特典は仮面ライダー剣? いいえ、ラウズカードです。 作:世間の窓
第2話目です!
奇妙な沈黙が支配する戦場。互いに睨み合う一成と一つ目の妖怪。そんな両者を隔てるように、間には一枚の青い壁が。一つ目の妖怪はその壁へ奇怪なものを見る視線を、一成はどこか頼もしいものを見る視線をと、それぞれ別々の感情を乗せた視線を向ける。
その青い壁はオリハルコンエレメントと呼ばれるもので、一成の知る原作では主人公の装備を分解したものだそうだ。しかし、このオリハルコンエレメントというものは専用のツールを使用しなければ現れることはないはずだと、一成は記憶を遡る。だが自らの目の前に現れたのは、紛れもなくオリハルコンエレメントそのものだということもまた事実。
やはり特典として貰う際に、何かしら色々とプラスαが付け加えられていたのかもしれない。一成はそう結論づけ、オリハルコンエレメントを見据える。目の前の壁を通り抜けることで、主人公たちは仮面ライダーへと変身した。そのことを知っている一成はもちろん、何も臆することなくオリハルコンエレメント目掛けて駆け出そうと、その足を一歩前に動かしたその時
『スート”
突如、脳内に流れる声。いきなり聞こえた声に、一成は思わず踏み出した足を止めてしまう。
『続いてカテゴリー”A・2・3・4”を解放します』
淡々と、機械のように感情の篭っていない声でそう続け──ガキィンと、まるで鎖か何かが砕け散るような、そんな音が聞こえるのを感じる一成。
それっきり、その謎の声は聞こえなくなり
(……は? それだけ?)
あまりの説明の足りなさに、一成は唖然としてしまう。スートとカテゴリーが解放されたのはわかったが、できるならもっと詳しく、具体的に言えばラウズカードの使い方を教えて欲しかった。
ご老体といい謎の声といい適当だなぁ、と一成は内心で溜息を吐く──が、これで終わりではなかった。
「お、おお……?」
視線をオリハルコンエレメントへと移した一成は、予想外のことに思わず目を丸くし、驚きを含めた声を漏らす。そんな一成の視線の先では、オリハルコンエレメントが独りでに青い光の粒子となり、その形を徐々に変化させていた。原作にはない思いもよらぬ動きに一成は足を止め、その光が形作る何かに目を向ける。オリハルコンエレメントが光の粒子へと変化していくにつれ、また光が作り上げていくものもその形を鮮明にしていく。そんな中、一成は逸早くその光が作り上げていくものが何なのかに気づく。いや、知っていると、そう言った方がいいか。
なぜなら、その光が形作っているものは
「ブレイ、ラウザー……?」
ぽつり、言葉を漏らす一成。
そしてオリハルコンエレメントは完全に粒子と化し、最後の光がその形成物に取り込まれ、完成する。直後、太陽の光すら飲み込むほどの閃光が炸裂。たまらず目を閉じ、それでも足りないのか顔を手で隠す一成。
数秒、光が収まるのを感じ目を開く。チカチカと、まだ若干視界がぼやける中、一成が目にしたのは宙に浮かぶ一振りの剣。燦々と照り輝く日の光を一身に浴びたその刀身は、その鋭さを示すかのようにキラリと、光を反射させる。
(いや、若干ブレイラウザーとは違う)
目の前の剣を見て違和感を見つける一成。自身の記憶では青だった部分が黒に変色し、ラウズカードを収納する『オープントレイ』とラウズカードをスキャニングする『スラッシュ・リーダー』がなくなっていた。苦虫を噛み潰したような顔をする一成。オープントレイはまだしも、スラッシュ・リーダーがないなど笑い事では済まされない事態だ。
(おいおい、これじゃラウズカードが使えねぇじゃねぇか!)
