コルルたちとの騒動を終えて翌日。
清麿たちは、だだっ広い草原に来ていた。
「よし、ガッシュ。行くぞ?」
「ウ、ウヌ!」
眼前には大きな岩。
「第三の呪文!」
目標をしっかりと見据えて、力を入れ唱える。
「《ジケルド》!!」
「「わぁああああああああ!!」」
重なる悲鳴と、小鳥の声。
「...ウ、ウヌ?何も、起こらぬぞ?」
「ふむ、ジ...」
姿勢をただし、腹式呼吸を意識して。
「ジウィ〜~~~ケリュードゥオォ〜」
「それは違う!清麿!そーゆー問題ではないと思うぞ!?」
「だよな、試しただけだ」
「マジメにやっておるのか!?」
「いや逆にやっておかなきゃと思って」
ともあれ、新しく発現した第三の呪文《ジケルド》は、心を込めて唱えても発動はしなかった。
「何か他に発動条件があるんだろう、思えばこれまでの戦いも同じ技ばかりではなかったしな」
例えばレイコムの《ギコル》と《フリズド》。
ブラゴの《レイス》と《グラビレイ》。
スギナの《ジュロン》と《ラージア・ジュガロ》。
それぞれ違う効果を持った術だった。
「コルルの《ゼルク》と《ゼルセン》もそうだしな。」
「うっ...」
「...悪い。まぁそんな訳だから、少しづつ探っていこうって話さ」
と言って話を締めると、清麿は持ってきた荷物からブルーシートを取り出して、広げ始めた。
「検証も...検証らしい検証は出来てないが、とりあえず終わった事だし。ピクニックと行くか!」
そう言って各々持ち寄った弁当を出し始めた。
「それにしても凄いね、毎回あんな事をやってるの?」
と切り出したのは近くの高校に通うしおりだった。
今日は休日、昨日のこともあり、とりあえず親睦を深めてお互いの信頼を得ようという事で、怪我した体を推してピクニックを敢行。
しおりは肩に負担がかからないよう首から腕を吊っている状態だ。
「いや、今回が初めてだな」
「え、そうなの?意外だね。清麿くん事前準備はしっかりやるタイプだと思ってた」
「まぁ、今までは準備する前に襲われてたってのもあるが...」
清麿は、昨夜の話し合いを思い出す。
「清麿、私は...」
少し俯いて、何かを考えるように間を取ってから、ガッシュは言った。
「私は、王になるつもりも、王になれる気もしなかった。しかし、泣いていたコルルたちを見て...もう、本を燃やすしかないと思ってしまって......」
顔を上げたガッシュは、泣いていた。
「......とても悔しかったのだ」
「...ガッシュは、どうしたい?王になりたいか?」
「私は...」
「王にも色々な在り方がある。荒くれ者共を殴って黙らせる強き王、1番前で両手を広げて弱き者を守る王、人に寄り添い支える優しい王。ガッシュは、どんな王様になりたい?」
「...私は、私は王にはならない。」
「え...」
「私は、支える者になりたい。王が倒せない者も、守れない人も、一緒に成し遂げて、王が倒れそうな時にそばで支えられるような。」
「ガッシュ...」
「だから清麿、私は強くなりたい。時に支え、時に手を引き導けるような強さが欲しい。...できるかの?」
「...あぁ、出来るさ。俺がならせてやる」
「ウヌ、頼むぞ清麿!」
「この魔物の王を決める戦いで、ガッシュは明確な目標を持てていなかった。しおり達にはあまりいい事じゃないかもしれないが、今回のおかげで、ガッシュは成長できた。」
ガッシュとコルルは早々に食べ終わって、二人で遊びに行っている。
ティーナとバルカン300が仲睦まじそうだ。
「だから迷惑かけたとか、思わないでくれよな」
今回の親睦会を提案したのは、しおりからだった。
自分が安易に呪文を読んだから、コルルが轢かれそうになったのも、自分が慌てて放ったボールが原因だった。
今回持ってきた弁当は、しおりのお手製だったりする。
「...うん、ありがとう清麿くん」
再び取れたバルカン300の腕を、ティーナが優しく拾ってあげていた。
時間は穏やかにすぎて行く。
