「ミニリュウ、ドラゴンテール!!」
俺の合図とともにミニリュウの尻尾が青から紫色になり、それをフカマルに振り下ろす。
「フカマル、メタルクロー!!」
シロナも同様にフカマルに命令をする。フカマルの右手から光の爪が伸びて、銀色に鈍く輝き始める。それを振り下ろされた尻尾にぶつける。互いの武器がぶつかり合い衝突したエネルギーが放射状に飛び散り、大きな音と空気をかける衝撃波が生まれる。それにより砂が巻き上がり互いの姿を視認できなくなる。次の手を考えるうえで最も重要な視覚からの情報が無くなる。こんなときは目を閉じてその他四感に集中しろ。
……んー土のにおいがすさまじい。うん、これは本題からずれてしまったな。さてどうする。攻める? 様子を見る? 受けに徹する? 選択肢は多いけど最良の答えを見つけなければならない。難しい話だ。さーてとじゃあ様子を見るとすr「____突進!!」……暇がないな。
「よーく見てかわせ」
ミニリュウにとりあえずそう指示する。そのあいだにどうしようか軽く悩む。とりあえず突進後は隙が出来るからミニリュウのできる最速の攻撃で攻めよう。適当な作戦立てを終了する。
▼ side シロナ
フカマルに突進を指示して次の手を考える。
今までのホルとの勝負を踏まえると、ホルの戦術はどちらかというと攻撃をいなして反撃に出るタイプだった。
そのためただ突っ込むだけではすぐに返り討ちにあってしまう。だから突進は周りの煙を払うためにミニリュウのいるところとは別の場所に突っ込むように指示している。
素早さや単純な火力で言えばフカマルが上なためそれをどう生かすかが肝である。
そうこうしていたら突進によってできた風圧で土煙が晴れて視認可能になる。
姿が見えればこっちのもの、さっそくメタルクローの押収でミニリュウを撃破しようとする。
しかし、
「そこだ! 神速!」
「メタ……ってちょっと!! お願い! かわして!」
しかし時すでに遅し。ミニリュウの姿がブンと揺れる。それと同時にミニリュウが異常な速度でフカマルに尾撃をぶつけてくる。速度は重さとはよく言ったものだ。凄まじい威力でフカマルが一瞬にして吹き飛ぶ。フカマルの様子を見ずにしてわかる。私の完敗だ。
「はぁ……。フカマル、お疲れ様」
そういってフカマルのところへ駆け寄る。あれから早くも二週間がたつ。その間はずっとポケモン勝負をしている。結果的には38戦14勝で私が負け気味である。
「いやぁ……。二人とも成長が早いなあ。遠い所をわざわざやってきて本当に良かった」
パチパチと手を打ち合わせる賞賛の音が聞こえてくる。
音の方を向くと少し体格が大きい見た目初老の男性がたっていた。
「博士がおしえてくれるからねー」
オーキド博士はナナカマド博士の後輩でもともとナナカマド博士が私たちにポケモンの基礎を教えるはずだったが、生態研究発表のスピーチに呼ばれたらしくその影響でオーキド博士が呼ばれたのだ。ナナカマド博士によると最初はだいぶ渋っていたらしいが三日も指導を始めたらだんだんと目を輝かせ始めた。ちなみに連れてきた直接的なことは交渉(上下関係込)らしい。末恐ろしい話である。
「しかしなあ……実際君たちの吸収の速さはすさまじいからねえ。ぜひともずっと残って面倒を見たいものだが……」
褒めてもらえるのは嬉しいことである。その後いくつかのアドバイスをいただいた後に博士は町の方へ行く。
オーキド博士のありがたいご指導は今日で最後である。おそらく明日の準備のために今借りているホテルに帰ったのだろう。
きづけば日はすでに傾き空はきれいな茜色に染まっている。
この美しい風景は夏のいいところだと思っている。ただ、私は冷たいプールや海に入るのは良いが暑いのはいやである。早く秋にならないかな。そんなこと思っていた。
「シロナ? 帰るぞ」
ホルがぼけっとしている私に呆れたような顔を見せながら促す。季節云々はそのうち時間が解決してくれる。そこまで気に留めることでもないのでさっさと帰路についた。
▼ side ホルト
ひたすらに
暑い暑いと
言い続け
されども気温
下がりやせぬ
字余り
何故ここで読んだのかって? 良いじゃないか。人間だもの。
てか本当に暑い。今はミニリュウが胡坐をかいた足の隙間に入り込んでいて冷たいからだが足に触れて多少なりともましだが、やはり暑い。もう九月なのに残暑の厄介さは本当にうざい。さらにこの時間帯(八時半)でこの暑さは俗にいう熱帯夜とかいうやつだ。
まったく勘弁してほしい。あの時のコガラシのユキメノコを借りたい気分である。
そんなどうでもいいことに思考が傾いてしまったので慌てて戻す。
今日は何かする気分ではない。さっさと寝よう。
ん? なんか外でザーって聞こえる。
