モノクマがいつまでも誰かを殺さない苗木たちに業を煮やして動機を配った。それは苗木たちの親しい人間に何かが起きたかのように見えるDVDだった。
「これを今更見せられてもな」
「渡っちの話が本当ならこれは本当のことなんだべな」
『何かありましたか?』
「おっ! ちょうどいいところにきたっぺ」
葉隠と桑田が見せられたものに対して話していると羽が生えたモニターが飛んできた。どうやら渡たちがまた設置されたカメラの死角をぬくことに成功したようだ。おそらく今はまたあの時のように黒幕には食堂の様子が見えなくなっているだろう。
『? 何か訊きたいことでも?』
「ええ」
霧切は渡に先ほど渡されたDVDについて話しをした。それを聞いた渡は手元にある資料に目を向ける。それは先ほど整理した保護されたメンバーの情報をまとめたものだった。
『まずこちらから伝えられるそれについての情報は舞園さんの所属していたアイドルグループを全員保護したことくらいですね』
「本当ですか!?」
報告を受けた舞園さんは思わず大声を上げた。そして眼尻には涙が浮かんでいる。よほど嬉しいらしい。周りにいた女性陣もそんな舞園と喜びを分かち合っている。
『はい。後は苗木こまるさんの所在が分かったくらいですね』
「こまるの!?」
『塔和シティという所に監禁されているそうです。もしかしたら他の人質もそこにいるかもしれません。今、超中学生級のスパイが侵入できないか探っている途中です』
この情報を受けて苗木たちは渡たちの組織の実力を高く評価した。たったの数日でここまでの情報を集めて救出計画を進行をするのは普通無理だからである。
「すごいわね」
『いえいえそんなことありませんよ。我々はある超高校級の才能の持ち主によってまとまっているだけでその人がいなければここまでのことはできなかったでしょう』
「へーその凄い人ってどんな人なの?」
『名前は涌井修。才能としては超高校級の指導者というらしいですね。希望ヶ峰学園75期生ですので78期生である苗木さんたちの3つ上ですね。』
「もしかして私たちと会ったことあったり?」
『どうなんでしょう? 涌井さんが自分の過去を私たちに話してくれたことがないので』
その名を聞いた瞬間、江ノ島はみんなに気づかれないようにしながら冷や汗を大量にかきはじめた。涌井は江ノ島にとって恩人のような存在であり絶対に敵に回してはいけない存在だったからである。
涌井修。彼は本物の江ノ島をして分析できないと言わしめる意味不明な存在であり才能の名前も希望ヶ峰学園がとりあえずつけただけで本当は違うものであるらしい。ただ江ノ島の戦闘技術の向上に協力してくれた1人であり彼女個人としては嫌いではない人だったりする。
本物の江ノ島が何度も彼を分析しようと会いに行き当時の彼氏に連れ戻されるということを繰り返したほどの人物。まあ彼は本物の江ノ島に興味がなかったらしく何をしてもほとんど反応しなかったおかげで江ノ島の彼氏と嫌悪な関係になることもなかったそうだが。
『・・・・・・今はこれぐらいですね何かありましたらまた連絡します』
「ええ、頼んだわ」
その後もいくつか報告するべきことを伝えた後モニターはアクロバティックな動きを見せながら苗木たちの視界から消えた。おそらくカメラの死角をぬっていくために必要だったのだろう。
飛んでいったモニターを見送った苗木たちは机に何かが置いてあるのを発見した。それは小型のモニターのようなものでそこには『羽山あやか』と表示されている。
「これってもしかして・・・・・・」
霧切がモニターに触れるとそこに女性の姿が映しだされた。その女性はモニターに表示されていた人物、羽山あやかである。
「あやか!」
『さやか! そっちは大丈夫・・・・・・なわけないわよね。こっちはモノクマとかいうぬいぐるみに襲撃を受けたりして大変だったけど、今は渡くんたちに保護されて暴動の鎮圧とかをやっているの』
