作者、ギャグが苦手ですので仕方がないのですが、それでもこれは酷いような。只、しばらくしたら主人公もFクラスに毒されていくので、ギャグが増えるはずです。
白玉楼で見た桜と言えば、西行妖位なもので、やはりこうして見ると美しい花を咲かせるものなのだなと気が付かされた。普段、花見などにはいかないから、その美しさなどは見たことが無かった。
通学路の途中にある桜並木を眺めながら、その美しい風景に心を思わず奪われていた。だが、今の私は不本意だが学生なのだ。遅刻するわけにもいかない。幸い、紫様に用意された家を出た時間は、かなり余裕のある時間だった。このままでも十分間に合うだろう。
坂を上り来たところに、依然転入試験というものを受けた時に、教室を案内してもらい世話になった寺子屋の教師を見つけた。“すーつ”という礼服を着て、その逞しい肉体を窮屈そうに収めている。他には浅黒い肌と渋い声が特徴的だ。性が確か、西村だったはず。
「魂魄妖灯だな?」
「はい、そうです」
例え、私の方が年上だったとしても、今この場においては私の方が立場は弱い。ならば、それ相応の対処をしなくてはならないだろう。
「お前のクラスがこの中に書いてある。そのクラスが、これから一年間過ごす事になるクラスだ」
「分かりました」
そう言って手渡された封筒を破き、中を確認すると、そこには『魂魄妖灯……Fクラス』と書かれていた。
「お前はまず、一般常識を学べ」
第二問 以下の意味を持つことわざを答えなさい
(1)得意な事でも失敗してしまう事
(2)悪い事が有った上にさらに悪い事が起きる事
魂魄妖灯の答え
(1)止まる厄神
先生のコメント
一体厄神って?
鍵山雛
失礼ね! 例え転んでも止まらないわよ!
……何と言うのか。余りにも差がありすぎるのではないだろうか?
Aと書かれていた札が掛かっていた教室の施設は、良く分からないが必要以上にいれたりつくせたりだったと思う。それと比べて、Fと書かれた札が掲げられていた教室は余りにも酷い。畳は痛み、ボロボロ。硝子はひび割れて、中には穴が開いてすらある所も。さらに、卓袱台に至っては、脚が壊れて三脚になっている物すらある。
しかし、住めば都とも言う。幾らか我慢すれば慣れるだろう。それに、お爺様と妖夢と一緒に修行していた頃には、野外で一か月過ごすという事もあった。しかし、妖夢が段々と嫌がり始めてからはしなかったが。何やら、臭いが酷くなるからやめたいとか。幽々子様まで味方して、結局その修行は行われることはなくなってしまい、いやいや、余計な思い出に浸っているわけにはいかない。さっさと席に着かせてもらおう。
「っ!?」
うん? 組の人間が何故、私に注目しているのだ? 少し気にはなるが、態々話す必要はないな。さっさと席に座ろう。
「すまないが、私の席を知らないか?」
「あ、ああ。席は自由だ。気に入った場所を選んで、勝手に座ってくれ」
「わかった」
不必要な会話をする必要はない。何せ、私は異物でしかない。何時か消えてしまう泡沫に過ぎないのだ。ならば、話をしたってそこに両者が得るものなどはない。
そんな益体の無い事を考えていたら、鐘の音が聞こえた。どこかに鐘突き台でもあるのだろうか。見たところ、鐘はないし、そもそもの音が全く違った。ゴォーンと言う、腹に響く音ではなく、軽快な音だった。そこまで考察しながら、鐘の音が気になり、外に鐘がないか、もう一度探すために窓から外を見た。ほんの何気ない行動だったが、そこには二人の影が見える。一つは先ほどの西村教諭だろう。大柄な体は、その影だけでも十分にわかる。では、その隣の影は何だろうか? おそらくは、遅れた、つまりは遅刻した生徒か。噂によると、遅刻した生徒は教師によって頭突きを喰らうという事が文々。新聞にあったのだが、それはどうやら、というより何時ものように違うようだ。
幻想郷の事を考えたのがいけなかったのだろう。暫くの間、只々白玉楼に居られるはずの、幽々子様の事を思い浮かべてしまう。必要以上にお食事をとられていないか。妖夢は他の幽霊たちと一緒に台所に駆り出されていないか。あいつは包丁を持ったら、何故か振り回す癖があるからな。以前、斬られかけた。というより、切裂かれた。何とか生き残ったが、台所禁止令が出たはずだ。しかし、だが。やはり心配だ。ああ、私が外に居たら、白玉楼が一体如何なるか! やはり無理にでも外の博麗神社を探して、そこから博麗大結界を……!
