特典は仮面ライダー剣? いいえ、ラウズカードです。   作:世間の窓

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どうも、お久しぶりです。
かなり間が空いてしまいましたが、第四話をどうぞ。



四枚目 『依頼』

 

 ──お前、本当に人間なのか?

 

 妹紅から投げかけられた疑問。その予想外の質問に目をぱちくりとさせ、困惑の表情をする一成。初対面の人にも拘らず『あなたは人間ですか?』とは、なかなか反応に困る質問をしてくるものだと、一成は内心そう漏らす。

 とはいえ、答えなければ話が進まない。答えなくても見れなわかるだろうって話なのだが、聞かれた以上はしょうがないと一成は口を開く。

 

「そりゃまぁ……人間だぞ? というか、それ以外の何に見えるってんだ?」

 

「お前、ただの人間が妖怪を、それも無傷で殺せると思ってるのか?」

 

 鋭い視線が一成を射抜く。その迫力に一成は、うっ、と口を(つぐ)む。

 

「あの妖怪の死体を見たけどすぐにわかったよ……普通の人間じゃまず殺せない相手だってな」

 

「でも妖怪だって同じ生き物だろ? 偶然が重なれば、もしかしたら……」

 

「はぁ……」

 

 食い下がる一成に、呆れ果てたと言いたげな深い溜息をこぼす妹紅。その双眸にも同じ感情が見て取れ、一成は居心地悪そうな顔で頬をかく。

 

「あのなだから言っただろ、普通の人間じゃまず殺せないって。ただの農民がいくら束になろうが、腕の一振りで全員お陀仏だ。勝てる保証なんて万に一つ、いやそれ以上すらないんだよ」

 

 力がある故に『個』で生きることが多い妖怪に対し、力がない故に『集団』を作り助け合うのが人間だ。だが圧倒的力を持った『個』の前には、小さき力の集まりである人間は道端の石ころも同然。それほどまでに妖怪と人間との間にあるものは大きい。

 その現実を知って息を飲む一成。あの時は運良くラウズカードの力が目覚めたから良かったものの、もしも目覚めずにいたら……想像するだけで背筋が凍える。

 

「力ある妖怪を倒せるのは、同じ力を持った人間だけなんだよ。ただの農民が武器を持ったところで、あいつらの足元にすら及ばないのさ」

 

「……それじゃあ、あの時あの子を迎えに来たお前は、力を持った人間だってことか?」

 

「まぁな。こう見えても私は妖怪退治を生業にしててな。自慢するわけじゃないが、そんじょそこらの妖怪には負けないくらいの腕は持っているつもりだ」

 

 妖怪退治屋。妖怪が存在するこの世の中だ、やはりそれを狩るのを仕事とする人間もいるとは思っていた。しかし、こんな見た目中学生の女の子が妖怪退治を仕事としているなどと誰が思おうか。

 いや待てよ、一成はつい先ほどの記憶を掘り返す。確か自分が殴られる直前、目の前の少女の拳は確かに炎を纏っていたはずだ。

 

「さて、もう一度聞くぞ。お前は何者だ? そうやってあの妖怪を倒した?」

 

 再度、質問を投げかけてくる妹紅。一成は目を伏せて考える。これまでの彼女の話から、言っていることは全て事実だろう。とすれば、これ以上言い訳を並べても意味がない。

 十秒、時間が経過し一成は目を開けると

 

「……スート♠︎、カテゴリーA」

 

「お前何を言って──ッ!?」

 

 目を見開き驚愕する妹紅。それもそのはずだろう、目の前の男が何か訳のわからない言葉を述べた直後、どこからともなく不思議な形状をした剣のようなものが現れたのだから。

 驚愕する妹紅を余所に、一成はブレイラウザー(仮)を右手に持つと口を開く。

 

「この剣で、俺はあの妖怪を殺した」

 

「……これ一本で、あの妖怪をぶっ殺したってのか?」

 

 信じきれていないのか、一成を見る妹紅の視線には未だに疑いの念が込められている。

 

「まぁそんなところだ」

 

 無論、これだけではないのだが、これ以上のことはさすがに話すことはできない。この世界で生き残る以上は極力、特典に関する情報は秘匿しておきたい。

 

