やはり俺達が世界の銃爪を引くのは間違っていない   作:シャルルヤ·ハプティズム

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36話:ROUND3。三雲修は、尚も戦いながら牙と爪を研ぐ。

 

三上の声が、ランク戦ブースに通る。今回、比企谷隊や加古隊など、前回は観戦に来ていた部隊は、軒並み自隊の隊室で見ている。

 

三上『B級ランク戦第3戦、昼の部が間もなく始まります。実況は風間隊の三上。解説には、No.2攻撃手の太刀川さん、「ぼんち揚げ食う?」でお馴染みの迅さんにお越しいただきました』

 

迅・太刀川『『どうぞよろしく』』

 

三上『······さて、那須隊が選んだステージは「河川敷A」これはどういう狙いがあると思いますか?太刀川さんお願いします』

 

太刀川『······マジメに?』

 

三上『真面目に』

 

太刀川『普通に攻撃手封じだな。川を挟んで橋落とせば、射撃メインの那須隊はやられにくくなる。とはいえ、鈴鳴にも玉狛にも射程持ちはいるんで、地形で勝負が決まるってことはないだろうな。分断されても、川は腰ぐらいの深さだから、援護があれば渡れないこともない』

 

迅『それはどうかな〜?』

 

太刀川『何?お前なんか見えてんの?』

 

迅『さあね』

 

三上『スタートまであと僅か。全部隊、転送!』

 

 

 

三上『各隊員転送完了!MAP・河川敷A、天候・暴風雨!』

 

ステージは暴風雨が吹き荒れ、川は氾濫寸前である。東岸には、修、千佳、那須、来馬、太一。西岸には、遊真、村上、茜、熊谷となった。西岸で橋から一番遠いのは、村上である。西岸では、全員が橋に向かっていた。

 

太刀川『マジか。こりゃ、川渡んのはキツい。落ちたらヤバいな』

 

迅『MAP選択には天気や昼・夜の設定も含まれますが、ここまでハードな設定は見たことないですね。那須隊の本気度が感じられます』

 

三上『仕掛けた強みからか、那須隊の動き出しがやや早い!』

 

 

他の隊員が、悪天候に左右される中、那須隊は合流しようとしていた。

 

那須『皆、作戦開始よ』

 

茜・熊谷・志岐『『『了解(です)!』』』

 

 

一方の修も、作戦を通達した。

 

修『作戦を説明するぞ。先ず遊真、お前は村上さんを全力で迎え撃て。こっちのことは考えなくていい。可能な限り、僕が狙撃で援護する』

 

修は東岸に村上が来ることを一番の不安要素と判断して、遊真に村上を止めるように指示した。

 

遊真『了解。助かるぜ、オサム』

 

修『千佳は鈴鳴第一······特にスナイパーの位置を、逐一僕に送ってくれ。あとは、敵から離れて見つからないこと優先。必要だと思ったら撃っていい。宇佐美さんとの判断に委ねる。那須さんの射程には入らないこと』

 

千佳『了解』

 

遊真『オサムはどうする?』

 

修『僕は·····こっちで点を取る』

 

遊真『そうこなくっちゃな』

 

 

 

三上『西岸では早くも会敵!鈴鳴第一・村上隊員を、玉狛第2・空閑隊員が足止めか!一方の東岸では、誰も橋に向かわない。全隊が合流を優先。西岸でのチームメイトを待つ構えか』

 

 

遊真は、橋に向かっていた村上を奇襲した。そして、今対峙している。

 

村上「·····意外だな」

 

遊真「どうもムラカミ先輩。隊長の許可が下りたんでね。ちょっと遊んでってよ」

 

村上「そうか。悪いが、すぐに終わらせる」

 

 

迅『東岸は、雨取隊員の砲撃を警戒していますね。橋を渡るところを砲撃されるのは危ないですから。河岸に向かっている那須隊長も橋を押さえに行くつもりでしょう。射撃で牽制する役ですね』

 

