特典は仮面ライダー剣? いいえ、ラウズカードです。   作:世間の窓

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どうも世間の窓です!
第二作目は仮面ライダー×東方というものにさせていただきました。

それでは、拙い文ではありますがどうぞ!!



一枚目 『転生しました!』

 唐突だが、ラウズカードというものをご存知だろうか? これは特撮ヒーローの仮面ライダー(ブレイド)にて、敵のアンデッドというモンスターを封印、そしてその力を行使するものだ。なぜそんなカードのことを聞いたのかというと、実はそのカード俺と一体化してしまってます。いやね、自分でも何言ってんだと言いたいよ? けど事実なもんだからしょうがないんだよ。

 

 俺、(ふじ) 一成(かずなり)は事故で死んだ。横断歩道を渡っている時、余所見運転をしていた車に()ねられて……というわけだ。遠ざかる意識の中、こんな形で一生を終えるのか、とあまりにも短い人生に悲観していたらあら不思議。気づけば見知らぬ白い空間に移動していました。するとそこにはまるで仙人のように長い白髭を持った、白衣の御老体が立っていた。そしてその御老体は俺に向けてこう言ってきたんだ。

 

『青年よ、お主は新たな生を望むか?』

 

 所謂(いわゆる)転生、というものをさせてくれるらしい。なんでも、俺があそこで死ぬことは予想外だったらしく、天国にも地獄にも入ることができないのだそうだ。その場合、俺はこのままこの白い空間(話によるとあの世とこの世の狭間らしい)に永遠に留まらなければならないらしい。それではあまりにも退屈だということで、いっそのこと転生させてしまおうという話になったそうだ。

 そして転生するにあたり、俺はどうやら『東方プロジェクト』という世界に送られるそうだ。そこには妖怪やら悪魔やら神やらと人外の類が数多く存在しているらしく、その世界でも生きていけるようにと御老体は『特典』をくれた。特典はどうやらなんでもいいらしく、俺はここ最近動画ではまっていた仮面ライダー、その中でもお気に入りの剣の力を選んだ。

 

『了解した。では青年よ、お主の第二の生に幸があらんことを願おう』

 

 御老体がそう言うと、俺の視界は徐々に光に包まれていく。どうやら転生が始まったみたいだ。

 よっしゃあ、これからは華々しい転生ライフの始まりだぜ!!

 

 

 

 〜♠〜

 

 

 

 そう、仮面ライダー剣の力を望んだ…………望んだはずなんだけどなぁ。なんでそれが『ラウズカードとの融合』ってぶっ飛んだ解釈になるわけよ? いや確かに剣の力はラウズカードありきだけどさ……。

 澄み渡った青い空、まるで包み込むかのように生い茂る木々、燦々(さんさん)と降り注ぐ太陽。そんな清々しい陽気とは対照的に、俺の心は少しばかり陰りを帯びていた。

 ラウズカードとは、ラウザーというライダー専用の武器に読み込むことでその効果を発揮する。だがしかし、俺の手元に仮面ライダーになるためのベルトはない。これでは変身はおろか、特典でもらったラウズカードすら使えないではないか。

 

「せめてさー、ラウザーくらいつけてくれよー」

 

 これじゃあ宝の持ち腐れになってしまう。しかし一度貰ってしまった以上もう変更することもできないだろうし……あー転生早々不幸だわー。

 何てことを考えながら、俺は森を奥へ奥へと進んでいく。

 

 そしてたっぷり二時間ほど歩いた頃だろうか、俺はある異変に気付く。

 

「……? 体が全然疲れてない?」

 

 そう、二時間も歩いたというのにこれぽっちも体に疲労感がないのだ。前世なら二時間も歩けば多少、いや相当足に疲労が溜まって歩くのが億劫(おっくう)になる筈なのだが……は! もしかして転生のおまけで身体能力が向上しているのかも!?

