さあ!始まらない!   作:まだはげ

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カタリナ目線

きっと私のしている事を見て、馬鹿だと罵る奴も居るだろう。こんな事をしても成功するなんて思わない。しかし、見捨てるなんて事は出来なかった。

 

「ここから、逃げ出さないか?」

 

今思うとあれが運命の分かれ道の一つだったんだろう。この事に、私は後悔をしない。この私が助けようとした少女の髪のような、どこまでも続く青い空に誓うーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...くっ、ルリア!逃げろ!遠くまで逃げろ!」

 

あの時の私の選択によってルリアは外に出られた。しかし余りにも敵は強大だった。私達を追いかけてくる帝国兵は無尽蔵に湧いてきて、体力のみがどんどんと減っていく。

 

(せめてルリア...君だけでも逃げてくれ...!)

 

あの時の選択は間違いでは無かった。ただ余りにも無謀すぎた。そんな時だった。彼に会ったのは。

 

 

(.....っルリア!)

 

何とかして帝国からの追手をまく事に成功した私は、ルリアの事を探して見つけた。たがそこには見知らぬ少年も立っていた。敵かと思い、ルリアの前に立ち、少年を観察する。

 

その少年はまるで無機質な機械のようだとカタリナは感じた。何ものにも動じず、感じない。そんな瞳を持っていた。そしてその少年の近くには帝国兵が転がっていた。

 

「...君がやったのか?」

 

無言で頷く、信じられない事にこの少年は帝国兵を倒してしまったらしい。

 

(驚いたな....)

 

帝国といえば、このファータ・グランデ空域で一番大きく、強大な国家。そんなことは子供でも知っている。そしてそこで訓練されている兵士が弱いわけも無く、こんな辺境の島にいる子供が倒せるはずが無かった。

 

「私の名前はカタリナ・アリゼという。君がルリアを守ってくれた事を本当に感謝する。ありがとう」

 

私が自己紹介をすると彼は小さいながらも、よく通る声で「グラン」と私に言った。

 

互いの自己紹介が終わり、私はこの少年に今の自分達の状況を伝えた。彼を危ない目に遭わせてしまった責任があり、説明をしなければいけないと思ったからだ。また、事情を詳しく話せば、帝国兵を倒す程の腕前を持つ彼が、こちらの仲間になってくれるかも知れないという薄汚い算段もあった。

 

(私は一体こんな子供に何をしているのだろうな...!)

 

こんな事を考える自分に腹が立つ。腕が立つだけのまだ年端もいかない少年を、大人達の汚い世界に放り込もうとしている。

しかしあの空に誓った通り、私は自分のしている事に逃げる訳にはいかなかった。

 

グランに状況を説明し終えると、まるで図っていたかのようなタイミングで帝国の軍人が現れた。

 

(ポンメルン大尉...いや、ポンメルンか...厄介だな)

 

ルリアを苦しめていた元凶。彼は魔晶という新たな帝国の兵器を持ってきたと自慢げに語っていた。それを使えば魔物を操る事も可能らしい。

 

「おやおや...カタリナ中尉ではありませんか...その後ろには青い髪の少女、それとガキ一匹ですか...まさか逃げられるとは思いませんでしたネェ。偉大なる帝国に刃向かおうとはいい度胸ですネェ!星晶獣を操るにはその少女は不可欠ですからネェ、返してもらいますよぉ!」

 

そう言うとポンメルンの身体から怪しい瘴気が溢れでた。そしてあたりが光に包まれた後、7本の首を持つ魔物が現れた。ヒュドラだ。こんなもののためにルリアを苦しめていたのか、帝国は。そう思うと許せなかった。

 

「クックック、素晴らしいですネェこの力!まずはそこのガキからですネェ!!」

 

そう言ってポンメルンはヒュドラにグランを襲うように指示を出した。

ヒュドラは龍の魔物の一種であり、七本の首を持ちその全てが自立して正確無比に相手を襲う魔物であった。こんな所に居ていい魔物の強さでは無い。

 

だが、そのヒュドラが動く事は無かった。

 

「...ハッ?」

 

首が、切られていた。あれだけの強大な魔物がただの置物と化していた。

 

「なアアぁ!?バッ馬鹿な!?ヒュドラが一撃でやられてしまっただとぉ!?」

 

唖然としてみているしかなかった、視認できない速度で戦闘が行われたのだ。無理がなかった。

 

彼はあの一瞬でヒュドラの首を全て切り落としたのだ。

 

下手をすれば全空の脅威、十天衆にも届き得る力。いや、もしかしたらそれすらも超えているかもしれない力。そんな力をどこで手に入れたのか、どのようにして手に入れたのか。何もかもが不明だった

 

(グラン...君は一体...)

 

 

 

 

 

その後、ポンメルンは撤退をしていった。ポンメルン自身は戦闘ができるタイプでも無く、事務仕事の方で階級を上げたタイプなのでヒュドラ以外、戦闘の手段が無かったのだろう。

 

あの戦闘と呼んでいいのか分からない戦闘が終わったあと、私達はグランを旅に誘った。ポンメルンに顔を見られてしまった以上、この少年も帝国に指名手配されてしまうだろうからだ。

 

(意図してやった事とはいえ心が痛むな...)

 

そんな私の心情を知って知らずか彼は私の提案に乗ってくれた。全力で首を傾けてくれた。まるで全然気にしてないと言うように、寧ろ自分から付いていきたいというかのように。

 

(優しいんだな、君は...)

 

少し、許されたような気になった。そして同時に思った。この少年も絶対に守り抜こうと。戦闘では敵わないかも知れないが他の部分で支えてあげようと。

そうして私たちの旅は始まった。この青い空をどこまでも駆け抜けていく長い旅が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?ヒュドラをもう一体出されたら危なかっただと?何を言ってるんだ君は」

 

冗談は下手なようだ

 

 

 




ファータ・グランデ空域→今の空域、アプデで最近新しい空域ができた。
カタリナ・アリゼ→カタリナさんの本名。かっこいい。
魔晶→ルリアの力を利用して星晶獣の力を操れるようにした物、使いすぎると精神が壊れるらしい。
星晶獣→それぞれの島にいる守り神みたいな感じのイメージ、これによって島の特産などが違う。
十天衆→その名の通り十人で構成され、一人で国を滅ぼすほどの力をもつ騎空団。実際化け物。私はFateのアーチャーが好きなんでシエテ(中の人が同じ)取りました。ちなみにゲーム内で取るには死ぬほど長い時間と素材を必要とする。
倒れていた帝国兵→死んでないから安心してください
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