バカとテストと幻想獣   作:koth3

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第十九問

 第二問

『西暦1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい』

 

 魂魄妖灯の答え

『クリストファー・ロビン』

 

 教師のコメント

 クリストファー違いですね。それは黄色いクマのお友達です。

 

 メディスン・メランコリー

 ぷーさんはわたしのお友達よ。

 

 

 

 教室が騒がしい。というよりも怨念で満たされているというべきだろうか。誰もが吉井に対して敵意を隠そうとしていない。それどころか率先して殺意を表明しているしだいだ。正直なところ、鬱陶しいから殺意を発するのはやめてほしいところだ。場合によっては手が滑ってしまうかもしれない。

 この状態の元凶へ目を向ければ、二人して顔を赤くしている。完全に自分たちだけの世界に入り込んでしまっている。

 

「それで、お昼一緒に食べましょう」

 

 うつむき、その身を微かに揺らして言われた言葉に、吉井も頬をかいて肯定している。初々しい恋人のようだ。これが文芸作品ならば、甘酸っぱい青春の話としていいのだろう。しかしここは現実だ。そんなものを見せつけられた馬鹿どもが反応しないはずない。現に周りの殺気は膨れ上がる。場所を考えて言えばいいのに。なぜこの場(教室)で言うのだろうか。恥ずかしくはないのか。ああ、恥ずかしいという感覚よりも幸福感やら緊張で周りに気付けないのか。

 

「駄目です、お姉さま!」

 

 そうして乱入してくる一人の少女。清水とかいったか。合宿の際、かなり煮え湯を飲まされた相手だ。また面倒な奴が現れた。教室の中で一番殺意を発し、吉井を睨んでいる。

 どうやら吉井と島田が一緒にいるのが気に入らないようだ。しかも、昼を一緒にするということにも。個人の自由だとは個人的に思うが、いったいどんな料簡で邪魔をしようというのか。まあ、行き過ぎなければ無視しよう。相手をするのは面倒だ。

 

「――だって、ウチはアキと付き合っているんだから」

 

 島田の言葉に、清水が体を震わす。時間が経てば経つほどその震えは大きくなっていく。呆然とした声で反問している。だが島田が何度も何度も頷いたためか、吉井へその視線を向けた。

――マズイ。

 

「ころ――」

 

 吉井へ襲い掛かった清水を空中でドアへ蹴り飛ばす。勢いよく宙を吹き飛んだ体は、汚れきったドアへ強かに叩きつけられる。轟音が鳴り、全員の視線が集まってくる。

 

「そこまでにしておけ」

「こ、魂魄!? なにやってんの!? 美春、大丈夫っ!?」

 

 ドアへもたれかかった清水に、告げる。

 

()()はさすがに看過できん。それでもまだやるというならば、次は加減せんぞ」

 

 腹部を抑え顔を顰めている清水は、泣きそうになる。だが、そんなものは考慮にもならない。いましようとしたことは、許容するわけにはいかない。それは誰もが不幸になるものだ。

 

「妖灯! いくらなんでも」

「黙っていろ、吉井」

 

 もたれかかっている清水へ近寄りながら、私は言葉を続けていく。いまここで言わなければ、こいつは理解しないだろう。その感情は、気持ちは尊いからこそ、それを自身で否定している清水を許せない。

 

「お前がいくら想おうが、そのような手に出る限り決して報われん。そんな手で得られるものなぞ、虚構でしかない。虚しいぞ、それは。それに、お前が二人を邪魔する権利はない。結局のところ、これは二人の問題だ。部外者が口をはさむな」

「わ、私は、お姉さまを」

「口を開くな。それ以上はただ不快なだけだ。お前がお前の気持ちを裏切るだけだ」

 

 とうとう清水の目から涙が流れる。教室の中はただ静寂に包まれる。

 

「なんだ、なにがあった!? さっきの音は!」

 

 西村教諭が扉を開けて顔を出す。どうやら走ってきたのだろう。ネクタイがずれてスーツから飛び出している。

 

()が――」

 

 なぜ、こんなことをしたのだろうか。自分のことながら分からない。ただ、清水の言動がムカついた。

 

「俺が清水を蹴りました」

 

 それだけだ。それだけでしかない。それ以外ではあってならない。

 だから、紫様。早く俺を幻想郷へ戻してください。でなければ俺は――




シリアスです。
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