とある魔眼の概念殺し《完結》   作:黒須 紅

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第10話 追い求めた先に

上条当麻は公園のベンチで目が覚めた。

しかし彼にはなぜ自分がここに居るのかが思い出せない。それどころかここ半日分の記憶が存在しない。

 

「キミも何でここにいるのか分からないのかい?」

 

その声に振り向くと知り合いである『魔術師』ステイル=マグヌスがブランコに腰掛けていた。

 

「君が居るという事は学園都市なんだろうけど、なんで僕は日本に居るんだろうか」

 

その言葉に上条は一つの可能性にたどり着く。

上条は自身の頭を触る。『幻想殺し』をonにした状態で。

 

「ッ!!そういうことかよ」

 

ガラスが砕け散るような音と共に上条は全てを思い出す。

三沢塾に潜入したことも、

少女が姫神を庇い溶けた金になったことも、

アウレオルスの偽者を殺したことも、

そして――インデックスが本物のアウレオルスに連れ去られたとこも。

 

「ステイルちょっとこっちに来い」

 

ステイルは首をかしげながら大人しく上条の前に歩いてくる。

 

「どうかしたのかい?」

 

「さっさと思い出せ、インデックスが危ない」

 

ステイルの頭に右手で触り、同時に『三沢塾』へと走り出す。

上条の顔から、眼鏡はすでに外れていた。

 

――――

 

三沢塾周辺には人が存在していなかった。

―払い―

その名の通り人がその空間に近寄らなくする魔術だ。

そして三沢塾の周りには誰も居ない、わけではなく時代錯誤の騎士甲冑に身を包んだ集団が、何かを呪文のように唱えながら『三沢塾』を包囲していた。

 

「まさか―『グレゴリオの聖歌隊』を使うつもりか!!」

 

否―それはまさしく呪文だった。三沢塾を灰へと変える、儀式魔術。

止めようとした上条の足に何かが当たった。

それは―インデックスの帽子だった。

それに上条が気を取られた瞬間、ラッパのような音が夜の空へと鳴り響き、

 

世界から音が消えた。

 

『三沢塾』が魔術に呑まれ、灰にとなり、撒き戻すように元へ戻った。

騎士団の連中は地面に座り込み絶望を隠しもしない。

無理からぬことだろう、自分達が絶対の信頼を置いていた『切り札』が無効化されたのだから。

 

「覚えておけ上条当麻」

 

上条が横を見ると、苦虫を噛み潰したかのような表情でステイルが呟いていた。

 

「アレが世界中の錬金術師が挑み、破れ、絶望し、諦めたもの」

 

否―どこか恐れるかのような表情でステイルは口を開く。考えうる限り最も最悪の可能性を言葉に乗せて。

 

「アレが僕たちの敵―『アルス・マグナ』だ」

 

その言葉と共に吐き出した紫煙が、宙に消えた。

 

――――

 

「実を言うとね」

 

アウレオルスの元へと急ぐステイルが唐突に語りだす。

 

「アウレオルスは僕であり、君でもあるんだよ」

 

「なに?どういうことだ」

 

長い廊下を疾走しつつ上条もその言葉に反応する。

 

「そのままさ、奴はインデックスのパートナーだった男だ」

 

かつて彼女のそばには先生になろうとしたものが居た。友に、親に、恋人になろうとして、そして失敗した。

 

「馬鹿な男だよ、おそらくアイツは記憶を元に戻そうとしているんだ」

 

「だからさ、上条当麻」

 

タバコの煙を肺へと流し込み、ステイルは言う。

 

「教えてやってくれ、奴にインデックスは救えないことを」

 

もうアウレオルスの居る部屋は目の前だった。

上条はステイルに何も言わずに扉を開いた。

 

――――

 

「これまでのインデックスは脳の処理量が多すぎたせいで一年おきに記憶を消さねばならなかった」

 

彼等が部屋に入るとそこには三人の人間が居た。

 

『吸血殺し』姫神秋沙

『錬金術師』アウレオルス=イザード

『禁書目録』インデックス

 

錬金術師は語り続ける。

 

「人間の脳では処理できない、ならば」

 

「人間以外にすれば良いってことかな?」

 

ステイルが忌々しげに呟く。アウレオルスはどこか狂ったような笑みを浮かべ言葉を続ける。

 

「その通りだ。奴等は膨大な時間を生きている、その全てを記憶しているのだから」

 

―脳の処理能力を底上げする方法も知っている筈だ―

 

その言葉を聴いたステイルは皮肉気に嗤って上条に視線を送る。

そしてここで初めて上条は口を開く。

 

「いったい何時の話をしてるんだ、アンタ」

 

その言葉にアウレオルスは固まる。

ソレを見たステイルは嗤いながらアウレオルスに言葉をかける。

 

「三年間も地下にこもってたキミには知る由もなかったと思うけど、その子はもう救われている」

 

その瞳に絶望が宿るのを見てもステイルは言葉を続ける。

 

「キミの三年間は無駄だったと言うわけだだけど安心してくれ」

 

アウレオルスが後ずさる。それでもステイルは言葉を止めない。

 

「君が望んだとおり、その子は今、今代のパートナーと一緒で幸せそうだ」

 

錬金術師は言葉を発することができない。糸の切れた人形のようにインデックスを見つめる。

そして首に針を刺し、上条とステイルに言い放った。

 

「倒れ伏せ、侵入者ども!!」

 

その言葉と共に上条の瞳は自身の上から迫る『水』を見た。その『水』に体を押さえつけられる。

目の前の錬金術師は首筋に針を突き刺し、口を

 

「待って」

 

開く前に、姫神が二人を庇うように立ちふさがる。

だが、目的の達成が不可能になった今、錬金術師が道具を必要とするはずもない。

 

「邪魔だ女」

 

錬金術師が口を開いた瞬間、上条は自身の上にある『水』に触れる。

 

「死ね」

 

錬金術師の言葉と共に上条は駆け出した。

幻想殺しをonにして、姫神に触れる。

姫神が息を吹き返したしたところを見ると、錬金術師を睨みつけた。

 

「馬鹿な、我が秘術を破るとは、貴様何をした!!」

 

「うるさいな、黙れよ」

 

上条は魔眼の出力を最大まで上げて、錬金術師を睨みつける。

 

「殺すだの死ねだのそんな簡単にいう事場じゃないだろう?それとも自分は死ぬわけがないとでも思っているのか?世界はこんなにも『死』に満ちているのに」

 

右手に七ツ夜を逆手に持ち、錬金術師に言い放つ。

 

「オレがモノを殺すってことを教えてやるよ」

 

戦いの火蓋が切って落とされた。




えーまず、『水』と言うのは比喩表現です。イメージとしてはスライムを想像してください。

数々のご指摘ありがとうございました。この作品は後、二、三話で、終了となります。ありがとうございました。
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