あー…………平和だ。
こっちの世界に来て早くもひと月がたった。
漸く慣れてはきたがやはりテレビを見ると驚きを隠せない。
だっておかしいんだもの。なんなの? 技の熟練度? 技は4つ以上持ち込めるの?
ふざけんな。こっちの知識を持った俺にアドバンテージがあると思ったらまったく違った。
むしろその知識のせいで変化を受け入れるのが難しくなっている。
…………とりあえずこのことは時の流れにまかせよう。
時間は万能な解決道具。ディアルガさんマジパネェッす。
とりあえず今の状況に身を任せよう。
縁側に座布団を敷き、目の前の庭に木の実をすりつぶしたものを置いておく。
そしたらムックルやホーホーがついばみにやってくる。
これを二週間程度続けているのですっかりこいつらは俺になついている。
玄米茶を飲んでいると、ひざの上に載ってきて心地よさそうに眠る。
まったくもってかわいい奴だ。ホーホーなんか肩に乗って頬ずりまでしてくる。
この様子はまさに夏の暑さを忘れさせてくれる。
この静かなひと時をたのs「ホルー? 入ったわよー」……楽しめそうにない。
急にうるさくなったせいで鳥たちはいっせいに飛び立ってしまった。
「おい、何故入ってきているんだ貴様」
「いいじゃない、ちゃんと言ったでしょ?」
「過去形で言っても何も変わらん」
まったく、シロナってこういう性格だったっけ?
おてんばで、好奇心旺盛で、ときおり目を輝かせてうちに来る。
そのうち、「私、気になります!!」とでも言いそうな勢いである。
…………考えといてなんだが本当に起きたらどうしようか……。
「あ、お茶私も飲む!」
「あいよ、今淹れてきますよ」
「よろしくねー」
そういってどこからともなく座布団をもってきて俺の座っていた座布団の隣にしく。
本当にこいつってこんな性格だったっけ? もうチョイ落ち着いているイメージがあったんだが。
とりあえずいくつかの菓子を手にお茶を淹れて持ってくる。
「ほれ。一杯につき150円な」
「つけでお願いするわ」
「却下だ」
ブーと頬をふくらますシロナを無視してさっさと話しをすすめる。
「つーかなんでこんな早朝からやってきたんだ馬鹿たれ」
「あーそうそう、今日ナナカマド博士がやってくるから報告しようと思ってね」
ナナカマド博士……たしかオーキド博士の先輩だっけか? あれ? 後輩だっけ?
どっちにしろすごいお方には違いない。
「へーそんなすごい人が何でここに?」
「んーとね、おじいちゃんが恩人たちにあうついでにその孫達の顔を見てみるってさ」
へーシロナのじいさんも凄い人なんだな。
ナナカマド博士の恩人か……。何したんだろうな。
………………ん?
「まて、孫たちってことは俺も入ってんじゃねーか」
「ん? 当たり前じゃん」
そうシロナは胸を張る。うん小さい。当たり前か。
ちなみに今の俺たちの年齢は互いに八歳である。
トレーナーになれる年齢は12歳なのであと四年もポケモンを持つことが許されていない。
「はーそうか……。で、博士はいつ来るんだ?」
「お昼すぎって言ってたよ」
昼過ぎねー……。まだ時間が有り余っている。
簡単に言うと暇である。またひざの上に載ってきたムックルを撫でながら待っているかな。
「本当にそのムックルあなたになついてるよね。旅に出るとしたら連れて行くの?」
シロナが聞いてきた。最もな疑問である。これだけなついていたら旅に連れて行く最初のパートナーでもいいかもしれない。だが、
「いや、こいつは連れて行かないよ」
「え? どうして?」
「いや、普通にこいつ外に出ると付いてこない。ここを隠れ家とでも思ってんだろ」
グニグニとムックルの柔らかい頬を突く。
「へー…………ほんとに?」
「本当だ。なんなら外出るか?」
「うん! 時間もまだまだあるしね!」
そうと決まれば善は急げである。さっそく準備をする。
けがをしても大丈夫なようにある程度の救急セットと木の実(おやつ)、あとタウンマップを用意して準備完了である。
ちなみに外に出ることは禁止されている。だが好奇心には敵わない。何度外にでて何度怒られたものか。もちろんシロナもまとめて怒られる始末である。
「よーし行くぞー」
「はーい」
戸締りをして外に出る。人の目に留まらない外に出るルートを開拓したため簡単に外に出ることが出来る。
村の領域を離れれば一瞬で景色が変わる。
村の中も十分に緑があったが、外はまったく違う。太く、たくましく育った人の手が入る余地のない大自然で育った木がこれでもか! て程にそびえたっている。
そこから伸びて太陽の光を必死に浴びようとする強欲な葉っぱたちの隙間から漏れ出る光が幻想的な風景を見せる。もちろん元の世界でも森に入ると似たような風景が見れるが、こっちの世界のこの風景は天と地の差である。圧巻ともいえる壮大な風景は何度見ても飽きない。うむ、最高だ。
「早くいこー」
そうせかすシロナを追って森の中へ入る。やはり様々なポケモンたちがいる。
ケムッソ、チェリンボ、ミツハニー、ムックルと多種多様。
色が多く見てて飽きないまるで遊園地のようだ。
しかし、奥の方で見慣れない青い影が見えた。
ここに青いポケモンなんかいたっけかな?
