第二問
『西暦1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい』
魂魄妖灯の答え
『クリストファー・ロビン』
教師のコメント
クリストファー違いですね。それは黄色いクマのお友達です。
メディスン・メランコリー
ぷーさんはわたしのお友達よ。
教室が騒がしい。というよりも怨念で満たされているというべきだろうか。誰もが吉井に対して敵意を隠そうとしていない。それどころか率先して殺意を表明しているしだいだ。正直なところ、鬱陶しいから殺意を発するのはやめてほしいところだ。場合によっては手が滑ってしまうかもしれない。
この状態の元凶へ目を向ければ、二人して顔を赤くしている。完全に自分たちだけの世界に入り込んでしまっている。
「それで、お昼一緒に食べましょう」
うつむき、その身を微かに揺らして言われた言葉に、吉井も頬をかいて肯定している。初々しい恋人のようだ。これが文芸作品ならば、甘酸っぱい青春の話としていいのだろう。しかしここは現実だ。そんなものを見せつけられた馬鹿どもが反応しないはずない。現に周りの殺気は膨れ上がる。場所を考えて言えばいいのに。なぜ
「駄目です、お姉さま!」
そうして乱入してくる一人の少女。清水とかいったか。合宿の際、かなり煮え湯を飲まされた相手だ。また面倒な奴が現れた。教室の中で一番殺意を発し、吉井を睨んでいる。
どうやら吉井と島田が一緒にいるのが気に入らないようだ。しかも、昼を一緒にするということにも。個人の自由だとは個人的に思うが、いったいどんな料簡で邪魔をしようというのか。まあ、行き過ぎなければ無視しよう。相手をするのは面倒だ。
「――だって、ウチはアキと付き合っているんだから」
島田の言葉に、清水が体を震わす。時間が経てば経つほどその震えは大きくなっていく。呆然とした声で反問している。だが島田が何度も何度も頷いたためか、吉井へその視線を向けた。
――マズイ。
「ころ――」
吉井へ襲い掛かった清水を空中でドアへ蹴り飛ばす。勢いよく宙を吹き飛んだ体は、汚れきったドアへ強かに叩きつけられる。轟音が鳴り、全員の視線が集まってくる。
「そこまでにしておけ」
「こ、魂魄!? なにやってんの!? 美春、大丈夫っ!?」
ドアへもたれかかった清水に、告げる。
「
腹部を抑え顔を顰めている清水は、泣きそうになる。だが、そんなものは考慮にもならない。いましようとしたことは、許容するわけにはいかない。それは誰もが不幸になるものだ。
「妖灯! いくらなんでも」
「黙っていろ、吉井」
もたれかかっている清水へ近寄りながら、私は言葉を続けていく。いまここで言わなければ、こいつは理解しないだろう。その感情は、気持ちは尊いからこそ、それを自身で否定している清水を許せない。
「お前がいくら想おうが、そのような手に出る限り決して報われん。そんな手で得られるものなぞ、虚構でしかない。虚しいぞ、それは。それに、お前が二人を邪魔する権利はない。結局のところ、これは二人の問題だ。部外者が口をはさむな」
「わ、私は、お姉さまを」
「口を開くな。それ以上はただ不快なだけだ。お前がお前の気持ちを裏切るだけだ」
とうとう清水の目から涙が流れる。教室の中はただ静寂に包まれる。
「なんだ、なにがあった!? さっきの音は!」
西村教諭が扉を開けて顔を出す。どうやら走ってきたのだろう。ネクタイがずれてスーツから飛び出している。
「
なぜ、こんなことをしたのだろうか。自分のことながら分からない。ただ、清水の言動がムカついた。
「俺が清水を蹴りました」
それだけだ。それだけでしかない。それ以外ではあってならない。
だから、紫様。早く俺を幻想郷へ戻してください。でなければ俺は――
シリアスです。