もしもブレイブウィッチーズにドリフターズのあの人が来たら 作:ひえん
C-47が夕暮れの中、重そうに滑走路へと着陸する。ムルマンから物資を搭載し、ペテルブルグに戻ってきたのだ。C-47がエンジンを止めると、物資を運ぶ為の車両と整備員が機体へと集まりだした。機体から新型ストライカーと各種装備、更にその他軍需品や医薬品が降ろされてトラックに載せられていく。最後に降ろされる扶桑産の米や調味料、ムルマンで直が貰ってきた物である。
「あー、やっと着いた」
「行きは美味い弁当があったからまだよかったけど、帰りは暇だったぜ」
「えー、快適だったじゃないですかー」
「いや、暇だったな。飛行機は自分で飛ばすに限る」
輸送機から直、直枝、ニパ、ひかりの四人がタラップを降りてくる。クルピンスキーは軍医から入院を命じられた為、ムルマンのあの病院に置き去りである。数日で基地に帰還する予定にはなっているが、療養が必要な状況であり、暫く実戦に出ることはないだろう。
手荷物を抱えて歩きながら直枝が直に話しかけた。
「あの手紙の件は隊長たちにどう報告するつもりだ?」
「そりゃあ手紙の現物見せればいいだろう」
「直さん、翻訳しないとみんな読めませんよ」
「よーし、雁淵コノヤロウ!言い出しっぺのお前が翻訳しろ」
「ええっ!?」
「そーだそーだ、外国語の勉強になるぞ!一石二鳥!!」
「ああ、もう二人ともひどい!」
そんな冗談を飛ばしながら四人は基地へと歩く。
そして、隊長であるラルに物資受領と船団護衛成功の報告を行うべく執務室へと入って行く。執務室ではラル、サーシャ、ロスマンの三人が待っていた。
「皆、ご苦労だった。船団護衛は成功したが、クルピンスキーの負傷は手痛い損害だな」
「すまんなぁ、戦力になれず」
「菅野大尉が責任を感じる必要はない。ネウロイを過小評価し過ぎたこちらのミスだ。それに物資輸送関連の仕事はしっかりやっただろう」
「隊長、ちょっと話が」
「なんだ、もう新しいストライカーを壊したのか?」
その瞬間、隊長の隣にいるサーシャがニパと直枝を睨みつけた。
「いやいや、待て!違う!!」
「直さんの件だよ!私たちは関係ないし、何も壊してないよ!だから正座は勘弁!!」
真っ青になり慌てて否定する二人を無視しつつ、直は机に手紙を置いた。
「ああ、こんな手紙が俺宛に送られてきた」
「ふむ…すまんな、扶桑語は読めん」
「ああ、やっぱり」
ひかりが予想した通りの結果となった為、皆で手紙を翻訳する。
「なるほど、菅野大尉と同じ異世界の国の将官が手紙を送ってきた、と」
「ああ、そういう事だ」
「会いに行くつもりか?」
「ああ、あの山口少将なら会うしかない。届いてすぐに返事を送った!」
「まったく、そんな急がなくても部隊に相談してからでもよかったんじゃ…」
それを聞いたロスマンが頭を抱えた。
「菅野大尉が私たちに相談したとしても結果は変わらんだろう」
「まあ、そうでしょうね。でも、空母ごと来るなんて…扶桑は大騒ぎでしょうか」
「そういう話があったとはまったく聞かんな。余程うまく隠し抜いたのか…ん、もうこんな時間か。もう遅いから夕飯にしよう」
皆で食堂へと向かう。食堂の扉を開けると既に配膳も終わっていた。
「あ、皆さんお帰りなさい」
「クルピンスキーさんは大丈夫そうでしたか?」
下原とジョゼが出迎える。今夜はカレーとサラダらしい。
「怪我以外はいつもの調子だよ」
「そうですか、よかった」
「直さん、あんなにたくさんの米や調味料ありがとうございます」
「向こうで余っていたから貰ってきた。これでうまいメシがたくさん食えるな!」
「ええ、腕が鳴ります」
直の土産に下原が感謝し、皆が席に座ろうとした時であった。
「あ、直さん。電報届いてましたよ」
「何ぃ!?」
ジョゼが直に電報を手渡した。事情を知る皆が慌てて駆け寄った。
「みんなあんなに慌ててどうしたんだろ?」
「さあ?」