そう思ってそっちの方へと駆けてみる。
「? どうしたの? そっちに何かあったの?」
「なんか見慣れないものがあったから」
ヘー、とシロナは目を輝かせる。毎度のことのせいでだんだん慣れつつある自分に悲しくなる。
とりあえず目的の場所について、そこにいた二匹のポケモンに驚愕する。
「はぁっ!? フカマルと……こいつはミニリュウじゃねーか!!」
「ミニリュウ?」
シロナは首をかしげてこっちを見る。
確かにシンオウで生まれ育った奴は知らないだろうな。
「ミニリュウってのはな、カントーのポケモンなんだ。何でこんなところにいるんだ?」
よく見たらところどころ怪我をしている。動かないところを見ると今は気を失っているか寝ているのだろう。とりあえず今は応急処置をしよう。気を失っているとしたら、もしかしたら深い傷かもしれない。
「治してあげるの? 手伝えることある?」
シロナはこんな性格だが、やはり原作通り根はポケモンが大好きである。ぼろぼろの二匹を救いたいのだろう。その気持ちをくみ取ってフカマルの処置をお願いする。
応急処置を終えてとりあえずうちに運ぶ。
布団に寝かせて休ませる。少し過剰にまいた包帯が随分と痛々しい。
「だいぶ衰弱しているな。トレーナーのせいだとしたら、セーフティーラインはとうに超えているぞ」
「そうね、ここまでするなんて本当にひどい」
シロナの顔は至って真剣である。恐らくトレーナーに怒りを燃やしているのだろう。
布団に寝かして30分ほどたったころだろうか。まずフカマルが目を覚ました。
そして……一気に暴れ出した。
「おい! やめろフカマル!!」
狂ったかのように暴れまわり、布団はぐちゃぐちゃに壊れ、一緒に起きたミニリュウと一緒に出て行ってしまった。部屋はボロボロである。
「あちゃー、やられちまったなー……」
「そうね、追ってみる?」
暴れたってことは人間不信か、混乱したのだろう。
ここは追わないことが最善手。だが、なんとなく胸騒ぎがする。
「…………そうだな、様子を見てくるか」
▼side フカマル
人間は信じられない。
いつからそう思ったのだろうか。
少し前までは母と父、三匹で暮らしていた。
だが、あるトレーナーがいきなり攻撃を仕掛けてきて、両親とともに攫っていった。
連れてこられた場所は妙な場所。研究所のような場所で様々なポケモンたちがいた。
そのすべてはドラゴンタイプだった。
ドラゴンタイプはほかのポケモンと比べて解明が進んでいない。
そのため少しでも研究を進めるためにかなり無茶な研究をしていることが分かった。
変な機械に入れられ、多種多様の攻撃を一様にぶつけられる。
無理やりな特訓により、腕や足の一部位などを失ったポケモンたちもいる。
わけのわからない痛み、そして苦しみ。無意味にただただ拷問される日々。
そんなある日、ジュンサーと呼ばれる人たちがその研究所にやってきた。
研究者たちの半分は確保されたが、そのリーダーはポケモンたちすべてを持って逃走した。
いや、正確には自分達の二匹を除いてだ。
ミニリュウとは同じ檻に入れられていた。こいつは来たときからずっと不思議そうな目で周りを見ていた。
逃げ出すときも不思議そうな顔をしながらもついてきてくれた。
命からがら逃げ出して、だいぶ離れた森で意識を失ってしまった。
そして目を覚ましたかと思ったら目の前に人間がいた。
金髪の小柄な少女だ。
その姿を確認したと同時にあの時の悪夢がよみがえった。
そこから先はひたすらに暴れた。
自分達はあそこから逃げ出したのに、また捕まるのは絶対に嫌だ。
そしてミニリュウと一緒に窓から飛び出した。
息をするのも忘れるほどに走り続けたらある程度落ち着くことが出来た。
そして今の自分の体を見直すことが出来た。
包帯が巻かれていてよく考えたら傷の痛みがかなり薄いことに気が付いた。
あの人間がしてくれたのだろうか。
人間が……あり得ない。そう思ったがそしたらそれ以外に誰がしたのだろうか。
あの人間には悪いことをしてしまった。感情が落ち着き後悔の念が生まれてくる。
さっきの人間のところに一回行ってみようか。
そんな気持ちが生まれてくる。
振り向いて元来た道をたどろう。そう思ったとき、目の前に二度と見たくない姿と声が聞こえてきた。
「おっとぉ~、フカマルとミニリュウ。みぃ~つけた」
白衣をまとう姿に歪んだ表情を浮かべた男がそこにいた。
ホルトくんは昔花図鑑を眺めているときに、思いついたキャラです。
銀髪に金色の瞳はシロナと色のイメージを逆にしてみました。
書き始めてなんですが、十話前後で終わるかなと思っていましたが、長くなりそうです。