シロナのシンオウ二人旅   作:にわとりくん

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バンギラス戦と新たな二匹

 目の前にはバンギラス。

 こちらの戦力はミニリュウとイーブイのみ。

 相手が岩タイプなので実質ミニリュウのみと考えてもいい。

 しかしミニリュウでバンギ相手にまともに戦えるのか? 

 たぶん無理だな。

 

 _____考えろ、ここを切り抜ける方法は何かないのか? 

 

 1、戦闘 まぁ無理だな。

 

 2、逃走 希望はあるが、ここで逃げたら下手すれば町に向かうかもしれない。追ってこなくてもどこかに移動すればそこでも大きな被害がでる。ここに留まるのが最善だ。

 

 3、説得 論外

 

 あれ? これ終わってね? 首の皮一枚つながっている王手やらウノやらとは違う。

 まさに八方塞がり。これはチェックメイトだ。

 

 バンギラスはミニリュウからの一撃を受けたにも関わらず木の実を貪っている。

 がら空きの背中だが下手に攻撃すればこっちに意識が向くかもしれない。

 何も出来ずに立っていると、俺の跡を追ってシロナが洞窟から出てきた。

 

「ホル! なんだったの、い…ま…の……え? 」

 

 喋っている途中でバンギラスの気がついたのか唖然とした顔でバンギラスを眺めている。

 そういえばシロナのフカマルは卵技でメタルクローを覚えていた。

 それを使えば短時間の足止めくらいならこなせるはずだ。

 

「シロナ、フカマルを貸せ。そしてお前は急いで戻ってジュンサーさんを連れて来てくれ」

 

「え!? ホルはどうするの?」

 

「こいつがこの後どこかに移動し始めたら連れてきても無意味になる。追ってきても同様だ。だから俺がここで気を引いている」

 

 そう言いながら目の前のバンギラスに意識を向ける。

 ここで暴れるならばまだ地面が抉れ森が吹き飛ぶくらいの大惨事で済むが、町で暴れだしたらそれに付け加え大量の死人もでる。

 

 ______結局大惨事だな。

 これから起こりうることに苦笑いを浮かべる。

 しかしそれは希望がある。大惨事は起きるかもしれないが、死人は出ないはずだ。

 

「早く行ってくれ、あいつがいつ行動を始めるかわかんないからな」

 

「~~っ! ホル! すぐに戻ってくるから!」

 

 フカマルの入ったボールを渡し、町の方へと走り始める。

 _____さて、しばらく様子を見ようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間ほどたち今は洞窟の影からバンギラスを覗いている。

 木の実を食べ終え、今は昼寝をしていた。

 暴れ出す様子は一切ない。走っていったなら後三十分程度でシロナは来るだろう。

 

 このまま何も起きずに終わってくれ.

 しかしそう上手くは進まないようだった。

 バンギラスが寝返りをうって、その反動で尻尾が近くの木に直撃した。

 あ、と思う間もなくその木はバンギラスに向かってゆっくりと倒れていく。

 慌てて飛び出し、ミニリュウとフカマルに反らすように言うが、圧倒的な質量の前にはその攻撃の意味は皆無だった。

 

 バンギラスに直撃する。安らかな眠りを妨げられ、見てわかるほどに不機嫌になっている。

 

 _____やべぇこっち見た。

 

 その眼は明らかにこちらを捉えていた。ゆっくりと起き上がり、バンギラスは怒りの咆哮を轟かせた。

 

 ヴァァァァァァァァァァァン!!!!!! 

 

 アニメのようなデフォルメされた鳴き声とは訳が違う。

 太く低く、声だけでその強大さが感じとれる。

 叫び終えたバンギラスはこちらに狙いを定めて一直線に突っ込んでくる。

 

「やべぇ! みんな避けろ!」

 

 技も何もない。ただ走っただけのはずだが、踏みぬいた地面が砕けている。

 慌てて左右に避けると、俺達の後ろにあった洞窟に直撃した。

 ____あれ固い岩石のはずなんだがなぁ.

 洞窟がガラガラと崩れる。

 バンギラスが寝ている間に中のポケモン達を全員避難させといてよかったとおもう。

 崩れる洞窟を背にゆっくりとバンギラスは振り向く。目が充血しているのは見ていないことにした。

 

「フカマル、今は俺の指示を聞いてくれ。ミニリュウ、神速は使わずに速さで惑わせ。フカマルは俺が指示するまで待機だ」

 