手紙の件を知らない下原とジョゼは不思議がっている。そして直は電報の内容を見る。
『スウェーデン ノ ストックホルム ニテ マツ イソギコラレタシ』
やはり山口少将からの電報であった。
「場所を指定してきたか。ここからスウェーデンにはどう行けばいい?」
「…スウェーデンってどこだ?」
「暗号?いや、でもストックホルムって…」
502の面々は首を傾げる。それもそのはず、この世界にはスウェーデンという国名は存在しないのだ。
「地図だ、欧州の地図を見せろ!!」
直枝が地図を取り出した。元の世界とはどこか異なる世界地図。そして、直が場所を示した。その場所はカールスラントの北。
「バルトランドか!」
「ふむ、思ったより近い場所だな」
「スオムスから鉄道ですかね?」
「それが確実かなあ」
場所が分かった502の隊員は次々と案を出す中、そこに下原が質問した。
「あのー…一体何があったのでしょうか?」
「あ」
下原とジョゼが蚊帳の外になっていることに皆が気付き、慌てて経緯を説明した。
「直さん、同じ世界の人から手紙が来たんですか!」
「しかも少将なんて偉い人!それならその人の部下とかも来ているかも」
話を聞いた下原とジョゼも仰天し興奮している。そして、ラルが何かを思いついたらしい。
「そうだ、ちょうどストックホルム発の輸送機が明日の朝に来るな」
「ああ、そういえば。帰りに便乗させてもらう手がありますね」
ラルの一言にロスマンがアイデアを出した。解決策が見つかり、皆がホッとした様子で席に座る。食事を始めたその時、ラルがもう一言付け加えた。
「ああ、休暇にはちょうどいいな。下原、ジョゼ。菅野大尉に同行してこい」
「え?」
「私たちが?」
「お前たちは軍務以外で働き過ぎだ。たまには基地から離れて休め」
しかし、直枝の一言が飛んだ。
「この前、下原がいなくて食事が悲惨になった事があったが…行かせるのか?」
「安心しろ、その時の原因は今ごろ病院で寝ているから今度はやらかさない。基地にいるコックの食事を確保しておくさ」
「なるほど、そういう意味でもちょうどいい」
「では、問題無いな。三人で行ってこい」
「了解!」
食事を終えた一同は自室へと引き揚げる。だが、直枝は直を呼び止めた。
「おい」
「よう、チビ。どうした?」
「チビ言うな。まあいい…気を付けて行ってこい」
「分かってらあ。土産でも買ってきてやるよ」
「そうか、期待しないで待ってるよ」
そして、夜は更けていく。
夜が明けて空が明るくなった頃、ペテルブルグの滑走路に轟音を響かせてリベリオンの国籍マークを付けたC-46が降り立った。前回一行が載ったC-47よりも大型で強力な2000馬力のエンジンを2つ積んだ輸送機だ。人員や郵便物の積み下ろし、点検と補給が済めば輸送機はストックホルムへと飛び上がる。そんな中、仮設飛行場にトラックに便乗した直、ジョゼ、下原の一行がやってきた。休暇という事もあり、下原とジョゼは旅行カバンを抱えている。
「C-46…ダグラス輸送機よりでけえ」
「じゃあ、行きましょうか」
「うん、定ちゃんのお弁当楽しみだなあ」
「今日のお弁当はおにぎりと卵焼き」
「おおっ!扶桑料理」
「そりゃうまそうだ」
三人は輸送機の機内へと乗り込んだ。機内は人員輸送用にびっしりと座席を配置している。乗客はまばらだが、ペテルブルグ発だけあってどこかで見たような顔が多い。通路を通る間に数人から声を掛けられながら席に着く。すると、コクピットから機長が出発を告げた。機体はゆっくりと動き出す。滑走路に入り、エンジンが唸りを上げる。すると機体がグッと加速し、離陸速度に達すると機体が浮いた。
一行を乗せたC-46は機首を北西へと向け、大空目がけて飛んでいく。
あの人が手紙の差出人へ会いに行くようです
C-46の資料少なすぎませんかね…機内写真があんまり無い
そして動きの少ない会話ばかりのシーンは基本的に文章書くのが苦手という…