そう、この剣ではラウズカードが使えないのだ。徐々に一成の表情が曇ってゆく。
するとここで、ブレイラウザー(仮)が動きを見せた。ブレイラウザー(仮)はまるで意思があるかのように動き、自身の柄を一成の視線と同じ高さに合わせる。
「……手に取れって、そう言ってんのか?」
根拠はない……だが、そう言っているように思えた。一成は問いかけるが、返事など返ってくるはずはない。気のせいか、言葉とともに小さく息を吐く。そしてゆっくりと右手を伸ばし、その柄を掴んだ。
「……ああ、なるほど」
何がなるほどなのか、一成は握り締めたブレイラウザー(仮)を眺め、その口角を上げる。
「俺の拳を砕く壁かと思えば、今度は武器か? 人間のくせに、おかしな術を使う奴だ」
一つ目の妖怪はその瞳を鋭くし、ブレイラウザー(仮)へ向ける。自身の右腕を潰すほどの壁が現れたと思いきや、それが剣に変わったのだ。何も思わないなど無理な話だろう。
一成と妖怪の視線が交差する。妖怪の瞳には油断や慢心といったものはなく、明らかにこちらを警戒していた。おそらく、一成の持つ得体の知れない武器に危機を感じたのだろう。
付け入る隙を失ってしまった一成。だが、その顔に一切の焦りはない。ゆっくりと、ブレイラウザー(仮)を両手持ちに変え、戦闘態勢をとる。
「待たせたな、こっからが本番だ──行くぞッ!!」
言葉とともに駆け出す。大地を踏む、いやそれ以上、踏み砕く勢いで。
地面に罅が入り土煙が舞う。十数メートル離れていた妖怪との距離を、瞬きするほどのわずかな時間で肉薄する。およそ常人が出すことは出来ないであろうその速さに、妖怪はその顔を驚愕の色で染め上げる。
だがそれも一瞬。咄嗟に右腕を前に出し、目の前で剣を振り上げる一成の攻撃に備える。
「ぬぅ……ッ!」
「チィッ!」
振り下ろされた剣は妖怪の突き出した右手に阻まれ、肘より少し前を斬り落とす程度にとどまる。そして傷口から噴水のように吹き出す鮮血。雨のように降り注ぐそれを浴び、顔を、髪を、服を赤く染めていく一成。
もしもこんな状況でなければ発狂していたかもしれない。だがそんなことをすればほぼ確実に、自分の体は潰れたトマトのように無残な姿に変わってしまうだろう。その証拠に、妖怪は左腕を振り上げている。
一成は即座に後退。直後、ブォン、と野球バットを振ったときよりも野太い音が耳に届き、遅れて妖怪の剛腕が地面を殴り砕いた。
「ったく、本当に馬鹿力だな」
出来上がったクレーターを見て、苦笑いを浮かべる一成。肉弾戦ではあちらの方が圧倒的に上だ。力、戦闘経験、その他
ドシンッ!──大地が砕ける音が響く。激しい悪寒を感じた一成は考えを放棄、再びその場から後退する。そのコンマ数秒後、妖怪の拳が再び地を抉り取った。
「どうした、先ほどの一撃は偶然か!? 逃げてばかりでは勝てんぞ!」
「くそ、勝手なことばっか言いやがって。こちとら命懸けの戦いなんてしたことねぇんだよ」
悪態をつきながら妖怪を睨みつける一成。だが相手の言っていることが正しいのもまた事実。最初の一撃は虚をつくことができたため、手傷を負わせることができた。あそこで決めることができていればよかったのだが、結果は見ての通り。もう先ほどのように奇襲をすることはできない。自分は最大のチャンスを逃してしまったのだ。
だからと言って、うだうだしている暇はない。これは生きるか死ぬかをかけた戦いだ。目の前の相手に集中しなければ、文字通り待っているのは死。
(このまま受け身でいるのはジリ貧だ。となれば──)