太刀川『こりゃあ、那須隊の作戦が当たりか?橋を渡りきったら爆破用に持ってるであろうメテオラで橋を落とす。くまと日浦はもう渡り始めてるからな』

 

 

熊谷「行くよ茜!三雲君と太一君の狙撃に注意して!」

 

茜「分かりました!」

 

茜と熊谷は、橋を渡り始めた。

 

 

東岸では、修が河岸で那須と会敵した。修は、アステロイドで牽制する。

 

修「·····(那須隊はやっぱりこっちで合流しようとしてたか。鈴鳴にも作戦に加わってもらうか)」

 

那須「(絶対に負けられない······)勝つ······一点でも多く取って·······」

 

那須はバイパーを修に放つ。修は、住宅地を利用して弾から逃げる。修にバイパーを放った直後、那須は太一にイーグレットで狙われたが、回避する。

 

 

太一「うーん、当たらん。ライトニングのがマシか?これ」

 

太一は照準を那須に当て直す。

 

今『太一!不用意に撃っちゃだめよ!』

 

 

志岐『弾道解析。立体図送ります』

 

那須「ありがとう小夜ちゃん」

 

那須は、太一にバイパーを放つ。太一は、なんとか躱しビルから飛び降りるが、バイパーが迫る。そこを、太一と合流しようとしていた来馬のシールドで難を逃れる。

 

来馬「太一大丈夫!?」

 

太一「助かりました。那須先輩怖~」

 

 

三上『東岸では那須隊長のバイパーが縦横無尽!軽はずみな攻撃には手痛い反撃が待っています!』

 

太刀川『玉狛がやられりゃ次は鈴鳴だからな。太一が撃つのはナシじゃないが·····相手が悪い。那須はリアルタイムで弾道引けるからな』

 

 

 

修「·······バイパーか。リアルタイムで弾道を引ける相手が使うと厄介だな。出水さんと違って、部隊の攻撃のメインがバイパーか」

 

修は敢えて分かりやすいように逃げる。千佳から離すためだ。

 

修『千佳。那須さんのメインはバイパーだ。確実に当てられないなら、絶対に撃つな。那須隊がもう少しで合流する。出来るだけ、橋から離れろ。橋は落とすな。向こうが勝手に落としてくれる』

 

千佳『うん、分かった』

 

 

 

三上『西岸では、空閑隊員と村上隊員が斬り結ぶ!村上隊員、やや優勢か!』

 

西岸では、遊真と村上が斬り合う。遊真からは、既にところどころからトリオンが漏れ出している。

 

太刀川『空閑も戦い慣れてはいるが、村上の方が上だな。ただ、空閑がまだ何か隠してる可能性は十分にある。村上も、まだ本格的な攻撃には移ってないな。お互いに様子見って感じだ』

 

三上『では、自分達も東岸に渡ると?』

 

太刀川『そうだろうな。このままだと、那須隊に橋を落とされる。空閑はグラスホッパー持ってるからいいとして、村上は橋を落とされたら対岸に渡れないからな。でも、このままいけば、村上が空閑を落として、那須隊に橋を落とされて、時間切れってとこだな』

 

迅『いや、そうはならないよ』

 

太刀川『何?お前なんか視えてんの?』

 

迅『確かに分は悪いけど、勝負ってのはそこだけじゃ決まらない』

 

 

 

解説が西岸について話している間に、東岸では、那須と鈴鳴が射撃戦を展開していた。

修は、那須を、鈴鳴と挟み込むような位置を陣取る。アステロイドを弾速に全振りし、那須の意識を散らしにかかる。那須としては、前後の相手の背後に回り込み、3人を素早く倒したいところだが、隠れている千佳を警戒するあまり、修には狙いを甘くしている。来馬は、太一と2人分のシールドで、那須の«鳥籠»を防御する。だが、尚もバイパーが襲いかかる。2人は、全体を覆うような半球のシールドで防御する。が、«鳥籠»に見せかけた、一点集中攻撃で、シールドを割られる。

 

