第四問
以下の文章の( )に入る正しい単語を答えなさい。
『分子で構成された固体や液体の状態にある物質において、分子を結集させている血からのことを( )力という』
魂魄妖灯の答え
『(萃)力』
教師のコメント
イメージは近いものがありますが、ただ集めるのではなく結集させる力を尋ねています。近い答えが出ていますので、もう少し頑張ってみましょう
伊吹萃香のコメント
おっ、私の力についてかい? まあ、物を萃めて固める程度はできるよ。えっ、なんだい紫。私の力とは違うの?
生徒指導室に呼び出された次の日私が教室にいても、クラスの雰囲気は少し悪いものがあったがそれだけだった。不必要に彼らは私を責めることなく、遠巻きにであるが私の様子をうかがうだけだ。多少鬱陶しいとは思うが、それだけで済むのは僥倖だろう。あからさまに避けられるよりかはまだましだろうな。文句はない。
そうして教室にいたところ、DクラスがFクラスに試召戦争を仕掛けてきたと報が入った。普段ならば驚くべきだろうが、坂本の妙に落ち着いた態度から、また何かの策を行っているのだろうと当りがつく。実際話を盗み聞く限りでは、Dクラスとの戦争が行われないとBクラスに襲われ、拙い事態になるようだ。まあ、確かに考えてみれば合宿にて点数を消費しきったこのクラスがBクラスと戦えるとは思えない。まだDクラスと戦う方がましだろう。
それにしても少し意外だ。虚虚実実を駆使した坂本がDクラスと交戦させたと思っていたが、どうやら吉井が清水と話し合って交戦状態へ持っていったらしい。
昨日の清水の言っていた見極めというのが行われ、吉井は眼にかなったということか。
さて、それにしてもいったい現状がどうなっていることやら。戦争のことじゃなく、なぜか島田と吉井との間がまた広まっている。あれほどくっついていたというのに。なにがあったのか。とはいえそうそちらにばかり気を捉われるわけにもいくまい。
戦争に向けて戦力を補強しなければならないだろう。幸い、私はあまり点数が減っていない。補給に出る必要はないだろう。ならば前線で戦うのだろうが。
「ああ、魂魄。お前も少し付き合ってくれ」
坂本が私を呼ぶ。どうやら私にも仕事が割り当てられるようだ。面倒だと思いながらも、坂本に近づく。
「すまんな、昨日の件で会いづらいだろうが、Dクラスの条件がお前と吉井をつれて清水と会うことでな」
「別にかまわない」
どうやら、これが清水の出した結論のようだ。それを聞き届ける義務が私にはあるだろう。
「よしっ、じゃあ行くぞ」
戦争で騒がしい廊下から一転、坂本が先導した空き教室付近は静かだ。扉を開けると、清水が立って待っていた。
「来たぞ、清水。約束は守った」
「ええ。確かに。では、最後ですが」
「ああ」
私と事態が分からず困惑している吉井を残し、坂本は教室を出ていく。気配を捉える限り、声の聞こえない場所へ移ったようだ。
「さて、それじゃ、始めましょう」
「えっ?」
「Dクラス清水美春、Fクラス吉井明久へ試召戦争を行います」
教師がいないというのに召喚獣が現れる。
「えっ、なんでって雄二の奴、腕輪を起動させて置いていったな!」
どうやら雄二が普段つけている腕輪の力らしい。その腕輪は机の上に置かれている。これで二人が戦えるようになったというわけか。
「さあ、早くしなさい」
「うっ、さ、
呼び出される吉井の召喚獣。その前にて静かにたたずむ清水の召喚獣。困惑する吉井をよそに、清水は静かに語り始める。
「私は貴男が気に入りません。お姉さまにふさわしいと思いません。まあ、昨日の件については腹が立ちましたが、それでもあなたがお姉さまに誠意を持っていることも知れましたから良しとします」
「えっと、清水さん?」
「ですが、それでも私はやっぱり貴男が嫌いです。お姉さまを泣かせたことに変わりありませんもの。ですがそれでもお姉さまが選んだのは貴男です。だから」
「だ、だから?」
「覚悟しなさい。これは私の八つ当たりですもの」
「ちょっ!?」
清水がにっこり笑うと、その召喚獣も動き出す。吉井の召喚獣が木刀を構えるよりも早く、構えた細身の剣で刺突を繰り出した。
「痛っ! えっ、待って! 八つ当たりって!」
逃げる間もなく清水の召喚獣が吉井の召喚獣を組み伏せる。
「八つ当たりは八つ当たりです。それに痛いのは当然でしょう? お姉さまの痛みと比べれば、精々ちょっとぶつけた程度です」
そこでにこりと清水が笑う。つられて吉井が引き攣った笑みを浮かべる。
「ふふふ」
「ははは……」
清水の笑みが消え、ぎろりと三白眼へ変わる。吉井が青白い顔になり、後ずさりし逃げようとした。
「天誅!!」
「ぎゃぁあああーーーっ!!?」
だが逃げられなかった。
「ふぅ」
綺麗な笑みを浮かべ、清水は額を拭う。その足元では吉井が気を失い転がっている。
「満足したのか?」
「ええ、満足しました。貴男のおかげです」
「なにがだ?」
「あのままでしたら、私はただいやな女になるだけでしたから。お姉さまにふさわしくなくなるところでした」
清水は微笑みを絶やさず続ける。
「私、諦めるつもりはありませんもの」
「……まったく、人間というのは分からないな」
「あら、なにかおっしゃりまして?」
「いや、なんでもないさ」
気絶した吉井を引き摺り、清水が教室へ出ていく。
「そう言えば、貴男」
「ん?」
「そんな風に笑えるのですね」
頬を触ると、笑みの形を作っていた。
「まったく、いやじゃないのが困る」
私は変わっているのだろうか。一瞬、どこかにスキマが開いたような気がした。
急な話ですが、いったんここでバカとテストと幻想獣は終了とします。なんだかぐだぐだになってきてしまったので。読んでいただいた方々には申し訳ありません。応援してくださった方々、ありがとうございました。