 ミニリュウがバンギラスに向かう。火力耐久どちらも大きく劣っているミニリュウにできることは、その細長い体を利用した独特な動きと速さで惑わせることだけだった。

 ミニリュウはバンギラスの足の隙間をくぐり抜け、踏みつぶそうとして振り下ろされる足を伝いバンギラスの体を駆け上がる。

 それを鬱陶しく思ったのか自身の体を洞窟に勢いよくぶつければ大木に飛び移る。

 

 小さな体と速さを存分に生かした戦い方だ。神速が使えると知ったとき、素の速さと神速の速さによる緩急をつける攻防一致の立ち回りを思いつき、あれから4年間ずっと修行を続けていたからこそ出来た動きだ。

 バンギラスがバランスを崩し転んでしまう。一瞬あっけにとられたが大きな隙を見逃すわけにはいかない。

 

「フカマル、メタルクローだ! 腹の青い部分を狙え!」

 

 バンギラスの弱点は腹。こっちの世界では急所や弱点は運ではなく自ら当てにいくもの。野生なのだから弱点くらいバンギラス自信も理解しているはず。

 しかしその攻撃は防がれ.なかった。

 腹に深々と白銀に光る爪が食い込み、バンギラスが苦痛の声をあげる。

 

「なんでだ.? 弱点への攻撃ならば当然防ぐはずたろぅ.?」

 

 しばらく考え、一つの結論にたどり着く。

 あのバンギラスは進化したばかりだったからだ。

 多少大きくなる、形が変わる程度ならそうはいかなかっただろうが、サナギラスからバンギラスになると、体が二倍近くまで大きくなり、更にサナギラスには無かった手足や尻尾が生えて形状が大きく異なる。

 だから変化に感覚がついていかずに転び、進化によって変化した弱点を意識できなかったのだろう。

 

 これならいける! 

 一瞬覚えた安堵と油断が二匹にも伝わってしまったのだろう。

 動きが一瞬鈍る。そしてバンギラスの両腕に力が集まっているのが見えた。

 

 ____まずいっ!! 

 

「全力で後ろに跳べぇっ!!!」

 

 "馬鹿力"

 振り下ろされた腕が地面に接触した瞬間に地盤にひびがはいり、砂埃が一気に舞う。

 二匹ともバランスを崩し、視界が開けずにいる状況に戸惑っていた。

 

 ポケモンたちはトレーナーの機敏に聡い。特にこの二匹は4年共に過ごしたこともあり、俺の油断を感じて意識がそれてしまったのだ。

 さらに追撃をいれようとバンギラスが今度は拳に力を込める。片方のみに注がれた力はさっきの技とはまた違う。

 

 "気合いパンチ"

 

 止められなければ恐ろしい破壊力を生む技だ。

 あれを叩きつけられればいくら生命力の高いドラゴンタイプでも進化前の二匹なら即死がありえる。

 

 最悪の光景が見えた。

 

 しかしその拳は放たれることは無かった。

 バンギラスの腕が何かに弾かれたのだ。

 腕をよく見ると水がしたたっていた。

 そして緑色の影が飛び出し、バンギラスの顔に粉をぶつける。

 

「スボミー!? ブイゼルも!」

 

 逃がしたはずの二匹がバンギラスへと立ち向かっていく。

 眠り粉を受けたバンギラスはとろんとした顔を一瞬浮かべるが、頭を振って眠気を飛ばす。

 意識が覚醒した目で乱入してきた二匹を睨み付ける。

 再度馬鹿力を放とうとするが、ミニリュウとフカマルに指示をして出鼻をくじく。

 その隙にスボミーとブイゼルの元に行く。

 

「なんでここに戻ってきたんだ! 他のやつらは!?」

 

 二匹は首を振る。自分たちだけで来たらしい。

 そして自分たちも戦うと伝えてくる。

 目をじっと見つめると、迷いの無い目で返してくる。

 

「はぁ.仕方ないな。ただ俺が指示をだす。出来る限りその通りに動いてくれ」

 

 静かに頷き、バンギラスの姿を捉える。二匹はミニリュウとフカマルの速さにはついていけないが、葉っぱカッターや水鉄砲を遠距離から二匹の攻撃の合間を縫って放つ。

 

 安定している。時間を確認すると2時間半が経過していた。おそらくそろそろシロナが到着するだろう。

 