三上『«鳥籠»に見せかけた一点集中の両攻撃!』

 

迅『対応が早いですね』

 

太刀川『対策の対策だな』

 

その時、突如として、太一の換装体の頭部が破壊される。

 

 

来馬「太一!?」

 

いつの間にかイーグレットに持ち替えていた修が、シールドが割れた瞬間に、太一を狙撃した。修は、那須にアステロイドを放った後、そこから少しだけ北東に向かって移動した。

 

三上『なんと!三雲隊長、シールドを割られた別役隊員を狙撃!別役隊員、緊急脱出!········その一方、那須隊の熊谷隊員、日浦隊員が東岸に到着。橋をメテオラで破壊しました!』

 

太刀川『マジかよ。あの一瞬でイーグレットに持ち替えて狙撃とか手際良すぎんだろ』

 

迅『去り際に、那須隊長を攻撃するあたり、かなり用意周到ですね』

 

太刀川『来馬はまだ生かしておくのか。でも気を引きすぎんのは逆効果だろ。那須の気が変わったら、スナイパーの援護ないのがバレるぞ』

 

 

那須『2人は、三雲君をマークして。でも、無理はしないように。あまり踏み込みすぎるのは危険だわ』

 

熊谷・茜『『了解!』』

 

 

 

一方の西岸では、遊真は村上相手に劣勢を強いられていた。既に、遊真の右腕が死んでいる。

 

村上は、弧月を横薙ぎに振るう。遊真は屈んで躱す。村上はレイガストで、遊真を攻撃。遊真はスコーピオンで腕をガードしつつ、回転してダメージを殺す。そのまま壁に着地し、モールクローで村上の首を狙う。寸でのところで躱されるが、スコーピオンで攻めかかる。レイガストで尚もガードされるが、スコーピオンを足から出し、横から蹴る。弧月でガードされると、ブランチブレードで膝から突きを繰り出すも、躱される。村上は、避けると同時にスラスターで遊真を弾き飛ばし、遊真が壁に叩きつけられた瞬間に、レイガストで押さえつけ、弧月で斬り掛かる。遊真は、後ろの壁を破壊してぎりぎり躱すも、右腕を切り落とされる。

 

三上『空閑隊員、右腕をやられた!』

 

太刀川『······でも、凌ぎきったな。村上と正面から斬り合って1セットで死なない奴は結構珍しい』

 

三上『空閑隊員の攻撃もなかなかに鋭いものでしたが』

 

太刀川『そうだな。風間さんとか比企谷隊が偶~に使うモールクロー。木虎が最近よく使う脚ブレード。あと、体ん中で枝分かれさせる········そうそう、ブランチブレード。技の冴えも使い所もなかなかいいが、まだ軽いな。それだけじゃ、村上には届かない。あいつの剣には、今までの戦いの経験が全部乗ってるからな。············流石に、村上の勝ちだ』

 

迅『かなり分は悪いね。9ー1 から 8ー2 ってところだね。でもまだ未来は決まってない。あいつの剣にだってちゃんと乗ってるよ。積み上げてきた重みってやつが』

 

 

 

遊真は、«乱反射»を駆使して、村上に襲いかかる。が、村上に読まれ、反撃を食らう。その時、修から通信が入った。

 

修『遊真、村上さんを出来るだけ開けた場所に誘い出してくれ』

 

遊真『了解』

 

修『宇佐美さん、村上さんの位置情報教えて下さい』

 

宇佐美『分かった』

 

 

遊真は、数歩下がる。その後、グラスホッパーで更に後退する。飛び道具のない村上は、遊真との距離を詰めるべく遊真を追った。その遥か東で、修はイーグレットを構えていた。

 

 

三上『三雲隊長、再びイーグレットを構えた!······しかし、何処を狙っているのでしょうか?あの方向には誰もいませんが』

 

迅『いや?一人だけいるよ。

 

 

 

 

·······対岸に』

 

太刀川・三上『『は········!?』』

 

 