……うわ、今度は夕立っぽいのが降ってきた。……だいぶ夜は更けているが。
なんとも情緒不安定な天気である。死んでしまえ。しばらく空に殺気を飛ばしたが、さすがに二週間ずっと気張っていたためもう眠い。寝よう。俺はベッドに横になり電気を消した。
~翌日~
「ほれ、おきんか二人とも」
「「ふぁ~い……」」
いま俺たちはナナカマド博士の研究所にいる。なぜかって? 呼ばれたからだ。正確には呼ばれてそのまま拒否権なく、車に詰め込まれて郵送されたのである。そしてこれからありがたく長ーいお話を聞かされることになっている。まったく、迷惑な話だ。二重の意味で。
「それでは、ポケモンのそれぞれの持つ能力について話すぞ。まずポケモンの力は主に6つに分けられる。それは体力、攻撃力、防御力、特殊攻撃、特殊防御、素早さ。これらに分けられる。特殊の二つはいまだに解析しきれていないのでもしかしたらこれ以上の情報があるかもしれないが、ここまではいいかな?」
「「ZZZZzzzz…………」」
もう眠い。そもそも無理やり連れてきたのだから寝たくなる。良いじゃないか、別に。
「ふぅ……。そうだな……ゴウカザルのマッハパンチをそんなに食らいたいか?」
そういって隣に立つゴウカザルが一瞬こぶしを握ったかと思ったら轟音と共に近くに置いてある椅子が粉々に砕け散った。身の危険を感じてさっと背筋を伸ばす。横のシロナも全く同じ反応で汗がすごいことになっている。
「よし、ちゃんと起きているな、では話を続ける。次に技だ。これには物理技と特殊技、そしてその他の技がある。その他の技はいったんおいておくとしよう。まずは物理技と特殊技だ。この二つ、特に特殊技は特殊攻撃と特殊防御の存在に気が付いてからは特に力を入れて研究した結果最近発見されたものだ」
「へー、そんなのもあるんですか?」
シロナが目を輝かせて博士に訊いている。そういえば特殊はそんな設定だったな。
まだ寝ぼけている頭でポケーっと考える。
「うむ。そしてな、物理技は攻撃力、特殊技は特殊攻撃力の育ち具合で威力が変わる。まあそれ以外の要素もかなり加わるがな。このあたりは知れ渡っているからわかっていると思う」
「そうねー私も知っていることだからねー」
「同じく」
頬杖をついて無愛想に答える。まあ博士ににらまれたので即解除したが。
「ここからはあまり知られていないことだからな。二人ともちゃんと聞くように」
博士の言葉と同時にシロナが身を乗り出して目を輝かせ始める。
よだれが出そうな勢いである。
「まず能力だな。さっき話した五つの能力にはポケモンの種類ごとで得手不得手がある。
例えばな……ゴウカザルは攻撃力、特殊攻撃力、素早さが高いが体力、防御力、特殊防御力が低い。ヒット&アウェイが得意なタイプだな。そしてさらにその種類の中でも、ポケモン一匹一匹にも差があるんだ」
ここのところは種族値、個体値のところだろうか。ここのポケモンたちは戦い方以外は基本的にゲームと一緒のようだ。正直安心する。戦い方だけでも頭が死にそうだったからなあ。
「この能力のほうはこんなものかの? 今はもう一つ能力を決める要素があるかどうかの研究を続けていて育成中の状態で変わるかどうかを調べているが……いまいちパッとしないんだよなあ」
そういって博士は苦虫を噛み潰したような顔をする。これは努力値のことだろうか。たしかにあれは数値で表せなくちゃ「こう育つのかー」ぐらいで終わりそうなもんで難しいからなあ……。
「そしてもう一つ、ポケモンにはそれぞれの強さ? のようなものがあるんだ。私たち研究者は「特性」と呼んでいる能力だ。これは量が多すぎたりわかりにくいので一つ一つ説明することは不可能だな。しかし、その中でもわかりやすい二匹を呼んできたぞ」
そういって博士が教壇っぽいところに置かれたモンスターボールのうち一つを手に取り、ポケモンを出す。
「こいつだ」
「…………ニョロトノ?」
うん。ニョロトノだ。そして特性も思い出した。
「そうだ。このニョロトノはちょっと特殊でな? まあ少し待ってろ」
そう博士が言って1~2分がたったころ、外からザーっという音が聞こえてきた。
「雨?」
「そうだ! こいつの特性は雨を呼ぶことだ!」
「…………それで?」
シロナがぐさりと博士に意味を問う。
「うっ……確かに雨がバトルに与えることは気分と土がぬかるむぐらいとされてはいる。
だがな、ポケモンが雨を呼ぶということは最低限意味があること。だからもしかしたら何かしらの影響があるのかもしれないんだぞ?」
「へーそうなんだー」
ここらへんはゲームと異なっている。ゲームはさっさと降ってきたが、こっちでは多少のタイムラグがあるらしい。
「……オホン。で、次はこいつだ」