 そう思ったとき、バンギラスが4匹ではなく、俺のことを見てきた。

 背筋が氷つく。一瞬の隙をつき、尻尾をなぎ払う。そして馬鹿力を発動し、一直線に俺のもとに向かってくる。

 

 ____嘘だろ…ダイレクトアタックかよ…

 

 逃げられない。防げもしない。金縛りにあったかのように固まり、動けなくなってしまう。

 あぁ…これ死んだな。

 

 そう思った瞬間ミニリュウがバンギラスをにらめつけ、吠えた。そしてその瞬間ミニリュウの姿がぶれ、目の前からミニリュウが消える。

 神速だ。

 __だが、もう遅い。たとえ追い付いてもミニリュウは目の前で腕を振り上げるバンギラスを怯ませることはできない。

 

 諦めかけたその時、ミニリュウの体を青い光が包み始めた。

 

 その目映い光の中でミニリュウは太く、長くなる。

 額からは短く小さな角が生え、首と尻尾に水晶のような珠がつく。そして、ミニリュウとは明らかに違う力強さと神々しさを纏っている。そして光のベールが剥がれ、その姿を表す。

 神速の勢いのままに紫色に変色した尻尾をバンギラスの横腹に叩きつける。その技は見覚えがある。

 ドラゴンテールだ。だが威力が段違いに跳ね上がっている。

 そのあまりの威力にバンギラスが真横にふき飛ぶ。ろくに受け身も取れず地面を抉りながら吹き飛ぶバンギラスを見て唖然とする。

 そして、それを引き起こしたポケモンを見る。

 

「ミニリュウ…いや、ハクリュー…か?まさか進化したのか?」

 

 問いかけるとハクリューは嬉しそうな声を上げてすり寄ってくる。ミニリュウよりも大きくなった体は可愛さよりも美しさや神々しさが際立っていた。

 しかしまだ終わっていない。甘えていた表情を変え、ハクリューはバンギラスに視線を向ける。そして俺を庇うように目の前に立ち塞がる。

 バンギラスが呆然としていた。さっきまでは自分を飛ばせるものなどいなかったから、10m以上も吹き飛んだことが信じられないのだ。

 

 そして固まったバンギラスの背後から影が急襲する。

 青い制服を纏った集団はジュンサーさんだった。

 そして強力なポケモン用の特別製の檻に入れられて、暴れることすら許されずに眠らされる。

 

「ホル!! 無事!? 大丈夫だった!?」

 

 唖然としていると、横からシロナが飛び付いてきた。突然の出来事に驚き、固まってしまう。

 

「ふぅ、なんとか間に合ったようだね。ホルトくん、君にお世話になるのは二度目だったかな。ありがとう」

 

 バンギラスの拘束を終えたジュンサーさんが近寄ってくる。

 そしてそう言いながら頭を下げるジュンサーさんを見てやっと落ち着いてきた。

 

「あ、いえ.大丈夫ですから、顔を上げてください」

 

 ふと近くにいたハクリューに手を伸ばす。

 

 ___今回はこいつに救われたな。

 優しく撫でてやると、嬉しそうな声を上げて甘えてきた。根本的に甘えたがりなところは進化してもそのままだった。

 

「ミニ…いや、ハクリュー。ありがとな」

 

「あ! ハクリューになってる! 進化したんだ!」

 

「あぁ、今しがたな」

 

 しばらくハクリューを撫でていると、袖を引っ張られている感覚がした。

 そちらを向くと、ブイゼルとスボミーがいた。その体は土埃で汚れきっていたが、そんなことは気にせずに二匹を撫でる。

 

「お前たちもありがとう。もしいなかったら今頃生きてなかったからな」

 

「あなたたちも頑張ってくれたの? ありがとうね」

 

 シロナが二匹を抱いて感謝を伝えている。

 そしたらするりと腕から抜けて、ブイゼルは俺の、スボミーはシロナのカバンを小突いた。

 

 そこにはモンスターボールが入っていたはずだ。

 シロナと顔を見合わせ、尋ねる。

 

「なぁ…俺達と一緒に来るか?」

 

 そしたら二匹とも大きく頷いて胸に飛び込んできた。

 それを優しく受け止め、カバンからボールを取り出す。取り出したボールを二人同時に二匹の額にコツンと当てる。

 すると、二匹はボールの中に吸い込まれていき、軽い振動が起こる。しばらく振動を繰り返し、最後に捕まった合図の軽い音が響く。

 

 この日、俺達の旅に新たな仲間が加わった。

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