第三話お楽しみを
ここは某アパートにある小萌の部屋。
「上条ちゃん」
真剣な声で、名を呼ばれ彼は振り向く。
「なんですか小萌先生」
眠そうに彼は返す。彼は疲れているのだ。一日で二度も魔眼をスペックギリギリまで使い、七夜の業も使った。そのため小萌の部屋に入った途端倒れるように眠りについたのだが、小柄な担当によって起こされてしまった。
「あのシスターちゃんはいったい誰なんですか?」
その質問に彼は嘘で返す。
「言ったじゃないですか、知り合いです」
だが、その程度で騙されてくれる人じゃない。
「言い訳はいいです!上条ちゃん」
「先生」
だから彼も真剣に返す。
「コレはこっちの事情なんです。先生には『魔術』の借りもあるから巻き込みたくないんです。だからなにも聞かないで居てくれませんか?」
上条の言葉を聴いた小萌は(少し赤くなりつつ)頬を膨らませて立ち上がった。
「もういいです。今から先生は買い物に言ってくるので帰ってきたらちゃんと話してくださいよ?」
そういって部屋から出て行った。上条はインデックスの方を見る。
「これでよかったんだよな」
「うん。もうこれ以上あの人には魔術を使わせないほうがいいからね」
そうこの世界の『魔術』は彼の師の世界の『魔術』と違い、世界と異なる常識『異常識』と違える法則『違法則』とゆう、世界にとっての毒でできている。魔術師等と違い、一般人では、二度も使えば確実に発狂してしまう。
「で、インデックス。お前があいつらに追われてる理由、話してもらおうか」
「……ねぇとうま本当に私が抱えてる事情聞きたい?」
悲痛な声の彼女の目を見て上条は言う。
「あぁ教えてくれインデックス」
彼女は話し始めた。罪を懺悔する罪人のように。
――――
彼女の話は宗教が分かれた原因から始まった。それぞれが独自に変化していった宗教は、全てが違う特性を得た。
ロシア成教は『非現実の検閲と削除』を
ローマ正教は『世界の管理と運営』をそして……
インデックスが所属するイギリス清教は、魔女狩りや異端狩り、宗教裁判などの『対魔術』とゆう特性を。
そしてイギリス清教にはいつしか特別な部署がつくられた。
その名は『必要悪の教会』毒をもって毒を制す。その思想で作られた、魔術とゆう『汚れ』を一点に引き受ける組織。そしてその際たるものが……
「私の中にある十万三千冊の魔道書の原典なんだ」
そう、その中にある本は核兵器と変わらない。
「私の中の魔道書は、全て使えば世界の法則も捻じ曲げることができるから」
だからこそインデックスは狙われる。彼女の頭にある『爆弾』が欲しいから。
――――
そこまで聞いて上条は口を開いた。
「まったく、その程度かよ。心配して損したぜ」
「えっ……?」
おびえていたインデックスがあっけに取られる。ソレもそうだろう。なぜなら今上条は世界を捻じ曲げることができる力をその程度扱いしたのだから。
「お前の話を聞いてばっかりじゃ悪いな、俺の目について教えてやる」
そう、彼には関係ないのだ。いくら世界を捻じ曲げるほどの力でも、『殺せば』問題ないのだから。
「この目の名前は『直死の魔眼』っつてな。どこぞの死を与える神様と同質の魔眼だ」
インデックスは開いた口が治らないようだ。それはそうだろう。『神の子』と身体的特徴が似ているだけでありえない力を持つのに、あろうことか目の前の少年は神と同じ目を持っていると言い出したのだから。
「効果は簡単。あらゆるモノの死が線と点になって見える。だから安心しろインデックス」
この言葉に我に帰るインデックス。
「存在するなら神様だって殺してみせる。だから、魔術師程度には負けねぇよ」
その言葉にインデックスは安心し、涙を流しながら上条に抱きついた。
――――
互いの秘密を打ち明け翌日の夜。上条とインデックスは銭湯に向かっていた。
「コーヒー牛乳ってゆうのがあるんだよね、とうま!」
「あぁ奢ってやるから少し落ち着け、インデックス」
などと離している間に、銭湯の前まで来た。
「じゃあ先に行くね、とうま」
走って中に入っていった。よっぽど楽しみだったのだろう。それではこちらも、用を済ませに行くとしよう。
「ご丁寧に人払いをかけてくれるとは、相手も準備が良い」
眼鏡を外して駆け出した。
――――
「良い月夜だ、こんな日は殺し合うのにちょうど良い」
上条が眼前の相手に対して言う。それに相手は答えない。
「あの子と縁を切れ、といったはずですが」
「強制じゃないだろう?なら関係のないことだ」
オーバーリアクション気味に肩をすくめる上条。相対するは―聖人・神裂火織
「そうですか、では少し痛い目を見てもらいます」
――七閃――
ソレを彼は、七ツ夜で切り裂く。が、
「なに!?」
魔術による炎が上条に迫る。それを点を突く事で消し、横に移動する。
「魔術も併用してきたか。だがオレには聞かないことは見てのとおりだが」
「貴方は、いったい何をしたのですか?炎がなぜナイフで消せるのです?」
もっともな疑問だろう。だが言っても理解できないだろう。この景色は同じ『直死の魔眼』を持つものしか解らない。嗚呼
地面は無いにも等しくて、空は今にも落ちてきそうだ。
「なに、コレで突いただけだ。特別なことは何も。しかし良いのか?」
上条の言葉に疑問で返す神裂。
「何がですか?」
「こちらの準備は整ったぞ?」
――閃走・水月――
神裂の視界から上条の姿が消える。
「斬刑に処す」
後ろから聞こえた声に神裂は、上条の姿を確認せず全力で前に転がる。
――閃鞘・八点衝――
神裂が居た場所をあらゆる方向からの斬撃が襲う。
「へぇ今のを避けるか、普通の人間ならアレで死んでるんだがな」
嗤いながらも、上条は攻撃を緩めない。上条は姿勢をクラウチングスタートのように低くする。と、同時に上条の姿が消える。と同時に神裂がしゃがむ。
――閃鞘・七夜――
先ほどまで神裂の首があった部分をナイフの刃が通り過ぎる。が、しゃがんだのは間違いだった。上条はその体制から、とび蹴りを放つ。
――閃走・六魚――
蹴り上げられた後に、踵落としをくらい、地面に倒れる神裂。だが手加減されていたことに気付く。なぜなら今の蹴りで命を刈り取ることもできたのだから。
「なぜ殺さないのですか?」
「聞きたいことができた。それに答えれば助けてやるさ」
コレは上条の気まぐれだ。なぜなら『閃鞘・七夜』を放った時点では殺す気だった。彼の疑問によって、神裂は命をつないでいる。
「貴様の所属する組織は何所だ」
その言葉に神裂は顔を青くする。
(やはり、か)
「言いたくないなら吾が言ってやる。お前の所属する組織は」
ここで一度言葉を切って、確信を持って告げる。
「『必要悪の教会』だろ?」
その場から音が消える。月が淡く彼等を照らしていた。
どうでしたか?第三話。お楽しみいただけたら幸いです。
でわまた次回お会いしましょう。