使うしかないか。一成はブレイラウザー(仮)を構えなおし、何を思ったか妖怪めがけて正面から突撃する。対し妖怪は、馬鹿正直に突っ込んでくる一成へ嘲笑を浮かべながら叫ぶ。
「正面から向かってくるなど気でも狂ったか!」
「うるせぇ、今に吠え面かかせてやっから覚悟しな! スート♠︎、カテゴリー3!!」
《ビート》
一成の言葉に応えるかのように、ブレイラウザー(仮)から音声が流れる。すると一成の右腕に何やらオーラのようなものが収束していく。妖怪はそんな一成を正面から迎え撃つつもりらしく、左腕を後ろに引き力を込める。
傍目から見れば、非力な人間が妖怪相手に正面からぶつかるなど正気の沙汰とは思えないだろう。現に、離れた場所からこの戦闘を見ている少女は、一成の行動に目を見開き驚愕の表情を浮かべている。
「これで終わりだ、人間!!」
「らぁあああああ!!」
振り抜かれる互いの拳。一方は丸太のように太い腕、そしてもう片方は人間のか細い腕。その結果は始まる前から目に見えているだろう──そう、目の前の
交わる両者の拳。グシャァ、と何かが潰れるような生々しい音が木霊する。同時に飛び散る血
そして、少女が耳にした悲鳴はあの青年のもの
「ガァアアアアアッ!?」
「……え?」
ではなく、妖怪のものだった。予想外の人物の悲鳴に、少女は顔を覆っていた手を下ろし二人に目を向ける。するとそこには、尻餅をついている妖怪とそれを見下ろす一成の姿があった。
妖怪の左腕は二の腕の途中から、その原型が分からないほどぐちゃぐちゃに潰れていた。対し一成の右腕は赤く染まっているだけで、当の本人も痛くも痒くもないといった風に佇んでいる。
「なぜ、人間風情が……っ、こんな力を!?」
激痛に苛まれ途切れ途切れになりながらも、妖怪は一成へ問いかける。その声音に、とびきりの
そんな妖怪を上から見る一成は、赤く染まった自身の右腕に視線を落とす。♠︎3『ビート』、その力はパンチ力の上昇。その威力は見ての通り、頑丈であろう妖怪の一撃を返り討ちにするほどだ。
一成は視線を妖怪へと移す。両腕を失った妖怪、そしてそれを見下ろす自分。普通だったら状況は逆なのだろう。普通の人間が妖怪を追い詰めるなど、本来ならばあり得ない出来事のはずだ。
「さてな、それに答える義理はねぇよ」
一成はブレイラウザー(仮)を振り上げる。妖怪は抵抗する気はないのか、それ以上は何も言わずじっとしている。一成はブレイラウザー(仮)を握る手に力を込め
「じゃあな」
言葉とともに振り下ろす。刃は妖怪を右肩から左脇にかけて斬り裂き、その軌跡をなぞるように胴体が分かれ、上部分が地に落ちる。
一成は刃の血を振り払い、物言わぬ骸と化した妖怪へと視線を落とす。それはこの手が他の命を殺めた証拠、そしてこの勝負の決着を表すものだ。
「……終わったか」
複雑な気分だと、そう言わんばかりにしかめっ面になる一成。敵とはいえ他の命を殺めた罪悪感と生き延びられたという安堵、そして少女を守れたという喜び。それらがごちゃごちゃと混ざり合い、一成の心を曇らせる。
「ふぅ……青いなぁ」
小さく息を吐き空を見上げる。こんな気持ちとは裏腹にとても青く澄んだ空を、一成は少しだけ羨ましく思った。
いやぁ戦闘描写の難しいこと……。
小説などを参考にしながら書いたんですけど、うまく表現できませんね(苦笑
まだまだ不足する部分が多い拙作ですが、アドバイスをいただければ幸いです!
では、次の更新はいつになるかはわかりませんが、またお会いしましょう!