 そんな仮説をした俺は、試しにその場で軽くジャンプをしてみた。するとどうだろう、普通ならば15〜30㎝くらいしか飛ばないのに、なんと今の俺は周囲の木々を軽々と超えてしまったではないか。そしてそのまま木から伸びた太い枝に乗っかる、所謂(いわゆる)忍者よろしくなあれを体現してしまったのだ。

 ……えーと、これはなんというか……凄いね。そんな語彙もへったくれもない、ありふれた感想が心の奥からこみ上げる。だが実際、人間予想を超えた経験をするとこんな程度なのだ。もっと驚きを表現したかったのだが、このなんとも言えない感情に呆然としてしまった。

 

「……次は腕力を試してみるか」

 

 脚力の次は腕力。俺は右拳を握り締め後ろに引くと、そのまま目の前の木を殴りつける。普通ならば俺の拳程度が敵う筈もないのだが…………目の前では木の方が悲鳴をあげ、幹が粉々に砕け散りそのまま地面に倒れてしまった。

 ……まぁわかってはいたことだけど、ここまで強化されているとは。これ、世界も狙えるんじゃね?

 とまぁ、検証の結果から俺の身体能力やらなんやらはかなり向上している……いや寧ろやりすぎなぐらいまでに超強化されてしまっていた。これなら狼や熊みたいな危険な動物が出てきても一応大丈夫だろう。

 

 

 さて、検証も終えたことだし、次は人がいる場所を目指してみるか。この世界が一体どういったものなのか、文明が発達しているのかはたまたその逆なのか、そういったことを知っておいて損はないだろうしな。次の目的も決まり、俺が森を抜けるための出口を探してブラブラと歩いていると

 

「──きゃぁああああ!?」

 

「っ!? こっちか!」

 

 突如聞こえてきた悲鳴。声からしてまだ幼い女の子のものだろう、俺はその声が聞こえてきた方へと向かって走り出す。草木を掻き分け落ち葉を踏みぬき、一心にその女の子の元へと向かって駆ける。

 そして何度目かの茂みを突き抜けると、そこにいたのは木綿の浴衣を着た女の子。彼女は地面に尻餅をつき恐怖からか体を小刻みに震わせ、そのクリクリとした瞳から大粒の涙をぽろぽろと流していた。

 

(よかった、間に合った!)

 

 そう安堵したのも束の間、俺は少女を襲おうとした存在を確かめるため、彼女の視線の先を追い──絶句した。

 その存在は熊をも凌駕する体躯を持ち、人と同じ手足を持ちながらもそれらは自分の手足よりも何倍も太い。本来二つあるはずの目は一つしかなく、少女を見下ろすその瞳は黒く濁っており、口元から覗く牙は対照的に光を反射し、その鋭さをありありと表していた。

 その恐怖というものを体現したかのような容姿を持った存在。伝承や御伽話の中でしか語られないその存在のことを、人は畏怖の念を込めてこう総称した──『妖怪』と。

 

(──足が、震えてやがる……)

 

 初めて目の当たりにした妖怪という存在。その圧倒的な威圧感に、気づけば俺の膝はガクガクと震えていた。それは少女も同じなのだろう。妖怪を前にして逃げないのは彼女もまた、己の足が言うことを聞かないからだ。

 だがそんなことは一つ目の妖怪には関係ない。奴はその巨体を揺らし、恐怖で震える少女へゆっくりと近づいていく。

 

「ここ最近は獣ばかりで飽き飽きしていたところだ。若い人間の子供の肉はさぞかし美味いだろうなぁ」

 

 地の底から聞こえてくると錯覚するほど低く、悪寒のする声。その声によりいっそう恐怖心を煽られた少女は、もはや悲鳴すらあげることができないのか口をパクパクとさせ、大量の涙を目尻から流す。

 このままじゃ目の前の女の子が死ぬ──そうわかっているのに、俺の足は地に縫い付けられたかの様に地面から離れようとしなかった。そして妖怪はついに少女の目の前まで辿り着き、人の5倍はありそうなその巨大な手のひらを少女へ伸ばす。

 

(くそっ、動けよ俺の足! 早くしねぇと、あの子が!)