「……まぁそういうことにしておいてやるよ」

 

 渋々といった感じではあるものの、一応納得をする妹紅。とりあえず、これ以上の追求を免れることができた一成は内心ホッと安堵する。

 

 

 

 

 時は夜。太陽は地平線の彼方へと沈み、月が優しく地面を照らす。

 あの後、特に話すこともなく、一成は窓の外から夜空を眺めて過ごしていると

 

「すいませ〜ん」

 

 扉が開く音とともに、あの時の女性の声が聞こえてきた。一成が玄関の方へ向かうと、そこには夕方の女性と見知らぬ老人が立っていた。

 白い頭髪、口元には長い白髭を蓄え、まるで鷹のように鋭い目。右目には縦に獣の引っ掻き傷のようなものがあり、一成はその男性の風貌に「本当に老人か?」と疑問を抱く。

 

「お部屋の方はどうですか? 何か不便なところとかありましたか?」

 

「いえ、これといって不便なところは……あっ」

 

 何か思いあたるものがあったのか、一成は小さく声を出すと

 

「お風呂ってありますか?」

 

 そう尋ねる。

 

 お忘れかもしれないが、一成は妖怪の返り血を浴びている。帰り道に川で多少の血は洗い落としたものの、まだ体の隅には血がこびりついている。それに現代で生きてきた一成にとって、お風呂に入らないというのはやや気持ち悪い。

 んー、と女性は顎に指を当て考え込み

 

「お風呂というわけではありませんが、村の少し離れたところにお湯が沸いている小さな泉がありますけど……」

 

「お湯が沸いた小さな泉……温泉か」

 

 本物の天然温泉、心を惹かれるものがある。一成は即決した、温泉に行こうと。とはいえ、今日はもうクタクタなので行くのは明日にしようと、自分の体の調子を考慮する。

 ふと、一成は気づく。なにやら女性が言いにくそうな顔をし、隣の老人にチラチラと視線を送っていることに。

 

「どうかしましたか?」

 

 一成が尋ねると、女性はその人当たりの良い笑顔に困惑の色を浮かべる。どうやらあまりいい話ではないようだ。

 すると、今まで無言を貫いていた老人がおもむろに口を開く。

 

「数年前の話だ、その泉をある妖怪が縄張りにしおってな。以来、我々はその泉はおろか、その周辺の森にすら立ち入ることができなくなったのだ」

 

「妖怪が……なるほど。ところであなたはどちら様で?」

 

「この村の村長だ」

 

 軽く自己紹介を入れてもらい老人の正体を知ったところで、一成は本題に意識を戻す。

 

「その妖怪について何か知っていますか?」

 

「ああ、いつの日かその森に入った男がおってな、其奴から話を聞いた。御主が聞きたいのならば話すが」

 

 

 一拍、

 

 

「まずは落ち着いた場所で話をしよう。この老いぼれには立ち話は少々こたえるのでな」

 

 

 

 

 村長達を集会所の中へと招き入れる一成。一成が広間に姿を見せると、先ほどと変わらぬ位置で胡座をかいていた妹紅が顔を向け、その後ろから現れた村長に気づくと少し姿勢を正す。

 村長もその鋭い双眸に妹紅の姿を収めると「ふむ」と、小さく呟きその長い白髭を撫で

 

「退治屋殿も居られたか。ならばちょうど良い、お主も話を聞いてくれるか?」

 

 そう言いながら妹紅の対面に座る村長。その隣に女性が座り、一成も妹紅の隣に腰を下ろす。

 全員が座ったのを確認し、村長がゆっくりと話を始める。

 

「話というのは、この村から離れた森にある湯の沸く泉。そこを縄張りとした妖怪についてだ」

 

 ゴホン、と咳を一つし

 

「その妖怪の名は(きく)。一本角を持った『鬼』と呼ばれる妖怪だ」

 

「……鬼」

 

『鬼』──その言葉に、呟くような小さな声を出す妹紅。一成もまた、息を飲む。

 前世では誰もが聞いたことがあるだろう、妖怪の代表格といってもいいほどの存在だ。腕を振るえばその拳は巨岩をも砕き、口を開けばその咆哮は聞く者全てを震え上がらせる。その姿はまさに力の化身であり、戦闘力は一騎当千。