迅がそう言うと同時に、修がイーグレットを撃った。イーグレットから放たれた弾は命中し、遊真に誘い出されるしかなかった村上の右足を吹き飛ばした。

熊谷と茜が狙撃を警戒し修に攻撃しないことも、修は分かった上でやっている。

 

修「命中確認(よし·········久しぶりにやったけど腕はそこまで落ちてない)」

 

 

村上「·······!?(狙撃!?何処から!?)」

 

遊真「流石だな、オサム」

 

遊真は、モールクローで気を取られた村上の左足を斬り飛ばす。

 

村上「しまっ·······!」

 

遊真「悪いね、ムラカミ先輩」

 

姿勢を崩し、グラスホッパーで急接近した遊真に首を刎ねられ村上は緊急脱出した。

 

三上『三雲隊長、対岸の村上隊員を狙撃!村上隊員の右足に命中させました!』

 

太刀川『······おいおい、どうなってんだ?あいつの狙撃のセンスは····』

 

迅『いやぁ、あそこまでやったのは俺も始めて見ました。三雲隊長の狙撃の腕前は、八幡とか東さんとかを普通に凌ぎますからね。普段は狙撃自体あまりやらないですが』

 

太刀川『マジで?あいつ射手だろ?』

 

迅『吸収出来るものは何でも吸収した結果、だとか』

 

太刀川『吸収のレベル超えてるだろ····あいつに狙撃教えたの誰だ·····』

 

迅『それは秘密』

 

 

 

修『遊真、こっちに向かってくれ。日浦さんの狙撃には注意しろ』

 

遊真『オーケー。さっきは助かった。あのままだと危なかった』

 

修『その話は後だ。こっちに渡ったら、熊谷さん達を追ってくれ』

 

遊真『了解』

 

遊真は、グラスホッパーで川を渡り始めた。

 

修『千佳、堤防に2発撃て』

 

千佳『了解、修君は大丈夫?』

 

修『ああ。僕もグラスホッパー入れてるから』

 

千佳『雨取了解』

 

千佳は、堤防に2発砲撃し氾濫した川の水を住宅地に引き込んだ。住宅地は、およそ30cmほど冠水した。

 

修『千佳、あとは隠れててくれ。宇佐美さん、全員の位置教えて下さい』

 

宇佐美『日浦ちゃんがバッグワーム使ってるけどいい?』

 

修『大丈夫です』

 

宇佐美『じゃあ、送るね』

 

宇佐美から、修に、茜以外の位置情報が送られる。

 

修『ありがとうございます。来馬さんを倒しにいくので、遊真に熊谷さんの場所を送って下さい。日浦さんはそこからそんな遠くにはいない筈です』

 

宇佐美『了解』

 

修「グラスホッパー」

 

修は、グラスホッパーで那須と射撃戦を展開している来馬にの方へ向かった。

 

 

 

 

志岐『那須先輩!村上先輩が落ちました!』

 

那須『ウソ!?』

 

熊谷『なら空閑君がこっちに来るの?』

 

志岐『多分····今、グラスホッパーで茜と熊谷先輩の方向に向かってます!』

 

那須『くまちゃんは茜ちゃんの方に行って。私は、三雲君と来馬先輩を倒す』

 

 

 

 

修「········コブラ」

 

来馬とあと少しで接触する所まで来た修は、64個に分割したコブラを放った。すぐさまレイガストを再展開し、スラスターで来馬に斬り掛かる。

 

来馬「·····三雲君!?」

 

スラスターで加速したレイガストには対応出来ず、来馬の左腕と左足が切り落とされる。その直後、コブラが来馬に襲いかかる。

 

来馬「······«鳥籠»!?」

 

来馬は、那須のバイパーによる«鳥籠»だと判断し、半球のシールドを張った。しかし、コブラによる«鳥籠»は、来馬のシールドをあっさりと突き破り、来馬を蜂の巣にした。

 

来馬「そんな········」

 

来馬は、そのまま緊急脱出した。修は、那須を撃破すべく、グラスホッパーで那須の方に向かった。

 

