シロナのシンオウ二人旅   作:にわとりくん

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ジムへの挑戦

 上空をムックルの群れが飛んでいく。朝は数が少なく一、二羽程度しかいなかったが次第に数が増えてそろそろ二桁台に突入しそうだ。ぼーっとしながら空を眺めてそんなどうでもいいことを考えていた。

 

「ホルー? 寝てるのー? おーい」

 

 横でやかましいのが話しかけてくる。

 

「歩きながら寝ている奴がいるわけないだろ」

 

「ん、そうね。でも今日はぼーっとしてたら駄目だからね」

 

「あいよ。ちゃんと敗北する姿を目に焼き付けておくな」

 

「ちょっと!! 負けるとは決まってないからね!!」

 

 だいたいの奴はそう言って完膚なきまでにやられて帰ってくるものだ。まあそもそも一回の挑戦で勝てるとは微塵も思っていないが、とりあえずジムトレーナーくらいは撃破してほしいものだな。

 

「ほら着いたよ。入ろうよ」

 

 目の前に高くジムの建物がそびえている。今日は午前と午後の二回挑戦できるので午前10時のほうにやってきている。あと10分ぐらいで午前中の挑戦が始まる。遅れたら嫌なので少し早めに来た。自動で開くドアをくぐり中にいる受付の人に話しかける。

 

「すみません。挑戦したいのですが」

 

「はい。ではこちらに名前と所持バッジ数を記入してください」

 

「わかりました!!」

 

 シロナが張り切ってこたえる。空回りしなければいいが……。

 

「二人とも挑戦でよろしいですか?」

 

「あー、俺は観戦で」

 

「わかりました。ではこちらの番号の席にお座りください」

 

 紙を渡されて番号と席表を見て自分の席の場所を把握する。だいたい挑戦者の左側だ。

 

「……書き終わりました」

 

「ではこちらの番号が挑戦する順番です」

 

 そういってシロナが渡された番号を確認する。…………84? 

 

「84? …………多いね」

 

「ああ……ここまで多いとは予想してなかったな」

 

 とりあえずここでシロナとは別れて俺は観戦席に行く。……うわぁ、めっちゃ人多いな。岩でごつごつとしたフィールドの周りを囲う観戦席は全体で並みの体育館より広いくせして人であふれかえっている。おかげで進むのも一苦労だ。こんなんだったらもっと早く来たほうがよかったな。

 

「ふう……ようやくついた」

 

 場所は多少見づらいが、これは遅れた自分が悪いとしておく。でも一応は全体を見通せる位置のためよしとする。時間を確認する。あと3分程度で始まる。ポケモン図鑑を取り出して起動する。今回で勝てるとは思っていないので最低限録画して対策を練ろうと思った。

 

「さーて、準備は完了したな。…………ん?」

 

 ここで奥のほうにある電光掲示板に気づく。そこには番号が八つの区切りの中に敷き詰められていた。あれはいったいなんだろうな。そんなことを考えていたらアナウンスが流れ始めた。

 

「これより、午前の挑戦を開始します。挑戦者数は92名です」

 

 おお……さらに6人も増えやがった。これはジムリーダー大忙しだな。そこで最初の挑戦者が入ってくる。それと同時に電光掲示板の数字が一番端っこに区切られていた羅列のアップになる。数字は一番上が4番。一番からじゃないのか? ジムからもジムトレーナーが出てくる。審判が出てきて互いにポケモンを出し合う。ビッパとイシツブテ。この二匹が出てきたところでなぜ一番からではないのかを理解できた。

 

「あーバッジ数か」

 

 そういえば受付でバッジの数を聞かれていた。それによって区分けされていたのか。もう一度確認してみる。今はバッジゼロの人たちが挑戦するのだろう。だいたい80人前後がバッジ無しの挑戦者だ。たぶんポケモンをもらって意気揚々とジムリーダーに挑んだのだろう。あっ負けた。

 

「はえーな。やっぱ旅に出たばっかだと辛いか」

 

「そうねー、このペースだとすぐ私の番になりそうな気もするし粘ってほしいな」

 

「だな……。ん?」

 

 あれ? 今俺は誰と話しているんだ? そう思って隣を見る。そこには見慣れた金髪があった。

 

「うぉいっシロナ!? なんでお前ここにきているんだよっ!!」

 

「んー? まだ時間があるからどうせだし来てみた。もしかしたらこの間にいろいろ聞けるかもしれないし。でも誰もジムリーダーまでたどり着いていないからなあ」

 

 そういっている間に三人目が蹴散らされていた。おいおいまだ始まって10分もたってないぞ。みんな体当たりや引っ掻くで攻めているから当然かな。

 

「まー普通にフカマルのメタルクローの押収でいいんじゃないか? 変に何か作戦立てるよりも今は弱点を責めることを第一に考えておけば」

 

「そうね、じゃあそうするわ」

 

