やはり俺達が世界の銃爪を引くのは間違っていない 作:シャルルヤ·ハプティズム
運営が非公開にしてたのに一ヶ月気付かなかった俺氏。
玉狛に仮入隊した黒トリガーを持った近界民、空閑遊真。彼のトリガーを狙う太刀川達の前に現れたのは、玉狛支部所属がS級隊員、迅悠一だった。
迅「········太刀川さん久しぶり。皆さんお揃いでどちらまで?」
迅は風刃に手を掛けながら口を開いた。対峙している太刀川達は全員が臨戦態勢に入っている。
当真「迅さんじゃん、何で?」
迅「よう当真。冬島さんは?」
当真「隊長なら船酔いでダウン。今頃寝てるんじゃない?」
この場にいない冬島は乗り物に滅法弱いため、現在本部の医務室で薬を飲んで、仮眠中である。諏訪は、このおっさんはいい歳して夜通し俺らと麻雀してるからでは、と思ったことがあるとかないとか。
風間「余計なことを喋るな当真」
軽く答えた当真に風間が釘を刺す。
迅「後輩にちょっかい掛けに来たんだろ?かなりいい感じだから邪魔しないで欲しいんだけど」
太刀川「それは無理だ······と言ったら?」
分かりきったことを聞いた迅だったが、結局自身の予想通りの答えだった。
迅「なら仕方ないな。実力派エリートとして、守らなきゃね」
迅は少しばかり目を細めて太刀川に答える。
風間「そうか·····隊務規定違反で処罰を受ける覚悟はあるんだな?」
ボーダーには、模擬戦(ランク戦など)を除く隊員同士の戦闘を堅く禁ずる。という隊務規定がある。
迅「風間さん、それならうちの後輩だってボーダー隊員だ。あんたらがやろうとしている事だって立派なルール違反じゃないのか?」
迅の主張に対して、三輪に強い怒りがこみ上げる。三輪の頭には4年前のあの光景が浮かんだ。何も出来ず、ただ見ていることしか出来なかったあの日の光景を。
三輪「何がボーダー隊員だ!ふざけているのか!近界民を匿っているだけだ!」
だから近界民に目の前で最愛の姉を殺された三輪にとって、近界民は到底許せるものではない。
迅「近界民を入隊させてはならないなんてルールはない。あいつは正式な手続きで入隊した真っ当なボーダー隊員だ。あんた達に文句は言わせない」
迅は風間と太刀川と押し問答を繰り返す。
太刀川「いや、お前の後輩はまだ正式な隊員じゃない。玉狛で正式手続きが済んでいようが、本部はまだ認めてない。お前の後輩はまだ黒トリガーを持った野良近界民だ。戦っても何も問題ないな」
出水「(それ、あんたが戦いたいだけでは?)」
流石は戦闘狂、と出水は思った。
三輪「(····何で俺が太刀川さんを苦手としているのかをよく分かった。似てるんだ。この2人のやり方が·······)」
迅「·········やっぱりそうなっちゃうか········」
風間「大人しく近界民の黒トリガーを渡した方が身の為だ。それとも、黒トリガーを使って戦争でもする気か?」
迅「そっちにも事情があるんだろうけど、こっちだって事情があるんだ。そっちからしたら単なる黒トリガーでも、本人からしたら命より大事なものだ。戦争しようなんて考えちゃいないが、大人しく渡すつもりはないね」
迅は風間や太刀川に飄々として答える。
風間「抵抗を選ぶか·········遠征部隊は黒トリガーに対抗出来ると判断された部隊だ。他の連中ならいざ知らず·····俺達をお前一人で相手に出来るとでも思っているのか?」
迅「俺はそこまで自惚れてないよ。あんたらの強さならよく知ってる。三輪隊までいるんだ。俺が風刃を使っても勝率は五分にも満たないだろうね。
······俺一人なら、の話だけど」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
風間「何!?」
ザッ!!!
