超中学生級の介入   作:雨の日

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第2の動機

 モノクマから告げられた新たな動機、それは全員の知られたくない秘密であった。知るはずがないと食ってかかる者もいたが直接モノクマに渡された封筒の中の紙に記されたものをみて何人かは顔色を悪くした。おそらく本当に知られたくない秘密が書かれていたのだろう。

 

 頭の整理やらなにやらのために大多数の人間は食堂に移動した。そこでモニターに着信があり渡が表示される。放送で動機について知り心配になったのだろう。

 

「本当に私たちの秘密を知っていたようね」

 

「そうだね。でもどうやって調べたんだろう?」

 

「どうやってでしょうね」

 

 霧切と苗木はそう話しながら明らかに顔色が悪い大和田に顔を向ける。そんな2人から見られている大和田は顔を真っ青にして小声で何かをブツブツ言っている。

 

「・・・・・・知られたらチームが・・・・・・兄貴との約束が・・・・・・男として・・・・・・」

 

『大和田紋土さん、よろしいでしょうか?』

 

「・・・・・・! あっ? なんだよ? 俺になんの用があるってんだよ、ああ!?」

 

 自分の世界に入っていた大和田に渡が声をかける。それに反応が遅れながら大和田は返事を返す。その様子から即急に今の状態を改善しないとまずいと渡は悟り手元にとある資料を持ってくる。

 

『はい、まず誰にもモニターを見られないようにしていただけますか?』

 

「? ちっ! わかった。兄弟、ちょっとこれ借りていっていいか?」

 

「構わないぞ、兄弟! あとできちんと返してくれよ」

 

「あたりめえだ!」

 

 大和田は訳が分からないながら渡の指示に従いまず石丸から許可をもらいモニターを持ち自室に移動した。

 

「これでいいか? それで何の用だ? つまらないことだったら後で覚えていろよ」

 

『まず今送信した資料に目を通してください』

 

「あっ? ・・・・・・こりゃあチームのやつらの!?」

 

 大和田は渡に言われるがままにモニターが受信した資料に目を通す。そこには大和田のチームクレイジーダイアモンド古参の者の証言が載っていた。特に大和田の目を引いたのは兄である大亜が紋土をかばって死んだということを生き残っている古参の者全員が知っているという所だった。これに大和田はおもわず驚いた。

 

「なんでだ!? このことは誰も知らねーはず! てめえまさかあいつらに告げ口したとかしたりしてねえよな!?」

 

『違います。大和田紋土さんのチームの人は大和田紋土さんのお兄さんの死を知って現場に行きこのことを知ったそうです。見る者が見ればどんなふうに死んだかわかるもんだ、なんて言われてしまいました』

 

「じゃあどうして・・・・・・どうしてあいつらは俺を責めねえ! 俺は、俺は・・・・・・つまらねえ意地と焦りで兄貴を殺しちまったんだぞ!」

 

『私がそう訊いたらこう返されました。何故責めねえといけねえんだ? 総長が自分の意志でやったことに俺らがケチつけられるわけねえじゃねえかっと』

 

「そりゃあそうだけどよ・・・・・・」

 

『そしてこうも言ってました。いまの首領は総長の死をかってに自分のせいにして自分だけで背負いやがった。俺らがそんなことで離れるような屑に見えるってのかっと』

 

「うう・・・・・・ウオォォォーーー!!」

 

 大和田は思わず涙を流していた。自分はチームの人間をどこかで信じていなかったのだということに気づいて。そんな奴に何も言わずにチームのみんなはついてきてくれていたのだという感謝で。

 

『・・・・・・もう大丈夫そうですね』

 

 渡はその様子から大和田が人を殺す可能性が低くなったと判断した。何かのきっかけで衝動的に暴力に走りそうになるかもだが殺しまでは多分いかないだろう。いや、当たり所が悪かったら・・・・・・という考えがよぎり慌ててその考えを頭からおいだす。

 

『他の方で問題になりそうなのは腐川冬子さんと不二咲千尋さんですね・・・・・・まああの2人なら何とか自分で乗り越えてくれるでしょう。ただ・・・・・・』

 

 渡は一つ懸念事項があった。腐川の秘密を知ったらここにいる人たちはどのように行動するのだろうということだ。彼女の秘密は多重人格のことに違いないと渡は確信していた。何故ならもう一人の腐川に渡は会ったことがあったからだ。

 

 超高校級の殺人鬼、ジェノサイダー翔。これが腐川のもう1つの人格の名前だ。才能の名の通り何人もの人を殺している危険人物だが獲物にする人間を選んでいるらしくよほど気に入らなければ殺しはしない。彼女は殺した死体を鋏で磔にして近くに血ミドロフィーバーと残すという特徴がある。

 

 ただ、くしゃみをすれば腐川の人格は入れ替わるということから隠しきれるはずがなく、1年もあればおそらく全員知ることになっていただろう。そして、1年間誰も殺さなかった彼女のことを気にする必要はないのだが今その記憶が苗木たちにはない。だからこそ警戒したり自衛のために殺そうとしたりする人が現れる可能性がある。

 

『彼女のことですから十神白夜さんには話している可能性がありますね』

 

