あれから二週間がたち、捕獲されたバンギラスは一時ナナカマド博士の所に預けられた。その後、バンギラスが落ち着いてきたら頃合いを見計らいジョウト地方で野生に返すらしい。
そして俺達は、町の外れでシロナのジム戦に向けてスボミーを鍛えていた。
「よしっ眠った! そこですいとるよ!」
すやすや眠っているブイゼルへ、スボミーはすいとるを当てる。
二回ほどすいとるをされてからやっと目覚めるが、寝起きで一瞬反応が遅れた隙に葉っぱカッターを決められてダウンする。
「あらら、戻れブイゼル。よくやった」
ブイゼルを戻すと、ポケモン図鑑でスボミーをスキャンしたシロナが、嬉しそうな様子で駆け寄ってきた。
「ホル! スボミーレベル上がったって! 今は24よ!」
「お、そうか。なら、そろっとジムに挑むか?」
「っ!! いよいよね!」
そういった瞬間にシロナが目を輝かせた。まぁこの二週間の間レベルが上がるたびに急かされていたからな。
そうとう楽しみにしていたのだろう。
早速ジムへと向かおうと荷物を片付けていたら、シロナがフカマルを胸に抱いてこちらに近づいてきた。
「ん? どうした?」
「えっとね、フカマルがハクリューとバトルしたいってさ」
「ん、そかそか。ブイゼルたちのを見て滾ったのかな?」
そう言ってフカマルの頭を撫でてやると、早くと急かすように一声鳴いた。
「よしわかった。出てこいハクリュー」
腰に着けたモンスターボールからハクリューを出すと、早速やろうとフカマルがバトル用に整地したフィールドの向かいで待機している。急いでシロナが位置につき、俺が合図を出す。
「よし…やるぞ!」
「えぇ! フカマル、ドラゴンクロー!」
ドラゴンクローは、フカマルがレベル25に上がった時に覚えた技だ。タイプ一致で、元々使っていたメタルクローと、要領は変わらないためすんなりと使えるようになったのだ。
「ハクリュー、まきつくで絡めとれ」
ハクリューは、進化して長くなった体を使いフカマルをまるまる絡めとってしまう。
フカマルはもがくが、即座に次の一手を指示する。
「よしっ、そのまま叩きつけろ!」
ハクリューが一度大きくジャンプをして、フカマルを地面に叩きつける。
だが、叩きつけたことで拘束がほどけフカマルが脱出する。
「フカマル、大丈夫?」
大丈夫だと言うように大きく頷くが、その様子はどこか焦っているようにも見える。
シロナはそれに気づいているのかどうか分からないが、フカマルに次の指示を繰り出す。
「よし、もっかいドラゴンクローよ。今度は真っ直ぐじゃなくていろいろ動きながらよ!」
さっきハクリューが最小限の動きでよけたのを見て同じ技でも指示を少し変えている。
よく見ているなと思っていたら、フカマルが指示通りではなく、一直線にハクリューへと突っ込んできた。
「ん? ハクリュー、避けろ。ただ、フカマルの動きをよく見て身構えておけ」
フカマルの意図をつかめずにいたため、ハクリューにいつでも対応できるように指示しておく。
だが、最初のドラゴンクローと全く同じように繰り出してきた。
そしてまたちょっと横にずれただけのため、フカマルの横腹ががら空きのままハクリューの目の前にさらされる。
「__? ドラゴンテール」
勢いよく来すぎていたためか体のバランスが崩れていたため、その横腹にドラゴンテールを叩きつける。
フカマルには、なんの抵抗もなくすんなりと直撃し、真横に吹き飛んだ。
「ッ!! フカマル!」
飛んでいったフカマルにシロナが慌てて駆け寄る。恐らくもうすでに戦闘不能だろう。
ポケモン図鑑でフカマルを見てみると、やはりhpのバーがゼロになっていた。
「もうっ! どうしてあんな無茶をしたの?」
ちょっと怒り気味にシロナがフカマルを抱いて言う。
フカマルはそれに答えず俺の隣にいるハクリューを睨み付け、フラフラの状態でハクリューの前に立つ。
だが、そこで力尽きたように倒れた。
シロナがすぐさまフカマルの様子を確認するが、気を失っているだけで、きちんと呼吸もしていた。
「ホル、とりあえず早くポケモンセンターに連れていきましょ」
シロナが心配そうにフカマルを見つめながら言う。
俺はそれにすぐさま頷き、支度をしてクロガネシティへと向かった。
「お、ホルトにシロナじゃねーか」
「俺達はさっきジム突破したとこだぜ。お前らも早くしろよな」
「ははは、いまさらこいつらが一つ目のバッジでしくじるかよ」
ポケセンにつき、フカマル達を預けてベンチに座りながら暇をもて余していると、何人かが声をかけてくる。
全員見覚えがあり、同じ日にポケモンを貰って旅に出たやつらだった。
「お前らは突破したのか。早いな」
「いや、ちょっと遅いくらいだな。早く次の町にいかねーと引き離されちまう」
「ん? もうそんなにジム突破してたの?」
「ああそうだな。お前らはジムまだやらねーのか?」
「あージム挑戦は俺はしないことにしたよ」
正直ジム巡りとかいいなぁとか思っていたが、なんとなく今の旅に満足してしまっている。
それに最終的にリーグとかに出たら間違いなくシロナと同レベルだろうから将来の四天王を食いかねない。
リーグに出ないんだったらジムやる意味もないなと思い挑戦しないことにした。
「なんだ、ホルト出ないのか」
「あぁ、そうだな。だがシロナは出るぞ」
「そうか、シロナ負けるなよ」
「こいつらが負けるわけねーだろ。あのバンギラスを倒したんだぜ?」
見てわかる通り、バンギラスを撃退したことはすっかりと有名になっていた。
軽く雑談をしていると、ポケモンたちの治療が終わったと合図が入ってので、互いに鼓舞してから別れた。
▼
「___焦り…かな?」
夜になりホテルでベッドに寝転がりながら昼間のことを思い出す。フカマルの行動についてだ。
おもむろにベッド脇のカバンから、ポケモン図鑑を取り出し、保存されているフカマルとハクリューのレベルを確認する。
ハクリュー:lv28
フカマル:lv29
お分かり頂けただろうか?
いやそんな心霊的なものでもないが、普通ならばフカマルはガバイトに進化してもおかしくなく、ハクリューはミニリュウのままのはずなのだ。
進化に関しては前世のゲームのように条件満たしたらすぐ進化、というわけではないのだ。
まだ詳しい理由は判明していないのだが、進化させるには、ゲームでの条件もしくはもう一つの条件を満たす必要がある。
フカマルが昼間、シロナの指示を聞かなかったりしたのは、フカマルがいまだに進化できていないことが原因だろうな。
昼間にハクリューに負けたこと、ハクリューは進化したのに自分がまだだということ、そして他のトレーナー達から期待されていることが重なり、フカマルはかなり焦っているように見えた。
「ふぁーさっぱりした。ホルトも入ってきなよ」
シロナが湿った髪を拭きながらフカマルたちと部屋に入ってくる。
そのときのフカマルの様子は至って普通に見えたため、ある程度は落ち着いたのだろう。
多分これならばジムは問題ないはず。エゴノキさんがなんかしなければ。
一先ず、今考えていても仕方がない。フカマルの様子もしかり、エゴノキさんが秘策を用意しているかもだ。とりあえず一回さっぱりしてこようと俺はハクリュー達をつれて温泉へ向かった。