嵐山「嵐山隊現着した!忍田本部長の命により、玉狛支部に加勢する!」
太刀川「忍田本部長と手を組んだのか····!」
そこに、襲撃部隊である彼らの後ろから、もう一つ足音がする。
ストッ。
「「「「「?」」」」」
八幡「·····玉狛支部所属、比企谷隊隊長比企谷八幡。迅悠一に加勢する」
八幡は、迅と、襲撃部隊を挟み込む位置に降り立つ。
「「「「「!!!?」」」」」
三輪「玉狛····だと!?」
八幡「·····俺は最初から玉狛だ」
迅「いいタイミングだ。嵐山、八幡」
八幡「他ならぬ修のためですからね」
嵐山「三雲君のチームの為だからな。彼には大きな恩がある」
迅「木虎も修の為?」
木虎「命令だからです!······それよりも、比企谷隊は玉狛だったんですか?」
八幡「派閥そのものが出来た時からな」
三輪「比企谷!何のつもりだ!」
八幡「向こうもいい奴がいるからな。修に言われたんだろ?いつまで子供みたいなこと言ってるのか~って」
三輪「何故それを····!」
迅「悪いね。八幡と嵐山隊が居ればこっちが勝つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
太刀川「未来視か。本気のお前は久しぶりだな」
太刀川は、腰の弧月に手を掛ける。
太刀川「··········お前の予知を覆したくなった」
太刀川は弧月を抜く。同時に全員が臨戦態勢に入る。八幡も弧月を抜いた。迅は風刃に手を掛け笑っている。
迅「·····やれやれ。そう言うと思ったよ」
ボーダーのトップ部隊の戦いが端を開いた。
戦闘が始まって、迅さんが、太刀川隊と風間隊と当真さんの相手をしている。冬島さん居なくて良かった。トラッパーはめんどいからな。
迅『八幡は、嵐山達と一緒に三輪隊の相手してくれ』
八幡『了解。今んとこプランAですね?』
迅『ああ。頼んだぞ』
八幡『比企谷了解。ついでに、こっちに来るであろう出水も対処します。そのうち当真さんも来るだろうし』
迅『オーケー。頼りになるわ』
八幡「旋空弧月」
旋空を1秒で放つ。いつもより長い時間だから慣れんな。
出水「うおっ!危ねぇな比企谷」
三輪「チッ·····」
八幡「バイパー」
バイパーを威力重視で撃ち、こちらに来るように仕向ける。
八幡「どうした三輪。そんなもんか?」
三輪「比企谷っ!···」
三輪が弧月で斬りかかってくる。三輪は激情しやすい性格だからこういうのは、直ぐ食いついてくる。
八幡『嵐山さん。こいつらは出来るだけ迅さんから引き剥がします』
嵐山『分かった』
八幡『迅さん、そっちは任せます』
迅『あいよ~』
当真が迅を狙撃する。だが、夜の住宅街だったこともあり迅は易易と狙撃を回避する。
当真「うへぇ、流石迅さん。嫌な地形選ぶぜ。全然射線通んねぇ」
太刀川「にしても、なかなか削れないな」
風間「それに、迅はまだ1発も風刃を撃っていない。トリオンを温存する気だろう」
菊地原「風間さん。こいつら無視して黒トリガー奪いに行っちゃ駄目なんですか?うちの隊だけでも」
風間「····玉狛には木崎達がいる。ここで、戦力を分散させるのは危険だ」
太刀川『三輪、米屋と古寺の合流はまだか?』
三輪『もうすぐ合流出来ます』
太刀川『なら、お前らはこのまま比企谷達を殺れ。出水は三輪達と一緒に行け』
出水『りょ〜か~い』
風間「玉狛と忍田派が手を組んだということは、黒トリガーに本部隊員の3分の1。更に玉狛第一と並んで最強と歌われる比企谷隊。戦力の上で完全に我々を上回っている。黒トリガー奪取の失敗は許されない」
三輪「比企谷!何故、近界民を庇う!?」
三輪が弧月で斬りかかってくる。弧月で受け止め、三輪の腹に蹴りを入れる。三輪は体勢を立て直し、アステロイドを撃ちながら再度斬りかかってくる。
八幡「何でかって?····お前と違ってただ近界民を恨むだけなら意味がないことを理解しているからだ」
三輪「なっ!?近界民を恨むことの何が悪い!」