 

 それでも動かない俺の足。いや足だけではない、腕も顔も、さらには声さえも、目の前の存在から隠れるかの様にその機能を停止させていた。

 

「運が悪かったと、そう諦めるんだな人の子」

 

 妖怪が少女へ向けてそう言うと、彼女はふるふると顔を左右へ振り

 

「……ぁ」

 

 そして偶然にも、離れた場所で立ち尽くす俺の姿をその目に捉えた。妖怪の手が迫るわずかな時間、少女は声にならない声で何かを俺に伝える様に口を動かす。藁にも縋る、そんな思いで。

『たすけて』、と──。

 

「──っ!!」

 

 人が何かを振り切る時、または一歩を踏み出す時、その背中を押す何かが必ず存在する。今の俺にとってのそれは、生きたいと、心の底から願う少女の声にならない叫びだった。

 

「待ちやがれ化け物ぉおおおお!」

 

「……ん?」

 

 叫んだ、恐怖心を振り払う様に、誤魔化す様に大きな声で。俺の叫びに妖怪は少女へ伸ばしかけた手を止め、その黒く濁った一つ目を俺に向ける。それだけで再び俺の膝が震えそうになるが、なんとか堪えて妖怪を睨み返す。

 

「その子に手を出すなら、まずは俺を()ってからにしろや!」

 

「……いいだろう。望み通り、お前から殺してやろう」

 

 俺の挑発に乗った妖怪は少女から離れ、標的を俺に変更する。そんな妖怪へ、俺はさらに刺激するような言葉をかける。

 

「おら、先手は譲ってやる。さっさとかかってきな、木偶の坊!」

 

「……なるほど、相当死に急ぎたいらしいな人間!!」

 

 その怒声とともに、妖怪は地を蹴り俺めがけて突撃してくる。その速度は人間の比ではなく、瞬く間に俺との距離を詰めると

 

「終わりだ、人間」

 

 その鋭い爪を生やした腕を力の限り振り下ろす。ドゴォン! というまるで爆発のような音と共に、地面は罅割れ崩れ去る。

 

「──っぶねぇ!」

 

 そんな妖怪の一撃から紙一重で逃れた俺は、ゴロゴロと地面を転がりながら立ち上る砂煙に目を向ける。もしも、もしもあとコンマ数秒遅れていたら、俺の体はきっと潰れたトマトのようになっていただろう。そう思うとぞっとする。

 そして俺は妖怪が煙に包まれている隙に、即座に女の子の元まで駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

 

 俺の問いに彼女はこくりと小さく頷き、少女の体のどこにも傷がないことに安堵した俺は彼女を落ち着かせるように言葉をかける。

 

「心配するな、君のことは俺が守ってやる」

 

 それは少女を落ち着かせるためだけに言った言葉だ。今の俺には奴と戦えるだけの武器も力もない。だけど、それでも……!

 

『例えカードが一枚もなくても、お前を封印できるはずだ!』

 

『戦えない、大勢の人たちの代わりに……俺が戦う!』

 

 脳裏に流れるのはかつて見たテレビのワンシーン。例えどんな絶体絶命の状況でも諦めることなく、力なき人のために戦った男の言葉。

 そう、今の俺には力はない。けど、だからと言って諦めるなんてことにはならない。命を諦める理由になんてならないんだ!

 

「よく吠える人間だ。諦めろ、お前は俺には勝てない」

 

 煙の中から出てきた妖怪は、俺に向けてそう告げる。そして再びその巨体で大地を駆け、今度は走った勢いのまま俺へ拳を振り下ろす。

 

(なんのための特典だ!? なんのための力だ!? 俺の体の中にいるってんなら、家賃代くらいの働きはしやがれってんだ!)

 

 拳への衝撃に備えながら、目を閉じて体の中にいるであろうラウズカードへ叫ぶ。

 

「いい加減目ぇ覚ませや、ラウズカードォォオオオオ!!」

 

 …

 ……

 ………

 

 グシャア、と何かがつぶれるような音が森の木霊する。だが俺の体に痛みはない。

 恐る恐る、俺が瞳を開くと……目の前には

 

「グァッ!? き、貴様……なんだその力は!?」

 

 ヘラクレスオオカブトの描かれた、見覚えのある青い半透明のカード状の壁。そしてその奥には、拳の潰れた右手を抑え苦悶の声を上げる妖怪の姿が。妖怪は突如現れたであろう、その青い壁に戸惑い驚愕の声を上げる。

 ああ、俺はその壁の正体を知っている。そう十分に知っているとも。

 それこそ、俺が戦うための力──あいつを倒す力だ!

 

 

 

 ──形勢は今、逆転した!

 

 

 

 




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