その影で、戦いの運命は着実に迫ってきていた。
「ここがモチノキ町か、ここに敵がいるんだな?」
「ええそうよ、何度も何度も力を感じてる」
降り立った2人組。
貴族然とした格好の、うねる髪が特徴的な子供と、ソフトモヒカンに、首から掛けたネックレスが目立つ男。
「おい兄ちゃんお勘定!四国から乗って来といて、払わんきやないやろな!?」
「うるせぇなぁ、力もねぇオヤジがよぉ《ウイガル》!!」
車は浮き上がり、電話ボックスやガードレール、花壇をなぎ倒しながら
辺りに破壊をもたらした。
「いい...いいよなやっぱ...この力、スカッとするぜアレコレうるせぇヤツを簡単に黙らせられる。誰も逆らえねぇ」
男は恍惚とした笑みを浮かべながら本をたたむ。
「もっと力をつけて、もっとスカッとしねぇとな…なぁ、フェイン?」
「えぇ...その通りよ。そして私は王になる。力をつけて、誰も逆らえない王になるの」
「で、どうなんだ?ヤツらの力は」
「少し前は強い力の波動もあったけど、今はわずかな力しか感じない。我々で充分倒せるレベルよ」
「よし、じゃあ後は詳しい位置だな」
「ええ、もう探り始めてるわ。奴らが力を使い始めれば、それもすぐに分かるわ」
時刻は昼過ぎ、清麿たちはピクニックを切り上げ街の方へと戻ってきていた。
この後はショッピングだ。
ティーナを見たガッシュが、バルカン300の改修をねだった。
手先が器用でない清麿はその提案を渋ったが、助け舟を出したのはしおりだった。
「ロボットは作れないけど、簡単なお人形さんなら作れるよ?」
との事で、材料集めに街へとやってきた一行。
生地とビーズ、骨組みに使う針金を求めて手芸店へと向かう。
「布なんかは分かるけど、針金も必要なのか?」
「ただの人形なら要らないけど、男の子はポーズとか取らせたりするかなって思って。針金を中に仕込めばある程度は固定できるからね」
「なるほど、ちゃんと相手のことも考えてたんだな。素直に尊敬するよ。」
「それほどでもないよ。私が嬉しいと思ったことをしてるだけだもん」
「ウヌ!とっても嬉しいぞ、しおりちゃん!ありがとうなのだ!」
「フフ...どういたしまして」
「良かったねガッシュ、ティーナもお友達が増えて...」
「《ウイガル》!!」
「!SET!!」
声が聞こえた方に指を向け叫ぶ。
反射的にガッシュがその方角へ顔を向けた。
「《ラシルド》!!」
少し上向きに出された雷の盾、向けられた風の弾丸は何も無い上空へと跳ね返された。
「いきなり何!?」
「コルル伏せてて!」
「清麿!これは!!」
「敵襲だ!しおりさん達は避難してくれ!」
「攻撃してきたの!?こんな街中で!!」
「ハッハー!いたぜ!本の持ち主だ!!」
「さぁ!大人しく本を焼かせて!王になるのは私なの!!」
(この者が...王?)
「ガッシュ走るぞ!近くに廃ビルがあったはずだ!」
清麿はガッシュを連れて走り出し、しおり達は反対方向に逃げていく。
清麿に抱えられたガッシュは、襲撃者をキツく睨みつけていた。
しばらく行った所にある廃ビル内で、ガッシュと清麿は敵が来るのを待ち構えていた。
「ハッ...こんなとこに逃げ込みやがったか、どこに逃げたって死ぬのは同じだぜ!」
「...おい!魔物の方!」
「!......何?」
「お前は、どんな王を目指しているのだ?」
「どんな、王?」
「そうだ、お前は王になって何をしたいのだ」
「クハッ!アーーーーッハッハッハッホ!!何を言ってるの!?王様って何か知ってるの!?」
頭を抱えて笑い出すフェイン。
何も分かってないと言いたげな、侮辱するような表情で叫ぶ。
「支配者の事を言うんだぜ!?誰も逆らえねぇんだ!強ぇ奴も弱ぇ奴も、私の気分次第で叩きのめせるんだ!!それでいて誰も文句が言えない!それが最高なんじゃないの!!」
「そうか、よく分かった。...ならば私は、お前を倒す!お前を王様にする訳にはいかぬ!!手を貸してくれ!清麿!」
「あぁ、当たり前だぜ!」