 

(こいつは、ちと厳しい話になったなぁ……)

 

 一成は心の内でそう漏らす。話の流れから、おそらくはこいつを倒してくれ〜とか、そういったところに落ち着くだろう。だがそんじょそこらの名のない妖怪ならばいざ知らず、相手は書物にも名を残すほどの大妖怪だ。

 先の戦闘のようなビギナーズラックは期待できないどころか、むしろ殺される可能性の方が高いと考えるのが妥当だろう。一応はラウズカードの能力を使えるようになったとはいえ、カテゴリーA~4のカードのみ。決定打と呼ぶには少しばかり心許ないのが本音だ。

 

「いつの日かこの村を訪ねた妖怪退治屋がおってな。其奴は鬼を退治すると、そう言って泉へ向かったよ」

 

「……それで、そいつはどうなったんだ?」

 

「その男は戻ってきたよ…………片腕と片目を失ってな」

 

 眉間に皺を寄せ、視線を鋭くさせる。口で語るのは容易いが、実際に目にした光景は酷いものだったのだろう。女性も両目を閉じ、複雑な表情を浮かべている。

 

「『いい暇潰しになった。次はもっと楽しませてくれる奴を連れてこい』、去り際にそう言われたそうだ。奴にとってはほんの遊びだったのだろう……人間と戦うことは」

 

「鬼ってのは戦うのが好きな種族だからな。向かってくるなら人間だろうと喜んで持て成し、そいつとの戦いを最大限まで楽しむ。まぁ、大半の奴らは手も足も出なくて殺られちまうのが普通なんだが……どうやらその鬼は殺すまではしないみたいだな」

 

 さすがは妖怪退治を生業にしているだけはある。妖怪の情報をこうもスラスラと言えるとは、一成は初めて妹紅に感心する。

 

「鬼は私も何度かは戦った事はあるけど、どいつもこいつも手強いって言うか頑丈って言うか。手が捥げようが足が無くなろうがお構いなしで戦いを続けるんだよ。本当、しつこいったらありゃしねぇ」

 

「ふむ、鬼と戦をした事があるか」

 

「父様、この方なら……」

 

 女性の言葉に村長は小さく頷く。そして視線を妹紅と一成へ向け直し

 

「退治屋殿、そして旅人殿……」

 

(あー……このパターンって)

 

 続く言葉を予測し、一成は心の内で空を仰ぐ。

 

「どうか、あの鬼を退治してはくれぬか」

 

 大正解、百点満点。予想通りすぎる村長の頼みに、思わず天井を仰ぎ見てしまう一成。

 

「それは私への依頼と、そうとっていいんだな?」

 

「無論、相応の礼はさせてもらおう」

 

 どうやら妹紅はこの依頼を受けるようだ。そして村長は次に一成へと視線を移す。

 

「旅人殿、お主は受けてはくれるか?」

 

「…………う〜ん」

 

 すぐに答えを出せない一成。だがそれも仕方ない、相手は鬼なのだ。先も述べたが、勢いで勝てるような妖怪とは訳が違う。さらには転生して妖怪と連戦とか、ぶっちゃけ辛いのだ。しかし、その鬼を倒さなければ温泉に入れないのもまた事実。

 

 命か温泉か……天秤にかけるのも馬鹿馬鹿しい話だ。

 

「…………無理なら逃げ出すかもしれないけど、それでもいいすか?」

 

 だがこの先、この世界で生きていく上で鬼に遭遇しない保証はない。もしもその時一人であった場合、鬼相手に対処できず殺されてしまうかもしれない。ならば、共に戦ってくれる人物が、しかも妖怪専門の退治屋がいる時に相手がどういった存在なのかを知っておいた方がいいだろう。

 

「そうか、受けてくれるか」

 

 返答は頼りないものだったが、村長は口元に笑みを浮かべ、女性も安堵の表情を浮かべる。

 

「それでは二人とも、よろしく頼む」

 

 

 

 転生二日目の予定は、どうやらまた命懸けになりそうである。

 

 

 

 

 

 





という訳で次回は戦闘回
転生してからハードワークの連続の主人公、はてさてどうなることやら。
そして鬼の実力や如何に?

また次話でお会いしましょう!

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