八幡「そういうとこなんだよっ·····!」
俺は三輪の懐に突っ込み、思いっきり弧月を斜めに振り下ろす。三輪はぎりぎり受け止めたが、吹き飛んで三輪の弧月の刃が折れた。 三輪の躰からは、所々トリオンが漏れ出している。
三輪「ぐっ!」
······俺は、三輪のような人を多く見てきた。そして、俺自身も実の両親を目の前で殺され、向こうの世界でそこでの父・比企谷時宗を目の前で失ったので、三輪の気持ちは痛い程分かる。俺だって全ての近界民を許してる訳ではない。だが、俺は三輪とは違う。俺には支えてくれる人がいた。陽乃や修がその最たる人である。だから、俺は三輪と違い、前を向くことが出来た。そして、復讐が何も成さないことにも気づくことが出来た。三輪にも、もっと寄り添ってやれる奴がいたら変わるかもしれない。
出水「アステロイド!」
出水がアステロイドの両攻撃を撃つようにキューブを出す。そこに、佐鳥が狙撃する。が、出水は両攻撃に見せ掛けた両防御で佐鳥の狙撃を防ぐ。
出水「佐鳥見っけ」
そこに米屋が合流した。古寺はそのまま迅さんの方へ行ったな。
米屋『秀次、状況は?』
三輪『相手は嵐山隊と比企谷だ。しかも······比企谷は玉狛派だった·····』
古寺『ホントですか!?比企谷隊が玉狛!?』
米屋『マジか、ハッチが居るとなるとめちゃめちゃキツイな』
米屋「よっすハッチ」
八幡「敵に挨拶すんなや····狙撃!」
ぎりぎりで首を捻って躱す。危ねぇ。当真さんもう来たのか。
当真「あーれ?当たんねーな」
八幡「そう簡単に当たりませんよ」
八幡『嵐山さん。米屋がこっちに来ました。古寺はそのまま迅さんの方に』
嵐山『分かった。藍は賢のサポートだ!』
木虎『了解!』
木虎は佐鳥のサポートへ向かう。
嵐山『充はこのままいくぞ!』
時枝『了解しました』
迅『全員、プランBだ』
『『『!···了解!』』』
数分前。
菊地原『おかしいですよ、風刃を一発も使わないなんて』
太刀川『菊地原の言う通りだが、迅が考えている事を俺達が考えても仕方ない。今は···』ニッ
そう言って太刀川はニヤリと笑い迅に斬り掛かる。迅も笑みを浮かべながら受け止める。太刀川と鍔迫り合いになっている迅に、風間隊も連携して斬り掛かる。
歌川「アステロイド」
歌川が、射手用トリガーのキューブを浮かべる。だが、迅が自分と歌川の間に風間を吹っ飛ばした。歌川は展開したキューブを消す。その間に、迅は更に下がる。
太刀川「随分と大人しいな迅。昔のがプレッシャーあったぞ」
太刀川達も、迅と一旦距離をとる。
菊地原「戦う気ないんですよ。単なる時間稼ぎ。今頃玉狛の連中が近界民を逃がしてるんだ」
風間「いや、守りに徹しながらもこちらのトリオンを削りに来ている。こいつは俺達をトリオン切れで撤退させるつもりだ」
太刀川「········なるほど。撃破より撤退の方が本部との摩擦が少なくて済む。戦闘中に後始末の心配とは」
迅のプランAは、風間の推測通り襲撃部隊をトリオン切れで撤退させることだった。但し、それは洞察力に優れた風間に見破られてしまった。
菊地原「風間さん、やっぱりこの人は無視して玉狛に行きましょう。目標は近界民の黒トリガー。この人とやったって時間の無駄でしかないです」
風間「確かに····このままでも埒が明かない。玉狛に向かうか·····」
風間の狙いは迅の逃げ道を封じることである。だが、ここにいるのは、S級隊員の迅悠一。そう易々と通すわけではない。
迅「·······やれやれ、やっぱりこうなるか」
太刀川・風間「「!!!」」
迅の持つ風刃から複数の光の帯が現れる。そして、迅は躊躇なく風刃を振るう。全員が身構える。が、次の瞬間、塀から伝播した斬撃が菊地原の首を刎ねた。菊地原はそのまま緊急脱出した。
太刀川「···出たな風刃」
太刀川は薄笑いを浮かべる。迅も薄笑いを浮かべているが、迅の目には先程とは明らかに違う、強い光が宿っている。
迅「····仕方ない。プランBだ」