バカとテストと幻想獣   作:koth3

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第十四問 問 騒動を起こすのは? 答 Fクラス

第二問 強化合宿二日目の日誌を書きなさい

 

 魂魄妖灯の日誌

 

 『私はやっていない!』

 

 教師のコメント

 大丈夫です。先生たちも事情を把握しましたから。

 

 魂魄妖夢のコメント

 ……兄さん。

 

 

 昨夜の騒動から一日たったおかげで幾分冷静になれた。

 今から思えば、あの物言いは腹が立つが、確かに肌をみられたと思っていた女子たちが殺気立っていたのも仕方がないだろう。その点は私が悪かった。自分のことながら大人げない。とはいえ、覗きの疑いをかぶせてくるのには辟易したが。

 だがきちんと話し合いをしなかったせいか、今もなお疑いは引き継がれてしまっている。

 昨日あれだけ喧嘩腰になってしまったためか、合同自習中も多くの女子が私を睨んできた。煩わしいが、それくらいなら我慢しよう。別に実害があるわけでもなし。

 それに、どうせFクラスが馬鹿をして、そちらに気を取られるであろうし。

 実際さっそくというべきであろうか。Aクラスの女子が近寄って、吉井たちになにやらしている。吉井たちからひとつ離れた程度のテーブルで勉強しているから、否が応にも話し声が聞こえてくる。

 いのまにやら霧島や、Aクラスの確か工藤が吉井たちの勉強に参加していた。まあ、別に基本的に自由時間だし、彼女たちはAクラスに所属している。すなわち勉学は優秀なはずだ。文句を言う必要はないだろう。

 

「……スリーサイズは上から――」

 

 あれ? 一寸待て。先の言葉を撤回する必要があるか?

 私の机のFクラスのやつらは工藤の言葉に息を荒げ、血走った目で彼女たちの方を見ている。というより、前かがみになっていた。え、まさかとは思うけど、工藤という女生徒は、痴女なのか? 確かに前回の戦いではなにやら保健体育の実践が得意と言っていたが、あれはまさか本気で言っていたのか? おふざけとかいうものでなく。

 急に肌寒くなってきた。私は机に出していた勉強道具を慌てて回収する。だが、慌てすぎたのか。鉛筆に指が引っ掛かってしまい、床を転がってしまう。

 そして、

 

「はい、これ。確か……魂魄君だっけ。そんなに慌ててどうしたの?」

 

 寒気の原因が拾ってしまった。

 

「い、いや少し場所を変えようかな、と」

 

 自分でも分かるほど声が震えている。その声に、目の前の工藤も気が付いたのか、にんまりとした笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、せっかくならこっちに来ない? 場所を変えるんでしょう」

「そ、そこは空調が効きすぎているから」

「そう? あんまり効いていないと思うけどな、僕は。だからほら、こうして服を緩めるしか」

 

 そう言って、工藤は服を引っ張りパタパタと扇ぐ。第一ボタンをはずしているため、どうしてもちらちらと肌が見えてしまう。

 

「妖灯ぃい! 俺と変われ!」

「ふざけんな、俺だ!」

「馬鹿を言え。お前たちには役不足だ!」

「だったらお前は力不足だ。この馬鹿!」

 

 とっさに役不足と言った奴に突っ込んでしまった。完全に役不足の意味をはき違えていたからつい突っ込んでしまったんだ。だが、助かった。ぐいぐいと馬鹿どもに押され続けて、少しは落ち着くことができた。

 冷静になれば、断れる。考えも落ち着いてきたところで、私は冷静に断るための文句を考える。素早くしなければ不審になってしまう。急がなければ。

 一秒にも満たない時間で、それらしい理由をでっち上げた私は、口を開く。

 

「実は「同性愛を馬鹿にしないで下さいっ!」……今度はなんだ!」

 

 また響いてきた不穏な声に教室の扉を見ると、小柄な女子生徒が肩を震わせていた。そして彼女は吉井を睨みつけると、島田へ抱き着こうとしたその女生徒だが、当の島田が悲鳴を上げていた。

 

「こ、魂魄バリア!」

「へ?」

 

 島田に掴まれて、盾にされた。島田へ抱き着こうとして飛び込んできた女生徒の頭が、鳩尾にめり込んだ。

 いくら鍛えているからといっても、急所は鍛えられない。思わずうずくまって腹を抑え込む。

 

「あ、ちょ! 大丈夫? ごめん手頃な盾がなくて……」

 

 本当に盾扱いされている!?

