【問題4】
以下の文章の( )に正しい言葉を入れなさい。
『光は波であって、( )である』
魂魄妖忌の答え
『直線』
教師のコメント
『確かにそうですが、残念ながら違います』
霧雨魔理沙のコメント
『まあ、最終的にはどんな加速度でも直線となるからな』
D組との戦いで、私は一切の活躍をしなかった。いや、活躍できなかったのならまだ良い。闘う事すらできなかったのはきっと私だけだろう。
「だから、何で貴様は鉛筆を持っていない!? 硯で墨をするな! 和紙じゃないんだ。墨で書かれたら裏までうつる! そして、草書体で書くな! 読める先生が極端に減るんだ!」
ただいま、補習室で西村教諭につきっきりで指導されている。試召戦争の戦場に出たは良いが、召喚した際に、所持点数が零点だったために自動的に戦死扱いになってしまったからだ。
そのあまりの酷い結果にだろう。戦争が終わって、他の組の人たちは帰ったのだが、私だけはさらに補習をすることになってしまった。窓硝子に映る自分の顔を見て、思わずため息をついてしまう。何が悲しくてこんなことをしているのだろうか。
それにしても、数学とは何ぞや? 英語とは? 元素? 陰陽五行説は何処に? 現代文? なぜに文語体ではないのだ?
「ほら、俺の鉛筆と消しゴムを貸してやる。それに、付きっきりで教えてやるから、せめて中学生の問題くらいは解けるようになれ」
「……はい」
結局帰れたのは、酉の刻が終わり、戌の刻になるころにようやく解放された。
……勉学に少し励もう。自分よりも若い者たちに負けるのは悔しい。そう決心して、すっかり夜が更けた道をとぼとぼ気落ちしながら家路についた。
翌日、学校に登校して少しだけほっとした。今日はテストの点数を補充するために、戦争を仕掛けないらしい。正直助かった。昨日は数学で召喚した瞬間戦死したからな。少しでも点数が有れば、戦時はしたとしても戦えないという事はあるまい。
あの後、西村教諭に手渡された復習用“ぷりんと”を徹夜で仕上げた。おかげで、多少は数学や、英語なども知る事が出来た。……お爺様に言われて読み書き算盤を習っておいて良かった。今そう真に思う。でなければ、徹夜での勉強でも間に合わなかったような気がする。
一夜漬けであっても、あれだけ勉強をしたのだ。1点くらいは取れる筈。これで召喚して戦死になる事はなくなり、面目丸つぶれという事はなくなった。
さあ、後は実践で成果を試すだけ。試験を頑張ろう。
何とか午前中の試験を終えた。結果はどうなるかわからないが、それでも依然受けた時よりかは問題が解けた。それだけで、胸のつっかえが少し無くなった。
軽くなった気持ちのまま、私は家から持ってきた昼飯を食べるために屋上へ上がっていく。癖なのか、昼は空が見えている状態でないと、食べた気がしない。何時も白玉楼へ通じる坂道の門の上で食べていたからな。だからか空の下で食べるのが一番落ち着く。午後の試験の為にも英気を養わなければ。そう思っていたが、扉を開けてすぐに後悔した。
「あれ? 魂魄君。君も屋上でご飯を食べに来たの?」
私は一人で食べたかった。そう言いたいが、それを言ってしまえば、不和を招く。そしたら余計私に注目が集まるだろう。何故だかわからないが、私は他の人間からかなり注目されているから、これ以上の注目は避けたい。……仕方がないか。
「ああ、そうだ」
「だったら一緒に食べようよ。今からみんなで食べるから」
うん? 何か様子が可笑しい? それに後ろで倒れているのは土屋か? 熱病にうなされているかのように体全体が震えているが。何が起きた、いったい?