ニョロトノを戻して博士は話を続ける。次にキュウコンを取り出した。
「何? このポケモン」
シロナが博士に聞いている。そうか、ここにはロコンが生息しないのか。
「キュウコン。カントーのポケモンだよ」
「ホルト……お前何で知っているんだ?」
博士が聞いてきた。なんか地雷踏んだ気がする。
「あー……たまーにいろいろな地方のポケモンについて調べてるんだ」
「ほー勉強熱心なのは感心だぞ」
博士が嬉しそうに頭をなでてくる。よし、言い訳大成功。
「それでな……おっと、もう効果が表れたな」
そうして外を見上げると今度は見事なまでに晴れた空が広がっていた。
「へー今度は空を晴れさせるんだー」
「そうだな。つーか暑い」
一気に気温が上がってきてすごく暑くなる。これは晴れパは使えそうにないな。
そもそもタイムラグがあるから雨も難しそうだが。
「そうじゃ。ちなみに雨は雲を呼んで雨雲にしてから降らせるからちょっと遅いぞ」
おお、いいこと聞いた。
「……まあ能力についてはこんなもんだろ。次は技だ。まずは物理技と特殊技だが、これは見たほうが早いな。ついて来なさい」
そう言って教室(仮)から出ていく。少し歩くと室内のトレーニングルームのような場所に出た。
「ここは簡単な訓練施設だ。俺はオーキドのようなバトル関係の研究ではなく生態の研究が主目的だから、こんな簡単な施設しかできなかったがな」
博士はそう言っているがかなり広く、木や岩といった障害物のほかに遠距離用の的まである。
「まず物理技だ。ゴウカザル、マッハパンチ」
そういうとゴウカザルは普段の立った姿勢から右腕だけ軽く持ち上げて近くの石を一突きする。
そしてあっけなく岩は崩れ落ちてしまった。
「よくやったゴウカザル。このようなポケモンが直接殴ったりすることが物理技だ。
よし次は特殊技。大文字を青の円に当てろ」
そしたらゴウカザルは口から勢いよく炎を吐き出す。
その炎は大の字に姿を変えていき見事指示通りに的に命中させた。
「お疲れ。曖昧になるが、このような技が特殊技だ。ポケモン自身が作り出したもので攻撃すると今は結論付けているが、これ以上の情報や共通点があるかもしれない。
そして変化技だな。これは本当に曖昧なことだがこれら以外のわざと考えてくれ。
例えばな……。よし、ゴウカザル、ビルドアップ」
そういうとゴウカザルの体が一瞬グン! と大きくなり、また元に戻る。
「……わかりづらいが今のが変化技だ」
「…………えー」
シロナが分かりやすく残念がる。
「そんな声を出すな。これでゴウカザルの攻撃力と防御力が上がったんぞ? 。変化技は一見地味だがこんな風に有効な使い道があるから忘れないように。
技はポケモンが覚えられる上限はおそらくないことが現状判明している。ただそれも少し厄介だからな。後でまとめて話すとしよう。
あとは……単体に放つ攻撃と全体にわたる攻撃があるが……大丈夫だろ?」
「そうですね。ただ範囲の問題だけなのでわかりやすいです。最悪俺が教えますし」
「…………もしかしてこの中で一番知識無いの私?」
「当たり前ではないか」
「……頑張る」
小さくガッツポーズをして意気込みをしている。
「あー……話を続ける。と言っても最後だけどな。でもこれが一番重要なところだからちゃんと覚えておくように。最後は技の熟練度について話す。これも見てもらうか。マッハパンチ」
そういってもう一回ゴウカザルのマッハパンチを見る。相変わらず腕が全く見えない。しかも三mはあるような巨大な岩をたった一発で粉々に砕け散っている。
「じゃあ今の見た後にこれを見てくれ」
そういって見せてくれたモニターにはゴウカザルが映っている。日付はいまから4年前だ。
画面の中のゴウカザルはマッハパンチを放つ。さすがに早い。だが目で追いつけるスピードであった。
それにさっきゴウカザルが砕いた岩より小さな岩に放っているが半分くらい砕いただけで終わった。
「これを見てわかることは速さと威力の差だ。同じ技でも覚えたばかりと練習した後では天と地の差である。さらに速さは技自体の速さも重要だが、出だしと基本の姿勢に戻る速さ等の方が時として重要なこともある。
ただし何でもかんでも鍛えているとポケモンの体がついていかなくなる。ちゃんと体調管理をすることも重要だからな」
これは中々にいい情報ではないか。初めてこの授業が有意義だと思った。
「……何故かすっごい失礼なことを思われた気がしたがまあ良しとしよう。では基本的な知識等は以上だ」
「やっと終わった~」
思わずそんな声が出てしまう。退屈なことはしたくない。
「朝から二人ともお疲れ様。これからカノコタウンに送るから車に乗っていてくれ」
「「はーい」」
そんな声と共に俺たちは博士の車に向かっていった