「それって大丈夫なの? 目立てばまた襲撃を受けるんじゃ・・・・・・」
『そこはしっかりと対策を取ってくれているわ。超中学生級のボディーガードの久留井くんとか超中学生級の兵士の沢村くんが護ってくれているから』
「そうなんだ」
舞園と羽川がそんな風に近状を話しあっていると食堂にモノクマがやってきた。
「ウププ。見たよ。またカメラがおかしくなったから様子を見にきたら君たち外と連絡を取り合っていたんだね。先生は悲しいよ。せっかく殺し合いになるかと思っていたのに」
「モノクマ!」
「そんなことするならボクにも考えがあるよ」
モノクマはどこから取りだしたのか手に何かのスイッチのようなものを持っていた。それに苗木たちは嫌な予感がよぎる。
「じゃじゃーん! なんとこのスイッチはとある場所を爆破するためのものです」
「とある場所?」
「そう! とある場所」
「もしかして人質のいる場所?」
「ウププ! 朝日奈さん、正解! これはとある人物の人質のいる場所を爆破するものなんだ」
「悪趣味な!」
モノクマの説明に顔色を悪くするもの怒りに顔をしかめるものなどそれぞれ反応する。それを見ながらモノクマは笑みを浮かべる。
『まあそのスイッチは偽物だろうがな』
モニターから羽山とは違う声が聞こえた。それは編成期を迎えて低くなった男性の声。おもわず苗木たちはモニターの方を向くとそこには黒いスーツを着た眼光鋭い男性が羽山の隣りに映しだされていた。
「誰?」
『俺の名前は久留井夢生。超中学生級のボディーガードだ』
「ああさっき話題に出た」
『? まあいい。その話はあとで羽山嬢から聞こう』
横で羽山が聞かれたくないことを聞かれたような顔になった。舞園はそんな羽山の様子に困惑する。久留井について羽山は名前をだしただけで特に何も言っていなかったので別にさっきの話題を出されても問題ないはずなのだ。
「そうだね。後で聞きなよ。で? なんで君はこれが偽物だって言えるんだい? 直接見たわけでもないのに」
『直接見なくてもわかる。その大きさの物から出せる電波が届くのは学園内までだ。そして、学園内に苗木殿たち以外の人は1人以外いない』
「ならその人が人質かもしれないじゃん?」
『はっ! その1人というのは黒幕であるお前の中の人のことだ』
「中の人なんていない!」
『そうか』
久留井はモノクマの言葉を聞き流した。着ぐるみの中には誰もいないと大人が子供に誤魔化すかのような態度に内心呆れていた。
「聞き流したね! もう怒ったぞ!」
モノクマは頭から湯気をだし顔を真っ赤にして怒っているかのような表情を取りながらスイッチを押した。ただ、数秒たっても何も起こらない。モノクマは不思議そうな顔をしながら何度もスイッチを押す。
「なんで? なんで何も起こらないんだよ!」
『俺との会話に夢中になって周りに目を向けていなかったようだな。門の辺りを見てみろ』
久留井に言われた通り黒幕が門につけられているカメラを見ると門の前にパラボラアンテナのようなものがいつの間にか設置されていた。そこから何かの電波がでているのがわかる。おそらくこの電波によってスイッチが正常に機能しないのであろう。アンテナはマシンガンのぎりぎり射程外の設置に設置されているため壊すこともできない。
「くぅ! 覚えてろよ!」
モノクマは捨て台詞をはいてどこかに逃走した。その様子に苗木たちは胸のすくような思いだった。
『覚えておこう。お前が負け犬だということをな』
久留井はいなくなったモノクマにそう吐きすてるとモニターから姿を消す。羽山はその様子に苦笑いを浮かべながらモニターの中央に戻る。
『私たちと通信していることをモノクマが把握したみたいだしこれでいつでも話ができるわね。何か訊きたいことがあればこのモニターから連絡して』
「わかったわ」
霧切の返事を聞いてモニターが通信終了の表示になる。このモニターは話し合いの結果、石丸が持つことになる。彼ならどっかに落としたり変な使い方をしないであろうという考えからだ。