「ガッシュ...あ、あなた...。」
「ガッシュ!あいつらの方を向け!」
清麿の叫びに即座に反応して、ガッシュは敵の方を見る。
「《ザケル》!!」
ガッシュの口から飛び出した雷は、青年らの方へと向かい。
その手前の地面に落ちる。
「来い!つくし、ガッシュ!」
その瞬間につくしの手を引き、ガッシュを抱えて反対方向へと走り出した。
「な!?清麿!敵はあっちだそ!まさか逃げるのか!?」
「そうだよ清麿!アタシとしても黙っちゃいられない!」
「アイツらは植物を使っていた、
それなのに植物園で戦うのは圧倒的に不利だ!
まずは作戦を立てなきゃいけない!
それに、捕まってる人を早く助けないと...
人質にでもされたら動けなくなる。」
「う、ウヌ...。」
そう語る清麿の顔は、怒りに満ちていた。
逃げた先の茂みの中に隠れ、作戦会議を始める。
「ガッシュ、前言ったアレ、覚えてるな。」
「お、覚えている!任せてくれ!」
「よし、つくしにも頼みたいことがある。」
「アイツに一泡吹かせられるなら、なんだってやるよ。」
「頼んだ、絶対に勝つぞ!」
「どうだスギナ?奴らの位置は...」
「まだ園内にいるよ、詳しい位置までは分からない。」
スギナと呼ばれた少年は、木に手を当てながら言った。
植物を操る魔物であるスギナは、植物を介して地形などを把握できるらしい。
「そうか。」
(逃がしゃしねえぜ、多少驚いたがこれ以上の機会はない。
それに口から攻撃を出すタイプには、弱点がある。
この勝負、勝ちはあっても負けはない!)
姿勢を低く、いつでも動けるように迎撃の体制をとる。
(園内から出てないって事は、あいつらもまだ
さあ出てこい)
スギナに園内全体を見張らせ、自分は四方を警戒する。
スギナの攻撃の起点は手のひらだ、手のひらを向けるだけで攻撃できる。
......ガサ
(来た!)
「後ろだ!後ろを向けスギナ!」
対魔物戦闘においての課題となるものは、魔物とパートナーとのコンビネーションにある。
当然、お互い見ているものが違うならば、コミュニケーションを取らなければならず、それによる攻撃速度の低下は避けられない。
口を起点とする魔物はそれが顕著だ。
(んな事は、"前から"分かっていたことだ!)
そしてその対策は最初から決まっていた。
「
「何!?」
「《ザケル》!」
「ぐぉおっ!!」
後ろは取られた、だが来ることがわかってて地の利もあった。
反撃の準備もできていたのに、それでも。
(は、速い!?)
術を打つ暇もなかった。
逸れはしたが、攻撃は的確にスギナを狙っていた。
(ならば相手の後ろからだ!)
「《ジュロン》!」
清麿達の後ろから、太い幹のような蔦が飛び出す。
それに気付いた瞬間。
「!、SET!」
ガッシュ即座に後ろを向き。
「《ザケル》!」
瞬時に落とされた。
(くっ、何故だ!
コンビネーションプレイは、多方向からの攻撃に弱いはず...。
特に口から攻撃する
よほど息があってないと、どの方向に顔を向ければいいか迷う。
それなのにコイツらは...。)
「クソがぁ!」
焦れた春彦は、四方八方から攻撃しようとするが、
清麿達は反転し、逃げていった。
「チィ、逃がすかよ!」
(よし、上手くいってるな!
流石清麿だ!)
ガッシュに言っていた事とは、清麿の1m後ろにつき、常に右手に注意している事。
清麿が方向を指す、ガッシュがその方向を向く。
これにより、顔を向ける方向を一々口に出さずとも、相手の攻撃にも即座に対応できる。
「クソがぁ!
テメェらいつまで逃げまわるつもりだ!
戦うなら足止めてこっちと向き合え!
