第六問 この強化合宿についてのまとめを書きなさい。
魂魄妖灯のまとめ
『初日から周りのごたごたに巻き込まれ疲れた。まともに勉強できなかったような気がする。一体この合宿はなんだったというのだろうか』
教師のコメント
『ふふふ、それが青春というものですよ。いろいろあるようですが、そういったことが将来大切な宝となるものです』
射命丸文のコメント
『あややや。なかなか面白そうなネタの匂いがします。今度、詳しく取材させてください』
ほとんど消耗しなかったといえ、それでも昨日の戦いで僅かに点数が減っていた。戦争をするためには補給が重要だ。補給を絶たれた際、残っているのは地獄だ。それは歴史が証明している。というわけで、私たちは補充のために試験を一日かけて受けた。
これで全員まともな戦力となった。あとは策を練り、女子どもに目に物を見せつけてやるだけだ。あれだけこちらを貶したのだ。少なくともその恥辱分は返さなければ腹の虫がおさまらない。
「作戦開始も近いからな。最後の打ち合わせだ」
坂本の声が聞こえた。どうやら、私を除いた部屋の人間で作戦を練っていたらしい。これは幸いだ。坂本の作戦立案能力は、この平和な時代に珍しく高い。基本的にはその策に間違いはない。とはいえ、昨日はその策を幼馴染に読まれてしまったらしいが。ならばその点は傍らで補佐すれば、むしろ相手の意表をつけるだろう。
「俺たちがいるのは三階だ。目的地までは、三階・二階・一階・女子風呂前の計四点の防衛線を突破しなければならない」
四人の輪に加わる。坂本は私を一瞥した後、かすかにうなづいて再び言葉を続けていく。
「三階の敵はE・Fクラスの仲間が抑えてくれる。二階の敵はDクラスだ。ただ、Dクラス単体は厳しいものがある。出たとこ勝負になるが、まあなんとかなるだろう。その後は」
「その後、一階は私に任せろ」
「魂魄……?」
「大将を潰す。完膚なきまでに。それが私の復讐だ」
しばらく押し黙った坂本であるが、たしかに一度頷いた。そうだ。それでいい。その返答に満足し、輪から離れていった。
作戦開始からしばらく経った。戦況は苦しいものはあるものの多少有利なところだ。やってくる女子生徒たちを次々と討ち取っていき、前へと突き進む。ときには犠牲を要し、散っていた男子もいる(Bクラスの代表)。そしてなによりAクラスの男子生徒たちが加勢に来たというのも大きいだろう。戦力がまし、勢いを増した私たちは今、流れに乗っている。
その流れを絶やさぬため、そして目的を達成するために、私は眼前の敵を倒す。
「さあ、勝負といこう」
「ええ。分かりました。間違った道を、恨みを持ち突き進むというのならば、教師として止めなければなりません」
召喚獣がお互い召喚される。だが、召喚されると同時に高橋女史の召喚獣が鞭を振るってきた。すぐさま槍で迎撃するが、すぐさまもう一撃放たれる。これも軽く受け流すが、再三すぐさま鞭がやってくる。
してやられた。どうやら敵の策は、攻撃こそ最大の防御。押して押して押しまくるようだ。なるほど、合理的だ。召喚獣は疲れない。いくら鞭を振り回そうが、疲れから動きの鈍ることはない。点数がなくならない限り。逆を言えば点数がなくなれば、消滅する。そして、攻撃する方も防御する方も微量ながら削られていく。
「まずい……!」
点数の差は圧倒的だ。私の試験の点数はそれほど高い方ではない。確かに古典と日本史ならばかなりの点数が取れるが、それ以外はまだあまり勉強できていない。一方、向こう側は教師だ。今まで勉学に励んできた、いうなればこの道の先達者。青は藍より出でて藍より青しと行くには、それ相応の努力が必要。今の私では藍よりも薄い。点数の差は圧倒的だ。このまま防御をし続ければ、そういかないうちに召喚獣が点数を失い消滅するだろう。
「私は貴方ほど強くはありません。しかしながら、戦いに勝つのは武力だけではありません。知もまた戦いを決定づける重要な要素です。古今東西の戦において、大勝を決めたのは武将より、智将の存在が大きいのですよ」
再び振るわれる威力のない、しかし確実に点数は削ってくる攻撃を防ぐ。どうするべきだ。このままだと、なぶり殺しにされる。
いな! それだけはしてはならない。私は決めたのだ。必ず倒すと。女子たちに目に物を見せてくれると。
奥歯をかみしめる。覚悟はとうの昔に決めている。今必要なのは守りでない。状況を打破する猪武者だ。
「なにを? 諦めたという訳ではないようですが……」
疑問の声が挙がる。当たり前だ。突然守ることを止めたのだ。困惑するのは当たり前だ。それでいて、攻撃自体は先ほどと変わらない。これをチャンスと大振りにしてくれれば、楽であったが。それに関しては敵ながら天晴れというべきか。
槍先を相手の召喚獣に向け、
「侵略するごと火の如し」
その言葉とともに召喚獣が駈ける。いままでの速度と比べようがないほど速い。だが、いくら速いといえ、実体まで失ったわけではない。鞭が当たり、鈍い痛みが私の体にまで奔る。
とはいえいくら点数に激しい差があろうと、当てるだけのつもりで振るわれた鞭など覚悟を決めさえすればいくらでも防げる。召喚獣も傷つきながら突き進んでいく。
「なっ! しまっ」
「貫き通せ、飛燕」
最大まで加速した召喚獣はそのまま鞭の間合いを潜り抜け、槍の間合いまで駆け抜ける。そしてそのまま敵の心の臓を貫いた。
高橋女史の召喚獣は虚空へと消えていく。勝った。私は勝った。この戦を、報復を!
「ぉ、ぉおおおおおおおおお!!」
腹の底から喜びの声を挙げた。
作中、詳しい行動は省かれています。というのも、視点主である魂魄がぶちぎれ冷静でないため、周りを見る余裕がありません。どうしても気になるかたは、原作を読んでください。面白いですよ。
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射命丸文
烏天狗。自称清く正しい射命丸。ゴシップ好きな天狗は、新聞を自ら作ることを娯楽としている。そのため常にネタを探し、それで騒動を起こすことも。射命丸もご多分に漏れず、新聞を作っている。