夜が明け、ポケセン内にあるフードコートでサンドイッチを食べながら昨夜に起きた出来事を考える。
「ホルトー?」
「んー」
不自然に痩せたブイゼル、謎の地鳴り。考えだしたらきりがない。
「ねぇ聞いてる? サンドイッチ貰うよ?」
「んー」
もしフレンドリーショップを襲撃したオレンジ色の生物。あれは恐らくブイゼルだったのだろう。食品目当てと考えれば動機はある。ただしこの付近は森が広がっているため食事には困らないはずだ。
「返事無しは肯定の証。てことでいただきまーす」
「んー」
考えていても仕方がない。頭がパンクしそうだ。一先ず最後のサンドイッチを.ん?
目の前にあるはずのサンドイッチが無いことに気付き、さっきまでのシロナの言動を思い出し、正面に座るシロナに目を向ける。
そこには既に半分まで食われてしまったサンドイッチを更に頬張ろうとするシロナがいた。
「んなっ!? シロナ貴様! それ俺のサンドイッチじゃねぇか!」
「むぐ? んっへおふほはふぃほひははっはんひゃはい」
「きちんと食い終わってから言え! いやまて! そうじゃない! 続きを食うなァァァァ!!!!!」
魂の叫びむなしくサンドイッチはシロナの口に吸い込まれていった。
「まぁまぁ落ち着いて。それで、何考えてたの?」
「あぁぁ.俺の卵サンドォ.はぁ、何考えてたって? まあ昨日の夜いろいろあったんだよ」
昨日あったことをシロナに説明する。
「痩せたブイゼル? ほんとに見たの?」
「あぁ。しっかりと見たさ。だから今日は道路を少し外れた森に行くぞ」
「分かったわ。お腹もいっぱいになったしね。あ、私フレンドリーショップで傷薬調達してくるから先行ってるわよ」
「俺のぶんまで食ったからだろ。あとおにぎりやパンをカバンいっぱいに買ってきてくれ。ほれ金」
「カバンいっぱいに? 正気? まぁ分かったわ」
俺も机の上を片付けて会計に向かう。
____あれ? また奢らされてね?
▼
「んー.ポケモンが一匹も出てこないわね」
「あぁ、もう2時間は歩いているが一匹もってのは流石におかしいな」
森の散策を始め、早くも二時間が経過したが今のところ一匹も出くわさない。
となると考えられるのはここにポケモン自体がいないか、どこかに集まっているかだろう。
おそらく後者だろう。所々で枝が折れていたり小さな足に踏まれた土の跡が残っている。
ちなみに今はそれを追って歩いているところだ。
「たぶんだが、そろそろ巣か身を寄せているところだろうな」
「えっ? 本当に?」
段々と痕跡が一つに集まってきている。この辺りに向けて多くのポケモン達が向かっている証拠だろう。
そしてその痕跡が一つになっている場所が、
「あの洞窟だろうな」
目の前には子供一人が通れる程度の洞窟の入り口があった。
「さて、入るぞ」
「はーい。どんな子がいるかなー?」
「あと、マスクつけておけ」
先にマスクをつけてから洞窟へと向かう
狭いから体を押し込んで中に入る。入り口の狭さと対称的にそこは広めの空間だった。
高さはないが奥行きがあり、完全に闇が広がっている。
シロナの手を引っ張り、洞窟に侵入させて懐中電灯をつける。
奥は15mほど先で光が反射してきて、そこから左側に闇が広がっているのが見えた。
そこから更にまた右に左にと三回ほど曲がったところで、緑色の小さな影が突進してきて、謎の粉をかけてきた。
「ッ!? シロナ下がれ!」
咄嗟にシロナを下がらせて粉を真正面から受ける。だがこれは予想していた通りのため、マスクで防ぐことができた。
懐中電灯を緑色の影に当てると、そこにはどこかしなびれたように見えるスボミーが睨み付けていた。
しかしそこで力尽きたかのようにフラりと倒れてしまった。
倒れたスボミーをシロナに預け、奥に懐中電灯を向ける。
そこにはビッパやスボミー、ブイゼルといったこの辺りに生息しているポケモン達が身を寄せていた。
そのどれもが痩せていて、俺達に向けて明らかな恐怖心を発していた。
それを安心させるために俺は、笑顔で問いかけた。
「腹、減ってないか?」
▼
幸い洞窟内に湧水があったため、パンやおにぎりを食べやすいように柔らかくしてから渡す。
最初は中々受け取ってはくれなかったが、一匹が我慢出来ずにやって来れば続々とやって来た。
全てのポケモンたちに食べ物をあげて、しばらくしたらシロナの腕の中にいるスボミーが目をさました。
「あ、起きた?」
スボミーは一瞬シロナを見て固まったが、暴れることなく大人しくしている。そんな余裕も無いのだろう。そして回りの状況に気がついたのか、周囲を見回す。
「ほら、あなたもご飯食べなさい。みんなも食べてるのよ?」
シロナが安心させるために優しい声でスボミーに話しかけながら手に持ったパンを近づける。スボミーはそれをゆっくりとした動作で齧り、咀嚼する。
丁度そのときに俺が昨日見かけたであろう痩せたブイゼルが現れた。一瞬こちらに敵対心を向けたが、回りのビッパたちが声を上げて一旦落ち着いたらしい。
今度は俺がそのブイゼルに食事を与えると、一瞬躊躇したが、すぐに飛び付いた。
「さてと、なんでこの子たちはこんなところに集まっているのかね?」
「んー、なんでなんだろうね?」
ありえることといえば、どっかのコガラシみたいな奴の仕業か強力なポケモンが現れたかのどっちかだろう。
人間不信ではないからおそらく強力なポケモンが現れたのだろう。
ドォォォン ドォォォン
そう結論を出したところで、洞窟の外から何回か重い音が響いてきた。噂をすればなんとやら。さて、鬼が出るか蛇が出るかだな。
「えっ、ちょっとなにこれ!? なんの音!?」
シロナがかなり取り乱している。からかってやりたい気持ちをぐっとこらえて、外に飛び出す。
外に生えている大木に何度も体当たりをしているポケモンがいた。
そして、体当たりをしたことで落ちてきた木の実を貪っていることが分かった。
その後ろ姿は知っていた。そしてそのポケモンの進化後の恐ろしさも前世のころからよーく知っていた。
「おい嘘だろ!? サナギラスかよ! ミニリュウ全力で止めろ!」
モンスターボールを二回ノックし、ミニリュウに合図を送る。
一瞬で開いたボールからミニリュウが飛び出し、その姿がぶれる。ミニリュウが神速を使ったときに起きる現象だ。
サナギラスの横に一瞬でミニリュウが現れ一撃を与えようとするが、それよりも先にサナギラスが青い光をまとい始めた。
「ははは.これはもう無理ゲーじゃね? 詰みじゃね?」
青い光の中でサナギラスが形を変え、俺と同じぐらいだったはずの大きさが倍近くまで膨れ上がる。
背中からは突起が生え、長く太い尻尾を一降りしただけで、大人が抱きついても手が届かない太さの大木がメキメキと折れる。
青い光が晴れると同時に空気を震わす咆哮が解き放たれる。
それは第二世代の代表と言ってもいいポケモン、バンギラスだった。