バカとテストと幻想獣   作:koth3

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第十二話 清涼祭の終わり

 第四問 以下の問いに答えなさい

『冠位十二階が制定されたのは西暦( )年である』

 

 魂魄妖灯の答え

『推古11年』

 

 教師のコメント

 西暦を聞く筆問で、和暦でありません。問題文をよく読みましょう

 

 豊聡耳神子のコメント

 懐かしいですね。あの当時は色々ありましたね。そういえばあのころからでしたっけ、尸解仙になることを決めて……

 

 

 

 昨日の給仕が誘拐されたことで、私は護衛兼給仕を今日しなければならなくなった。本当ならば調理室で団子を作っている予定だったが。今日もまた昨日の誘拐に似たようなことが行われない保証はない。そのために、私は坂本に頼まれ給仕をすることになった。

 昨日の方が気が楽だったというのに。調理室にいれば、最低限の人間しか接触しない。給仕など、不特定多数の人間と会わなければならず、はっきり言って不快だ。朝早く起きて窓から空を見れば、さかさに提げられたテルテル坊主の後ろには、鬱陶しいほどの青空が広がっている。 

 やることもなく、それでいてなんとなく学校へ行く気にはなれなかったせいで普段よりかは遅く登校したが、いつもと同じく教室に一番乗りで来てしまった。暇だ。門が開いて一番乗りに校舎へと入ってしまったが、やはりいささか早すぎるようだ。今度からは登校時間を遅らせようか。いや、それは通学路に人が多くなるからやめよう。

 しかし暇だ。だからと言ってなにをするにしても、そのすることがない。仕方がない。自分の席に座り、眠ることにしよう。十分くらいは眠れるか。

 眠っていたところ、肩をたたかれ目が覚め、そちらを振り向く。そこには髪を後ろでまとめた女子が立っている。

 

「島田か、なにか用か?」

「用って、昨日のお礼よ。あんたさっさといなくなっちゃったから言えなかったの。昨日はありがとうね。妹からも、マイクのお兄ちゃんにありがとうって伝えてくれって言われたの」

「そうか」

 

 そんなことを伝えられても、こちらはなにも思わないが。坂本にでも伝えていれば良いのに。そう思うが、口にはしない。余計なことを言えば、島田の性格から騒ぎそうだし。

 時計を見れば、そろそろ清涼祭開始の時刻だ。客もすぐ来るだろう。ため息をつきながら、私は給仕の準備を進める。

 清涼祭二日目の開始とともに、すぐに人が殺到とはいかないまでも、なかなかの客入りで忙しい。引っ切りなしに注文を取ったり、料理を出したりと忙しない。しかし休憩を含めて数時間も働くと、大分慣れてきた。昨日はどうか分からないが、それでもこの中華喫茶が好評だというのは分かる。目まぐるしく新しい客が入ったり、出たりしていく。閑古鳥とは無縁だ。

 腹立たしいが、私も給仕をしなければならない。早く終わらないか。そう考えていた給仕の最中に、窓の外から騒がしい声が聞こえ気になった。軽く横目で見てみると、そこは召喚獣を使った大会の決勝戦が繰り広げられている。たしかその大会の決勝戦は清涼祭終了間際のはず。そろそろ終わるのか。

 誰が戦っているのかもついでに見たが、あれは吉井に坂本だった。Fクラスなのに、決勝に行くとは。純粋に凄いと思うが、相手の方も気になる。なんなだろう。あの不可思議な頭は。火山のように髪を逆立てている奴と坊主だ。坊主は理解できるが、あの爆発頭はなんなんだ、いったい。

 

「まあ、それよりも給仕をするか」

 

 気にはなるがさっさと仕事を終わらせよう。そう思って窓から離れると、その不可思議な男は見えなくなった。

 

 

 

 放送で清涼祭の終了が合図された。忙しかったがその分、中々の客入りだっただろう。クラスメイトのほとんどは大喜びに騒いでいる。

 彼らについていけず、顔でも洗おうかと思い立ち廊下を出ると、変な髪形をした男の二人組が階段の方から走ってきた。

 

「退け!!」

「おっと」

 