 

三上『三雲隊長、«鳥籠»で来馬隊長を撃破!』

 

太刀川『あれ威力おかしくね?三雲が弾道引けるのも驚いたけど』

 

迅『あれは······バイパーではなくコブラでしょう。陽乃さんくらいしか使わないので、分からないのも無理はないですね』

 

 

 

 

志岐『那須先輩!来馬先輩が落ちて、三雲君がそっちに向かってます!』

 

那須『分かったわ。空閑君は?』

 

志岐『あと少しで熊谷先輩と接触します!』

 

茜『今、熊谷先輩と空閑君が戦闘を始めました!』

 

那須『くまちゃん達は空閑君を倒して。私は三雲君を倒す』

 

 

那須「·······来たわね」

 

那須の見上げた先には、屋根の上から見下ろす修がいた。

 

 

 

 

 

その一方、遊真は熊谷に奇襲をかけ、戦闘に入った。

 

遊真「どうもクマガイ先輩。初めまして」

 

熊谷「あんたが空閑遊真ね。熊谷友子よ。よろしくっ!」

 

熊谷は、言うと同時に弧月で斬り掛かる。遊真は、スコーピオンでガードするが、荒船と戦った時のようにスコーピオンと弧月では、耐久性に圧倒的な差があり、スコーピオンにヒビが入る。受け太刀はまずいと判断した遊真は、熊谷が弧月を降ると同時にグラスホッパーで後ろに避けた。が、グラスホッパーで下がった瞬間に右足の膝下を飛ばされた。茜が狙撃したのだ。

遊真は熊谷と戦うのを辞め、グラスホッパーで茜を追う。

 

熊谷「待て!······クッ!(この水じゃ追いつけない·····)」

 

空閑を追おうとした熊谷だったが、冠水していたため、グラスホッパーを持つ遊真に追いつけないと判断し、茜に緊急脱出するよう促した。

 

熊谷『茜!緊急脱出しろ!』

 

しかし、茜は緊急脱出せず、遊真をライトニングで狙撃する。が、既に居場所が割れているので、遊真にシールドで防御される。

 

 

迅『緊急脱出しない方を選んだか······』

 

三上『確かに······緊急脱出を選んでもいい場面です。自発的に離脱すれば、敵に点を与えず撤退が可能。ただし、ランク戦では「周囲半径60m以内に敵の隊員がいない場合に限る」という条件があります』

 

遊真は、シールドを展開したまま茜に近づく。その時、茜は道の端に落ちていたキューブを撃つ。キューブは、置き弾のメテオラで、爆発が起こる。

 

三上『メテオラを仕掛けていた!?』

 

太刀川『橋壊したやつだな』

 

 

爆発の煙の中に影が写る。

 

茜「······この距離なら···外さない!」

 

しかし、爆発から現れたのは遊真が自ら切り落とした右足のみで、遊真はいない。茜の側方から現れた遊真をアイビスで狙い撃つ茜だが、遊真に躱される。遊真は、グラスホッパーで加速しつつ突撃し、茜をすれ違いざまに袈裟斬りにして、緊急脱出させた。

熊谷は、茜が緊急脱出したのを確認すると、那須の援護に向かった。

 

三上『日浦隊員 緊急脱出!空閑隊員、村上隊員を破った勢いが止まらない!』

 

遊真『栞ちゃん、オサムはどう?』

 

宇佐美『かなり押してるね。もう玲ちゃん·····那須隊の隊長は右腕がないし、足ももう殆ど機能してない。あ、くまちゃんが玲ちゃんの方に向かったよ。修君の援護を』

 

遊真『了解』

 

遊真は、切り落とした右足をスコーピオンで補って、サブのグラスホッパーで熊谷を追った。

 

 

 

志岐『空閑君がそっちに向かいました······』

 

那須『そう·····』

 

修「余所見を!」

 

修のスラスターで加速したレイガストに、那須は右足を斬られる。冠水したなかで、那須の機動力は完全に殺されていた。

 