怪しさはあるが、ここでいきなり違う場所へ移るのは不審すぎる。そう思い、渋々彼らの集まりの方へ近づいていく。断るべきか考えたが、会話をしなければ別に良い。そう考えて、結論を彼らに告げる。
「別にかまわないが、特に話すことはないぞ」
「別に良いよ。それより一緒に食べよう」
……怪しい。怪しすぎる。あの笑みは何かの策が成功した時の妖怪の賢者が浮かべる笑みだ。ああいった顔をしている時は、大概何かしかけている。とはいえ、このまま弁当を食べるしかない。警戒しておこう。そう心に書き留め、彼らの輪から少し外れた所に座り、竹の皮で出来た弁当を外していく。中身は握り飯二つにたくあん三つ。
「珍しいのう。古き良き知恵という奴じゃな」
「別にそう珍しいものではないだろうに」
今でも幻想郷ではこれが普通だ。幸い、迷いの竹林から採れる竹はものすごい速度で成長する。幾らとってもなくなることはないから、竹林の一番外側の竹を切って、それを利用して幻想郷では様々なものが作られている、正直言って、外の世界ですぐに捨てられるものと違い、いつまでも使えるので重宝する。まあ、この皮は何処にでも捨てられるというのが重宝される理由だが。
実際今の私でも、竹はいくらでも用意できる。少々疲れるが。自分で用意したため、私の手持ちはほとんど竹でできたものである。
「あん? 何だ、魂魄か」
「坂本か」
考え事をしていたら、坂本が手にたくさんの円柱状の何かを手に抱えてこちらにやってきた。この世界に来てそこらで見た無人販売所の商品のようだ。販売所は使った事がないが、少しだけ名あみの商品には興味がある。
そんな事を考えていたが、気が付いた。今私の座っている場所だと、坂本の通行の邪魔になる事に。少し場所を変えて移動できるようにしてやろう。
「すまんな」
「別にかまわない」
手を顔の前に置きながら、そう言う坂本に対してどうでも良いと感じながらも、一応儀礼的にそう返す。坂本は私のわきを通り、そのまま流れるように、
「へぇー、なかなかうまそうだな。どれ一つ貰うぜ」
姫路が持っていた弁当箱から卵焼きを一つだけつまみ、口に運ぶ。中々綺麗な見た目のそれはしかし、見た目とは裏腹の何かがあったらしい。
坂本が行き成り地面に倒れ、体中を痙攣させている。それは私に一つの結論を導かせるには十分すぎた。何よりも、私は見た。坂本が倒れた瞬間、こちらをちらりと見て仕損じたという顔をした吉井の顔を。
それからすぐに視線で会話をしながら、彼奴らは次なる犠牲者を決めようとしている。早く逃げなければ……! 下手をすれば私も――
「よろしかったら、おひとついかがですか」
しまった! 逃げ遅れた!
拙い。此処で断るのはできる。だが、姫時の後ろにいる吉井達がそうはさせない。その顔は黒い笑みを浮かべてこちらを見ている。
(もちろん、断らないよね?)
(ック! 罠だったか!)
後悔した時にはもう遅かった。逃げ道はふさがれた。……ならば覚悟を決めるしかないか。
「一つ、……頂こう」
「ハイ! 自信作なんですよ」
つまんだのは鳥の揚げ物。油で揚げるそれは、他の料理より複雑な味付けを必要としない。精々下味をつける程度。ならば、味はほかの料理と比べても大丈夫なはずだ。
一体何があるというのだ。見た目は普通だ。そう、普通なのだ。だがそれは先ほどの卵焼きにも言える事。卵焼きを食べた坂本は倒れた。ならば私もそうなるのか? いや、私は大丈夫なはずだ。
つまんだものを口に恐る恐る放り込む。口に入れた瞬間、グサグサと衣が口内を傷つけ、噛み切った鶏肉の中からどろりとした液状の、しびれる痛みが舌に感じられる。しかも、先ほどの傷に染みる。
まさか彼奴以外にこれほどまずい料理を作るものがいるとは! だが、だがこの程度で
(どう見る、秀吉?)
(見る限り、雄二達ほどの状態ではないの。あの顔は先ほどと殆ど変っておらん。もしかしたら、二人の反応が大げさすぎたのかもしれんぞ?)
(ば、莫迦な!? アレを食って倒れないだと!!?)
ハッ! しまった! 驚きの余り、我を失っていた! 吉井達を止めようと顔をそちらに向けたが、既に二人とも料理をそれぞれつまんでおり、口に入れかけていた。
「ま――」
「「いただきます(じゃ)」」
「て……」
遅かった。
食べた二人は冷たい石床に倒れて白目を剥き、がくがくと体を痙攣させている。
「お二人ともどうしたんです?」
いや、お前がやったんだ。そう言いたくなってしまったが、伝えるのは酷というものだろう。口角が引くつくのを自覚しながら、私は笑い続けるしかできなかった。
妖灯既にポイズンクッキングには耐性持ちです。昔、何度も似たような味を食べ続けた経験があるのです。
また、今作での妖灯の学力は、得意科目以外は明久以下です。
今回の幻想郷見聞録
迷いの竹林 竹林。しかし、その実態は竹林で片付けて良いものではない。常に異常な速度で成長する竹の所為で、方向感覚と現在地が分からなくなり、迷ってしまうという恐ろしい竹林。