希望ヶ峰学園の学園長を名乗るモノクマという一見ぬいぐるみにしか見えない存在から聞かされた話を整理するために苗木たち希望ヶ峰学園78期生は食堂に集まっていた。
「さっきの話って本当のことなのかな?」
「わからないわ。外部のことを知るすべが私たちにはないもの」
「でも外の世界が滅んでいるってのは流石に・・・・・・」
『そうですね。ただ言われただけでは信じられませんよね』
「! 誰?」
78期生の誰でもない声変わり前の少年のような声が突然食堂に響き、霧切は声の聞こえたほうに振り返った。そこには誰もいなかった。ただ、羽が生えたモニターのようなものが浮かんでいた。そのモニターにはスーツを着た少年が映っていた。
『私ですか? 私は超中学生級の交渉人である近藤渡です』
「超中学生級?」
『はい。皆さんは超高校級という肩書を持っていますよね? そんな肩書があるのなら超中学生級や超小学生級という肩書があってもおかしくないと思いませんか?』
「確かに」
『理解していただいたところで本題です。こちらに質問したいことはありますか? できる限り答えさせていただきます』
それを聞いて江ノ島は内心焦っていた。この後の質問によって妹の計画が破たんする可能性が頭によぎったからだ。ただ質問することを止めたりするすべを彼女は持っていなかった。そんなことすれば周りにあやしまれるからだ。下手すれば黒幕と通じていると暴かれてしまう。どうすればいいか悩みながらも表情は変えないようにする。相手は超中学生級の交渉人。顔色一つから何かを読み取られる可能性がある。
顔を見渡せた78期生は話し合いの末に霧切と苗木に質問を任せることにした。この2人なら変な質問はしないだろうししても他の人が修正できると判断したのだ。2人を制圧する位大神には簡単なことでもあるというのもあった。
「できる限りということは答えられないこともあるということかしら?」
『ええ。例えばこちらの本拠地などは答えられません』
「どうしてかしら?」
『我々と貴方たち共通の敵が存在しているからです。本拠地を攻められるとあなた方との通信などに支障が出ますので』
「? 攻められる? 攻められても警察がいるんだし問題ないんじゃ?」
『警察はいまろくに機能していません。といいますか今治安維持を行っていた組織は軒並み機能停止状態です』
「えっ! どうして」
『そちらでどんな説明をされたのかは私は知りませんが今、外の世界は世紀末一歩手前くらいの状態です』
「ならどうやって通信を行っているのかしら?」
『超中学生級のメカニックと超中学生級のプログラマーによって作成された通信機器搭載型モニターを超中学生級のカメラマンが見つけた監視カメラの死角から超中学生級のパイロットによって中に入れただけです。中継機器は超中学生級の大工と超中学生級の偵察兵が設置しましたので破壊されることはないはずです』
「そう。なら次の質問よ。私たちの状況をどうやって把握しているのかしら?」
『そちらに設置されているカメラで全世界放送されているからです』
そういわれて全員は思わず食堂にあるカメラに視線を向ける。これは自分たちを監視するためのものだと思っていたが全国に今の状況を中継するためにもつかわれているようだ。なら当然の疑問が浮かんでくる。
「この状況も黒幕は見ているはずよね? 何故妨害しようとしないのかしら?」
『内通者がいたとしたら今妨害したら黒幕と通じていると言っているようなものですからやらないのでしょう。黒幕自身が動かないのは私にもわかりませんが動けば不都合なことでもあるのでは?』
「不都合なこと・・・・・・」
『例えば協力者である誰かに変装で自分を演じてもらっているためでれないとか』
「いえ、それならモノクマを使えばいいわ」
『モノクマ? そっちにもいるんですか。』
「モノクマを知っているの?」
『ええ。敵の主武器ですからいろいろなタイプが確認されています。あれのせいで羽山あやかさんは・・・・・・』
「あやか! あやかがどうしたんですか!」
自分の知り合いの名前が出て思わず舞園は声を上げる。それに渡はしまったと思ったのかちょっと動揺したような顔になる。そのまだまだ経験が足りない年相応な様子に相手は歳下なのだと苗木たちは認識を改めた。苗木たちはいつの間にか渡を無意識に何をいっても動揺しない一流の交渉人だと認識していたのだ。
『羽山あやかさんはモノクマに誘拐されそうになっているところを発見してこちらで保護しました』
「そう。他にこちらの身内についてわかっていることはあるかしら?」
『他ですか? ・・・・・・大和田さんのチームの人を何人か保護しています。それ以外はどうだったでしょうか』
渡は霧切から質問を受けて手元にある資料を見る。その中にはこれまで保護した人たちの情報がかなり詳細に載っている。その中から苗木たち78期生に関係する名前をいくつか発見して報告していく。
『・・・・・・以上ですね。』
「そこに載っていない人たちはどうなっているのかしら?」
『・・・・・・わかりません。一応今動かせる人員すべてを動員して無事な方を探していますが・・・・・・』
渡の言外に言いたいことを悟って苗木たちは顔色を悪くする。自分の身内が死んでいるかもしれない。それも自分たちの記憶では世紀末一歩手前の状態になるような出来事なんてないのだ。思わず現実逃避にはしろうとしてしまう人がいてもおかしくない。ただ、渡の表情や言葉から嘘ではないということが苗木たちには嫌でもわかってしまう。
『ただ・・・・・・』
「ただ、なに?」
『希望ヶ峰学園のOBを中心に結成された組織があるそうですのでそちらに保護されている可能性もあります』
渡の可能性の提示に苗木たちの顔色が若干よくなる。希望ヶ峰学園卒業生はすごい才能を持っている人たちが多い。それなら渡たちが把握していない人たちを保護している可能性も十分ある。
『こちらでもどうにかして貴方方を救うために作戦を練ります。それまで何とか耐えてください』
「わかったわ」
渡は霧切の言葉を受けてすぐにモニターを学園から離脱させた。そのすぐ後に食堂にモノクマが現れた。そのとても慌てたような表情に苗木たちは何があったのかと思わずモノクマに目を向ける。
「君たち、今食堂で何かしてた? 突然カメラの映像が途切れたんだけど」
「ええ。ここからの脱出についてちょっと話し合いをね」
「脱出? ウププ、ウプププ。もしかして誰かを殺す気になったの? 学園長としてはその姿勢は嬉しいけどさ。校則のこと忘れてないよね?」
「もちろん」
霧切はモノクマの様子とその後の会話から渡との会話をモノクマが把握していないことを確信した。他の人も同様のようで先ほどの会話についてモノクマに言う人はいなかった。ただ、渡が黒幕が知らないということを把握していなかったことに疑問を持つ者もいたが。
それから定期的に報告される渡たちからの情報によって何とか殺し合いをせず過ごした苗木たちは渡たちが練った作戦によって無事に学園を出ることに成功した。
そのことに黒幕である江ノ島は笑いながら絶望し、その様子を見ていた超中学生級のカウンセラーと超中学生級のセラピストは処置無しと匙を投げた。そして希望ヶ峰学園のOBが中心になって構成された組織未来機関に江ノ島を引き渡した。その後、速攻で彼女は処刑されたらしい。
未来機関との協力は渡たちの組織の長が交渉に失敗したため渡たちは78期生とともに独自の路線で動くことになった。世界を救うためのその過程で77期生や78期生の身内を救い、何度も未来機関とぶつかりながら一部の地域の復興を成し遂げた。