那須「クッ·······」

 

熊谷「玲!」

 

那須と合流していた熊谷が斬り掛かるが、あっさり避けられる。修は、レイガストだけで攻めていた。自分の足の裏にシールドを張ってそこを足場にすることで、自分は水も関係なく攻められる。2人の機動力を完全に殺すことで、2人を圧倒していた。

 

熊谷「分が悪すぎるね。空閑君もこっちに向かってる」

 

那須「それでも·····茜ちゃんのためにも諦めるわけにはいかない!!」

 

修「·········(合格、かな?)」

 

その時、遊真が再び熊谷に奇襲をかける。水攻めで対応出来なかった熊谷は左腕を斬られる。遊真は、熊谷を那須から引き剥がす。

 

那須「くまちゃん!」

 

援護に向かおうとした那須を修が阻む。

 

 

太刀川『やばいな。くまの基本スタイルは弧月両手持ち+シールド······片手持ちになったら、もう空閑はもう右腕右足がないとはいえどきついぞ。三雲はここまで見越して水攻めをしたのか?』

 

その時、熊谷がメテオラを使った。遊真はシールドで防御する。射手用のトリガーをほぼ初めて使う熊谷は、弾の性能の調節をしなかったため、遊真はぎりぎり耐えることが出来ている。

 

三上『メテオラ!日浦隊員に続いて熊谷隊員もメテオラで反撃!』

 

太刀川『おぉ~』

 

三上『この展開はどうでしょう?迅さん』

 

迅『熊谷隊員いいですね。変化というのは大事です。今の熊谷隊員では、普通の戦いが出来ないので片手片足の空閑隊員とも満足に戦えないでしょう。·····それに、不利になっても崩れない気迫がいい。今日の那須隊には、いつもより更に気持ちがこもっていますね』

 

三上『なるほど。太刀川さんはどう見ますか?』

 

太刀川『······三上には悪いが····気持ちの強さは関係ないでしょ。勝負を決めるのは、戦力・戦術、あとは運だな』

 

三上『そうでしょうか?気持ちが人を強くすることもあると思いますが······』

 

太刀川『多少はな。けど、それだけじゃ、戦力差はひっくり返ったりはしない。気持ちでどうにか出来るのは実力が近い相手だけだ。もし気持ちで勝ち負けが左右されるってんなら、そもそも俺はA級に上がれてない』

 

迅『うわぁ·····嫌なA級······』

 

太刀川『ただ·····展開自体は面白いな。メテオラで片腕を上手くカバーしてる。普通の空閑ならこれくらいなんとかなるかもしんないが、今の空閑にはかなり効果的だな。くまのやつ思いのほか様になってる』

 

 

熊谷「(射撃トリガーなんてほぼ初めて使うけど、玲の戦い方をイメージしたら上手く体が動く気がする。空閑君のシールドが割れるまでメテオラを叩き込む!)」

 

遊真「(······まずいな。もうシールドがもたない)」

 

メテオラの爆撃に、遊真のシールドのヒビはどんどん大きくなる。そして、遊真のシールドが割れる。

遊真は、相討ち覚悟でグラスホッパーで加速して突っ込む。熊谷の狙いの定めが甘いため、被弾自体は少ないものの、どんどん換装体は破壊される。残っていた左足も完全になくなり、腹にも穴が空いて、もう緊急脱出は免れない。最後に残ったトリオンを振り絞って、左腕を突き出し、スコーピオンを出して限界まで伸ばし、熊谷の胸を貫く。貫いた瞬間に遊真は、緊急脱出した。

 

熊谷「ごめん、玲······」

 

直後、熊谷も緊急脱出する。

 

三上『熊谷隊員、空閑隊員、相討ち!勝負は、三雲隊長と雨取隊員、那須隊長に委ねられました!』

 