「それと今回では勝てないと思うから粘ることを主軸において次にかけるのもありだな」

 

「…………あなたは挑んでないから平気でしょうけど挑むこっちとしては結構心に来るわよ?」

 

「大丈夫だろ。次に勝てるとでも思ってろ」

 

「とりあえずはわかったわ。ここだと見にくいし下に行ってるね」

 

「あいよ」

 

 軽く返事をして人ごみに紛れていく姿を見送る。さーてどんな収穫があるかな。図鑑を目の前に構えておく。もしもトレーナーを突破できた奴がいたら速攻でスイッチオンに出来るようにしておくのだ。それに今回はバッジゼロだけじゃなくて1、4、7、個バッジをゲットしている人もいるので中々に期待できそうだ。

 

 side シロナ

 

 バトルフィールドは大量の人がいるにも関わらずかなり静かになっていた。それもそうだろう。次々と現れては速攻で返り討ちにあうトレーナーたちを見ていて気持ちのいいものではないのだろう。一応数人ほどジムトレーナーを破り、ジムリーダーに挑戦権を得た者もいるが見事にニタテを食らって泣く泣く帰っているものばかりだった。今の番号は82。あと二人で私の番になる。今のうちに様子を見ておこう。二匹をボールから出す。イーブイとフカマル。タイプを考えたら今回はイーブイは活躍が少ないかもしれない。

 

「今日はイーブイの出番が少ないかもね。でも頑張ろ。フカマルは……メタルクローで押すわよ!」

 

 こぶしを握り二匹を鼓舞する。小さく鳴いてそれに続く。今は絶好調ではないが、調子が悪いわけではない。まずはジムトレーナーを突破することを念頭に置こう。

 

「次の挑戦者はバトルフィールドに移動してください」

 

 アナウンスが入り、二匹をボールに戻す。電光掲示板を見るともう私の番だった。少し駆け足で向かって指示台に立つ。

 

「使用ポケモンは互いに一匹。タイムはなし。トレーナーによる直接的な干渉は反則とします。ではポケモンを出してください」

 

 審判の口上が終わり、ボールからフカマルを出す。相手のポケモンはイシツブテ。メタルクローが通らない相手ではない。

 

「フカマル、勝てない相手じゃないわ。ミニリュウよりは遅いし攻撃力もないわよ」

 

 そう言うとフカマルはこっちをちらっと見る。恐れなどは感じ取れない。今まで何度も見てきたミニリュウと戦っている最中の気迫がこもった眼だ。

 

「両者配置につきましたね。では、開始!!」

 

「まずは体当たりだ!」

 

 イシツブテが迫ってくる。やはり速度としてはそんなに早くはない。危なげなくかわしたので今度はこっちから攻める。

 

「メタルクロー!」

 

 左右の指から伸びた鋼の爪をイシツブテに打ち付ける。奥の席に座るジムリーダーが「ほう……」といった顔をした。そういえばトウガンさんが話をつけているんだっけな。

 

「転がる!」

 

 考えている時間はないっぽいね。腕をしまったイシツブテが転がってくる。

 

「突進で迎え撃って!」

 

 フカマルが勢いよく突っ込んでいく。……があっさりと弾き飛ばされてしまう。そのまま受け身をとれずにごろごろと転がってしまう。途中でうまく体勢を立て直せたが、フィールドの関係上通常よりも多くのダメージを受けてしまっている。それに対してぴんぴんしているイシツブテ。これは早く決めなければ押され負けてしまう。

 

「一気に攻めるわよ! メタルクロー!」

 

 持ち前の素早さを生かして一気に詰め寄る。そのままメタルクローを叩きつける。勢いそのままに吹き飛んでいったイシツブテは巨大な岩に激突する。その衝撃で岩がガラガラと崩れてしまった。電光掲示板のイシツブテはでかでかと戦闘不能の文字が書かれている。

 

「イシツブテ戦闘不能! 勝者シロナ! 挑戦者にはジムリーダーに挑む権利が与えられます。続けて挑戦しますか?」

 

 審判に聞かれる。そういえばこの先のことを考えてなかった。しかし、この勢いに乗ってジムリーダーに挑戦したいという気持ちもある。この調子であれば行けそうな気がする。肯定の言葉がのどまで出かかったところで裾に引っ張られる感覚を覚える。その方向を見てみると、ミニリュウが紙をつけて裾を引っ張っていた。

 

「紙? …………えー」

 

 その紙にはまだ挑戦するなと書いてあった。急いでホルを探す。向かって左側の席の一番前でホルが胸の前で大きな×を作っていた。悔しいが、ホルは結構頭が良いのでここはおとなしく従うことにする。

 

「あーえっと……。次の機会でお願いします」

 

 その言葉に審判の人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻った。

 

「わかりました。では次の挑戦時、こちらのカードを受付に渡せばジムリーダーに挑戦できます」

 

 少し茶色みがかったごついカードをもらってバトルフィールドを後にした。

 

 

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