そんな事を決めかけていた時、愛嬌のある声が聞こえた。おそらくは先ほどの人影の主だろう。気に留める必要も……。
「ちょっと遅れちゃいました♪」
「早く座れ、この蛆虫野郎」
……。聞き間違いだろう。幾らなんでも、いきなり《蛆虫野郎》はない。それはもはや挨拶とかではなくて、唯の暴言だ。そう思って、落ち着こうとしたら、
「聞こえていないのか? あぁ?」
脅す口調で、そんな言葉が吐かれていた。教壇にいる、赤いたてがみを思わす髪型の、少し粗野な感じがする青年は組の仲間に、いくら遅れていたとしてもそんな風に責めたのだ。幾ら、無関心でいようとした私でも驚いて、二人の様子を見てしまったとしてもなにも可笑しくはない。
「……雄二、何やってんの?」
しかも、それでいながら知り合いらしい。あんな罵詈雑言を交わしあう知り合いというのは何だ!? 私が知っているのは、妖怪の賢者と幽々子様が喧嘩している時ぐらいしか知らないぞ!? それだって、そこまで酷くはない。何時までもネチネチ文句を言い続けるくらいだ。……いや、それはそれで面倒なんだよなぁ。本当に。仲直りしたくなった幽々子様の使いで、結局私が遣わされるし。そして、何時も九尾の狐と顔を合わせるようになって。この頃、顔を見合わせると、条件反射的にため息を二人して同時についてしまうようになってきた。この二人の関係がせめて、まだ健全であることを願おう。
しかし、その後の彼らの会話を聞いている限り、健全のけの字も見つからなかった、それどころか、組の人間を兵隊とまで言い切った。
そこまで言った雄二とやらは、しかしすぐにヨレヨレな、疲れ切った体裁の中年の男性によって、教壇から一旦追い出された。
「席に座ってください。HRを始めますから」
担任の先生のようだが、何と言うか幸が薄そうな人だな。そんな感想が思い浮かんだあと、すぐに、“ほーむるーむ”とやらが始まった。
「二年 F組の担任、福原慎です。よろしくお願いします」
そう言って、後ろの板に何かを書こうとしたのだろう。しかし、筆がないためか、諦めたらしい。すぐに口を開いて、備品の確認を始めた。
「卓袱台と座布団は支給されてますか? 不備があれば申し出てください」
やはりこれがこの組の備品なのか。あまりに酷すぎるとは思うが、そもそもこの組になったのは私が原因。ならば、文句を言うのは筋違い。それに、今のところ、私が使っている場所は何とか、無事だ。
只、私が無事だという事はほかの人が無事というわけではない。
「先生ー! 俺の座布団、ほとんど綿が無いです」
綿が無い座布団とはこれいかに? それは只の布だろう。しかし、幾らなんでもひど――
「我慢してください」
えっ?
「せんせー、俺の卓袱台に至っては脚が折れています」
「木工ボンドを使って後で直してください」
「窓が割れていて、寒いのですが」
「ビニル袋とセロハンテープの支給を支給を申請します」
いや、いやいやいや! それはもはや備品の確認ではない! というより、いくら何でもひどすぎないか? 壊れている物品を大切に使うのはまだしも、それを無理やり使うのは良くない事だぞ! 付喪神が妖怪化してしまうだろうに。外の世界の人間は、そう言った事を気にしないのか?
「必要なものがあれば、自分でできるだけ調達して下さい」
もはや呆れて、何もいう事が出来なくなってしまった。
「では、自己紹介でも始めましょう。廊下側からの生徒からお願いします」
そうして自己紹介が始まった。一人、一人と自己紹介を終えていき、私の番になった。静かに立ち上がり、――やはり全員に注目されてしまっている。できるだけ簡潔に終えよう。そう決心して、静かに口に出す。
「魂魄妖灯と申します。宜しくお願いします」
それだけ言って、さっさと座らせてもらおう。何せ、見られるのは好きじゃない。誰だってそのはずだ。見世物は嫌だ。私の自己紹介からしばらくして、過激な言葉が出てきた。
「趣味は、吉井明久を殴る事です☆」
……世も末なのか。女子がそんな事を言うようになるとは。というより、幾らなんでもそんな事をこの場で言っても良いものなのか? そんな疑問はあれど、すぐに他の人物たちが挨拶を終えていく。そして、ある生徒の番になった。
「――コホン。えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んで下さいね♪」
“だーりん”? どういう意味なのだろうか? 後で辞書で調べてみる――
『ダァァーーリィーーン!!』
耳が! 耳が! 余りの莫迦声に耳が壊された!? はっ! これが道売新聞に書かれていた音響兵器と言う奴か!
それにしても未だに耳が痛い。幾ら結界の所為で本来の身体能力から離れていても、この身は人間よりは強い。それは聴覚などの五感もそう。だから、こんな叫び声を間近で喰らってしまっては、耳が可笑しくなるの当たり前。耳をふさいでおけばよかった。
目の前がちかちかして、星が見えるがそれを努めて無視して、首を振り意識をはっきりさせる。なかなか治らないが、何とかなった。
しかし、挨拶を聞いていて、だんだんと暇になってきた。アレ以降は、特に変わった様子がない。だから、私は何をして暇を潰そうか。そう考え始めていた。白玉楼にいたころは、ひがな一日、妖怪が書いた小説を読んで暇をつぶしていたのだが。長命の妖怪が書いただけあって、異常なほど作品が長く、時間を忘れるにはちょうど良かった。しかし、まさかこんな所で読むわけにはいかない。そもそも幻想郷の物品を持って来れなかったのだし。
する事もなかったので、呆けていたら、漸く最後の生徒の番まで来たようだ。これで終わるか。そう安堵したが、その挨拶は今まで全く違った。
「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺の事は代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」
それからは、教壇にいる少年の独壇場だった。この組の生徒が持つ不満を煽り、士気を高め、良いように言葉で翻弄して自分の意志を言い放った。これから先の闘いへ向けて高らかに。
「――FクラスはAクラスに、『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
きっとこの時からだろう。閉じかけていた私の世界がもう一度開き始めたのは。
東方を知らない人向けの簡易紹介
厄神 厄を司る神様。最高位としては、八十禍津日、或いは大禍津日の神と思われる。
鍵山雛 厄神の一人。元々は流れ雛。その為か、厄をその身に貯める。何時も回っている。
文々。新聞 天狗によって発行されている新聞。大概、事実を曲解してねつ造されて面白おかしく書かれている。
射命丸文 文々。新聞を書いている天狗。烏天狗であり、飛行速度は幻想郷一と言われている。