 呼吸ができず、しゃべることができない。

 

「け、汚らわしいです! お、男なんて。男なんて抱いてしまうなんて!」

 

 待て! せめてそこの女生徒は謝れ! わざと出ないといえ、お前の頭突きで苦しんでいるんだぞこちらは。しかし彼女はどんどんと勢い付いてしまい、聞くに堪えない罵詈雑言を叫んでいる。

 

「少し静かにしてくれないか」

 

 そんな折、Aクラスが集まっている方から、眼鏡をかけた男子がやってきた。確か姫路と戦っていた学年次席か。

 

「あ、ごめん」

 

 吉井が謝っている。謝るのは違う人間なのでは、と思わず女生徒を睨んでしまう。

 

「な、なんですかその目は! 美春が悪いというのですか!?」

 

 いや、悪いだろう。残念ながらその言葉は出てこない。それをいいことに、彼女の言葉は続いていく。結局西村教諭が注意しに来るまで彼女は罵倒し続けてきた。

 

 

 

 ようやく一日が終わり、夕食の後まだ痛む腹をさすりながら部屋へ戻ると、人だかりができていた。

 廊下にもあふれているために、部屋へ入れない。

 

『『『乗った!』』』

 

 な、なんだ? また坂本がなにかしでかすのか。

 拙い。勘であるが、このままここにいると巻き込まれる気配がする。

 慌てて逃げようとしたが、時すでに遅かったらしく、近くにいたFクラスの奴らに両腕を掴まれてしまった。

 

「ほら行くぞ、魂魄! 戦力は多い方がいい」

「俺たちに感謝しろよ。楽園(エデン)を見せてやる」

「別に見たくもないから、放せ!」

 

 暴れ回る。本来ならば人間程度に抑えられるほど力は弱くない。だが今は力が弱っている。抵抗むなしく私は引き摺られていく。

 長い廊下をまるで虜囚のように運ばれていくと、そこには女生徒の集団がいた。

 

「そこまでです、この豚ども! この先は男子禁制! さっさと引き返しなさい!」

 

 またもやあの女生徒がいた。なんなんだ、今日は。厄日か? 天を仰いでいると(コンクリート製の灰色がかった天井しか見えない)、女生徒がこちらに気付いたようで騒がしくなった。

 

「むっ! また貴方ですか! はっ! まさか貴方もお姉さまの裸が目当てで……!」

「一寸待て! いったいなんの話だ! というより、お前たちも私を捕まえてどこまで行く気なんだ!」

「そんなもん、決まっているだろう。白煙の先にある美の女神を見に行くだけさ」

 

 迂遠な言い方であるが結局は覗きでないか!

 

「ふざ「汚らわしい! やはりお姉さまを狙っているのね」いや、だからちが「召喚(サモン)!」話を聞けぇ!!」

「黙りなさい! この()()! 少し女に見えるからと言って、男が女湯に近づくなど許されるとでも!」

 

 ……あ?

 

「お、おい魂魄? どうした? というより、なんか怖いぞお前」

「放せ」

 

 氷のように澄んだ声が出る。腕をつかんでいた奴らが青い顔になっていた。

 

「は、はい!」

 

 両腕が解放される。ぐるりと一回回す。違和感はない。

 Fクラスが覗きを企んでいるとかそういうのはどうでもいい。ただ目の前にいるこの女が気に入らない。

 

「別に風呂とかはどうでもいい。ただ私はお前が嫌いだ。叩きのめす」

「やってみなさい!」

 

 召喚獣を召喚(サモン)し、私は目の前の女生徒へ槍を突きつけた。

 召喚獣が出そろったことで、点数が表示される。

 

『現代文 Dクラス 清水 美春 102 VS Fクラス 魂魄妖灯 258』

 

 映し出された点数に、女生徒、清水は目を丸くしている。

 

「そんな! Fクラスの男子がこんな点数だなんて!」

「吹っ飛べぇ!」

 

 驚き止まったままである相手の召喚獣を槍の柄で横なぎにする。点数差が大きかったためか、大振りの一撃であるがその一発だけで終わったようだ。相手の召喚獣が消えていく。

 唖然としている女生徒にむけ叫ぶ。

 

「いいか! 私は男だ! なにが悲しくて女と言われなければならない!」

 

 これだけは伝えなければならない。私は男だと。幽々子様も紫様も時折人をおもちゃにしてくる。そのたびにどれだけ辱められたことか。

 

「そうか。それは分かったが、お前も覗きの共犯と思わなかったぞ、魂魄」

 

 肩に手を置かれた。後ろには西村教諭がいた。

 誤解を解くのに一日を費やした。

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