???「本当に、すまな たな 。お前の て…」
何を話ているのかよく聞き取れない。
???「でも、もう自由だ」
自由? 彼は言葉を出せない自分の疑問に答えた。
???「ああ。これがお前にしてやれる、俺にできる最後の」
彼の言葉を遮るように何者かが声を上げる。
「いたぞ!!エリア0034-aだ!」
???「やべぇな。最悪、 か」
やっぱりよく聞き取れない。
???「大丈夫だ。きっと、お前は助かる。
最後ついでに一つだけ俺と約束してくれ」
非常音が鳴り響く中、その言葉だけはクリアだった。
???「お前のその力は何かを守る時だけしか使うな」
最期まで、彼は笑っていた。
???「覚えておいてくれ。
これから教えるのは、魔法の呪文だ」
ハジマリ
「さあ、始めようぜ」
ツインテールの少女は
電気ねずみが発する謎のプレッシャーにたじろいでいた。
少女(って、そもそもなんで普通に喋ってんのよ?こいつ)
ポケットモンスター(略してポケモン)は
この世界に突如現れた新種の生物である。
地球に存在するあらゆる生き物とは一線を画すものであり
宇宙の生命ではないかと唱える人もいる。
日夜研究・調査が行われ、現在では人と共存しているものや
野生で暮らすものも現れた。
ちなみに、ポケモンは人の言葉を話す事は出来ない。
しかし、極稀に例外が存在するらしい。
風の噂によると、人の言葉を
居るとか、居ないとか。
少女「まぁ、いいわ。いって、サンド」
少女は、鞄から小型のボール(通称モンスターボール)
を取り出して空中に投げた。
するとボールからアルマジロのようなモンスターが現れる。
近年、全てのポケモンはこの手のひらサイズのボールで
捕獲することが可能となった。
このボールはポケットの中に入る程度のもの。
つまり、ポケットに入ってしまうモンスター。
つなげて、ポケットモンスター。
これがポケモンの名前の由来である。
捕獲されたポケモンは捕獲した主人の言うことを聞くようになる。
そして、ポケモンは他のポケモンと戦うことで
成長し姿を変える(これを進化という)
ことが明らかになると人々は、こぞってポケモンを
捕獲し、戦わせ、育成するようになる。
いつしかそんな彼らを総称し
ポケモントレーナーと呼ぶようになった。
だが、ポケモンの捕獲は危険も伴うため
12歳以上である事が条件として法律で定められた。
更に、トレーナー同士がポケモンを戦わせ、競い合う競技が生まれる。
それが、ポケモンバトルだ。
国は、この流れに乗り各地に戦わせる場を設けた。
強さの証を認定するポケモンジムなどがそれに該当する。
各地の王者を決める大会も開かれ、かなりの賑わいをみせる。
そのため、この世界は好景気が続いている。
ポケモンの出現により、資源不足、エネルギー不足が解消されたのも大きい。
さて、そろそろ話を戻そう。
所詮は電気ねずみ。
こちらは、電気技は一切効果がない地面タイプのサンド。
何もできはしないと少女はたかをくくる。
ピカチュウ(以降の表記『ぴ』)
「決闘!!」
ピカチュウは草村から何かの機械を取り出し、左手に装着した。
機械には、黒い魔術師や碧い眼の龍のようなカードが並んでいる。
トゥルルルルル、カチッ LP(HP4000
少女「HP4000!?」
ぴ「あっ、悪ぃ。間違えた」
ピカチュウは頭をかきながら、機械を草村に戻した。
補足すると、HP(ヒットポイント)とはポケモンの体力だ。
これが0になると、瀕死になり戦闘できなくなる。
強いポケモンでもだいたい3ケタが相場である。
少女「(HP4000とか、ただのチートじゃない)
相性は断然有利なんだから!
これで、あんたのその減らず口も…」
ぴ「ふっ、そいつはどうかな?」
そう言うと、ピカチュウは草村から先程とは違う機械を取り出す。
その機械には12とナンバリングがなされていた。
少女「何よ、それ?」
ぴ「深緑より現れ出でよ!技マシンNo.12、水鉄砲」
少女「さっきから、どこの遊○王よ。
……あんた、覚えられないんじゃなかったかしら?」
ぴ「俺は不可能を可能に…」
ぼんっ!と音を立て技マシンが爆発する。
しかし、爆発の中からピカチュウの金色のシルエットが-
ぴ「俺はもう何処にも行かない!」
少女「ムゥー!!
(はっ、ついのってしまった。
って、さりげにそこらへんで売ってる水鉄砲(金色)装備してるし)
ぴ「目標を、狙い打つぜぇ!!」
少女「兄か弟かわからないじゃない!
……じゃなかった。
ちょっと、それやめなさいってば。無駄に威力強いし」
地面タイプのモンスターは電気技は効かないのだが、
水タイプの技に非常に弱いのだ。
水鉄砲の連射でみるみるうちにサンドはHPを削られ
戦闘不能になってしまった。
決闘もといバトルは、ピカチュウの勝利に終った。
野生のポケモンとのバトルなら、このまま
ポケモンセンターに非難するところだが
この場合トレーナー同士のバトルに分類されるのだろうか。
ぴ「取引しないか?
これが成立するなら、報酬はなくていいぜ」
どうやらトレーナーバトルになるらしい。
トレーナー同士の場合、金銭のやりとりがなされる。
敗者は勝者に所持金の3分1を渡すのが通例となっている。
前述した通り、好景気なので貧困者はほぼおらず
国もこのような賭事にオープンなのだ。
少女「取引?」
ぴ「そうだ。俺を連れていけ」
少女は聞き間違いかと思ったが、確かにそう聞こえた。
少女「………。それでいいの?」
ぴ「俺はポケモンマスターにならないといけないからな」
各町のポケモンジムを制覇し、ジムバッジを8個以上集めた者は
チャンピオンを決める大会【ポケモンリーグ】に出場可能となる。
大会では、四天王と呼ばれる4人の強者とチャンピオンに挑戦することができ
これに勝つと晴れてポケモンマスターの称号が与えられるのだ。
ポケモンマスターになると、国から様々なサポートを受けられるようになる。
税金の免除や、生活給付金の支給。
危険な高レベルモンスターがいる場所の探索・調査の許可など。
他にもあるのだが、ここでは割愛する。
少女「あんた、ポケモンでしょ?」
ぴ「それなんだ。
俺がチャンピオンに勝っても、マスターに承認されないか もしれない。
まあ、ポケモンだからな。
けど、お前が俺のトレーナーという事実があればお前が承認されるだろ。
戦うのは俺だし、俺もお前もポケモンマスターで一石二鳥」
少女は自分の目的とは異なるが、各地を回れるなら
別に損になることもないと思った。
少女「あんたがそれでいいなら私は別に構わないけど。
負けたのは私だしね」
ぴ「よし、取引成立だ。よろしくな。えっと、」
少女「私は、
ぴ「んじゃ、雛だな。 俺は言うまでもなく国民的アイドルのピカチュウだ」
ピカチュウは胸をはって言いきった。
雛乃(以降の表記『雛』)
「むぅ、なんか、なれなれしいわね。
別に好きに呼んでもらって構わないけど」
(不思議なピカチュウね。まるで…)
かくして、ピカチュウとツンデレ少女の旅が始まるのだった。
【挿絵表示】