とある魔眼の概念殺し《完結》   作:黒須 紅

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一人称を『吾』から『オレ』に変更しました。

それではお楽しみください。


第九話 偽者の錬金術師

上条当麻が姫神秋沙と出会っていた頃、ステイル=マグヌスは『グレゴリオの聖歌隊』の『核』を破壊していた。

コンクリートの壁で隠す、なるほどそれは確かにこの『表』と『裏』であれば絶大な効果を発揮するだろう。

しかし、ステイルが操るものは形の無い『炎』だ。隙間さえあればそこに『炎』を押し流すことができる。コンクリートの壁で隠すには相手が悪かったのだ。

ステイル相手に対する『鉄壁の防御』が欲しいのならば隙間ができない物に入れておけばよかったのだから。

コレが上条当麻であったなら核を『魔眼』によって殺されていただろうが。

 

「血路とは、かの錬金術師も歪んだようだ」

 

彼は加えたタバコが肺に流し込んでいる煙をため息と共に吐き出す。自身に人間らしい感情がまだ残っていたことに少し驚きを感じながら。

 

「血路とは他人ではなく自身を切り開いて作るものだろうに」

 

基本的には、『原石』であろうと『超能力者』に『魔術』は使えない。『吸血殺し』や『正体不明』のように自身の力が何らかの形で目に見える形で発現している者では『魔術師』の『回路』と超能力者の力を『送信』する『回路』がショートするためである。逆に絶対に認識できない『脳の回路の受信』という形の超能力であれば魔術も使えるわけだが。

そのため超能力者が無理に魔術を使うと魔力が全身の神経と血管をズタズタにしてしまう。ちょうど彼の足元にも何人もの人間であった『モノ』が倒れ付している。何所からか漂ってくる鉄の臭いからするとそこらへんの部屋にはもっと凄惨な光景が待っているだろう。

そこで彼の耳は廊下に響く足音を捕らえた。

 

「自然、『偽・聖歌隊』を使えばどこに居ようとおびき出せると思っていた」

 

足音は止まらず、その主はついに姿を現す。

緑の髪をオールバックにし、白いスーツを着た男―アウレオルス=イザードが存在していた。

 

「当然、侵入者は二人だったはずだが……もう一人はどうした、貴様の使い魔は呑まれたか」

 

アウレオルスの言葉に心底おかしそうに笑いながら、アウレオルスを嗤う。

 

「呑まれる?呑まれるだって!?」

 

彼は瞳に涙を浮かべ、腹を押さえてアウレオルスを嗤う。

 

「彼はあんなチンケな攻撃じゃかすり傷一つ負わないだろうし、使い魔なんて生易しいものでもない」

 

アウレオルスは戯言と思い、ステイルの言葉を流す。

 

「コレは忠告だ、覚えておくといいさ錬金術師。アレは純粋な『死』でありそれ以外の何者でもない。油断していると」

 

―殺されるぞ―

 

そう言ったステイルはアウレオルスに言い放つ。

 

「君ごときじゃ何十の魔道具に身を包もうと、三秒と持たないさ骨董屋」

 

「……」

 

骨董屋それはアウレオルスにとっての禁句であり、二人の戦いの合図だった。

 

「厳然、貴様―ッ」

 

金の鏃が弾丸のごとくステイルに襲い掛かった。

 

――――

 

「見た目が派手なだけ、手当てすれば平気」

 

一方その頃姫神と上条は先ほどの女生徒の怪我を見ていた。

 

「そうか、じゃあ手当て頼む」

 

上条に応急処置などのスキルは存在しない。上条の『業』は敵を闇に葬り、『魔眼』は魂ごと殺すため、破壊はできても修理ができないのだ。

傷つけるための技術しか持たない『七夜』らしいといえばらしいのだが……

 

「手伝って」

 

「了解」

 

そこからは医者や看護婦、救急隊員などと同じような作業だった。

的確な処置で少女を止血し、傷口をふさぐ。それだけでも少女は命が助かった。

 

「これでおしまい」

 

その言葉を聞いた上条は姫神に言う。

 

「じゃあ、救急車呼んで、帰ろうぜ。俺たちも」

 

何十の人間が死んでいるであろう、この建物の中で一人の人間を救った。たったそれだけのことだが、確かな充実感を上条に与えた。

そして、自身がここに来た理由である姫神の救出を果たそうとしていた。

しかし、一つの『モノ』がその邪魔をする。

 

「くそが。断然、何だこの重さはたかが材料の分際で私の足を引っ張るか」

 

憎悪、激怒そのような負の感情で構成された言葉が上条たちの耳に入ってくる。

 

「貴様なぜ『此処』に居る。

貴様もコチラの人間……あの炎の仲間か!!」

 

アウレオルス=イザードが六人ほどの生徒を引きずって歩いていた。

ソレを見た姫神が表情を変えずに呟く。

 