 突き飛ばされそうになったので、半身になって避けたがなにをそう慌てているのか不思議に思う。

 次の角で右に曲がるその後ろ姿に、特に爆発したかのような髪形でさっき吉井たちと戦っていた二人だと気が付いた。だとしても、特になにもないが。

 出だしをくじかれて、教室へ帰るかと思ったら、吉井と坂本が全速力でこちらへ走ってくる。私に気が付いたのか、目の前で止まって尋ねてきた。

 

「魂魄! さっきモヒカンの男と坊主頭の二人組がここに来ただろう! どっちへ行った!?」

「も、猛悲観? なんのことだ?」

 

 坊主頭については分かるが、もう片方についてはさっぱり分からん。

 舌打ちした坂本が訪ね方を変えた。

 

「髪の毛が爆発したかのように逆立っていた奴が、どっちへ行ったか知っているか?」

「ああ、それなら次を右に曲がっていったよ」

 

 私の言葉に坂本はまた走り出す。その後ろを追って走り出そうとした吉井の襟足を掴み、止まらせる。

 

「なにをするんだ!」

「なにが起きているんだ。いったい」

「なにがって、あいつ等がいろいろして! 僕たちの喫茶店を邪魔していた奴らで」

 

 喫茶店を邪魔している?

 

「おい、それはあの団子を侮辱していた奴等か?」

「え、そ、そうだけど」

 

 そうか。なら。

 

「え? 消えた!?」

 

 あいつ等を追いかけるとしよう。途中に運よくあったロッカーからついでに箒を取り出して走る。坂本を追い越し、走り続けたがすぐに見つける事が出来た。

 

「おまえたちか」

「な、なんだ!? この地獄の奥底から聞こえる様な声は!?」

「なんなんだよ、畜生!」

 

 爆発頭の背中目掛けて箒の柄を突き出す。走っている勢いと、刺突の威力で壁に叩きつけてやる。

 

「ぐうぇ!?」

 

 うめき声が漏れたが、そんな事は気にする価値もない。

 確かもうひとりいたはずだが、そちらには逃げられたか。

 

「見つけてこの恨み晴らしてやる」

 

 この後校内中を探し回ったが結局見つからなかった。無念だ。

 

 

 

 清涼祭が終わった後には後夜祭というものがある。今私はそれに無理やり参加させられていた。私は清涼祭が終わったらさっさと帰ろうとしたが、クラスメイトが私の腕をつかんで無理やりここまで連れてきて、馬鹿騒ぎに巻き込んだ。帰ろうにも周りが帰らそうとしないので、結局仕方がなく参加するはめになった。

 ため息を殺すために振る舞われた橙色の飲み物を一口飲む。慣れない味だが、どこか慣れ親しんだ、頻繁とは言わないまでも良く飲んだ気がする。はて、いったいこれはどういうことだろう。まあ、気にしても仕方がない。さっさとこの後夜祭が終わって解散になるまでこうして一人で飲んでいよう。

 十分もすると、周りの奴らが顔を赤くして呂律(ろれつ)が回らなくなっていた。ああ、そうか。飲み慣れた感覚はこれが酒の一種だからか。味自体は良く分からんが。それにしても随分と弱い酒だな。この程度で酔うとは。

 幻想郷ではこれよりも強いが旨い酒を良く飲んだものだ。今はあまり飲んでいないが。なぜだか知らんが、外の世界では酒が買えない。いったいなぜだ? 思い出と疑問にふけていると遠くに姫路と吉井が見えた。なにやら吉井が暴れているように見えたが? 気になっていたら、姫路が吉井の服を奪おうとしていた。

 

「なにをやっているんだ」

 

 呆れてしまう。それと同時に、そういう時のいやよそう。もうすでにそれはすべて終わったことだ。今更思い出しても胸が痛むだけ。なら、忘れてしまう方がマシというもの。

 杯を煽る。わずかに残っていた酒が苦く、胸糞悪かった。

 




東方簡易百科事典
豊聡耳神子 聖徳太子その人。能力を抑えるために、耳あてを常に着けている。能力は住人の声を聞くどころか、欲望までも聞いてしまう。ちなみに、原作ではかなり高位の存在らしく、主人公たちも驚くほどの強さを持っている。現在は肉体を捨てた仙人になっている。
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