 渡は少し悩んだ後とある人を探しに向かった。その人の名前は向井坂臓。組織内で数少ない超高校級の司書という肩書きを持つ男性だ。目元まで前髪を伸ばしていて暗い印象を初対面ではもたれやすいが前髪をしっかりと整えればジェノサイダーのお眼鏡にもかなうほど容姿が整っていたりする。ちなみに向井は第75期生で涌井と同期だったりする。

 

 向井は腐川さんの本の大ファンで腐川さんの出した本を全部持っていて感想を編集部に送ったりもしていたし話題に出すと普段は無口な彼が饒舌に話してくれる。向井なら腐川さんの問題をどうにかできると渡は判断したのだ。

 

「腐川、次はおめえだとよ」

 

「なに? 今度は私? まさか・・・・・・私が人をこ、殺すって思っているの!?」

 

 渡は大和田に頼みモニターを食堂にいた腐川に渡してもらった。一緒にいた十神は金切り声を上げる腐川に顔を歪ませる。

 

『はい、この中で先ほどの動機で人を殺しかねない人は大和田紋土さんと腐川冬子さんの2人だけですから』

 

「はあ? 他にもいるでしょ! オーガとか」

 

『大神さくらさんの秘密はこちらではつかめませんでしたが今の様子を見る限りやりそうには見えませんので』

 

 話題に出た大神は朝日奈と雑談に興じていた。殺気を放っていたり顔色が悪かったりといった変化は見うけられない。それに大神の性格から果たし状などを送って正々堂々真っ向から挑むだろうと渡は判断していた。

 

「お前が苗木たちが話していた渡という男か?」

 

『おそらくそうでしょうね。私が超中学生級の交渉人の近藤渡です』

 

「・・・・・・1つ訊きたい。十神財閥はどうなった?」

 

『十神財閥は崩壊寸前まで来ていますね。何とか踏みとどまっている状態です』

 

「崩壊寸前だと? 何故そんな状況になった? 俺が卒業するまでなら十分今の規模を維持できるくらいの備えをしておいたはずだ」

 

『十神白夜さん以外の十神家の人間が死んでしまったからです』

 

「なに!?」

 

 渡の報告に流石の十神も驚きを隠せない。証拠のためにと渡に見せられた親族の死体の写真から十神は渡の発言が真実だと何とかのみこむことができた。

 

『崩壊寸前の状態を何とか維持できているのは十神白夜さんが生き残っているからです。十神白夜さんが死んだ場合十神財閥は滅ぶでしょうね』

 

「そんなことになるものか。俺は十神白夜。超高校級の御曹司である選ばれた人間だ。こんなゲームすぐにクリアして今まで以上に十神財閥を発展させてやる」

 

『誰かを殺されるのは困るんですが・・・・・・え? わかりました。伝えておきます』

 

 モニターに映しだされている渡が誰かから受けた連絡に驚きの表情を浮かべた。その後すぐに十神にある写真を見せる。

 

『この方に見覚えは?』

 

「・・・・・・うちの執事だな。それがどうした?」

 

 映しだされた写真は燕尾服を着た初老の男性だった。怪我をしているようで腕や足など至る所に包帯が巻かれている。その写真に十神は思わず目を見開く。どうやらこの男性は十神の知り合いで執事をしていたようだ。

 

『先ほど保護したと連絡を受けまして一応お知らせしておこうかと』

 

「・・・・・・そうか」

 

 渡の報告に十神は安堵の笑みを思わず浮かべた。まあ本人は今どんな顔をしているか自覚していないが。十神にとってアロシャニスはそんな反応を無意識にしてしまうほど大事な人だったのだろう。

 

『十神白夜さんに伝えることは以上ですね。腐川さんに変わっていただけますか?』

 

「わかった」

 

 機嫌の良い十神は素直に渡の頼みを聞き腐川にモニターを渡した。

 

「それで? あんたは私の説得でもする気? 年下の癖に生意気よ! そっそれにこの秘密は・・・・・・」

 

『いえ、後のことは向井さんに任せていますから』

 

 腐川の発言を遮り渡はモニターから消える。そして新たに向井がモニターに現れる。今回は前髪をしっかりと整えており根暗な印象はもたれないだろう。

 

『久しぶりです。覚えていますか?』

 

「・・・・・・もしかして向井さんって向井君のこと!」

 

 何かのイベントで会ったことがあったのだろう。腐川は向井の声と顔から何とか思いだし大声を出す。その様子から向井は腐川に忘れられていないことを確信しホッとした。もし忘れられていたらと渡に今の苗木たちの状況を聞かされてからやきもきしていたのだ。

 

『腐川さん・・・・・・』

 

 向井は夕食までの間に何とか殺害を踏みとどまらせようと腐川に様々な話をした。その時の腐川の様子に苗木たちは言葉を失った。とても可愛らしくまさに恋する乙女のような腐川の様子に思わず十神が声を失ってしまうほどだったし桑田や葉隠は近寄ることができなかった。

 

 こうして2人が殺害を諦めたことによって期限の24時間が経つまで誰も人殺しを行うことはなかった。モノクマは面白くなさそうな顔をしながら全員の秘密を言っていった。その中で腐川の秘密に注目が集まった。その様子にモノクマは笑みを浮かべた。ようやく殺し合いが起きると。

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