逃げながら攻撃したところで、1発も正確に当たってねぇぞ!」
声を荒らげる春彦を後目に、清麿達は逃げていく。
場所を変え、走り回り、植物園の奥へ、奥へと。
「おのれ!まだ逃げ...」
「まて、春彦...お前、気づいてないのか?」
「何がだ!」
「数と力。」
(!......そうか、アイツら...この力の事を分かってないのか。)
(ガッシュ、戦う前に1つ言っておく。」
「ヌッ、なんだ?」
「心を強く持て。
怒りだけじゃなく、喜びや、悲しみも。
守りたい、助けたいという想いが、俺たちの力だ。」
「...ウヌ!わかった!)
ガッシュは、戦闘に入る前に清麿に言われた事を思い出していた。
「ハッ、やっと見つけたぜお前ら!」
追ってきた相手を睨みつける。
この先には通さないと言わんばかりに。
「植物園の奥にまで来ちまって。
逃げるのに夢中で出口がわかんなくなったか?」
「いや、計算どうりさ。」
「何?どういう...」
ふと、清麿の背後に目が止まる。
そこには太い幹のような蔦があり、先端は焼け焦げていた。
(あれは、俺が放ったジュロン!?)
「まさか!?」
辺りを見渡し、気づく。
練習台に捕まえた人間が、全員居なくなっていた。
「ようやく気づいたか。
アンタが捉えていた人達は、全員救出させてもらった。
これで心置き無くアンタをぶっ飛ばせる。」
「くっそぉおおお!!!
ふざけやがって!!バカにしやがって!!!
ソイツらはオレの練習台に捕まえたヤツなんだ!
《ジュロン》!!!」
「SET!」
清麿たちに猛然と迫ってくるツタに対し右手を構え、ガッシュはそれに応える。
「ハッ!無駄だ!
心の力は有限なんだよ!
テメェらはもう1発も…」
本は眩く輝きを放ち。
「《ザケル》!」
雷が木槍を焼いた。
「なんだと!?」
真っ黒に炭化し、力を失ったツタは地へと落ちた。
それを見ていた春彦は、呆然とつぶやく。
「なんでだ?
もう10発以上は術を放っているはず…
心の力が残っているハズがねぇ…。」
「不思議そうだな、教えてやろうか?素人くん。
感情ってのは1つだけじゃないんだよ。」
「なに?」
「喜怒哀楽ってんだ、簡単に言っても4種類ある。
…俺たちが怒りだけで戦ってると思ったか?
人質を助けられた喜び。
無差別に襲ったお前らへの怒り。
植物園を壊された哀しみ。
ここで過ごした楽しみ。
その全部で俺たちは戦ってた!」
「クソ!クソクソクソクソクソ!!!」
激昂する春彦。
感情の爆発に呼応して、巨大な蕾が春彦とスギナの背後に現れる。
「これで潰れろぉ!!!!!!!
《ラージア・ジュガロ》!!!」
巨大な蕾が花開く。
その中心から岩石のような種子が発射された。
計8発のそれは、清麿とガッシュを押し潰し、植物達にも大きな傷痕を残すだろう。
「第二の術!《ラシルド》!!」
阻むは黄金の壁、守る心でもって造られたそれは、向けられた悪意を報復で以って帰す。
「ぐがぁあああああっ!!!」
「人を見下して得た悦楽だけで戦ってたアンタに、最初から勝ち目なんて無かったんだ。」
雷を纏って飛翔する種子に本を焼かれた春彦、スギナペアは因果応報により退場する。
「アンタが練習台にした人たちの痛み、これで少しは分かると良い。」
最初に助けた大学生のお兄さんと協力して、人質の救出を終えた後、まだ中に残って戦っている清麿たちを手助けするために園内へと戻ったつくしは、清麿の言葉を聞いていた。
(ここで過ごした楽しみ、か。
逃げ場ではあったんだろうけど、少しは楽しんでくれてたのかね。)
ガッシュと初めて来た今日のことだけでは、過ごしたとは言わないだろう。
清麿にとっての、大切な場所の1つであって欲しい。
これからはきっと、かっこいいヒーローの居場所にもなる筈だから。
次回はみんな大好きあの子の登場ですね。
これ書きたいなぁと思って始めたのに、首までエタに浸かってました。
感想ありがとうございます。