「かわいそう」

 

その一言で錬金術師の動きが止まった。

 

「気付かなければアウレオルス=イザードのままで居れたのに」

 

そう、このアウレオルスは偽者。ステイルに体を焼かれ左腕及び左脚を消失した哀れな人形でしかなかった。

 

「き、きさまぁ!!」

 

姫神の言葉を聴いたアウレオルスは叫びながら金の鏃を姫神に射出する。

彼が引きずっていた六人の生徒を貫きながら姫神の眉間に迫り、

 

肉を貫いた音が聞こえた。

 

姫神が支えていた少女が姫神を守るように手のひらを盾にしていた。

もう片方の手で力の限り姫神を押して、

少女の肉体はどろどろの液体へ変わった。

六人の生徒と名も知らぬ少女一瞬にしてが高熱により溶けた『金』へと変化する。

それはアウレオルスが触れてはならない『逆鱗』に触れたことを意味していた。

絶対零度の声が響く。

 

「関係の無い人間を巻き込むなよ。アンタも一応、プロのプレイヤーだろう?」

 

眼鏡を外し自らの得物を手にした『死神』がそこに居た。

その言葉を詰まらなさそうに聞いたアウレオルスは金の鏃を射出する。そして鏃は当たる直前で彼の持つナイフによって弾かれる。

 

「いきなりかよ……まぁいいか。アンタのその首、吾が貰い受ける」

 

アウレオルスが射出した金の鏃が四方八方上下左右から上条に迫る。対する上条はナイフ―七ツ夜を右手で逆手に握り、構えてすらいない。

 

「危ないッ」

 

「当然、絶命」

 

姫神が叫びアウレオルスが勝利を確信する。そして、上条の姿が消える。

 

「フハハハハハ!!自然貴様程度では話にならん」

 

高笑いしながらアウレオルスは上条を罵倒する。

しかしアウレオルスは気付いていない。上条の居た場所に『金』が存在しないことに。

 

「あの程度でオレが死んだだと?冗談も大概にしてくれ」

 

「―なッ」

 

振り向いた先には傷一つ無い上条の姿があった。

再度金の鏃を射出するが上条は天井に着地し当たらない。

 

――閃走・水月――

 

彼が体に覚えこませた『七夜の業』の初歩も初歩。0から100の加速を行う歩法である。

天井から地面に降りた上条は宣言する。この狭い空間は自身のテリトリーだと。

 

「吾は面影糸を巣とする蜘蛛―ようこそ、このすばらしき惨殺空間へ」

 

――閃走・水月――

 

常人なら捕らえきれぬ急加速によってアウレオルスの目前まで移動する上条。

その蒼い瞳に先ほどのステイルの言葉を思い出す。

 

『アレは純粋な『死』でありそれ以外の何者でもない。油断していると』

 

「殺されるッ!!」

 

「お前はやりすぎた―よって、斬刑に処す」

 

――閃鞘・八点衝――

 

人間の限界点まで鍛えられた肉体を使用した、0から100への加速を用いての前方への斬撃の乱れ打ち。

上条の持つ七ツ夜はアウレオルスの身体のいたるところを切り裂いた。

その結果、アウレオルスは滝のように血を流し、倒れた場所に血の湖を作った。

アウレオルスは確認するまでもなく絶命していた。

 

「その魂、極彩と散るがいい。せめて毒々しい輝きならば、誘蛾の役割は果たせるだろう」

 

七ツ夜を振るい血を落とし、眼鏡をかけ七ツ夜をしまう。

蒼かった瞳が黒に戻り、殺気は嘘のように消え去った。

 

「しっかし、下手だな、どうも」

 

『死神』は『巫女』に微笑んだ。

そのときだ、急に人ひとり分の気配が現れた。

 

「ふむ、貴様も侵入者か。禁書目録の扱いだけで手一杯なのだがな」

 

突然現れた気配の原因の男性は何気なく呟く。

気絶した禁書目録を両の手で支えて。

それに気付いた上条が振り向こうとすると、男性は首に鍼を刺して言い放つ。

 

「動くな、少年」

 

その一言で上条当麻は動くことを禁じられる。

見えない手で押さえつけられるかのように動くことができない。

 

「案ずるな殺しはしない」

 

そう言った男性は首に鍼を刺して先ほどのように違うことを言い放つ。

 

「ここで起きたことは全て忘れろ」

 

その一言で上条の意識はブラックアウトした。

最後に見えた姫神の無表情を瞳に焼き付けて。

上条当麻の、完全無欠に『敗北』だった。

夕焼けがビルの中を紅く染めていた。




えーなんとかあげることができました、最新話。
文化祭とかどうでもいいわ!!コレを書く時間をよこせ!!
そんな感じです。
感想、ご意見お送りください。
では、また次回。Have a good day
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