自身の水で満たされた床底でもろに受け、戦闘不能状態に陥っ た。
ぴ「ふぅ、ここまでは上手くいったな」
フシギダネのツルの助けを借りて、ピカチュウが床底から戻ってきた。
か、肩で息をしている。 流石に3匹を相手に戦った疲労がでているようだ。
雛「ちょっと、あんた大丈夫なの?」
ぴ「ん、デレるのはまだ早いぜ?」
雛「あんたねぇ…。そんなこと言ってると心配してあげないわよ」
ぴ「今のやりとりで、ご飯3杯は余裕だ」
呆れ果てる雛をよそに、ピカチュウはプテラに視線を合わせた。
ここまでは、ピカチュウのこそこそ作戦
(カブトプス、オムスターを先に罠にかけ戦闘不能にし、プテラと1対1に持ち込む)
通りだったが、戦闘による疲労が予測を上回っていた。
ぴ「ラストバトルだな」
ピカチュウとプテラの戦闘は消耗戦となった。
相性で言えば電気タイプのピカチュウが有利だが、
(プテラのタイプは岩・飛行。電気タイプは水の他に飛行タイプにも強い)
体力が残り少ないピカチュウは慎重に戦わざるをえない。
ぴ「あいつ、まだ一発隠してるな」
ピカチュウはプテラが何かを狙っていることに気付いた。
隙あらば打ち込まれるそれは必殺の一撃になるだろう。
フシギダネとサンドはプテラの攻撃を一度でも喰らうと、
ほぼ瀕死級のダメージとなってしまうので待機中。
プテラは上空から獲物を狙うようにその翼で攻撃してくる。
ピカチュウは避けながら電撃で応戦。
プテラの何回目の攻撃だっただろうか、
ピカチュウは足を瓦礫に取られ隙を生んだ。
プテラはその隙を見逃さず、態勢を崩したピカチュウ目がけ急降下。
頭から突進し、ピカチュウを壁際へ追い込むと
密着状態でプテラは口を開き、異常なエネルギーを溜め込みはじめた。
ぴ「こいつッ!」
雛「ピカチュウ!?」
次の瞬間、辺りは閃光につつまれた。
光が消えた後、プテラは上空に舞い戻る。
そこには、体力の限界を迎えた地面に横たるピカチュウだけが残った。
雛「………………嘘でしょ?」
雛の言葉は虚空にかき消える。
【挿絵表示】
雛「ちょ、ちょっと、しっかりしなさいよ?」
力なく横たわるピカチュウを抱え上げて声をかけるが
一向に返事は返ってこない。
上空からの風を切る音に雛は我に帰った。
プテラが最後の獲物を狙っているのだ。
雛(ここは、えっと、とりあえず逃げないと。
ああ、でもあんなのから逃げられるの?
もぅ、しっかりしなさい。私。
息を落ちつける。
冷静さを取り戻す。
KOOLになれ、藍川雛乃……………
って駄目よCOOLじゃないと!)
雛は錯乱状態に陥りつつも、ピカチュウを抱えて逃げている。
先程の高威力の攻撃の反動であろうか、
プテラは今のところ追撃はしてこないようだ。
だが、一度でも雛が攻撃を受ければ致命傷になりかねない。
雛は瓦礫で出来た隙間を見つけると、そこに身を潜めた。
雛「ここなら、少しは安全か…」
走っている間に多少の冷静さを取り戻していた。
雛(とりあえず、この博物館から出ないと。
私の手持ちは、フシギダネとサンド。むぅ・・・)
手持ちのポケモンたちで、この窮地を脱する策を巡らせる。
プテラを倒すに至らずとも、博物館を抜け出せれば助けを呼べるはずだ。
一方、上空のプテラは獲物が隠れている瓦礫を壊そうと
ところ構わずに突進を繰り返していた。
本来であれば、この突進は反動による自身へのダメージがあるので、
連続で使えるものではない。
しかし、プテラは頑丈な頭故にダメージを軽減し連発できるのだ。
隠れていた瓦礫が壊れる前に雛は抜け出し、プテラに向き直った。
雛「こういうの嫌いなんだけどな…」
独り言を洩らして雛は構える。
上空にいるプテラに向かってモンスターボールを投げつけた。
ボールの球威から見て届かないことを視認すると、反撃の体制に入る。
投げられたボールから途中でサンドが現れた。
プテラは相手が飛べないこと確認すると、攻撃を行う姿勢に移る。
だが、その後のサンドの予想外の行動に動きを止めてしまった。
なんと、サンドがモンスターボールを投げてきたのだ。
無理矢理に体制を変え回避。
モンスターボールで捕まえる作戦ならばかわせば問題ないと看破する。
わずかな距離でモンスターボールをかわすことに成功した。
が、再びプテラの予想は裏切られることとなった。
捕獲用と思ってたそのボールから、フシギダネが現れたからだ。
雛「私の剃刀は二枚刃なのよ」
どこかの荒野の魔術師のような台詞を言いつつ、
雛は出口を目指して駆け出した。
フシギダネは、プテラに取り付き体力を奪っている。
サンドはフシギダネが降り落とされれば、
モンスターボールに回収し逃げるよう指示されていた。
穴を掘って地中を移動していれば、プテラの攻撃も届かない。
(サンドの攻撃も当然届かないが)
雛(トレーナー失格だよ。ポケモンおいて逃げるなんて。
全く、あんたのせいなんだからね)
衰弱しているピカチュウを心配しつつ出口へ向かっている。
出口まで、距離は約100m。抜け出して、助けを求めればいい。
騒ぎから20分は経過しているだろうか。あるいは5分かもしれない。
時間経過がどうであれ、騒ぎを聞き付けた
警察かポケモンジムの人が来ているはず。
あとは専門の人間に任せれば私たちの勝ちなんだから。
出口まで、 あと50m……。
あと30m…。
出口はすぐそこだった。
陥没した床から這いだすものがあった。
戦闘不能になったかと思われたオムスターである。
残り僅かの体力だが、まだ動けるようだ。
標的を見つけ、最後の攻撃体制に入る。
自らの貝殻の棘を標的めがけ射出した……。
あと、20m。
雛は、ふと違和感を感じ取った。 空を切る音が聞こえる。
振り向くと、眼前に迫る、棘の刃―。
歪んだ時間の中、最期を悟る。