高校にはもうストライカーがいないとすると、小中学生や大学生が残りのストライカーって可能性もあるんだよなぁ……」
「あぁ、なんていうか……何ていうんだろう?」
正直、高校生だけの方が気が楽に思えて仕方がない。先程は言わなかったが、社会人がストライカーである可能性だってあるんだ。
あまり年が離れてしまうと、それだけコミュニケーションを取るのが難しくなると言う危惧があるのだ。考えても見て欲しい、一高校生が社会人と肩を並べられるか?小学生を連れ回しているところなんて想像してみろ、おまわりさんのお世話になってしまうぞ。
せめて近隣の高校に在籍する高校生であることを願う。
「それで、モンスターはストライカーにしか見えない。だから、仲間を探すなら常にガブやサタンには表に出てもらわないと行けない、と」
「省略しないでください!」
思いっ切りほっぺたを引っ張ってくるが、これまた気にしない。ごめんやっぱり痛い。
ガブリエルのふくらはぎを、爪を立ててつねっておく。
「それと、街中で見かけることになるだろうが、モンスターの居る歪みの穴、これを潰してかなきゃならねぇ」
サタンが補足で付け足す。モンスターの居る歪みの穴、特に名前が決まっているわけではないらしいが、このモンスターをずっと放置すると、いずれ現実世界にまで影響を及ぼすとか。
じゃあ何か?スルトとか、ダークドラゴンとかバジリスクとか、出てきたら不味いものが押し寄せてくるってか?つまり、今後も平和に過ごしたきゃ逃げちゃダメってか?
とんだクソゲーじゃねえかよ。更に付け加えられたのが、歪みの穴は感知できるそうだが、ストライカーの連れるモンスターは近くにいても感知できないとのこと。視認しなきゃダメなんだとか。
「頭抱えたくなってきた」
「……私も」
現実から目を背けたくなった俺達は、一緒になって苦笑いを浮かべる。
だから、窓の外で一瞬見えた此処ら辺じゃ見ない学生服の男のことも気にすることが出来なかった。
覇者の塔31階で詰んでます……。ついでに話の続きも思いつきませんよ……。
更に言えば話が全然進みませんよ……。
ダレカタスケテー。