「うーん…、やっぱり、時計塔も、亜種の啓示も、歪な虚偽も、月の遺骸も、旧式も、星見屋も、日出ずる国も、ちょっとやりすぎたよね〜。せいぜい、原典ぐらいにしておけばよかったのに…。」
ブラックホールを煮詰めたような純黒に、無限に続くモニターと本棚。
その空間の中心で、一人の"少女"がタブレット端末を見ていた。
—いや、正確に言うなら、"少女の形をした何か"。
胸から、"明石 玲子"と書かれたネームプレートを下げた彼女は、まるで誰かに話し掛けるかのように言葉を発した。
「もうさ、地球の霊脈、、捻じ切れてるんじゃないの?だって、イギリスだって、ルーマニアだって、アメリカだって、日本だって、月だって、歪みが多過ぎてもう見てられないよ。特に日本。西から、冬木、福山、京都、三咲、杉岡、観布子…、一つの国に6つも歪みがあるのは、もう異常事態だよ。それも、全て霊脈に沿うように。」
地図をスワイプして拡大・縮小させる。
「私が居た頃はこんなんじゃなかったんだけどなぁ…。いや、むしろそっちの方がヤバイ? …って、そりゃそうか、…アハハハハッ‼︎ …いや、つい思い出し笑いをね。だって、私が最後に地球に居た時でさえ、まだ"神秘"なんてモノはそこらじゅうにあったからからねぇ‼︎」
突然、狂ったように笑い出す。
曰く、『もう思い出す事があり過ぎて笑い死にそう…、いや、死なないけど。』とのこと。
「いや、私が助けてあげてもいいんだけど…、それだと、顕現した瞬間に世界が塗り潰されそうなんだよね…。まぁ、地球に"端末"を送り込んであるから、そっちからやろうとすれば出来ないこともなさそうなんだけど…。"彼女"にも意思があるからなぁ…。」
その場でクルクルと回りながら、思考を巡らせる。
やがて、ハッとしたかのように跳ね、思い付いた事を口に出す。
「そうだ!私だけじゃないんだ‼︎ …あ〜、よかった。うん、これなら何とかなりそうだね。」
そして、タブレットをポイッと投げると、本棚から一冊の本を取り出した。
紅い皮装に金糸で、月が刺繍されている。
「じゃあね、まずは君に登場して貰おうかな、"真祖の月姫"さん?」
彼女は、そう告げた。
その瞬間、黒に支配されていた世界は、真紅の踊る世界に変わった。