太刀川『·······粘って粘っていい勝負だったな。勘違いすんなよ?俺は気合いの乗ったアツい勝負は大好物だ。·······けど、気持ちの強さで勝負が決まるって言っちまったら、じゃあ、負けた方の気持ちはショボかったのか?って話になるだろ』

 

 

 

修「バイパー」

 

修は、シールドを足場にしたまま、125個のバイパーで、«鳥籠»で攻撃する。

 

那須「«鳥籠»·····!」

 

シールドで防ぎきれず、那須はどんどん削られる。が、那須の気迫は消えなかった。

 

修「······合格です。碧也さんと葵さんには、そう伝えましょう」

 

那須「········!?」

 

修はそう言うと同時に、シールドを解除しアステロイドを威力重視で125個に分割し放つ。那須は、耐えきれず蜂の巣にされ緊急脱出した。

 

 

 

 

三上『那須隊長 緊急脱出!そして試合終了!そして、玉狛第2には生存点の2ポイントが加算されます。

最終スコア 8対1対0 玉狛第2の勝利です!』

 

迅『今回の那須隊は特に気合いがこもっていましたね。1点を取って空閑隊員と相討ちになった熊谷隊員からよく見られます』

 

太刀川『今回、三雲は敢えて那須隊の策に乗って行動したな。空閑が村上倒したのも、最初っから狙い通りだろ。·····なるほど。こいつはかなりの曲者だな』

 

 

 

那須隊作戦室。

 

茜「那須先輩!」

 

那須「ごめん。全く歯が立たなかった」

 

志岐「お疲れ様でした」

 

熊谷「大丈夫?」

 

那須「なんとか····」

 

茜「私の方こそ、役立たずで······どぅわあぁ〜〜!」

 

志岐「落ち着け〜茜。熊谷先輩も凄いです。あそこで相討ちに持ち込めたんですから」

 

熊谷「ぎりぎりね·····」

 

那須「·····合格だって」

 

熊谷「何が?」

 

那須「碧也さんと葵さんにそう伝えるって、三雲君が」

 

茜「ヒック·····どぅわああぁ~〜~!!」

 

熊谷「じゃあ何?あいつが茜のお父さんの知り合いなの?」

 

那須「そうみたいね。三雲君って何者なのかしら?」

 

 

 

鈴鳴第一作戦室。

 

来馬「ごめん。勝てなかった」

 

村上「いえ。駆けつけられなかった俺のせいです」

 

来馬「綱だって負ける時ぐらいあるさ。あそこで狙撃されるなんて普通思わないよ。でも······次は勝つ、だろう?」

 

村上「はい!」

 

 

 

玉狛第2作戦室。

 

遊真「ふい〜手強かったな。オサム、狙撃助かった」

 

修「いや、それで遊真が村上さんに勝てたんなら十分だな」

 

宇佐美「皆お疲れ様~」

 

遊真「最後メテオラ使われるなんて思わなかった。危なかったな」

 

修「相討ちなんだから誇っていい。3点お疲れ様」

 

遊真「オサムもお疲れ様」

 

修と遊真は、軽く拳をぶつけ合った。

 

 

 

三上『暴風雨の河川敷という特殊なステージ。それを逆手に取った玉狛第2の勝利となったこの試合。改めて振り返ってみて如何でしたか?』

 

太刀川『あんま予想当たんなかったな。やっぱ東さんみたいにはいかない』

 

三上『もうちょっと真面目に』

 

太刀川『マジメに?OK。一番でかいのは玉狛が那須隊の作戦に乗ったとこだな。三雲は那須隊が橋落とすのなんかお見通しだったんだろ。やろうと思えば、転送が終わった直後に橋落とすことも出来た筈だ』

 

三上『東岸に到着した那須隊の2人が橋を落としたところが印象的ではありましたが、西岸の方からお願いします』

 

迅『西岸は、空閑隊員と村上隊員の一騎打ちになりましたね。空閑隊員が村上隊員を止めることで、仮に空閑隊員が落ちても、那須隊が橋を落として村上隊員を向こうに残せる。スラスターで渡ることも出来なくはないとは思いますが、危険です。三雲隊長の負担が増えることにはなりますが、悪くない作戦だと思います』

 

三上『エースに「任せた」玉狛と、エースを「待とうとした」鈴鳴。隊長のとった作戦の差が最終的に、勝敗に結びついたということでしょうか?』

 

太刀川『それは結果論すぎるだろ。村上が合流してりゃ、鈴鳴がポイント差で勝っただろ。どっちかって言えば、勝てる相手に、負けた村上が悪い。狙撃で意識を散らしすぎだ。来馬が合流しようとするのは、勝算があるからだ。結果だけ見て戦術を語るのは意味無いぞ』

 

三上『なるほど。確かにそうですね』

 

迅「·····三上ちゃんはそんなの分かってて、解説のために敢えて言ってるんだよ」

 

太刀川「な!?これ俺が恥ずかしいやつか?」

 

三上「(迅さん言わなくていいのに····)」///

 

 

三上『さ、さて、東岸の銃手・射手対決ですが·····』

 

太刀川『こっちはもっと単純。全部三雲の掌の上だったってわけだ。太一を倒して、来馬と那須をぶつけて消耗させる。自分は、いつでも狙いにいける位置に陣取って、精神的にも消耗させる。マジでいやらしいな』

 

三上『雨と風で長距離を封じられた雨取隊員を、地形への砲撃に絞ったことも印象的でした。おそらく、雨取隊員は他の敵の隊員の射程には一度も入っていない筈です』

 

太刀川『隊長として、「勝ちの画を描く力」が3人の中で一番高かったってとこか』

 

迅『那須隊長はリーダー兼エースだから、負担がどうしても大きくなっちゃうんですよね。木虎を新エースに据えて戦績が上がった嵐山隊みたいに、那須隊長の他に点取り屋がいれば、もっと変わると思いますよ。攻撃力で言えば、那須隊のアドリブのメテオラがいい感じでしたね。熊谷隊員はメテオラがなければ、空閑隊員と相討ちには持ち込めなかったでしょう。しっかり磨いてものにすれば、いい武器になりそうですね』

 

太刀川『逆に言えば、鈴鳴は、村上の負担が大きすぎる。村上が来馬と太一の面倒を見なくてよくなるなら、鈴鳴はもっと上に上がれるだろ』

 

三上『今回敗れた2チームですが、敗北に喫したことで、逆に進化の兆しを見ることが出来たと言えます。·····そして、8点を取った玉狛第2は上位グループ入りがほぼ確定したことでしょう。A級予備軍とも称されるB級上位部隊にどう挑むか。次の試合にも期待がかかりますね。以上をもって、B級ランク戦 ROUND3昼の部を終了します。皆さん、お疲れ様でした。太刀川さん、迅さん、解説ありがとうございました』

 

迅・太刀川『『ありがとうございました~』』

 

 

 

 

 

 

出水「·······いや〜なかなか面白かったっすね。太刀川さん割とちゃんとやってたし。メガネ君戦い方がいやらしいな~。あ、玉狛のスナイパーの子見ました?黒トリガーレベルですよ」

 

二宮「·········メガネと白い髪の奴が強いことは分かった。あいつらはA級でもトップクラスだ。それは認める。だが、メガネの奴はその気になれば、開始早々全員を狙撃で落とせた筈だ。何故そうしない?······太刀川の野郎もぬるい解説しやがって。出水、お前やたら玉狛を評価してるが、玉狛が太刀川隊に勝てるか?」

 

出水「う〜ん·····メガネ君単体なら俺達の方が不利なまでありますけど。·······隊としてはないっすね」

 

二宮「だろうな。つまりはそういうことだ」

 

出水「でも、雨取ちゃんの火力も侮れないっすよ?その気になれば、狙撃以外も出来るんすから」

 

二宮「いくら威力があっても、やることは土木工事だけだ。今日の試合ではっきり分かった。あの大砲は·······

 

 

 

 

········人が撃てない」

 

 

 

 

 

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